水面の星

白詰えめ

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お互い様

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 ふとした瞬間に好きの気持ちが溢れてしまう。諦めようと思っていたのに、翔の言葉、行動一つで翔が欲しくなってしまう。こんな自分が嫌いだ。僕は翔の隣にいていいのだろうか。そんな考えまで浮かんできた。僕なんかが…。
 翔と目が合うと、全身の血が沸騰するような感覚になる。ドキドキする。だから、さっき変な反応をしてしまった。バレて無いだろうか。いや、心配そうな顔をさせてしまった。誤魔化すために向かったトイレから戻った今も、翔の表情は少し強張っている。僕の失敗だから、僕がどうにかしなきゃ。翔のために、そう思い気持ちを切り替えた。

 餌やりコーナーについた。今日は、猿に餌やりができるらしい。餌用のレーズンを購入し、翔と半分こした。
「一緒にできるの楽しいね」
 いつもより明るい笑顔で声をかけた。楽しいのも、一緒で嬉しいのも本心だ。
「そうだな」
 翔も笑ってくれた。さっきよりは、柔らかい表情になっている。一安心だ。
 近くに猿が歩いてきたので、レーズンを投げてみた。しかし、思うように投げることができず、猿がいない場所にレーズンが落ちた。少し落胆していると、シャッター音が聞こえた。びっくりして振り返る。
「かわいいあすかが撮れたー!」
 翔はニコニコしながら、スマホを見ている。
「何撮ってんの!」
 わざと頬を膨らませてみるとつつかれた。びっくりして口をぽかんと開けると、あははと軽やかな声で翔が笑った。
「子供みたいだな」
 翔は意地悪そうに言ってきた。
「じゃあ翔もやってみなよ」
 あすかが拗ねたようにしてそういうと、翔はまた楽しそうに笑い、自分も餌やりをしようと、あすかの隣に立った。
「みてろよ!」
 案の定全く違う場所に飛んで行った。思わずあすかは吹き出した。
「やっぱダメじゃん!」
「いやこれむずすぎない?」
 二人でキョロキョロと他のお客さんを見てみたが成功率は低そうだ。
「まあ、いい方だろう!」
 翔はそう言って自分が投げたレーズンを見つけた猿を指差した。
「本当だ食べてくれてる」
 あすかがそういうと翔は得意げに笑った。
「さすが俺~」
「ふふ、そうだね」
 楽しい。この時間がずっと続けばいいのに。やっぱり、この姿を独り占めしたい。今だけは、最後に、わがままになるのを許して欲しい。
「翔」
 名前を呼ぶと、嬉しそうにこっちを見てくる。
「なんだ?」
 にっと嬉しそうに笑っている。かっこいい、それに凄く可愛い。些細な行動が愛おしい。
「好きだよ」
 今僕はどんな顔をしているんだろう。声はちゃんと出ていただろうか。どんなふうに捉えられても構わない。友情としてでいいから受け取って欲しい。大好きだよ。翔。
「え」
 困らせたみたいだ。翔は固まっている。しかし、少し焦ったように目を泳がせた後に「俺も好きだよ」と言ってきた。
「え?」
 勘違いしそうだった。顔が熱い。絶対今顔が赤くなっている。何か言わなきゃ、そう思っているのに言葉が出ない。
「な、なんか言えよ」
 翔はそう言いながらあすかの手を引き歩き出した。気がつくと人が少ない場所に来ていた。
「あ、あれ」
「なんか視線が集まりかけてたから」
 翔は困ったように頭を掻いている。それを見てハッとした。自分の顔を手で隠す。絶対バレた。好きなのがバレた。どうしよう。
「おい、あすか」
 翔の方を見れない。恥ずかしい。でも、翔も僕の事好きって…。いや、友達としてだよね。勘違いしてがっかりしたくない。やめよう。でも、勘違いしたくなるくらい、優しくて甘い声だった。
「何か言ってくれよ!」
 翔に肩を揺さぶられ、さらに言葉が出なくなる。でも、翔の方も焦ってるように見える。
「か、翔」
「なんだよ」
 なんとも言えない空気が二人の間を流れている。しかし、足音がして二人とも我に帰った。
「じゃ、じゃあ。残りまわろっか!」
 頑張って声を出した。翔は何も言わず大きく頷いた。
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