異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING

文字の大きさ
54 / 65
第2章

第53話:合格発表

しおりを挟む
 入学試験の合格発表当日。
 俺とゼノアは学院へと結果を見ていた。貼り出された合格者名簿を下から上へと確認していく。貼り出しに関しては一般人と貴族は一緒である。
 この学院のクラスは上から順にSクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラスと別れていた。

「ん~と……名前はどこだ?」
「見当たらないのじゃ」

 そう呟きながら確認をしていると。

「そこを退け貴様!」

 ん? 何か聞こえたけど俺ではないだろ。

「そこを退けと言っている! 聞こえないのか!」

 再び傲慢そうな声が聞こえた。
 五月蠅いやつだな、と思いながら後ろを振り向いた。
 すると、そこにはそれなりの身なりをした青年がおり、俺を凝視していた。
 恐らく貴族だろう。
「そこを退けと言っている!」

 そう言って俺を指さす青年。
 周囲を見渡すと、周りにいた人達は俺とゼノア、青年から離れて見ている。

「……もしかして俺か?」

 自分を指差し青年に尋ねた。

「当たり前だ! 貴様私を知らないのか?!」
「ん? 誰だよ。今自分の名前が無いか探してんの。話なら後で聞くぞ?」
「貴様っ! 平民の分際で! 私の父はルーミド伯爵だぞ!」
「うん。それで? 伯爵はお前のお父さんなんだろ?」
「じゃのう」

 ゼノアも頷いている。
 そこでようやくゼノアに気づいたのだろう。青年はゼノアを見た。

「貴様のような子供がここで何をしている。さっさと去れ」
「何を言っとるのじゃ? 妾も試験を受けたのじゃ。何か飛び級とか言われたのう」
「なっ!? 平民の分際で何が――」
「あっ、アキトさんにゼノアさん!」

 青年貴族の声は、後から聞こえた声によって遮られた。俺達はその声が聞こえた聞こえた方を見と、そこにいたのは――

「クレアか」
「クレアじゃのう」

 クレアであった。後ろには顔見知りの騎士さんがいた。
 青年貴族はクレアを呼び捨てにした俺をキッと睨んだ。

「貴様! 姫殿下のことを呼び捨てにして!」

 周囲の人達も俺とゼノアに戦慄の眼差しを向けた。
 そんな周囲の反応も気しないクレアは青年貴族に声をかけた。

「あなたはルーミド伯爵の――」
「はい。息子のジェインです」
「お久しぶりですね。幼少期のパーティー以来ですね」
「お久しぶりでございます姫殿下。そうです。それで、この者の無礼な発言に関しましては……」

 それでようやくこちらを見た青年貴族とクレア。俺を見たクレアは口を開いた。

「アキトさんとゼノアさんは知り合いですから。ね?」
「ああ、そうだな」
「じゃのう」

 その発言に青年貴族は驚愕していた。それは周囲の人達も同じであった。
 一国の王女と友達なのだから。

「アキトさんにゼノアさん、結果は?」
「それが見当たらなくてな」
「今Aクラスまで見たのにないのじゃ」
「クレアはもう見たのか?」
「いえ、これからです。でも、Aクラスに無いとなると……」

 ジェインが俺のことを指差し口を開いた。
 その顔は喜色に染まっていた。

「貴様は落ちたのだ!」
「そんなことありませんよ。アキトさんとゼノアさんは私よりも頭が良いですからね」
「……え?」

 クレアはジェインを一瞥し結果を確認する。

「アキトさんありましたよ。私達三人ともSクラスみたいですよ。主席は――」

 俺も上から確認し見つけた。一位主席――アキト、二位次席ゼノア、三位にクレアだった。

「あんな問題で主席取れるのか……」
「じゃのう」
「あの、お二人の理解能力が可笑しいですよ?」

 そんな俺達の会話に、ジェインは固まっていた。

「お、お前がしゅ、主席だと……ありえん! ありえんありえんありえん! 絶対何か仕組んで――」
「ジェインさん?」

 クレアに名前を呼ばれたジェイン。

「な、なんでしょうか?」
「この学院では皆、平等ですよ? 貴族だからとかは関係ありません。皆様も忘れなきようお願いします。アキトさんとゼノアさんも確認もしましたし事務所で手続きを済ませません?」
「そうだな」
「家が一番落ち着くしのう」

 それから事務所で説明を受けて制服を受け取った俺達。
 因みにジェインはAクラスだったみたいだ。まあ、どうでもいい情報ではあるが。
 俺はクレアが乗ってきた馬車に同席させてもらった。このままフィリップさんにも報告するためだ。

 馬車で移動の最中、俺はクレアに尋ねた。

「学院で、貴族だから、王族だからっていうのは禁止なんだな?」
「はい。国王であるお父様が定めたものです。学院では全ての者が平等である、と」
「なるほどな~。それは正しい判断かもな」
「私もそう思います」
 
 それから王城に着いたのだが。俺が主席と言うことを聞いたフィリップさんは、「祝辞が楽しみだ」と言って笑っていたのだった。
しおりを挟む
感想 148

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処理中です...