KAKERU 世界を震撼させろ

駆の章

アルゼンチン戦 決着

《空山隆之介》
キックオフと同時にメッシーはボールを後ろに預けて日本陣地へゆっくりと入ってくる。左サイドにはデメルが流れてきてポジショニングをした。
デメルにボールを持たせてはいけないと感じた。
デメルがホストプレーを行うと、メッシーの自由度が上がる。そうなったメッシーは手がつけられない。
そう、アルゼンチンに勝つにはデメルに自陣でボールを持たさない事だ。
俺はわざとデメルと距離を取り、ボールが出る瞬間に最高速度になるぐらいでパスラインに入り込んでカットした。
デメルが吠えて俺に向かって来る。
俺は中央で待っている城戸に速くて低いパスを供給した。
城戸は柔らかくトラップして前を向いた。
「ひゃひゃひゃひゃー、空山、ナイスパスじゃぁ、さあ、上がれ」
俺も引っ張られる様にアルゼンチン陣地へ上がった。
柴咲からパスが来る。
三人ぐらいが直ぐに俺に詰めてきた。
きっと、ロングシュートを警戒しているためだ。その分、前線のマークが少ない。俺は中央に走り込んできたミッドフィルダーの本田にボールを出した。本田は敵を引き付けながら、スルー。
そのボールはさらに背後から詰めてきていた遠藤が蹴り込み、キーパーの右を抜けてゴールネットを揺らした。　
これでアルゼンチンに対して二点リード。
会場は歓声とブーイングの嵐。

デメル.アスエラが怒り、地面を蹴っている姿を見た。
これで日本は守りの体制となる。
残り二十分。
日本陣地は乱戦状態で人が入り乱れてのボールの取り合いだ。
この中で俺は徹底的にデメルをマークした。
デメルが吠える。
「てめぇはどこから飛んできやがる」
我慢出来ずにデメルは俺から離れてマークを外して中央辺りでボールをもらった。
「さすがに、ここまでは取りにこねぇよな」
「そこなら無害だし」
デメルはニヤリと笑い、ドリブルしてきた。だけど、遠藤や柴咲がデメルに寄せようとした。
その時、柔らかいループボールを放ち遠藤たちの頭上を越えて俺の方にボールが飛んで来る。
俺はそのボールをヘディングする為にジャンプしようとした時、デメルがジャンプして突っ込んで来た。
「バイバイ、ソラヤマ」
デメルはジャンプした俺の側頭部へヘディングしてきた。
思いもしない方向からの衝撃がダメージを与える。
目の前が真っ暗だ。