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beginner's luckも実力の内?
秘策とヤカマシイ女
しおりを挟む今日も今日とてしぶしぶ生きている。
こちらに来てから早くも1週間が過ぎた。
色々な事がわかって。そして
『でズバリ言わせてもらうカナ?』
『うん』
『ヘタクソ』
わかってた。
『どこまで不器用なのカナ!?』
話は3日前にさかのぼる。
ーーーーーー幕間ーーーーーー
『客人待遇も今日で終わりカナ
いい加減働いてもらうカナ?』
『とは言うものの俺ら元の世界じゃしがない学生だよ?
自分で言うのもなんだけど、就学中だったから、
手に職なんてこれっぽっちもついてなんかないんだけど?』
『それは知ってるカナ!!』
『だったらどういう手段を使えば、働けるのさ?あるのは
この身とポケットの中の使えないケータイに財布だけだけど?』
『ミーちゃん達は異世界人ですっ!
それだけでこの世界の多くが羨むような能力の塊のなのカナ』
『とは言っても使い方がわからなければ、
宝の持ち腐れというかなんというか…』
『それは承知の上カナ。だからその為の魔法なのカナ』
『ニーナはヤクルトもいるしすでに使えるけども
俺はズブの素人もいいとこだぜ?』
『つべこべ言うことないカナ』
理不尽だ。どこの世界もこうなんだねー。
ウチはウチ他所は他所って言っても結局やってることの本質は
古今東西一緒らしい。
『はぁー』
『とりあえずこれを持ってくれるカナ?』
『なにこれ?ヒノキの棒?』
『まあ、似たようなものカナ』
『え?平気なのこれ』
『とりあえずこの前見せたスプレッド=ファイアの呪文は
覚えているカナ?』
『…俺を黒焦げにしたやつだろ?』ムスッ…
『あ、あれは喋らない約束でしょう?!!』
『口癖。外れてじゃん』
『くっ!…忘れてなければいいカナ』
まず、あんな恥ずかしいもの誰が見たって忘れられねーよ
なんとも言えず…うん、むず痒い!!
『ならまずは唱えてみるカナ』
『いきなり?大丈夫なのか?』
『もうすでに習熟度の上げたニーナさんが外で備えてますし、ヘーキカナ』
そんな理由であいつ朝から見なかったのか
『知らないぞ?どーなってもカナ子の監督不行き届きだからな』
『大丈夫カナ?こう見えても小さい頃からやっていれば
自然と失敗の方向性も対策も万全カナ』
ちょっぴり怖い。何より代償行為も決められないってのが尚更。
どこのブラックだよ本当。マジでなにを求められるのか
わからない契約書にいきなりサイン求められても困るだろ…
ニーナは代償として髪を捧げることになった。
といっても丸坊主ではなく。使うために髪を切って
捧げなければならないということだ。当の本人は散髪いらず
とかバカなこと言ってたけど、一応人体だぞ?
しかも一応女の子だろ?あのどチビが考えることは
時々イマイチわからん。
『さあ、早くするカナ』
まあ、代償は支払いをしなければ使えなくなるというものらしい。つまり使わなければ支払わなくても済むのだ。
やばかったら使わなきゃいいか。
カナ子がうるさいしさっさとやってしまおう。
『イメージを膨らませて、それに任せてあとは唱えながら
発生させる場所を意識すれば自然とできるカナ?』
カナじゃねーよ。そういやこれも代償行為何だっけ?
まあどーでもいいけど。
『わかった行くぞ?』
『やってみるカナ?』
何より好奇心もある。何て言ったって魔法だ!
男なら一度は夢見る現実味のない力の具現と言い換えてもいい。
とにかく怖い反面ワクワク感というか浮き足立つというか…
止まらなかった
『炎の神に願い奉る。我の怒りに形を与え、
眼前の形ある敵を討ち払わん!火炎砲撃系初級2の型』
『スプレッド=ファイア!』
いつもと違った感触があった。いや、ある。
指先はイメージ通りに力が通っているのに。
そこから先へ進まない。構わず力を凝縮する。まだ形を持たない。
『うまくいっているの…カナ?』
対策万全じゃなかったのかよ!?
説明書の裏についてくるトラブルシューティングじゃねーんだぞ!日本だったらあっという間に事案だ!!
民事から高裁まで持ってくまであるぞこのバカナ子!!!
頭の中で毒づいている間も力は集まり、
カナ子はあたふたするばかり。ついに耐えきれなくなり
俺はパニックになりかけた。
『なにやってんです!その状態で手なんか
振ったらどーなるかわかったもんじゃないカナ?!』
『…』
俺は集まりすぎて弾けそうなマナを抑え込むことに
必死で口が開けない。目が痛い。
きっと今俺はすごい形相をしているに違いない。
ジリジリとした痛みが一際大きくなった瞬間。放たれた。
酩酊感が一瞬あって指先にビー玉ほどの形が出来あがり
焦った俺は指を自分から遠ざけた。そして放ってしまった。
弾かれた玉は勢いがお手本よりとは段違いに
カナ子の長い髪をかすめて…
少し先の盛り上がった大地にぶつかり爆ぜた。
『カッ!!』
『ドゴオオオオ!!!』
地響きとともに揺れる視界。砂埃がはねてシャットアウトした。
視界が戻ると、少し前まで隆起していた大地にクレーターが
大口を開けて待っていた。
『なんで?カナ???』
いや、お前がわからなかったらどうしようもないんだよ!!
と脳内ツッコミを入れつつ、俺は頭を掻いた。
『なんで最初からディレイスペルなのカナ?!』
『なんだそれ?』
『ミーちゃんが昨日一人時間差とか言ってたアレだよ!
なんでなのカナ?!』
『えっ?あれ?』
そう、ディレイスペルとは俺も聞きかじった限りだが
マスターした魔法を改良する過程で生まれたもので、
発動臨界点を超えた術式を呪文の改変や、
触媒の利用で無理やり押し込め、濃縮することで火力を
通常時よりアップさせる。いわば抜け道なのである。
しかし負担も大きいばかりか下準備に手間取るし、
何より消費と時間が通常の倍近くかかるため実際に好んで
使うものは皆無だとか。
なんとも、社会に馴染めずズレて、
捻れた俺にピッタリのバカらしい結果だ。ぼっちは才能だ!
『今日は一回切り上げカナ!』
その後もやってみたものの結果は変わらずじまい。
3日かけて身についたのはあの焦燥感に対する
耐性というなんとも言い難い結果だ。
そして今に至る。
ーーーーーー幕間ーーーーーー
『だーかーらーなんでうまく撃てないのカナ?
難しく撃てるのに。』
『わかんねぇよ。しかもなぜか威力は上がる一方だし』
『なんで息抜きに教えた補助系は普通にかけられるのに…
どうして放出系になるとダメなのカナ……?』ゴニョゴニョ
カナ子はこの3日間つきっきりで教えてくれているが、
俺はこの有様。ついに対処法とやらも底を尽きて始末に
負えなくなってしまった。
『このまんまじゃ、ろくに仲間と組めないよな?
ゲームじゃないんだ。フレンドファイアキャンセルなんて
ありゃしないし。』
『今日のうちになんとかしなくちゃカナ?時間がないカナ。』
『明日はアレだもんなー』
あれというのはセレクションである。
戦闘能力を生かすなら冒険者というのは定番であるが
この世界にはライセンスが必要らしい。
なんでもこの世界は元いた世界より広くまだ人類未開の地も
多く残っている。多種多様な戦況で命を無駄にしないように、
そして、足手纏いにならないように毎年セレクションを
行うことである程度のランクを維持しているのだとか。
余談だが開拓の意味も兼ねて冒険者ではなく
先導者と呼ばれることが基準なんだとか。
当然明日を逃せば次のライセンス取得までは
1年以上かかることとなる。
『考え方を変えるカナ。よし原点回帰でひとまず、
体術で行こうカナ』
『体術って言ったって、武道なんて素人だぞ俺。』
『だったら、オーソドックスな剣カナ?』
『補助系は使えるのだから、
それに任せた戦法を取るしかないカナ』
おいおいまじかよテスト前日に範囲間違ったことに気づいた
感じだよ。絶望感しかないよまったく。
『セレクションは実益を兼ねて、
野良モンスターとの実践を組まれるのが慣例になっているカナ?』
『もちろん既にプロの方の監修のもとだけど、
もしもの時は自己責任ってことになるけどね』
はぁースパルタン。睡眠が全てのアンサーだと思ってないか?
本物はもっと小さい頃から兵役があったとかなかったとか?
全然だけど。そりゃ確かにかっこいいし、雄々しいし?
睡眠は好きだよ?あれ?話がおかしくなってきたな…
『…でも、どうするつもりだよ?カナ子は明らかに
剣術なんてできないだろ?しかも1日でどうにか
凌げるくらいってそれこそ逆立ちしたってできっこない。』
『任せて!この私に秘策あり…カナ!』
『だったら』
『普通にやったらそうなるカナ?』
『あー、もー!勿体振るなよ』
焦れったいな
『補助の練度を上げる。それしか方法はないカナ?幸い、
それなら大したものだしね。魔法の得意不得意は
その使用者の心の有り様によって決まるらしいカナ?』
『どういう意味だよ?俺が思いっきり脇役でサポート体質だからってことか?』
『そういうことじゃないんだけどなぁ、
単に珍しいってことカナ?』
『…勝手に言ってろ』
なんか言いくるめられてる気がする。
なんかダメだ!カナ子はいつもはバカみたいなくせして
こういう時は煙に巻いていく。
こういうのが悪女に育っていくんだろうな…
さっきの魔法当てておいたほうがよっぽど世界のためだった
…かもしれん。
『今とんでもなく悪い顔してカナ?』
…なんなんだよ!地味にこええし
ーーーーーー幕間ーーーーーー
そして翌日
『いいカナ?無闇矢鱈に前に出ない。先方の言うことを
しっかり聞いていれば誰だって合格する可能性はあるカナ』
『わかったわかった。耳タコだよ』
『ん』
本当かねぇ?なあニーナさんや?
あんた人の話聞き流すの得意だろ?
『またテキトーな返事してないカナ!そんなだとうまくいくわけないカナ?』
カナ子の怒声を背に俺たちは村一番の広場である
サルジャヌス広場に歩を進めるのだった。
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