Please. help me and lest me

カモ吉

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beginner's luckも実力の内?

新参とネブソク男

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宿から下る道をまっすぐ行くとぶつかる広めの街道。ヨツバ街道。
なんでもこの村は軍用路の脇に群集した商店の集まりで
それが長い歳月が経った結果、商売は伸びなかったが村として
栄えたそうだ。昔の名残なのかところどころ立ち入り禁止の場所や見張り塔、壁が残っていて、今ではちょっとした観光名所に
なっているらしい。

そんな由緒正しそうな道を異邦人が
連れ立って歩いていく。だったらどこから来たって?遠い遠い
日本だよっ!距離どころか次元すら超えてそうだけどなっ!

そんなくだらないことを考えながら歩いていると、
ニーナの姿が消えていることに気づいた。幸い、
こちらの人間と姿はほとんど一緒だし目立つことはないだろうが、誘拐なんてことも最悪はあり得ると俺は焦った。

『あのバカチビっ』

振り返ると意外なほどあっさり見つかった。

『…なにやってんだよ』

『もしかしたら昼をまたぐかもしれないから
軽食をば持って行こうかとおもったカナカナ?』

なんでそんな喋り方なんだよ…

『確かに一理あるけど、一言くらいかければいいだろ』

『忘れてたー』

はぁ。こいつこんなにアホっぽかったっけ?
向こうで暮らしていた時はもっと普通っぽかった気がしけど、
こいつもこいつなりに緊張してんのかな?

『そういえばヤクルトはどーしたん?
つれてきてーわけないよな?』

『ちゃんといる』

『ホラヨ。ヨンダカ?ミック』

びっくりすんなぁ。声をする方を見ると
ニーナの背負っているカバンに目が止まる。

『カバンの中にでも入れてんのか?』

『違うー』

ニーナはカバンの中持ち手についている缶バッチ風のブローチを
指差す。なんでも、妖精の中でもしっかりとした
意思をもっていて、話が通じてなおかつ、
ここまでの大きさのものはなかなか珍しく、
無駄な騒ぎに巻き込まれないように姿を変えているんだとか。
なるほどね。

俺たちは昼飯を買い先を急いだ。ニーナは果物。
俺は干し肉とパンを1つ。あとついでに飲み水も。
時代劇に出てきそうな竹の水筒?に入ったものだ。
これで何かあっても少しはしのげるだろう。

広場に着くと、中央の噴水に大きな剣の模様があしらわれた旗が
立てかけてあった。こちらの言葉は話はできても
読みはなかなか難儀でぎこちないながら読み上げると、
『もてる…全て、、つくし…自由…もとめ……』
あー、読めん!疲れる…

読み切ることを諦め、辺りを見渡すと、
すでに参加者の多くは集まっているようだ。
向こうには100人弱いる気がする。
その群衆から離れて10人強、雰囲気の違うグループもある。
あれがカナ子の言ってた先輩先導者だろうか?

近くまで寄って行くと、離れたグループの
リーダーと思しき男が歩いてきた。

『朝早くからよく集まった。今日は例年より参加者が多くて 先輩としては嬉しい限りだ。』

どうやら先輩であっていたらしい。にしても偉そうだな…
まあ、こういう場だし仕方ないのか?

『私は今回の事件における現場監督を任されている
バリィという。今年で先導者5年目だ。
自己紹介はここまでにして本題に入ろうと思う。』

『これから試験を始めたいが、あいにく参加者が多い。
よってチーム分けをして行おうと思う。

『事前に受け取った資料から、ある程度の役割はわかっている。
バランスのよくなるように配分を行ったので引率者の元
気を張って行動してくれ。』

『試験会場になるサルジャヌスの森は危険そうなものはいないが
様々な場合を想定して2グループ合同で移動してもらう。
片方が前衛に出ている時は片方が後衛へ、
引率者の言うことを聞いて、全てをつくしてほしい!!以上』

その後、グループ分けが行われて俺は1班。
ニーナは2班に分けられたこういうセレクションじみたことは
出来れば、知り合いがいた方がやりやすくてよかったんだが…

俺の班は6人っぽい。男も女もいるけど1人明らかに顔色の
悪い奴がいた。近くにいた黄味がかった白いローブを着た
女の子が心配そうに話しかけている。何か言っているようだが
聞き取れないし、聞き耳をたてるのもダルい。フラフラだ。
腰に剣を指しているから剣士なのか?そんなんじゃ壁役も
ろくに貼れないそうにないぞ?それなら俺の方が
よっぽどましなんじゃないだろうか

先導者たちの中にもパーティーが存在する。
一応ソロなんてものもあるにはあるらしいが初心者である俺たちには無謀だ。そしてオンラインゲームよろしく大きく前衛と後衛がある。

前衛は剣士や槍や斧などを使って敵を食い止めつつ各個撃破していくスタイル。

後衛は弓などのロングレンジ、魔法による範囲攻撃、補助などが主なスタイルである。

まさにRPG顔負けである。

1人こちらに走ってきている。若い女っぽい。背中には弓を背負っているから後衛か?なんて思っていると、跳んだ。

『なにやってんのよ!このウスラトンカチが!!』

とてもきれいなアーチを描いて決まった蹴りは目の前の
あの頼りなさげな男の後頭部にクリーンヒット。
車もしばらく空を走る予定もなさそうな
この世界で今男が1人飛んで行った…

ーーーーーー幕間ーーーーーー

『バッカじゃないの!!』

さっき走ってきた女の子は仕切りに肩を怒らせながら、
毒を吐いていた。その雰囲気にのまれ俺たちは全く口を挟めない。…先輩方。誰でもいいから止めてくれよ

しばらくしてやっと口撃が止んだ。
女の子はわざとらしく咳払いをして

『私は今日の引率のチャミルと申します。今日はよろしく
お願いします。気軽にチャム先輩で構いませんよ?』

いや…あんなん見てすぐそんな呼び方できるわけない
だろてかさっきの平気か?完全に入ってたぞ?

『そして』


『そっちで横になっているアホがもう1人の引率です。
ちなみに私は2班を担当しますっ』

へーそうですかー。……え?


ーーーーーー幕間ーーーーーー



『えっと、俺が1班を担当する……セイム・ライクチャイルドだ。チャミルが勝手に…オーケーするから。はぁ』

『一応ポディションは前衛の剣士…』

セイム先輩?はどんよりとした表情で頭の裏をかいている。

『そもそも俺が後輩持つなんておかしいんだよ。
先導者歴1年チョットの俺になにを求めてるんだよ…』

こいつも濃いなぁ、さっきの裏表女もすごかったけど、
こっちもこっちで色々吹っ切れてないか?主に精神面。
俺の心の警鐘が『ねぇ?そこのあんたやめときなって』って
鳴りっぱなしなんだけど。
Ringと音が聞こえたらそれが汝への合図なんだそうですよ?

つまりダメっぽい。

ーーーーーー幕間ーーーーーー

1班と2班は合同らしい。
すぐ近くではセイム先輩がこの世の終わりかのような顔で
地面を眺めていた。この人俺よりまずいかもしれない…

名簿によると、1班はメンバーは前衛が剣士が俺とセイム先輩、
ダガーのハルベール。後衛が弓のコルト。魔法攻撃担当がターニャ。補助がルイス。移動がてら挨拶ぐらいしとくか。名前間違ったら悪いし。

名簿から目を離し、足を進めようとすると正面から人にぶつかってしまった。とりあえず謝らなくちゃまずい。こんなとこで雰囲気を悪くしたくない。

『すみません前を見てませんでした。』

見てみるとセイム先輩だった。

『いや、こっちも悪かった。早速、後輩からカチコミに来られたかと思ったよ』

どんだけ後ろ向きなんだよこの人!こんなに俺より卑屈な奴がいたなんて。

『とりあえず、会場行こうか仕方ないし』

ーーーーーー幕間ーーーーーー

その後移動しだした俺たちだった。しかしどこの世界でも俺が
グループからあぶれるの変わらないらしい。
周りの人間は少しずつ打ち解けながら話に花を咲かせている。
どーしたもんかな
するとさっきの黄味がかったローブの女の子が話しかけてきた。

『あなたも一班ですよね?』

『あんた、さっきセイム先輩の近くにいた…』

『そーです。私はターニャと言います。名簿にある通り
魔法攻撃が得意です。よろしくお願いします。』

『ああ、俺は矢島光国って名前だ。名目上剣士ってことになるけどたいした腕じゃない。よろしく』

『そーなんですか、珍しい名前ですね?村の独特の訛りも少ないし、もしかして新しくこの村に来られた方ですか?』

『やっぱり珍しいか?そー、おれは新しく越してきたんだ』

異世界から…ね?

『呼びにくかったらテキトーに呼んでくれ』

『そんなことはないです。光国さんと呼びます。
私の得意な魔法は雷系です。詳しく言えば風系の亜種ですね。』

『ってことは空気で摩擦を起こして蓄電。
濃度とかで放つって感じなのか?』

『よくわかりましたね?実際には風単一で作るのは難しくて
その他の複合になるんですけど大方そんな感じです。
光国さんは魔法も使えるんですか?』

落ち着いた雰囲気の彼女の目が、
とても興味ありげにこっちを見ていた。
俺はとっさに目を背けながら

『いや、少しかじった程度で。カナ子、
あいや仲間に少し教えてもらっただけなんだ。
この前もうまくいかなくて的が絞れないんだ』

少し苦笑いしながら言った。

『そーなんですか?それだけ詳しく知っているなら
大丈夫そうな気がしますが?』

『そーもいかなくって。』

『光国さんは何系を習ったんですか?』

『火炎系だったかな?スプレッド=ファイア』

彼女は少し驚いた顔をしていった

『改訂版古典術式ですね?ご存知かもしれませんが
古典は術式は力強い反面改善点が多く見られる物で
それを現代風改善したものが改訂版になるんです。』

『へー初耳だ』

『ただ、やはり古典は古典癖が強いところは
改善しきないものが多いんです。スプレッド=ファイアも
その1つに入ります。』

『つまり、初心者向けではないと?』

『そういうことになります。』

あのバカナ子戻ったら文句言ってやる!

『でも話によると放てはしたんですよね?』

『全く使い物になりそうになかったけどな。
そいつの話じゃ、臨界点超えても押し込めているから
失敗するとか。ディレイスペルっぽくなってるとか。』

『はぁ、つまり撃てはするけど時間がかかって更に威力、
範囲が大雑把ってことですか?』

『そう。何回か試してみたんだけど毎回そうだった。
でもこう見えても補助系はまだ得意なんだぜ?』

『どーん』

後ろから突き飛ばされてつんのめった。一体なんだ?

『ほったらかしかー?』

『大丈夫ですか?光国さん?』

『ってかだれ?しかも光国さんって』

あのちっこいシルエットにこの突飛な行動。
そしてあの間延びした口調。案の定ニーナが立っていた

ーーーーーー幕間ーーーーーー

『お前そっちの班員とは話したの?』

『話した』

『なんて?』

『…』

『なんて?』

『…覚えてない』

『明らかな嘘だろ例えしてても会話の内容忘れてたら
意味ないだろ…』

『でも…光国さんも私が初めてじゃ?』

『アーニャっ』

『へー偉そうなこと言ってるクセに1人目なんだー光国さ・ん?』
 
『あーあれだ。話が合ってついな、本当は他のメンバーとも話す
予定だったんだ!本当はな?ほんとは…』

『私、そうだとも知らずに長々とごめんなさい
私のことは気にしなくていいので』

『あっ、え?そういうわけじゃ…』

アーニャわざとやってのか?
あんたはやっと会えた常識人だと思ったのに…

『ざまーあみろー』

『やかましい』

『で?』

『なんので?なわけ?』

『質問を質問でかえすなと言いたいところだけど、結局だれー?』

『ああ、アーニャだよウチの班だ。
お前と同じ風系の魔法使うらしいぞ』

『初めましてアーニャ・ルクシェリエンといいます』

『でこのチビでうるさいのが槙原紗理奈。ニーナでいい』

『勝手に決めないで。別にいいけどー』

『あなたがカナ子さん?』

『ああ、違うよー、カナ子は話すとカナカナうるさい、
私たちの…保護者かなー?』

『そうでしたか、てっきり』

『別に気にしていないよー』

『よかった。』

『で?』

『で?とは?』

『さっき自分で質問を質問でかえすなとか言ってなかったか?』

『言ってないギリギリのラインで踏みとどまった』えっへん

『腹立つなぁー』

『伸びるー戻んなくなるー』

『あははは…光国さんあんまりやっていたら可哀想ですよ?』

『はぁ』

『ターニャいい人。けどイタいもう話せない』

『話してんじゃねーか』

『もうっていったもんー』

『また話してる』

『お前は何しに来たんだよ…』


『別に』

ーーーーーー幕間ーーーーーー

そうこうしている間についてしまった。
ずっと話していて気づかなかったけどもう昼時らしい、
森の前の開けたところで食事をしてからになった。

『昼飯持ってきた意味なくなっちまったなぁ』

『備えあれば多少の憂いあれど役立つこともあり、略して備えあれば憂いありー昔の人はいいことを言ったものー』

『随分と大味なことわざだなおい。』

『お二人は同じところからいらしたんですか?』

『そうだよ』

『幼馴染でもあるー』

『そうだったんですか!どうりで仲が良いというか通じ合っているというか』

『仲はともかく通じ合ってなんかないよ
こいついっつもわけわかんねーし』

『それは光国がバカなだけ』

『言ってろ』

『ほらやっぱり通じ合ってるじゃないですか?』

『んなわけあるかーい』

ーーーーーー幕間ーーーーーー

『はあ、注目~。1班の人は集まってくれると非常に助かる。』

『これから1班、2班は行動を共にします。前衛の人はセイムの、後衛の人は私の指揮にしたがって動いてください。
よろしくお願いします』

『それと最後に言い忘れてましたが』










『いうことを気がずに行動したらは必ず、
死にますよ?そしてその場合は自己責任で。』

そう、無表情な顔で彼女は言い放った。
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