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beginner's luckも実力の内?
初戦とフシン者
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”いやー、ここまで読んでくれてありがとう。
おれも感謝感激雨あられってやつ?心底そう思うよ。
どこまでも救いようがない自伝だ。
久々の登場でなんか感無量だなぁ。頑張るは呪いなんて
言ったけどほんのちょっと好きになれそうかな?
いやほんとにちょっとだけね?
なんだかんだいっても強くなることと何かを守るなんて
いうのはいつの世も男の子の夢見るものの代表格だよねー?
このころのおれもそうだった。きゃーはずかしいー
強くなる意味や理由なんてどーでもよくって、ただ単に好奇心と
自分は頑張っているんだって自己肯定の混ぜ合わさった
ちゃんぽんみたいな感情を糧に
どーしようもないことに蓋をして生きてたんだ。
そろそろ飯の時間だ。今日はなんだろうなぁ!
壺の中ではそれがどれだけおおきく、
強大なものになっているかも知らずに。”
ーーーーーー幕間ーーーーーー
あーいい加減疲れた。手も足ももう棒だよ。
もーいいもうお腹いっぱい。比喩だけど。
お腹はすごい減ってるけど。
ってなわけでおれは今人生の中でこれ以上ないってくらい
猛烈に働いていた。
『ガキんっ』
『ガァアァアアア!!!』
『マズった!!!』
『射線開けろ!!!!』
『戦場の風よ!今この一時は優しきを忘れ。
幾重にも重なり、束なり、尖り、敵を穿て!』
『ゴッ』
『風魔の3 ブローウィング・ウェスト!!!』
『はぁはぁ…』
『そこぬかれんな!』
『ゲヒヒヒヒヒヒガァアア!!!』
『後ろが安心して撃てねぇだろ!!!』
『やばかったらこっちで下げる!ギリギリまで踏みとどまれ!!
テキトーやったら承知しねぇぞ!!』
『くっそが!ヤケクソだ』
『ああああああああああ!!!!!』
大量に湧いてくるゴブリンの群れの目の前で。
『おい!そこの矢島とかいったか?一回下がれ!!』
本人も事前にいっていたことだがセイム先輩は
敵の前だと人が変わったように頼もしくなる。
俺は大人しく下がって解けかけていた魔法をもう一度かけ直す
『その豪腕は地を砕き、天を衝く。これより我が両腕の前に
立ちはだかるものなし!全てを穿ち、捩じ伏せ、掴み取る!』
『エンチャント16m40s!
弥生の型。聖天バサラ!!』
『永久に全ての祖たる海に向き合いし偉大なる巌よ。
その静かなる意思をこの刹那我に貸し与えたまえ!!』
『エンチャント16m40s
其の三の構え。巌然牢』
あー恥ずかしい。ニーナとかいいよなこんな思いしなくても
ヤクルトが勝手にやってくれるんだもんな…俺も精霊欲しい…
『今、仇敵を前に我、圧倒せんと欲す。山々をかける
鹿のような、木々を飛び回る隼のような俊敏さを欲す』
『エンチャント16m40s
ワンダフル・アジリティ2nd stage』
『轟々と刹那に流れる大河の流れでさえ、
舞い散る桜の表情でさえ我が瞳は捉えて逃さない』
『エンチャント16m40s
colorless senser ver.4』
今唱えたのは上から攻撃、防御、スピード、体感速度である。
補助系は得意だけど、攻撃はあれだし、後は剣と気合で
どーにかするっきゃねー!!
『マジィなぁ、いくらなんでも多すぎるっ
おい!チャミル!ガキども連れて早く離脱しろ!!』
『無理言わないで!!後ろに弓持ってるやつも控えてるみたいで
弾くのに精一杯っ!今の後衛の子達に補助回してるから
それでなんとかして!!』
『チッ!きりがねぇ、頭取らなきゃ終わりそうにねぇな…』
群れの飛び出してきた1匹を狙う。
右手に持っているのは体に見合わない大きさの棍棒。
急所は避ければ最悪どこかに当たってもバフが効いている。
あざが残るくらいで済むだろう。チッ!こっちに気づいた!!
『せっ!』
飛び込むふりをして相手の攻撃を誘う。案の定乗ってきた。
『ブァ!!!』
声にならない声をあげて空の空間にジャンプフルスイング!!
本当に踏み込んでいたら肩口あたりにもろに入っていそうだった。
この隙を逃す手はない。
着地される前に動き出して着地した時と同時に切り込む!!
剣を両手に持ち直し、一気に踏み込む!
虚をつかれたゴブリンは体を起こそうとして、
振り下ろされた刃に交差法気味に襲われる。
魔法でドーピングされた速度の剣は不快な音を立てて
その四肢を切り裂いた。
『ミチャッ!ジャッ!!!』
『ギイイイィイイイイ!!!!!?』
そしてそれっきり動かなくなった。
話に聞いていた通りゴブリンには独特のプライドがあって、
自分より大きな武器を愛用し、大きければ大きいほど実力を
誇示できるらしい。それだけ大きければ重量も当然重くなり
一撃の隙が断然大きくなる。さらにゴブリンの小さな体が
追い打ちとなって明確な一撃を入れるためにはジャンプすることが前提になり、それによって隙がより大きくなるのだ。
…呼吸をひと息で整え次へ向かう。
体感速度が下がっているおかげか、周りがよく見れる。
『いける!』
『おい!随分いい働きしてるが動きがまだ雑だ!
ドーピングで強くなったって技はみにつかねぇ!
身の振り方をかんがえろ!!』
そんなんなんとかなんだろ。それより今は…!
2体に囲まれているハルベールが先だろ。横から割って入る。
入り際に片方を蹴り飛ばして無理やり形成逆転を狙った。
まさに2対0の試合がにわかに動き出すってか?
『助かった!おいおいスゲェな!!?』
『わかったから今のうち前のやつ叩っ斬るぞ!』
棍棒を柄で受けて弾き、腕を狙う。決まった!
『おらよっ!!!』
ジャンプして両手のダガーを胸に刺し込む。
ゴブリンはたまらずタタラを踏んでそこでもう一度力を加える。
ゴブリンの体に2本極太ストライプが刻まれ絶命した。
そしてすかさず距離を取る。完璧だ!思い通りにことが進んだ。
しかし考えがそのままだったのはここまでだった。
さっき蹴りとばしたゴブリンが仲間を呼んで
3匹になって襲いかかってきた。
まだ、ハルベールは気づいていないっ!一体目が跳んできた!!
『チッ!』
足に思いっきり力を入れて地面を蹴る。
渾身の当て身をジャンプしたゴブリンに食らわせた。
いくら小柄で軽いとはいえ、相手はモンスターだそれくらいで
倒せはしないが時間稼ぎにはなる。面をくらっている2匹目を
勢いのまま横薙ぎに切りつけ、一気に引き抜く!
浅くない傷を与えた!致命傷だろう。
最後のゴブリンは棍棒の大きさがさっきまでとは
桁違いに大きいやつだった。きっとボスなのだろう。
狼狽えず跳躍の体勢に入っている。避けきれない!
『クソッタレ!!』
『フウウウウーウウウ!!!!』
振り下ろされた棍棒になんとか刃が間に合ったしかし、
剣と棍棒では重量が違いすぎる。
勢いは殺したが重さで持ってかれる!!
『っ!!!!』
全身の力を使って不利な体勢を一気に立てなおし腕に向ける。
なんとか逸らし切ったがとっさに振るった時の衝撃で
左腕に力が入らない。利き手ではない右手では細かい動きは
できない!ならば
『いっけぇええええええええええ!!!』
地面に武器を落とされすくんでいるボスの首から
打ちおろすように刃を突き入れた
『ガァアァアアアアアア!!!!!』
まだ抗っている他のものよりかなりしぶとい!
1度柄を離しもう一度逆手に握りなおして体重をかける。
血走った奴と目があう。それは瞳の色形は違えど瞳に映った
今の俺と全く同じ目をしていた。それでも、
それでもつき立てる。必死に正しく断つように。
一際長い断末魔をあげて奴は死んだ。
ボスが死ぬと周りもそれに恐怖を感じたのか
散り散りに逃げ始めた。
なんとか命拾いをしたと思った
この日初めて俺は命を自らの意思で
自らの手で自らの目の前で取った。
ーーーーーー幕間ーーーーーー
『えっと、大丈夫?全員いる?俺の言うことなんか
聞きたくないかもしれないけど返事はして…』
みんな疲労コンパイラーなだけっすよ。先輩。
無事全員生き残って揃うことができた。
『ちょっと早いけどいい知らせよ?君たちは見事!さっきの
新人には明らかに手の余るような場面をくぐり抜けて見せた!
これは賞賛に値します!!』
『みんな、試験は合格よ。明日にでも村の集会所にいって
ライセンス発行してもらいなさい。』
わあっと声が広がる。
さっきまでの疲労ムードはどうしたんだよ…ったく。
『まずは帰るわよ。幸いけが人もいないみたいだし
暗くなる前に帰りましょう?』
とりあえず中伏にある開けたところまで出たところで
一度休憩となった帰りの道は記憶が曖昧であまり覚えていない。
するとニーナがやってきた。
『やっぱり…果物にすればよかったのに』
『いいんだよ…男は黙って肉なんだ…』
『声にいつもの威勢がないねー』
『やかましい』
『お二人ともお疲れ様でした。』
ターニャまでやってきた。なんだかんだ言って1番最初に
仲良くなったヤツだし悪い気はしない。
『おー…お疲れ』
『ターニャもね』
『ありがとうございます。それにしても特に光国さんは
獅子奮迅の活躍でしたね。
腕が大したことないなんて嘘じゃないですか。』
『いやいや実際大したことないんだよだからこんなザマなんだ。
あれは魔力のドーピングで剣の腕は実際素人同然。
あげたスペックで無理やり…』
『それでもすごいです。さっきハルベールさんが
光国は俺の命の恩人だーとかいってましたよ』
『あっそ、そーゆーことにしとけば?』
『そーゆーことにしたきますっ』
(…なんかすごい除け者感。)
(…お前さんも気づいたか)
(ハルベールさんだっけ?)
(いまはそっとしておこう?)
(……わかった)
『あ、そうだ昼飯にって持ってきたんだが干し肉いるか?
余っちゃってな』
『普通こういう時は果物とかじゃないんですか?』
『そりゃそうだが…男は黙って肉なんだよ』
『私は女ですけどね』
小学生みたいな屁理屈で2人して笑った。
なんてことないことなのにどうしてこんなに楽しく感じるかなぁ?
ーーーーーー幕間ーーーーーー
やっとの事でサルジャヌス広場に戻ってきたときには
もう双子の太陽は半分以上地平線に飲み込まれていた。
『本日の日程はこれにて完了だ諸君よく頑張った。
特に1と2班はアクシデントを乗り越えた実績がついたな。
これからが楽しみだ。今年は例を見ない豊作だった。
また集会所で会うこともあるだろうがその時は声をかけてくれ。
解散!』
またあの偉そうな口を聞いたが不思議とモヤモヤは
生まれなかった。たぶんそれ以上に疲れていたんだろう。
『じゃあ私はこっちですから』
『あっそ、またな』
『そっけないふりしてまたなだってー』
『うるさい。他意はねーよ』
『そうですか?じゃあまたなです』
『ターニャまで…ったく』
俺たちはターニャを見送って帰ろうとしていた。
『少し、話を聞いてもらえないかな?』
『セイム先輩?』
振り返るとそこには何故かセイム先輩が立っていた
『どーかしたんですか?早くしないと日、くれちゃいますよ?』
『そーだね手短に済まそう。
…オメェのそのやり方じゃこの先長くもたねぇ。
……しっかりと考えてね?俺なんかに言われても
発破にならないかもしれないけど…』
『先輩の言いたいことはわかりました。
けどそんなに怒られることですか?
今日だってなんとかなったじゃないでしょ?失礼します。』
『わかってないねぜんぜんわかってないよ』
ーーーーーー幕間ーーーーーー
帰り道は上り坂が続くせいもあってかとっても憂鬱だった。
重いモモをだるーくしながら登っていく。
ニーナは軽々と登っている以外と健脚なのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていて気づくとニーナが消えていた。
『あのチビ助。またなんか見つけて走ってったな
今朝といいなんといい…』
辺りを見渡した。しかし近くには見つからなかった。
どこでなにやってんだか…
『オイ!ミック!ミック!!』
『なんだよ?ヤクルトか?どこだ?』
ニーナのカバンを見つけた。中身が散乱していてとんでもない
『ヤベーンダヨ!今回ハ本気ダ』
『トリアエズ木ノ実ヲイソイデタドッテクレ!!』
ーーーーーー幕間ーーーーーー
ヤクルトの言った通り木の実が落ちていた。
ヤクルトが言うにはニーナはさらわれたらしい一瞬のことで
カバンを遠くに投げられ、口を押さえられて走り出したと。
おかしいだろなんでこんなに悪いことばかり続くんだ!?
『今、仇敵を前に我、圧倒せんと欲す。山々をかける鹿のような、木々を飛び回る隼のような俊敏さを欲す』
『エンチャント16m40s
ワンダフル・アジリティ2nd stage』
道なりに追っていくと、背中が見えた。
人1人背負っているだけあって動きは遅いらしい。
構わず追いかけ前へと出て道を塞ぐ
一瞬背中からそのままとも考えたがやめた
今の俺なら、正面切っていってもぶっとばせるはずだ!
『そいつに何の用だ!』
『君こそ何か用かな?僕は忙しいんだよ僕の研究に必要なんだよ
異世界人がね!!
もしかして、君も実験台になってくれるのかい?え!?』
『なにをごちゃごちゃ言ってんだこのアホ!!
いいからそいつを返せっていってるんだ!』
『そりゃ無理な相談だよ?君バカなの?』
だめだこいつ頭のネジが数本飛んだイカれだ容赦入らない!
『あー、もっと簡単に済むって話だったのに私としたことがあー最低!あー、もー、これだから予算を増やせといったんだあのバカだるまどーしてわからない!!あーあーあー』
『その豪腕は地を砕き、天を衝く。これより我が両腕の前に立ちはだかるものなし!全てを穿ち、捩じ伏せ、掴み取る!』
『エンチャント16m40s!
弥生の型。聖天バサラ!!』
『永久に全ての祖たる海に向き合いし偉大なる巌よ。その静かなる意思をこの刹那我に貸し与えたまえ!!』
『エンチャント16m40s
其の三の構え。巌然牢』
『轟々と刹那に流れる大河の流れでさえ、舞い散る桜の表情でさえ我が瞳は捉えて逃さない』
『エンチャント16m40s
colorless senser ver.4』
フルエンチャント。今できる最大限のバフをかける
『ははぁ?君ってば魔法とか使えちゃうの??
そういえば古代の伝承にもあったなー眉唾だと思ってたけど
重要文献も混ざってたか…
これまで逃した時間を考えると最低だぁ』
『でもこれでこそ調べ甲斐があるってもんだよ』
気持ち悪い。ニコニコした顔しやがって
さっきまでぐったりしていたニーナの顔がこっちをむく。
何か言いたげだが聞き取るまで及ばない
『あー君もいいね?しかも、短絡的に攻撃魔法を放たず
補助魔法で様子を見る姿勢も慎重で実にいい』
実際は撃てないんだけどな
『ごちゃごちゃいってねぇでさっさと返せっていってんだろ
このサイコなおにいさんよお!!!』
一気に距離を詰めてやる
『イライラしちゃだめだよ~、あー、減点
イライラしてると最低な選択肢しか取れないよ?』
奴はポケットに左手を突っ込むとポケットに穴を開けた。
そこから液体が零れ出す。
液体は姿をかえ、黒い人型になった。だが、遅い!
これが俺がこの後悩むことになる間違い。
『ほーら、こんな風に』
『ねーーーーー?』
何もなかった右からの攻撃をドーピングした両目の端で捉える。
奴の脇腹のあたりから服を突き破って見える影は真っ直ぐ
俺の脇を狙って伸びてくる
下ろしていた剣を思い切り上にあげる。
急激な動きに腕が悲鳴をあげる。かまってはいられない
『っ!!!』
目一杯の力を込め振り抜く!!
『間に合うはずが?!』
『ガジャンッ!!!!』
影に見えたのは昆虫のような脚。一瞬の攻防。
軍配は俺に上がった。
next
おれも感謝感激雨あられってやつ?心底そう思うよ。
どこまでも救いようがない自伝だ。
久々の登場でなんか感無量だなぁ。頑張るは呪いなんて
言ったけどほんのちょっと好きになれそうかな?
いやほんとにちょっとだけね?
なんだかんだいっても強くなることと何かを守るなんて
いうのはいつの世も男の子の夢見るものの代表格だよねー?
このころのおれもそうだった。きゃーはずかしいー
強くなる意味や理由なんてどーでもよくって、ただ単に好奇心と
自分は頑張っているんだって自己肯定の混ぜ合わさった
ちゃんぽんみたいな感情を糧に
どーしようもないことに蓋をして生きてたんだ。
そろそろ飯の時間だ。今日はなんだろうなぁ!
壺の中ではそれがどれだけおおきく、
強大なものになっているかも知らずに。”
ーーーーーー幕間ーーーーーー
あーいい加減疲れた。手も足ももう棒だよ。
もーいいもうお腹いっぱい。比喩だけど。
お腹はすごい減ってるけど。
ってなわけでおれは今人生の中でこれ以上ないってくらい
猛烈に働いていた。
『ガキんっ』
『ガァアァアアア!!!』
『マズった!!!』
『射線開けろ!!!!』
『戦場の風よ!今この一時は優しきを忘れ。
幾重にも重なり、束なり、尖り、敵を穿て!』
『ゴッ』
『風魔の3 ブローウィング・ウェスト!!!』
『はぁはぁ…』
『そこぬかれんな!』
『ゲヒヒヒヒヒヒガァアア!!!』
『後ろが安心して撃てねぇだろ!!!』
『やばかったらこっちで下げる!ギリギリまで踏みとどまれ!!
テキトーやったら承知しねぇぞ!!』
『くっそが!ヤケクソだ』
『ああああああああああ!!!!!』
大量に湧いてくるゴブリンの群れの目の前で。
『おい!そこの矢島とかいったか?一回下がれ!!』
本人も事前にいっていたことだがセイム先輩は
敵の前だと人が変わったように頼もしくなる。
俺は大人しく下がって解けかけていた魔法をもう一度かけ直す
『その豪腕は地を砕き、天を衝く。これより我が両腕の前に
立ちはだかるものなし!全てを穿ち、捩じ伏せ、掴み取る!』
『エンチャント16m40s!
弥生の型。聖天バサラ!!』
『永久に全ての祖たる海に向き合いし偉大なる巌よ。
その静かなる意思をこの刹那我に貸し与えたまえ!!』
『エンチャント16m40s
其の三の構え。巌然牢』
あー恥ずかしい。ニーナとかいいよなこんな思いしなくても
ヤクルトが勝手にやってくれるんだもんな…俺も精霊欲しい…
『今、仇敵を前に我、圧倒せんと欲す。山々をかける
鹿のような、木々を飛び回る隼のような俊敏さを欲す』
『エンチャント16m40s
ワンダフル・アジリティ2nd stage』
『轟々と刹那に流れる大河の流れでさえ、
舞い散る桜の表情でさえ我が瞳は捉えて逃さない』
『エンチャント16m40s
colorless senser ver.4』
今唱えたのは上から攻撃、防御、スピード、体感速度である。
補助系は得意だけど、攻撃はあれだし、後は剣と気合で
どーにかするっきゃねー!!
『マジィなぁ、いくらなんでも多すぎるっ
おい!チャミル!ガキども連れて早く離脱しろ!!』
『無理言わないで!!後ろに弓持ってるやつも控えてるみたいで
弾くのに精一杯っ!今の後衛の子達に補助回してるから
それでなんとかして!!』
『チッ!きりがねぇ、頭取らなきゃ終わりそうにねぇな…』
群れの飛び出してきた1匹を狙う。
右手に持っているのは体に見合わない大きさの棍棒。
急所は避ければ最悪どこかに当たってもバフが効いている。
あざが残るくらいで済むだろう。チッ!こっちに気づいた!!
『せっ!』
飛び込むふりをして相手の攻撃を誘う。案の定乗ってきた。
『ブァ!!!』
声にならない声をあげて空の空間にジャンプフルスイング!!
本当に踏み込んでいたら肩口あたりにもろに入っていそうだった。
この隙を逃す手はない。
着地される前に動き出して着地した時と同時に切り込む!!
剣を両手に持ち直し、一気に踏み込む!
虚をつかれたゴブリンは体を起こそうとして、
振り下ろされた刃に交差法気味に襲われる。
魔法でドーピングされた速度の剣は不快な音を立てて
その四肢を切り裂いた。
『ミチャッ!ジャッ!!!』
『ギイイイィイイイイ!!!!!?』
そしてそれっきり動かなくなった。
話に聞いていた通りゴブリンには独特のプライドがあって、
自分より大きな武器を愛用し、大きければ大きいほど実力を
誇示できるらしい。それだけ大きければ重量も当然重くなり
一撃の隙が断然大きくなる。さらにゴブリンの小さな体が
追い打ちとなって明確な一撃を入れるためにはジャンプすることが前提になり、それによって隙がより大きくなるのだ。
…呼吸をひと息で整え次へ向かう。
体感速度が下がっているおかげか、周りがよく見れる。
『いける!』
『おい!随分いい働きしてるが動きがまだ雑だ!
ドーピングで強くなったって技はみにつかねぇ!
身の振り方をかんがえろ!!』
そんなんなんとかなんだろ。それより今は…!
2体に囲まれているハルベールが先だろ。横から割って入る。
入り際に片方を蹴り飛ばして無理やり形成逆転を狙った。
まさに2対0の試合がにわかに動き出すってか?
『助かった!おいおいスゲェな!!?』
『わかったから今のうち前のやつ叩っ斬るぞ!』
棍棒を柄で受けて弾き、腕を狙う。決まった!
『おらよっ!!!』
ジャンプして両手のダガーを胸に刺し込む。
ゴブリンはたまらずタタラを踏んでそこでもう一度力を加える。
ゴブリンの体に2本極太ストライプが刻まれ絶命した。
そしてすかさず距離を取る。完璧だ!思い通りにことが進んだ。
しかし考えがそのままだったのはここまでだった。
さっき蹴りとばしたゴブリンが仲間を呼んで
3匹になって襲いかかってきた。
まだ、ハルベールは気づいていないっ!一体目が跳んできた!!
『チッ!』
足に思いっきり力を入れて地面を蹴る。
渾身の当て身をジャンプしたゴブリンに食らわせた。
いくら小柄で軽いとはいえ、相手はモンスターだそれくらいで
倒せはしないが時間稼ぎにはなる。面をくらっている2匹目を
勢いのまま横薙ぎに切りつけ、一気に引き抜く!
浅くない傷を与えた!致命傷だろう。
最後のゴブリンは棍棒の大きさがさっきまでとは
桁違いに大きいやつだった。きっとボスなのだろう。
狼狽えず跳躍の体勢に入っている。避けきれない!
『クソッタレ!!』
『フウウウウーウウウ!!!!』
振り下ろされた棍棒になんとか刃が間に合ったしかし、
剣と棍棒では重量が違いすぎる。
勢いは殺したが重さで持ってかれる!!
『っ!!!!』
全身の力を使って不利な体勢を一気に立てなおし腕に向ける。
なんとか逸らし切ったがとっさに振るった時の衝撃で
左腕に力が入らない。利き手ではない右手では細かい動きは
できない!ならば
『いっけぇええええええええええ!!!』
地面に武器を落とされすくんでいるボスの首から
打ちおろすように刃を突き入れた
『ガァアァアアアアアア!!!!!』
まだ抗っている他のものよりかなりしぶとい!
1度柄を離しもう一度逆手に握りなおして体重をかける。
血走った奴と目があう。それは瞳の色形は違えど瞳に映った
今の俺と全く同じ目をしていた。それでも、
それでもつき立てる。必死に正しく断つように。
一際長い断末魔をあげて奴は死んだ。
ボスが死ぬと周りもそれに恐怖を感じたのか
散り散りに逃げ始めた。
なんとか命拾いをしたと思った
この日初めて俺は命を自らの意思で
自らの手で自らの目の前で取った。
ーーーーーー幕間ーーーーーー
『えっと、大丈夫?全員いる?俺の言うことなんか
聞きたくないかもしれないけど返事はして…』
みんな疲労コンパイラーなだけっすよ。先輩。
無事全員生き残って揃うことができた。
『ちょっと早いけどいい知らせよ?君たちは見事!さっきの
新人には明らかに手の余るような場面をくぐり抜けて見せた!
これは賞賛に値します!!』
『みんな、試験は合格よ。明日にでも村の集会所にいって
ライセンス発行してもらいなさい。』
わあっと声が広がる。
さっきまでの疲労ムードはどうしたんだよ…ったく。
『まずは帰るわよ。幸いけが人もいないみたいだし
暗くなる前に帰りましょう?』
とりあえず中伏にある開けたところまで出たところで
一度休憩となった帰りの道は記憶が曖昧であまり覚えていない。
するとニーナがやってきた。
『やっぱり…果物にすればよかったのに』
『いいんだよ…男は黙って肉なんだ…』
『声にいつもの威勢がないねー』
『やかましい』
『お二人ともお疲れ様でした。』
ターニャまでやってきた。なんだかんだ言って1番最初に
仲良くなったヤツだし悪い気はしない。
『おー…お疲れ』
『ターニャもね』
『ありがとうございます。それにしても特に光国さんは
獅子奮迅の活躍でしたね。
腕が大したことないなんて嘘じゃないですか。』
『いやいや実際大したことないんだよだからこんなザマなんだ。
あれは魔力のドーピングで剣の腕は実際素人同然。
あげたスペックで無理やり…』
『それでもすごいです。さっきハルベールさんが
光国は俺の命の恩人だーとかいってましたよ』
『あっそ、そーゆーことにしとけば?』
『そーゆーことにしたきますっ』
(…なんかすごい除け者感。)
(…お前さんも気づいたか)
(ハルベールさんだっけ?)
(いまはそっとしておこう?)
(……わかった)
『あ、そうだ昼飯にって持ってきたんだが干し肉いるか?
余っちゃってな』
『普通こういう時は果物とかじゃないんですか?』
『そりゃそうだが…男は黙って肉なんだよ』
『私は女ですけどね』
小学生みたいな屁理屈で2人して笑った。
なんてことないことなのにどうしてこんなに楽しく感じるかなぁ?
ーーーーーー幕間ーーーーーー
やっとの事でサルジャヌス広場に戻ってきたときには
もう双子の太陽は半分以上地平線に飲み込まれていた。
『本日の日程はこれにて完了だ諸君よく頑張った。
特に1と2班はアクシデントを乗り越えた実績がついたな。
これからが楽しみだ。今年は例を見ない豊作だった。
また集会所で会うこともあるだろうがその時は声をかけてくれ。
解散!』
またあの偉そうな口を聞いたが不思議とモヤモヤは
生まれなかった。たぶんそれ以上に疲れていたんだろう。
『じゃあ私はこっちですから』
『あっそ、またな』
『そっけないふりしてまたなだってー』
『うるさい。他意はねーよ』
『そうですか?じゃあまたなです』
『ターニャまで…ったく』
俺たちはターニャを見送って帰ろうとしていた。
『少し、話を聞いてもらえないかな?』
『セイム先輩?』
振り返るとそこには何故かセイム先輩が立っていた
『どーかしたんですか?早くしないと日、くれちゃいますよ?』
『そーだね手短に済まそう。
…オメェのそのやり方じゃこの先長くもたねぇ。
……しっかりと考えてね?俺なんかに言われても
発破にならないかもしれないけど…』
『先輩の言いたいことはわかりました。
けどそんなに怒られることですか?
今日だってなんとかなったじゃないでしょ?失礼します。』
『わかってないねぜんぜんわかってないよ』
ーーーーーー幕間ーーーーーー
帰り道は上り坂が続くせいもあってかとっても憂鬱だった。
重いモモをだるーくしながら登っていく。
ニーナは軽々と登っている以外と健脚なのかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていて気づくとニーナが消えていた。
『あのチビ助。またなんか見つけて走ってったな
今朝といいなんといい…』
辺りを見渡した。しかし近くには見つからなかった。
どこでなにやってんだか…
『オイ!ミック!ミック!!』
『なんだよ?ヤクルトか?どこだ?』
ニーナのカバンを見つけた。中身が散乱していてとんでもない
『ヤベーンダヨ!今回ハ本気ダ』
『トリアエズ木ノ実ヲイソイデタドッテクレ!!』
ーーーーーー幕間ーーーーーー
ヤクルトの言った通り木の実が落ちていた。
ヤクルトが言うにはニーナはさらわれたらしい一瞬のことで
カバンを遠くに投げられ、口を押さえられて走り出したと。
おかしいだろなんでこんなに悪いことばかり続くんだ!?
『今、仇敵を前に我、圧倒せんと欲す。山々をかける鹿のような、木々を飛び回る隼のような俊敏さを欲す』
『エンチャント16m40s
ワンダフル・アジリティ2nd stage』
道なりに追っていくと、背中が見えた。
人1人背負っているだけあって動きは遅いらしい。
構わず追いかけ前へと出て道を塞ぐ
一瞬背中からそのままとも考えたがやめた
今の俺なら、正面切っていってもぶっとばせるはずだ!
『そいつに何の用だ!』
『君こそ何か用かな?僕は忙しいんだよ僕の研究に必要なんだよ
異世界人がね!!
もしかして、君も実験台になってくれるのかい?え!?』
『なにをごちゃごちゃ言ってんだこのアホ!!
いいからそいつを返せっていってるんだ!』
『そりゃ無理な相談だよ?君バカなの?』
だめだこいつ頭のネジが数本飛んだイカれだ容赦入らない!
『あー、もっと簡単に済むって話だったのに私としたことがあー最低!あー、もー、これだから予算を増やせといったんだあのバカだるまどーしてわからない!!あーあーあー』
『その豪腕は地を砕き、天を衝く。これより我が両腕の前に立ちはだかるものなし!全てを穿ち、捩じ伏せ、掴み取る!』
『エンチャント16m40s!
弥生の型。聖天バサラ!!』
『永久に全ての祖たる海に向き合いし偉大なる巌よ。その静かなる意思をこの刹那我に貸し与えたまえ!!』
『エンチャント16m40s
其の三の構え。巌然牢』
『轟々と刹那に流れる大河の流れでさえ、舞い散る桜の表情でさえ我が瞳は捉えて逃さない』
『エンチャント16m40s
colorless senser ver.4』
フルエンチャント。今できる最大限のバフをかける
『ははぁ?君ってば魔法とか使えちゃうの??
そういえば古代の伝承にもあったなー眉唾だと思ってたけど
重要文献も混ざってたか…
これまで逃した時間を考えると最低だぁ』
『でもこれでこそ調べ甲斐があるってもんだよ』
気持ち悪い。ニコニコした顔しやがって
さっきまでぐったりしていたニーナの顔がこっちをむく。
何か言いたげだが聞き取るまで及ばない
『あー君もいいね?しかも、短絡的に攻撃魔法を放たず
補助魔法で様子を見る姿勢も慎重で実にいい』
実際は撃てないんだけどな
『ごちゃごちゃいってねぇでさっさと返せっていってんだろ
このサイコなおにいさんよお!!!』
一気に距離を詰めてやる
『イライラしちゃだめだよ~、あー、減点
イライラしてると最低な選択肢しか取れないよ?』
奴はポケットに左手を突っ込むとポケットに穴を開けた。
そこから液体が零れ出す。
液体は姿をかえ、黒い人型になった。だが、遅い!
これが俺がこの後悩むことになる間違い。
『ほーら、こんな風に』
『ねーーーーー?』
何もなかった右からの攻撃をドーピングした両目の端で捉える。
奴の脇腹のあたりから服を突き破って見える影は真っ直ぐ
俺の脇を狙って伸びてくる
下ろしていた剣を思い切り上にあげる。
急激な動きに腕が悲鳴をあげる。かまってはいられない
『っ!!!』
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