偽聖女の濡れ衣を着せられて追放だそうですが、本当にいいんですね?

とーわ

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第二話

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 そんなことを考えてると、ルードが部屋の隅にいる子に気づいて怪訝な顔をした。

 白い綿毛に包まれたみたいな、子犬みたいなペット。てこてこと歩いてきて、お座りをしてルードを見上げる。

「む……な、なんだ、この犬は……」

 神殿のみんなは知ってるけど、祈りの間に私が入ってるときは、この子を連れてきてるんだよね。

(ナーヴェ、私は大丈夫だから、後でついてきて)

 心のなかで念じる。これは魔法だけど、ペットとは目で会話できるものだよね。

「…………」

 ナーヴェは吠えたりはせずに、じっとルードを見ている。その姿は私に対して辛辣なルードの目にも、いたいけに映ったようだった。

「っ……偽聖女め、犬などを持ち込んでいたのか。全く度し難い……構うな、その辺りに捨て置け」

 ルードがナーヴェを足蹴にしようとしたときはどうしてくれようかと思ったけれど、当たらなかったので大目に見てあげる。

 もし当たってたら危なかったのは、ルードの方だけど。ナーヴェも無邪気に舌を出してるけれど、みんなあの子の放つ殺気に気づいてないみたい。

「お、おい……何か寒くないか……?」
「父上、私も実は……全く、偽聖女の姿など見るから気分が悪くなったのだ」

 気のせいじゃなくて、本当に気温が少し下がってるんだけど。それとここにいる私以外の人たちの魔力がーーって、誰も気づいてないのね。

 ゾルダート公爵とルードが連れ立って出ていく。私も外まで兵士たちに連行される――大回廊を通っていくところで、向こうからやたらと派手な服を来た女の人と、神官たちがやってくる。

「おお、ヴェロミア。神官たちとはもう話をつけたようだな」
「ええ、お父様。ザイオン殿下からの令状を渡して、ご理解を得られましたわ」

 えーと……つまり、そういうこと?

 ゾルダート公爵の娘がこのヴェロミアという人で、私の代わりに聖女を継ぐことになったと。

 私も先代から聖女を継いだけど、その時はちゃんと能力で選んだっていう話だったのに。

「ふぅん……あなたが偽……いえ、前聖女のアリアンナ?」
「はい、初めまして」
「ふふっ……あははっ。そんな貧相な姿で聖女ですって? 大神殿の人達が可哀想ね、こんな女を聖女として奉り上げなければいけなかったなんて」

 親と息子あればこの娘あり――ルードの姉、いや、妹かな。お化粧が濃いから年齢が上に見えるけど。白粉をはたきすぎじゃない?

 普段は化粧をしてる人を神殿では見ないし、香水もきつく感じる。神殿って何をする場所だか分かってますか? 貴族の暮らしの延長じゃないんですけれど。

「それに、ザイオン殿下も。ろくに会ったこともない相手を、聖女だからと婚約者と決められて……あなた、分かっているの? 女として魅力のないあなたが、美しいザイオン殿下を縛り付けていたのよ。それを罪だとは思わないの?」
「それは……申し訳ないと思っています」

 若い男の人は狼だって神官のみんなも言っていたしね。それは、ヴェロミアのように豊満な体型の女の人の方が嬉しいんでしょうけど。

 私があまり食べてなかったり、ぼろぼろの服を着てたりするのは、聖女の仕事をするために必要なことだったんだけれど。それを言っても笑われるだけだろうし、何も言わないでおく。

「いいのよ、あなたの罪はこうして追放されることで許されるのだから。私が皇太子妃になった暁には、あなたにも遠くの空の下で祝うことを許してあげる。嬉しい?」
「私とザイオン殿下の婚約は、破棄されたのですか?」

 一応聞いてみただけだし、反応も分かっていた。公爵家親子三人が勝ち誇った高笑いをして、神官たちは気まずそうにしている。いいよ、私は気にしてないから。これからのことを考えたら、神殿に残る人たちはゾルダート家の不興を買わない方がいい。

「ザイオン殿下は先日の夜会で、私を見初められたのです。長い夢から覚めたようだとおっしゃっていましたわ」
「……そうですか」
「殿下は私とともに幸福になるのです。あなたのこともじきにお忘れになりますわ」

 ザイオン殿下とは一度だけ会ったことがあるけど、結婚することにならなくて良かったかもしれない――あの人はぞっとするくらい容姿端麗だけど、性格はヴェロミアに合ってるような気がするから。

 でもそんなことは一切言わないでおく。

 だって、追放されるっていうことは、十年も務めた聖女の仕事から解放されて、自由になれるっていうことだから。
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