奥さまはモンスターバスター 時々 異世界召喚勇者

はなぶさ 源ちゃん

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さらに奥さまはモンバス姉さん編

87 良太と幼馴染 その3

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 賢一君と真悟君の話によると、二人と良太君が在籍していた学校のクラスが先生の居ない状態でそのまま異世界召喚されたようです。
 生徒会長で実質クラスリーダーの男子が『召喚したきれいな王女に目がくらみ(BY賢一君)』王国側の『魔王を倒して平和な世界を取り戻したいのです!』という懇願をあっさり受けてしまったのだという。

 さらに空手黒帯のヤンキーで、一部の生徒には人気のあった男子もそれに賛同したので、クラス内で反対できないような空気になってしまったのだそうです。
 真悟君は『野生の勘』で、賢一君は『王国側の不自然な空気』で真っ当な召喚ではないのではないかと感じているものの、今では二人以外は完全に王国に取り込まれてしまって、二人とも王国の動きへの疑問すら口に出せない状況なのだそうです。
 その状況で二人が危機感を覚えていた時にこうやって私たちがおまけで召喚されたのだそうです。

 この場所自体が微妙な空気をしてましたが、二人の部屋に来た近衛騎士や、彼らに連れられていった謁見の間で王室が『召喚した王女を含めて真っ黒』だと『正義の直観センサー』が判定します。
 特に上層部になるほど『黒い』ようです。
 アリス姫に召喚された時はアリス姫を含めて真っ当な人が半分くらいいましたが、今回は『黒比率』があの時よりも高いですね…。
 こちらサイドにも一人『黒いひと』が一人おられますが…。

 私たちの能力も宮廷魔術師が鑑定しましたが、望海ちゃんに隠ぺいしたもらって、良太君はそのまま、他の三人は『良太君の鑑定結果とほぼ同じ』で数字のみ隠ぺいさせてもらいました。
 結果、非常に微妙な反応をされましたが、警戒され過ぎるよりはましでしょう。

 なお、ニャントロさんのはめているお面は『呪われて外せないアイテム』という設定でごまかしています。

 「鑑定結果が微妙なので、模擬戦で実力を示してもらいたいのだが…一応正確な数字の出ている良太という少年から…。」
 「いえ、良太さんは戦闘向きではないので、私が模擬戦をさせていただきます。
 なお、良太君は別にして、私、ニャントロさん、瀬利亜さんの順に強くなりますので、参考にしてください。」
 望海ちゃんが涼しい顔で宣言する。
 確かに望海ちゃんなら手加減とかもうまくやってくれそうだ。

 「では、模擬戦の結果で魔王を倒す上での役割分担を…。」
 「いえいえ、こう見えても我々はプロです。
 魔王を倒した方がいいケース、『降伏させた方がいいケース』といろいろあります。
 それは臨機応変に判断させていただきますので。」
 望海ちゃんが全く表情を変えずに淡々と告げる。

 王様や王女は一瞬顔色を変えるが、下手なことをいうと『素が出てしまう』のだろう、なんとか叫ぶのをこらえたようだ。

 「勇者でもないのに大口をたたくな!無礼者!」
 望海ちゃんの言葉に激高したらしい、騎士の隊長らしい壮年の男性が前に身を乗り出す。

 「おお、あなたが模擬戦の相手をしていただけるのですね。
 騎士団のトップの方のようですが、『対モンスター戦のプロ』の実力を示した方がいいのでしょうか?」
 望海ちゃんが全く動じずに涼しい顔で返事を返す。

 ここで、騎士団長は気付いて、言葉につまります。自分が強烈な殺気を飛ばしたのに、一切動じずに涼しい顔で返したことで、望海ちゃんが思っていたよりもただものではないのだと。

 「だったら、俺が模擬戦の相手を務めてやるよ!」
 黒いオーラを纏った顔だけは整ったヤンキー系のお兄さんが名乗りを上げます。

 真悟さんたちの話に出てきた空手黒帯ヤンキー君です。

 「わかりました。よろしくお願いします。」
 望海ちゃんがヤンキーの黒いオーラを見たせいでしょう。
 一瞬嫌そうな顔になって、元通りの冷静な表情に戻ります。

 「そこでだ。単に模擬戦をやるだけではつまらなくないか?」
 「と、おっしゃいますと?」
 「俺が勝ったらあんたとデートするというのはどうだい?」

 ◎ 杵島 健 17歳 人間 男
レベル 31
HP 160 
MP  70 
(中略)
【魔法】格闘術(LV10)身体強化魔法(LV9)他
【称号】 異世界召喚勇者


 なるほど、レベルは先ほどの騎士隊長さんの方が高いのですが、『身体強化魔法』を使うことで格闘戦に限れば騎士隊長さんを上回りそうです。
 それでこんなに自信満々に言えるのですね。


 「…ええと、ダメとは言いませんが、私が勝ったら何かメリットはあるのですか…。
 そうだ!私が勝ったら『瀬利亜さんがデートしてくださる』ということで♪」
 「待った!!ちょっと待った!!なんで私に飛び火してくるわけ?!!」
 望海ちゃんが涼しい顔でとんでもない提案をしてくるので、当然私が突っ込みます。

 「こういう勝った方に『特典が付く』ケースで、私にとって特典が何があるかと一生懸命考えた結果、『馬に対する人参』のような特典で思いついたのが、これくらいしかないのですよ。」
 「…ええと、素敵な男性とのデートとか…。」
 私の返しに望海ちゃんがざっと周りを見回す。

 「どう見ても『瀬利亜さん以上にデートしたい相手』がいないじゃないですか♪
 瀬利亜さんから見て、私が『すてきに思えそうな人』がおられますか?」
 望海ちゃんの問いかけに私は一生懸命考える。

 「……ちょっとランクを落として良太君!!」
 「……まあ、良太さんとデートをするのは嫌とは言いませんが、『特典』にするにはちょっと弱いですね。
 …あとは…真悟さんと賢一さんが許容範囲内でしょうか。
 ということで、瀬利亜さん、デートをお願いします♪」
 嬉しそうに望海ちゃんがおねだりしてくる。

 …私が男なら即答しそうな素敵な笑顔なのですが、あいにく女性で、人妻なので、知恵を尽くしていろいろ考えます。

 「ほら、イケメンならここに何人かいるじゃない♪」
 「えええええ?!!!どの人もほぼ『俺様系』じゃないですか!!
 私、俺様系は苦手なんです。
 別に『完全プラトニックデート』で構いませんから、デートしましょうよ♪」
 うん、ラブな感じのホテル同行デートは光ちゃん以外は断固拒否ですから。
 ここは受けるしかなさそうです。

 「了解。近々時間を作りましょう。」
 「ふっふっふ、これでやる気が三倍になりましたよ♪」

 望海ちゃんがスキップしそうな感じで、闘技場に歩いていく。



 闘技場では二人とも格闘着を着たヤンキーくんと望海ちゃんが距離を置いて睨みあっている。
 といってもヤンキー君が一方的に闘志を燃やし、望海ちゃんは涼しい顔をしている。

 「安心しろ。この城にもクラスメートにもヒーラーがたくさんいるから、大怪我をしてもすぐに回復してくれる。明日にでもデートに連れて行ってやるから。」
 「ご安心ください。私もそれなりに回復魔法が使えますので、ちゃんと回復してあげますよ♪」
 ヤンキーの挑発に望海ちゃんが涼しい顔で挑発し返します。
 ヤンキー君はすぐに顔を真っ赤にしてキレてしまっています。
 全然役者が違い過ぎますね…。
 そもそもヤンキー君は望海ちゃんしか目に入っていないようですが、望海ちゃんは油断こそしてませんが、周りの様子を徹底的に調べつくす…くらいのつもりで神経を張り巡らせています。

 「それでは、開始!」
 騎士団長の言葉にヤンキー君は『身体強化』の呪文を唱え、すごいスピードで殴り掛かっていく。
 それに対して、望海ちゃんは一見、突っ立っているだけのように見えるのですが…。

 バチバチバチバチ!!!!
 弾けるような音がして、全身をけいれんさせたヤンキー君がぶっ倒れる。
 望海ちゃんの右手にはスタンガンが握られている。
 ヤンキー君が飛び込んでくる寸前に素早くスタンガンを取り出し、最低限の動きで、電撃をぶち当てたようです。
 電撃の強さも強さからず、弱からず適切に調整しています。
 さすがは望海ちゃんです。

 「気絶していますので、私の勝ちでいいですよね?」
 半ば呆然としていた騎士団長はこくこくとうなずく。
 「では、回復させますよ。」
 望海ちゃんが右手をヤンキー君に当てると、ヤンキー君の全身を淡い光が覆っていく。
 望海ちゃんはかなり強力な回復魔法も使えるので、万能に役に立ってくれるのだ。

 「じゃあ、これで私と瀬利亜さんのデートは確定ですね♪」
 とってもいい笑顔で望海ちゃんが私の方を見ながら言う。
 うん、望海ちゃんとデートすること自体は全く嫌ではないのですが、条件的になんというのか、『不条理を覚える』のですよ。

 「待て!」
 おや?回復したヤンキー君が立ち上がってきましたよ。

 「そんな姑息な手を使って俺との勝負に勝った気になっているのか?!
 正々堂々正面から来てみやがれ!!」
 怒り心頭といった感じでヤンキー君は望海ちゃんを睨みつけています。

 望海ちゃんはしばし呆れた表情でヤンキー君を見た後、口を開きます。
 「わかりました。では、『力技』でもう一勝負いきましょうか。」
 望海ちゃんとヤンキー君が再び向き合います。

 勝負開始の合図と同時にヤンキー君が呪文を唱えます。
 ヤンキー君の全身を赤い光がつつみ、ヤンキー君の筋肉が膨れ上がります。
 「はっはっは!!これぞ、身体強化魔法の奥義・『鋼人化』だ!!」

 ヤンキー君が望海ちゃんに突撃をかまそうとして、望海ちゃんの状態が目に入り、動きが凍りつきます。
 望海ちゃんがいつの間にかでっかいサブマシンガンを構えて氷のような視線でヤンキー君を見つめていたのです。

 「ファイアー!!」
 ドドドドド!!!と重低音と共に光る銃弾が断続的に銃身から吐き出され、ヤンキー君に次から次へと命中していきます。

 数秒後、ボロボロになったヤンキー君が後方に吹っ飛んでぶっ倒れます。
 倒れたヤンキー君は全身をぴくぴく言わせて痙攣しています。

 私とニャントロさん以外の全ての人が完全に凍り付いた中、望海ちゃんは懐から手りゅう弾を取り出すと、ピンを抜こうとします。

 「望海ちゃん!やりすぎです!!ストップしてください!!」
 良太君が慌てて、闘技スペースに駆け寄ります。

 「良太さん、まだ『意識がある』ようですから、きちんと決着をつけないといけないのですよ。
 この程度を喰らったくらいでは死にはしませんから。」
 望海ちゃんが良太君に淡々と告げます。
 望海ちゃんは普段はとても優しいのですが、戦闘になると『戦場を選ばない完璧な兵士パーフェクトソルジャー』の異名の通り、すごく『辛辣』なのです。

 「それでも、もう少し手加減というものを…。」
 「ふう…。良太さんは優しいですね…。仕方ありません。スタンガンにまけておきます。」
 望海ちゃんはヤンキー君に近寄ると、スタンガンを取り出して、右腕にさっと当てる。

 バチバチバチバチ!!と電撃の音と同時に、ヤンキー君が絶叫を上げ、完全に動かなくなりました。

 「騎士団長。こんどこそ、勝負ありでよろしいですね?」
 淡々と告げる望海ちゃんに騎士団長は壊れた張り子の人形のように首を盾にぶんぶんと振った。
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