KAKERU 世界を震撼させろ

福澤賢二郎

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駆の章

散歩

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《空山隆之介》
試合翌日の朝。
俺はグランドを里帆と一緒に歩いていた。
里帆は専属通訳として俺のそばにいる。駆の父親が里帆に俺の事を頼んだ為だ。

「隆之介、昨日は凄かったね。駆くんも喜んでいると思う」

「俺さ、試合の中で駆に会ったんだ。会話もした。おかしいだろ?」

「ううん、私も駆くんを感じた。隆之介の中に駆くんを見る」

「俺、試合に出たいんだ。駆に会えるから」

「うん。でも、辛いな」

「えっ」

「ううん、何でもない。さあ、歩こう」

里帆の笑顔だったが、少し無理している様に見える。
きっと、駆を思い出すのだろうな。

《桐谷里帆》
隣で隆之介が歩いている。
駆の事を笑顔で語る隆之介を見ると胸がドキドキすると同時に駆くんに対する後ろめたさを感じてしまう。
上手く笑えない。
顔を見られたくなくて、一歩前に出て歩きだした。
どうして。気持ちが揺れ動いているよ。

《宇垣悠里》
宇垣悠里はディレクターの山田太郎と日本の練習地に来ていた。
もちろん、監督の西島秀人には許可はとってある。
悠里は山田の前を走る。
「山田さん、速く。少しでも時間が欲しいんだから」
「な、何を、俺がお願いしてアポとったんだ。少しは感謝しろ」
「感謝しるとるばい」
「方言が出てるぞ」
「あ、いけん」
グランドを見る空山隆之介と若い女がグランドを歩いていた。
「彼女かな?」
「ショックか?」
山田がニヤニヤしている。
「しゃーしいばい」

宇垣悠里はグランドに入り、二人に挨拶をした。
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