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第I部 テラ編

プロローグ*

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「あれ、私が見えているわ………」*

 病室の中では、医師や看護師がベッドを取り囲んでいた。そのベッドの上には、色々な機器に繋がれた私………。

「親族は来ないのか?」

 医師が、看護師に尋ねた。看護婦は、手元のカルテを見ながら答えた。

「誰もいないようです」

  医師は、名前を確認した。「はかま 天羅てら、15才、女性。まだ、若いのに。残念だ」

 医師は、独り言のように、呟いた。

「11時23分。ご臨終です」

 誰に訊かせるわけでもなく、小さな声で、医師が言い放った。

 それから、霊安室に運ばれた私の身体は、誰もいない冷たい部屋で一人ベッドに横たわっていた。それを、私は上から見下ろしていた。何も、考えることが出来なかった。自分の現在の状況を客観的に把握することが出来ずにいた。

 すると、突然、空間に青白い炎が現れた。それは、炎で描かれた魔法陣だった。その魔法陣は、ブラックホールの様に私を吸い込み始めた。私は、抗うこともできないまま、完全に吸い込まれてしまった。

「どれぐらいたったのかな?」

 吸い込まれた後は、暫く意識を失っていたようだ。気が付いたら、床に先ほどと同じ魔法陣が描かれていた。周りを見渡すと、何もない薄暗い部屋の中に、私はいるようだった。

 魔法陣から現れた私は、靄の様にぼんやりとした存在だった。しかし、私の意識だけは、私のものだと確信はあった。そして、自分の身体のイメージは存在した。つまり、手や足の感覚はあった。だが、感覚だけで、それを使うことは、出来なかった。

 手の感覚はあるが、物を持てない。足の感覚はあるが、蹴ることはできない。なんとも、もどかしい。

 部屋の中を見渡しても、ドアも窓もなく、部屋は外界と隔離された空間のようだ。

「キガツイタカ?」

 頭の中で、誰かが囁いた。

「あれ、誰もいないのに………」

 もう一度、薄暗い部屋の中を見渡した。しかし、先ほどと同じく、ドアも窓もなく、そして、何も見つけることができなかった。

「モシワケナイ………。ダガ、キミシカ、イナカッタ」

 また、誰かが囁いた。そして、その言葉が、頭の中で、木霊するようだった。
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