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 第9章 リザードマン編

911.会員証のメリット

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 私達は、冒険者ギルドに向かった。この街の冒険者ギルドも豪華な建物だ。

 「すみません」

 「はい、何か、御用ですか?」

 「冒険者ギルドに登録したいのですが?」

 「えっ、登録ですか?」

 「はい、そうです」

 「登録して、何をするのですか?」

 「ダンジョンで、魔物を討伐しようと思っています」

 「何か、事情でもあるのでしょうか?相談に乗りましょうか」

 「うん、何の相談ですか?」

 「あの、申し訳ございませんが、金銭的な問題をお持ちでしょうか?」

 「別に、お金に困ってはいませんよ」

 「あの、失礼ですが、この国の会員証はお持ちですか?」

 「はい、持っていますよ。これです」

 「はい、確かに、この国の会員証です」

 「それで、どうして冒険者ギルドに登録するのですか?」

 「何か、おかしいのですか?」

 「この国の会員証で、すべて網羅しているのです。この会員証だけで、他の物はいらないのです」

 「どういうことですか?」

 「だから、先ほどから、申してるように、この国の会員証で、すべての証明になるのです。これひとつで、街の店の会員証でもあり、冒険者ギルドの会員証でもあり、商業ギルドの会員証でもあり、神殿に出入りするための会員証でもあるのです」

 「それでは、後は何もしなくていいということですか」

 「はい、そうです。実は、この国の会員証を取り上げられたのかと思いまして、先ほどは、失礼なことを申しました。誠に、申し訳ございません」

 「いえ、別にいいですよ。私達も今日来たばかりで、この国の事も、この街の事もよく分からないので、色々と教えて貰えるとありがたいです」

 「そうでしたか。私は、冒険者ギルドの受付をしているリリーと言います。今後とも、よろしくお願いします」

 「私の方が、年下なので、もっと、気楽に話してください」

 「はい、わかりました」

 「りりーは、この仕事長いの?」

 「もう、2年になります。たいていの事は、私一人で処理できます」

 「そうだ。この街の近くのダンジョンの事を教えてくれますか?」

 「ダンジョンですか?」

 「何か、変な顔をしてますね。どういうことですか?」

 「この街の人は、ダンジョンに行かないのですよ。危ないから」

 「それでは、冒険者ギルドの仕事は、何ですか?」

 「そこのボードに張っているように、依頼が中心です。魔物の討伐は、まず、ないです」

 私は、依頼用のボードを眺めてみた。確かに、魔物の討伐依頼は張っていない。どちらかというと、派遣社員みたいな仕事だ。これじゃ、冒険者ではなく、事務員ではないか。

 「あぁ、わかりました。それで、お金に困っていると思ったのですね。仕事を探しに来たと思ったのですね」

 「すみません。そう思いました」

 「私、お金には、困っていません。本当ですよ」

 「はい、わかっております。この国の会員証をお持ちで、貧乏な訳がありません。
 普通の人は、年会費金貨100枚など、払う訳がありません」

 「えぇ、会員にならなくても、店で買い物を出来たのですか?」

 「何とも言えませんが。会員でない方の入る店があります。その店は、この国に登録されていないのです。ですから、その店に関して、いかなることがあっても、国は感知しません」

 「なるほど、会員証が保険ということですね」

 「保険って、何ですか?」

 「あぁ、この国にはなかったのですね。何かトラブルがあれば、会員を助けてくれるということです」

 「そうですね。会員の方が困っていれば、兵士が飛んできますよ」

 「それは、安心ですね」

 「そのための、年会費ですから、商店も年会費を払っていますよ」

 「そうなんですか。ここで、聞くことではないのですが、少し、質問してもいいですか?」

 「何でも聞いてください。ここには、基本的に冒険者は来ませんので、仕事がないのですよ」

 「それじゃ、退屈しているの?」

 「そうですね。冒険者ギルド長は、めったにやってこないし、話し相手もいません」

 「それは、寂しいですね」

 「そうなんですよ。それをもう、2年もやっているのですよ」

 「お姉さんみたいに可愛い方が、こんなところで、一人でいるなんて、だめですよ」

 「そうでしょ。でも、結構貰っているので、なかなか、他の仕事にはつけません」

 「給料の事を聞いても、いいですか?」

 「いいですよ。月に金貨50枚、貰っていますよ」

 「それなら、十分ですね」

 「そうでしょ。だから、やめれないのよ」

 「ところで、この国が輸出している物って、何ですか?」

 「そうね。直ぐに思い浮かぶのは、金・銀ね。でも、これって、支払いに使っているだけみたい。輸出とは、言いにくいね」

 「それ以外に何があるのですか?どうも、農業も、漁業も、林業も、工業もやっていないようですけど」

 「その通りよ。この国には、普通の産業がないの」

 「それでは、何を売っているのですか?」

 「うーん、何だったかな。何か、井戸みたいなものが、立っているの」

 「井戸ですか」

 「いいえ、井戸ではないのよ。井戸みたいなものよ」

 「よく、分からない。場所を教えて貰っていいですか?」

 「誰も、入れないわよ。ここから、北に行ったところだけど、兵隊が守っているよ」

 「そうですか、厳重ですね」

 「そうね。金より、大切なものみたいよ」

 「リリー、ありがとう。また、来ます」

 「いつでも、歓迎よ」
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