水面の星

白詰えめ

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すれ違い

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 昨日は、ななとご飯を食べて別れた。久しぶりにじっくり話せて楽しかったな。異動は二週間と言っていたので、会えるのはたぶん昨日が最後。少し寂しい気もするが、連絡を取れば、またすぐ会える。ところで、翔はどうだろうか。最近、まともに会話をしてくれない。正直寂しい。今日は僕が頑張って話をしようと決めている。そわそわしながら翔を待った。

 意外な事に、先に話しかけてきたのは翔だった。
「あーすか!」
 あすかは嬉しくなって、勢いよく翔の方を見た。目が合う、しかし、なぜか僕を見ていないような、そんな感じがする。笑顔なのに、なんか変だ。
「翔…?」
 元気に返そうと思っていたのに、感情が声に乗ってしまった。
「どうしたんだよ!」
 翔は表情を崩さない。たぶん、ずっと一緒にいる人じゃないとわからない。そんなレベルの違和感だ。もしかして、この前の僕みたいに、急なトラブルに巻き込まれてるんじゃないだろうか。それを必死に隠しているんじゃ…。
「何かあった?」
 翔の力になりたい。翔が悩んでるなら、一緒に考えたい。でも、言わないってことは踏み込む方が迷惑なのかな。
「何かって?」
 翔は、おどけるように笑って隣に座った。側から見たら、本当にいつも通りだ。でも、なんでだろう。そのままにしてちゃいけない気がする。色々考えてたら、翔を凝視してた。
「なんだよ。ジロジロ見て」
 翔はまだ冗談みたいに言ってくる。
「だって…」
 何か言いたいのに、言葉が思いつかない。
「あー、この前、そっけなくしちゃったから拗ねてる?ごめんって、ちょっと体調悪くてさ」
 嘘ついてる…?本当に感覚でしかないが、そんな感じがする。たぶん、僕は今、困った顔をしている。
「どうしたんだよ…」
 翔は、僕の表情につられたのか、困った顔をした。これは、嘘ついてる顔じゃない。なのに、急に顔を逸らされた。
「ちょっと、トイレ」
 翔は顔を逸らしたまま、慌てるようにそう言いながら立ち上がり、教室から出て行った。追いかけなきゃいけない気がする。テストが始まるまでは、まだ40分もある。あすかも教室を出て、翔を追いかけた。

 とりあえず、翔が言っていたトイレに来た。もちろん、いない。そんな気はしてた。気を取り直して、次の場所に移動する。中庭は、いない。また、走り出す。渡り廊下にもいない。
「はぁ、はぁ」
 息を切らしながら階段を駆け上がった。残ってるのは、ここくらいだ。屋上の扉を開けた。流石に人はいない。だからこそ…。
「翔…!」
 ここにいる気がする。探さなきゃ。そして、翔と話さなきゃ。
「あすか…?」
 声がした。どこからだろう、キョロキョロと見渡すとベンチのところに座っていた。駆け足でそこまで行って隣に座った。
「なんで、来たんだよ」
 翔の目は真っ赤だった。泣いていたのだろうか。
「翔が心配だから」
「なんでだよ」
「翔が大切だから」
「ずるいだろ」
「何が?」
「全部だよ…」
 翔はそう言って、目を擦った。あすかは、驚いてポケットからハンカチを差し出す。
「今日、まだ使ってないから」
 翔は何も言わず、ただ頷きハンカチを受け取った。
「俺、好きな人がいるんだ」
 翔は、震える声でそう言った。話してくれるのだろうか。
「うん」
 あすかは、寄り添うようにそう言って、翔の言葉を待った。翔の役に立てるなら嬉しい。けれど、好きな人と聞いて胸が痛くなった。僕がこんなじゃいけないと、押し込める。
「だけど、その人には恋人がいてさ」
「そう、なんだ…」
 胸の痛みが少しおさまるのがわかった。こんな自分嫌だ。
「俺、せめて友達でいようって思ってさ」
「うん」
「だけど、その人の姿見たら、感情が抑えられなくて」
「そっか…」
「ひどいやつなんだよ」
「うん…」
 翔は、悲しそうで苦しそうなのに、どこか幸せそうだ。この表情を僕は知ってる。何度も見てきた。なぜか、後ろめたくなって作り笑顔で誤魔化した。
「教室戻ろうか」
「うん。あすか、ありがとう」
 翔はまっすぐあすかの目を見て言った。あすかは顔を逸らしたくなるのを必死に堪えて、「うん」と言い頷いた。
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