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その後…とは限らない番外編
番外編2 魔王退治の勇者と幼馴染 その5
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瀬利亜がとっくに結婚していたという衝撃的な事実が判明した後、俺はしばらくショックのあまり呆然自失になっていたようだ。
あの後、瀬利亜やアルテアさん、光一たちとエイムス、フォルト大司教たちがいろいろと話をしていたようだが、その内容のほとんどが俺の頭には入ってきていなかった。
『元の世界にもどらないか?』とか言われた気がするが、丁寧に断った。
元の世界に戻りたい動機の半分くらいが『勇者として成長した今の自分で瀬利亜に再会したい』だったようで、話を聞いても元の世界に戻ろうという気力が湧いてこなかったのだ。
全身から気力が抜け落ちたようになった俺は、『異世界への扉』をくぐって帰る瀬利亜たちを呆然としながら見送り、ふらふらと自室に戻ると、ベッドに入った後、そのまま動けなくなった。
正確には動く気力が全く起きなくなったのだ。
翌朝になっても、俺は部屋から出る気力が起きなかった。
朝食を取りに部屋を出ない俺を侍女のミリアさん、そしてエイムスが声を掛けてくれたが、俺はふとんをかぶったまま動けないでいた。
みんなに心配をかけてることはわかっている。しかし、瀬利亜に結果的に振られたこともさることながら、瀬利亜は勇者よりずっと強い、無敵のスーパーヒロインのシードラゴンマスクだったのだ。
あれだけ苦労に苦労を重ねて勇者となり、魔王を倒したのだけれど、『瀬利亜に相応しい男になる』どころか瀬利亜ははるかかなたに行ってしまったうえに結婚までしていたのだ。おれが今までしてきたことに一体どんな意味があったのかと愕然とさせられたのだ。
「健人!お前の気持ちはわからないでもない。しかし、みんな本当に心配しているんだぞ。」
デフォルドが扉の向こうから語りかけてくる。
デフォルドはいつもは飄々とした感じでいたが、肝心な時にはものすごく熱く、周りを思って行動してくれていた。今も、俺のことはもとより、城のみんなのことを考えてくれているのだろう。…しかし、今のおれには……。
「健人、あなた何をしているのかしら?失恋の一回や二回で引きこもるようなヘタレにお姉さんは育てた覚えはないわ!!」
「他ならぬ失恋させた張本人がなに言ってんの?!!それから日本へ帰ったんじゃなかったわけ?!!!」
俺は思わず部屋の外に飛び出していた。
「何を言っているのかしら?今回は私があなたを振ったのじゃなくて、しばらく会わないでいたら、『たまたま私が結婚していた』だけの話だわ。
さ○ちゃんの『はーるばる来たぜ!函◎♪』の唄と同じような展開なのだわ♪」
罪悪感のかけらもない、涼しい顔で瀬利亜が言っている。
「それと、もちろん昨日、日本に帰ったのだけれど、今日またこちらに来ただけの話なの。」
「じゃじゃーーん♪『異次元ドア』を使いました♪」
明らかに異空間につながっていると思しき洋風のドアの傍にアルテアさんが立って、ニコニコしている。
「それ、未来の世界の動物型ロボットがアニメの中で使っていたような奴だよね??!
なんで、アルテアさんがそんなもの使ってるわけ?!!」
「健人、アルさんのことは後で説明するわ。
あなたのご家族からビデオレターを預かっているから、まずそれを見てちょうだい。」
言いながら瀬利亜が懐からタブレットを取り出す。
「ええと、健人。まずは無事でよかった。連絡なしに、一日も行方が分からなくなったから、父さんたち本当に心配したんだぞ!」
俺の記憶のそのままの父さんが画面に映ってた。というか、俺が異世界に行ってからあちらでは一日しか経っていなかったのだな。
「とにかく、無事で何よりだ。そして、勇者というのがどういうものなのかは俺にはよくわからんし、健人が勇者になったと聞いても実感がわかないんだが…まあ、がんばれ!!」
少し疲れたような表情だったが、父さんなりに精いっぱい激励してくれたようだ。
「なにはともあれ、健ちゃんが無事でよかったわ♪それと、ちょっと見ない間に健ちゃんすごく立派になったんだってね!母さん鼻が高いわ!あなたが選んだ道なんだから、後悔しないように頑張りなさい!!」
ニコニコしながら母さんが語りかけている。相変わらずポジティブな人だ。
「ええええ、兄さん、瀬利亜ちゃんに振られたんだって?!!私、瀬利亜ちゃんがお姉ちゃんになってくれるのをすごく楽しみにしてたのに…なにやってんの?!!」
麻美、お前なにぶちかましてくれてんの?!!
「でも、兄さんが勇者になっているなんて、すごいね!!それ以上に瀬利亜ちゃんがシードラゴンマスク様になっているて知ってビックリだけどね。
ところで、兄さん、『ものすごい美人で可愛らしいお姫様』と知り合ったんだって?!写真を見せてもらったけど、兄さんにはもったいないくらいきれいな人だね♪今度紹介してね♪
じゃあ、勇者がんばってね!」
二つ年下の麻美が手を振っているところで映像が終わった。
「なあ、瀬利亜。麻美のやつが『今度紹介してね』とか言ってたけど、お前さん達そんなに頻繁にこっちの世界に来れるのか?」
「あら、健ちゃん勘違いしているようだけど、この異次元ドアはどこかのアニメにあるようないろんな場所同士を自由自在につなぐものではなくて、『特定の場所と特定の場所を世界をまたいで完全に固定してつなぐ』道具なんだよ。
今のところ、瀬利亜ちゃん家とこっちの王城をつないでいるから、頻繁にというより、『いつでも好きなだけ』行き来できるよ♪」
アルテアさん、今とんでもないことをさらっと言ってるんですけど?!!
「まあ、つなぐ場所を考えないとお城の人に迷惑を掛けそうだから、どこに固定して設置するかを後でエイムスちゃんとしっかりお話をしておくね♪」
「固定してつなぐのは確定なの?!!」
俺はアルテアさんに思わず突っ込みを入れる。
「あら、健人も昨日『日本に帰らない』と言ったのもエイムス王女をはじめとするこちらの世界の人達と別れがたかったからでしょう。もちろん、日本に帰りたい気持ちがないわけではないでしょうから、これが一番いいと感じたの。」
確かに瀬利亜の言う通り、この世界の人達、特にエイムスとデフォルドには家族に近いくらいの想いを感じている。すぐに恋人うんぬんは難しいにしても、エイムスとすぐに永遠の別れになるとか、考えたくもない。
「あと、魔王本体はあなたたちと私が粉砕したのだけれど、魔王軍の残存勢力をどうするかという話もあるわね。
異種族同士や異文明同士をどう『共存してもらうか』も私たちモンスターバスターの大切な仕事だわ。魔王がいなくなって、魔王軍勢力があなたたちと共存してもいい…と考えているのだったら、その時こそ、私たちの出番な訳。」
瀬利亜が強い意志を持った目で俺を見つめる。
そうだ、瀬利亜はこういうやつだった。だから、俺は瀬利亜のことが好きになったのだし。そして、こういうやつだから瀬利亜はスーパーヒロインになったのだな…。
そして俺は光一やアルテアさんの実態を知らされて、さらに愕然となった。
光一もスーパーヒーローで、『巨大ロボットの設計』までしていたとか…。
アルテアさんに至っては、『伝説の世界最高の魔法使い』とか、一体どんだけチートなの?!!
俺のまわりにはとんでもないチートな人たちがごろごろしてたの??!
「それではこれから『第1回合同魔王軍対策会議』を行います。司会は私・石川瀬利亜がさせていただきます。」
会議室で言いながら、瀬利亜がホワイトボードに字を書いていく。
え?それ日本語だけど、大丈夫なの?
なに、書いた文字がその人の母国語に見える魔法のホワイトボードだから、大丈夫なんですか?そうですか…。
会議室にいるメンツは…フラムス王国側が俺、エイムス、デフォルド、それから千早ちゃんに治療してもらって元気になったダンガー王、フォルト大司教、ダントス騎士団長、シュミット宰相だ。
ダンガー王とサスガン王子は魔王軍との戦闘で重傷を負い、しかもその際に魔王軍の六魔将の扱う武器の呪いで、まともに動けなくなっていたのだが、千早ちゃんはエイムスやフォルト大司教すら解けなかった呪いを解呪してしまったのだ。
エイムスの兄のサスガン王子は傷が治り、負傷はなくなったものの、まだ体力が回復していないこともあり、今回の会議には欠席している。
同じくダンガー王もまだ回復途上のはずなのだが、元気そうな顔で会議にとても前向きだ。
戦闘にも最前線に出張ることが多かったそうだから、元来とても元気なのだそうだ。
一方、モンスターバスターチーム側だが…。瀬利亜とアルテアさん、光一、千早ちゃんがいる。他にニコニコしているショートカットの美少女と、白衣のおっさんが二人、それから、青い顔色のメイド姿の美女…よく見ると、この女性は魔族だ!!この取り合わせは一体…。
瀬利亜、アルテアさん、光一、そして千早ちゃんとショートカットの美少女・望海ちゃんはモンスターバスターなのだそうだ。そして、白衣のおっさん二人は科学者…なんで、科学者がここにいるんだ?
それから、魔族のメイド姿の美女は…。
「その女性はパチモン瀬利亜さんですよ。」
えええええええええ?!!!!千早ちゃんの言葉に王国側の人間がざわめく。あの魔族の女性が瀬利亜に化けていたというのか?!!
本人の自供によると、魔王の親衛隊の一人、『幻影使い』のタナトスは魔王アルティメイトメイジが復活後、その指令で城下町に潜り込んで、勇者たる俺の弱点を探っていた。
パトロールに出ていた俺を街の女性に化けてこっそりつけていたのだそうだ。街中で休憩していた俺の思考から、瀬利亜の存在を読み取り、タナトスは姿かたちをそっくりに変身していたのだ。
そして、あの日俺の前で姿を現し、催眠魔法と魅了の魔法で、自分が瀬利亜だと信じさせていたのだった。だが、闇の短刀で俺を刺したため、魅了の魔法が解け、俺は女神様の腕輪の力を作動させることができ、なんとか死地から逃れることができたのだ。
ううむ、あの時な思った以上にぎりぎりだったわけなのだな。
「なるほど、その女が勇者を殺そうとした犯人なわけなのだな。では、そいつをこちらに引き渡して頂けるわけですな。できれば、わし自らの手で首をはねさせていただきたい!」
ダンガー王!思考が見た目通り脳筋です!!さすがは本人さん自体が王国で一~二を争う剣士だけのことはあるよね!!
「いえ、彼女はすでに我々に降伏し、魔王軍内の情報提供をして貰っています。加えて、魔王軍との和平交渉にも役立ってもらう予定ですので、できれば処刑はなしにしていただきたいです。」
困ったような顔で瀬利亜が答える。
「それに、たとえパチモンとはいえ、瀬利亜さんそっくりになった相手の首をはねるとか、私たちにとって気分のいいものではないです。」
悲しそうな顔で千早ちゃんが口をひらく。
「そうか、そうか…。千早ちゃんが言うならしかたないのう。」
王様と王子様の呪いと傷を癒したという理由もありそうだけど、デレデレした顔でダンガー王が答える。かわいいはやはり正義なのか?!!
「しかし、元魔王の側近がそんなに簡単に我々の言うことを聞いてくれるのかね?」
デフォルドが当然とも言える疑問を口にする。
「こんな化け…いや、強すぎる奴が他にも何人もいるとか言うのに、まともに戦えるわけないだろ!!」
タナトスが瀬利亜を見ながら震えながら答える。
うん、魔王を圧倒して倒したシードラゴンマスクの戦いぶりを見れば、そういう感想に……いや他にも何人もいるの?!言われてみれば、1年くらい前にスーパーヒーローオリンピックという『とんでもないイベントにたくさんの強いヒーローたちが参加していたよね。
タナトスの言葉に王国側の人達が大きくざわめく。
「待ってください!!瀬利亜さんみたいに規格外に強い人が他にも何人もおられるのですか?!」
エイムスが椅子から立ち上がってさけぶ。
「タナトスさんをモンスターバスター協会本部に連れて行って、いろいろとお話をしたのです。協会本部には瀬利亜さんクラスの強者も何人もいる上に、さまざまな『超技術』もありますからね♪
そのあとはタナトスさんは非常に『協力的』になってくれましたよ♪」
ニコニコしながらショートカットの美少女の望海ちゃんが答える。満面の笑顔…なんだけど、なんだか妙な迫力を感じるのは気のせいだろうか?
「タナトスさんといろいろ話し合ってわかったのは、魔族の人達は『力こそパワー』な思考回路が非常に強いということなのだわ。したがって、魔族の人達との交渉に入る前に、少し『デモンストレーション』をする必要があると私たちは判断したわ。」
瀬利亜がそう言った後、二人の白衣の男性が立ち上がった。
「そこで、わしらの出番というわけなのだ。」
「その通り、我々の開発した巨大ロボ…もとい、巨大ゴーレムでのデモンストレーションを見せつけ…見てもらえれば、彼らは我々との対話を積極的に考えるだろう。」
絶対に巨大ロボットと言おうとしたよね?!
「その、巨大ゴーレム…というのはどんなものなのでしょうか?」
恐る恐ると言った感じでエイムスが口を開く。
「それは、映像を見てもらうんが早い思うんや。それ用のPVがあるから見て欲しいんや。」
言いながら光一が立体映像を再生させるが…おいおい!!これって、俺も見たことのあるシードラゴンロボのPVだよ?!!
シードラゴンマスクが登場するシードラゴンロボが大活躍する…というPVなんだけど、ビルの谷間を歩いたり、空や海を行くシーン以外に以前TVで見たものと違って、宇宙怪獣たちをどんどん蹴散らすシーンが入っているよ?!!この戦闘シーンは…特撮かCGだよね?!!
フラムス王国の人達は呆然としながらPVを見ている。なにしろ明らかにドラゴンよりずっとでかくて凶悪な怪物をシードラゴンロボが一方的にボコっているからね…。なお、あとで戦闘シーンはCGではなく、『実際の戦闘をアルテアさんの魔法で映像に落としたもの』だとわかった。
「さて、これからが本題になるんやけんど、瀬利亜はんがシードラゴンロボに乗って魔族領に出張っていく…いうんはいろいろと問題になる恐れがあるんや。
せやから、『勇者専用の巨大ロボ』…もとい、巨大ゴーレムを開発済みなんねんけんど、それに健人はんが搭乗して『魔族たちと交渉』に行くいうんはどうやろか?
ああ、巨大ゴーレムは勇者の安全のための『鎧替わり』いう筋書きや♪」
待て?!!!いろいろと突っ込みどころしかないんだけど?!!!
というか、いつの間に『勇者専用の巨大ロボ』の開発なんかしてたの?!!
そんなものに乗せられて、俺、大丈夫なの?!!
俺は心の中の声だけでなく、懸命にアピールしたが…フラムス王国の人達全員がいつの間にか乗り気にさせられていて、俺に拒否権はなくなっていた。
そして、『勇者の乗った巨大ゴーレム』の活躍により、フラムス王国と魔族たちの講和条約は割と簡単に結ばれたのでした。
(了)
あの後、瀬利亜やアルテアさん、光一たちとエイムス、フォルト大司教たちがいろいろと話をしていたようだが、その内容のほとんどが俺の頭には入ってきていなかった。
『元の世界にもどらないか?』とか言われた気がするが、丁寧に断った。
元の世界に戻りたい動機の半分くらいが『勇者として成長した今の自分で瀬利亜に再会したい』だったようで、話を聞いても元の世界に戻ろうという気力が湧いてこなかったのだ。
全身から気力が抜け落ちたようになった俺は、『異世界への扉』をくぐって帰る瀬利亜たちを呆然としながら見送り、ふらふらと自室に戻ると、ベッドに入った後、そのまま動けなくなった。
正確には動く気力が全く起きなくなったのだ。
翌朝になっても、俺は部屋から出る気力が起きなかった。
朝食を取りに部屋を出ない俺を侍女のミリアさん、そしてエイムスが声を掛けてくれたが、俺はふとんをかぶったまま動けないでいた。
みんなに心配をかけてることはわかっている。しかし、瀬利亜に結果的に振られたこともさることながら、瀬利亜は勇者よりずっと強い、無敵のスーパーヒロインのシードラゴンマスクだったのだ。
あれだけ苦労に苦労を重ねて勇者となり、魔王を倒したのだけれど、『瀬利亜に相応しい男になる』どころか瀬利亜ははるかかなたに行ってしまったうえに結婚までしていたのだ。おれが今までしてきたことに一体どんな意味があったのかと愕然とさせられたのだ。
「健人!お前の気持ちはわからないでもない。しかし、みんな本当に心配しているんだぞ。」
デフォルドが扉の向こうから語りかけてくる。
デフォルドはいつもは飄々とした感じでいたが、肝心な時にはものすごく熱く、周りを思って行動してくれていた。今も、俺のことはもとより、城のみんなのことを考えてくれているのだろう。…しかし、今のおれには……。
「健人、あなた何をしているのかしら?失恋の一回や二回で引きこもるようなヘタレにお姉さんは育てた覚えはないわ!!」
「他ならぬ失恋させた張本人がなに言ってんの?!!それから日本へ帰ったんじゃなかったわけ?!!!」
俺は思わず部屋の外に飛び出していた。
「何を言っているのかしら?今回は私があなたを振ったのじゃなくて、しばらく会わないでいたら、『たまたま私が結婚していた』だけの話だわ。
さ○ちゃんの『はーるばる来たぜ!函◎♪』の唄と同じような展開なのだわ♪」
罪悪感のかけらもない、涼しい顔で瀬利亜が言っている。
「それと、もちろん昨日、日本に帰ったのだけれど、今日またこちらに来ただけの話なの。」
「じゃじゃーーん♪『異次元ドア』を使いました♪」
明らかに異空間につながっていると思しき洋風のドアの傍にアルテアさんが立って、ニコニコしている。
「それ、未来の世界の動物型ロボットがアニメの中で使っていたような奴だよね??!
なんで、アルテアさんがそんなもの使ってるわけ?!!」
「健人、アルさんのことは後で説明するわ。
あなたのご家族からビデオレターを預かっているから、まずそれを見てちょうだい。」
言いながら瀬利亜が懐からタブレットを取り出す。
「ええと、健人。まずは無事でよかった。連絡なしに、一日も行方が分からなくなったから、父さんたち本当に心配したんだぞ!」
俺の記憶のそのままの父さんが画面に映ってた。というか、俺が異世界に行ってからあちらでは一日しか経っていなかったのだな。
「とにかく、無事で何よりだ。そして、勇者というのがどういうものなのかは俺にはよくわからんし、健人が勇者になったと聞いても実感がわかないんだが…まあ、がんばれ!!」
少し疲れたような表情だったが、父さんなりに精いっぱい激励してくれたようだ。
「なにはともあれ、健ちゃんが無事でよかったわ♪それと、ちょっと見ない間に健ちゃんすごく立派になったんだってね!母さん鼻が高いわ!あなたが選んだ道なんだから、後悔しないように頑張りなさい!!」
ニコニコしながら母さんが語りかけている。相変わらずポジティブな人だ。
「ええええ、兄さん、瀬利亜ちゃんに振られたんだって?!!私、瀬利亜ちゃんがお姉ちゃんになってくれるのをすごく楽しみにしてたのに…なにやってんの?!!」
麻美、お前なにぶちかましてくれてんの?!!
「でも、兄さんが勇者になっているなんて、すごいね!!それ以上に瀬利亜ちゃんがシードラゴンマスク様になっているて知ってビックリだけどね。
ところで、兄さん、『ものすごい美人で可愛らしいお姫様』と知り合ったんだって?!写真を見せてもらったけど、兄さんにはもったいないくらいきれいな人だね♪今度紹介してね♪
じゃあ、勇者がんばってね!」
二つ年下の麻美が手を振っているところで映像が終わった。
「なあ、瀬利亜。麻美のやつが『今度紹介してね』とか言ってたけど、お前さん達そんなに頻繁にこっちの世界に来れるのか?」
「あら、健ちゃん勘違いしているようだけど、この異次元ドアはどこかのアニメにあるようないろんな場所同士を自由自在につなぐものではなくて、『特定の場所と特定の場所を世界をまたいで完全に固定してつなぐ』道具なんだよ。
今のところ、瀬利亜ちゃん家とこっちの王城をつないでいるから、頻繁にというより、『いつでも好きなだけ』行き来できるよ♪」
アルテアさん、今とんでもないことをさらっと言ってるんですけど?!!
「まあ、つなぐ場所を考えないとお城の人に迷惑を掛けそうだから、どこに固定して設置するかを後でエイムスちゃんとしっかりお話をしておくね♪」
「固定してつなぐのは確定なの?!!」
俺はアルテアさんに思わず突っ込みを入れる。
「あら、健人も昨日『日本に帰らない』と言ったのもエイムス王女をはじめとするこちらの世界の人達と別れがたかったからでしょう。もちろん、日本に帰りたい気持ちがないわけではないでしょうから、これが一番いいと感じたの。」
確かに瀬利亜の言う通り、この世界の人達、特にエイムスとデフォルドには家族に近いくらいの想いを感じている。すぐに恋人うんぬんは難しいにしても、エイムスとすぐに永遠の別れになるとか、考えたくもない。
「あと、魔王本体はあなたたちと私が粉砕したのだけれど、魔王軍の残存勢力をどうするかという話もあるわね。
異種族同士や異文明同士をどう『共存してもらうか』も私たちモンスターバスターの大切な仕事だわ。魔王がいなくなって、魔王軍勢力があなたたちと共存してもいい…と考えているのだったら、その時こそ、私たちの出番な訳。」
瀬利亜が強い意志を持った目で俺を見つめる。
そうだ、瀬利亜はこういうやつだった。だから、俺は瀬利亜のことが好きになったのだし。そして、こういうやつだから瀬利亜はスーパーヒロインになったのだな…。
そして俺は光一やアルテアさんの実態を知らされて、さらに愕然となった。
光一もスーパーヒーローで、『巨大ロボットの設計』までしていたとか…。
アルテアさんに至っては、『伝説の世界最高の魔法使い』とか、一体どんだけチートなの?!!
俺のまわりにはとんでもないチートな人たちがごろごろしてたの??!
「それではこれから『第1回合同魔王軍対策会議』を行います。司会は私・石川瀬利亜がさせていただきます。」
会議室で言いながら、瀬利亜がホワイトボードに字を書いていく。
え?それ日本語だけど、大丈夫なの?
なに、書いた文字がその人の母国語に見える魔法のホワイトボードだから、大丈夫なんですか?そうですか…。
会議室にいるメンツは…フラムス王国側が俺、エイムス、デフォルド、それから千早ちゃんに治療してもらって元気になったダンガー王、フォルト大司教、ダントス騎士団長、シュミット宰相だ。
ダンガー王とサスガン王子は魔王軍との戦闘で重傷を負い、しかもその際に魔王軍の六魔将の扱う武器の呪いで、まともに動けなくなっていたのだが、千早ちゃんはエイムスやフォルト大司教すら解けなかった呪いを解呪してしまったのだ。
エイムスの兄のサスガン王子は傷が治り、負傷はなくなったものの、まだ体力が回復していないこともあり、今回の会議には欠席している。
同じくダンガー王もまだ回復途上のはずなのだが、元気そうな顔で会議にとても前向きだ。
戦闘にも最前線に出張ることが多かったそうだから、元来とても元気なのだそうだ。
一方、モンスターバスターチーム側だが…。瀬利亜とアルテアさん、光一、千早ちゃんがいる。他にニコニコしているショートカットの美少女と、白衣のおっさんが二人、それから、青い顔色のメイド姿の美女…よく見ると、この女性は魔族だ!!この取り合わせは一体…。
瀬利亜、アルテアさん、光一、そして千早ちゃんとショートカットの美少女・望海ちゃんはモンスターバスターなのだそうだ。そして、白衣のおっさん二人は科学者…なんで、科学者がここにいるんだ?
それから、魔族のメイド姿の美女は…。
「その女性はパチモン瀬利亜さんですよ。」
えええええええええ?!!!!千早ちゃんの言葉に王国側の人間がざわめく。あの魔族の女性が瀬利亜に化けていたというのか?!!
本人の自供によると、魔王の親衛隊の一人、『幻影使い』のタナトスは魔王アルティメイトメイジが復活後、その指令で城下町に潜り込んで、勇者たる俺の弱点を探っていた。
パトロールに出ていた俺を街の女性に化けてこっそりつけていたのだそうだ。街中で休憩していた俺の思考から、瀬利亜の存在を読み取り、タナトスは姿かたちをそっくりに変身していたのだ。
そして、あの日俺の前で姿を現し、催眠魔法と魅了の魔法で、自分が瀬利亜だと信じさせていたのだった。だが、闇の短刀で俺を刺したため、魅了の魔法が解け、俺は女神様の腕輪の力を作動させることができ、なんとか死地から逃れることができたのだ。
ううむ、あの時な思った以上にぎりぎりだったわけなのだな。
「なるほど、その女が勇者を殺そうとした犯人なわけなのだな。では、そいつをこちらに引き渡して頂けるわけですな。できれば、わし自らの手で首をはねさせていただきたい!」
ダンガー王!思考が見た目通り脳筋です!!さすがは本人さん自体が王国で一~二を争う剣士だけのことはあるよね!!
「いえ、彼女はすでに我々に降伏し、魔王軍内の情報提供をして貰っています。加えて、魔王軍との和平交渉にも役立ってもらう予定ですので、できれば処刑はなしにしていただきたいです。」
困ったような顔で瀬利亜が答える。
「それに、たとえパチモンとはいえ、瀬利亜さんそっくりになった相手の首をはねるとか、私たちにとって気分のいいものではないです。」
悲しそうな顔で千早ちゃんが口をひらく。
「そうか、そうか…。千早ちゃんが言うならしかたないのう。」
王様と王子様の呪いと傷を癒したという理由もありそうだけど、デレデレした顔でダンガー王が答える。かわいいはやはり正義なのか?!!
「しかし、元魔王の側近がそんなに簡単に我々の言うことを聞いてくれるのかね?」
デフォルドが当然とも言える疑問を口にする。
「こんな化け…いや、強すぎる奴が他にも何人もいるとか言うのに、まともに戦えるわけないだろ!!」
タナトスが瀬利亜を見ながら震えながら答える。
うん、魔王を圧倒して倒したシードラゴンマスクの戦いぶりを見れば、そういう感想に……いや他にも何人もいるの?!言われてみれば、1年くらい前にスーパーヒーローオリンピックという『とんでもないイベントにたくさんの強いヒーローたちが参加していたよね。
タナトスの言葉に王国側の人達が大きくざわめく。
「待ってください!!瀬利亜さんみたいに規格外に強い人が他にも何人もおられるのですか?!」
エイムスが椅子から立ち上がってさけぶ。
「タナトスさんをモンスターバスター協会本部に連れて行って、いろいろとお話をしたのです。協会本部には瀬利亜さんクラスの強者も何人もいる上に、さまざまな『超技術』もありますからね♪
そのあとはタナトスさんは非常に『協力的』になってくれましたよ♪」
ニコニコしながらショートカットの美少女の望海ちゃんが答える。満面の笑顔…なんだけど、なんだか妙な迫力を感じるのは気のせいだろうか?
「タナトスさんといろいろ話し合ってわかったのは、魔族の人達は『力こそパワー』な思考回路が非常に強いということなのだわ。したがって、魔族の人達との交渉に入る前に、少し『デモンストレーション』をする必要があると私たちは判断したわ。」
瀬利亜がそう言った後、二人の白衣の男性が立ち上がった。
「そこで、わしらの出番というわけなのだ。」
「その通り、我々の開発した巨大ロボ…もとい、巨大ゴーレムでのデモンストレーションを見せつけ…見てもらえれば、彼らは我々との対話を積極的に考えるだろう。」
絶対に巨大ロボットと言おうとしたよね?!
「その、巨大ゴーレム…というのはどんなものなのでしょうか?」
恐る恐ると言った感じでエイムスが口を開く。
「それは、映像を見てもらうんが早い思うんや。それ用のPVがあるから見て欲しいんや。」
言いながら光一が立体映像を再生させるが…おいおい!!これって、俺も見たことのあるシードラゴンロボのPVだよ?!!
シードラゴンマスクが登場するシードラゴンロボが大活躍する…というPVなんだけど、ビルの谷間を歩いたり、空や海を行くシーン以外に以前TVで見たものと違って、宇宙怪獣たちをどんどん蹴散らすシーンが入っているよ?!!この戦闘シーンは…特撮かCGだよね?!!
フラムス王国の人達は呆然としながらPVを見ている。なにしろ明らかにドラゴンよりずっとでかくて凶悪な怪物をシードラゴンロボが一方的にボコっているからね…。なお、あとで戦闘シーンはCGではなく、『実際の戦闘をアルテアさんの魔法で映像に落としたもの』だとわかった。
「さて、これからが本題になるんやけんど、瀬利亜はんがシードラゴンロボに乗って魔族領に出張っていく…いうんはいろいろと問題になる恐れがあるんや。
せやから、『勇者専用の巨大ロボ』…もとい、巨大ゴーレムを開発済みなんねんけんど、それに健人はんが搭乗して『魔族たちと交渉』に行くいうんはどうやろか?
ああ、巨大ゴーレムは勇者の安全のための『鎧替わり』いう筋書きや♪」
待て?!!!いろいろと突っ込みどころしかないんだけど?!!!
というか、いつの間に『勇者専用の巨大ロボ』の開発なんかしてたの?!!
そんなものに乗せられて、俺、大丈夫なの?!!
俺は心の中の声だけでなく、懸命にアピールしたが…フラムス王国の人達全員がいつの間にか乗り気にさせられていて、俺に拒否権はなくなっていた。
そして、『勇者の乗った巨大ゴーレム』の活躍により、フラムス王国と魔族たちの講和条約は割と簡単に結ばれたのでした。
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「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
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恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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