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心の準備 翔side
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我ながら少し卑怯だとは思う。あすかの行きたいところに行って、テンションを上げておいてから告白するなんて。吊り橋効果を狙っているようなもんだ。でも、それでも良いから、俺はあすかが欲しい。そしてあすかのものになりたい。今も隣で楽しそうに動物を見ているあすかが愛おしくて仕方がない。いちいち動物の名前と説明書きをじっくり読んで、嬉しそうに笑っている。かわいい。あすかの真面目な性格が出てると言うか、なんと言うか、とにかく好きだ。動物園に来たのに、無邪気に笑うあすかの顔ばかり見ている。
「翔!みてみて!」
あすかはそう言って前方にある狐のコーナーを指差した。
「どうした?」
「色が翔みたいでかわいいなーって」
俺は、あすかからどう見えてるんだ?と少し笑いそうになった。
「まあ染めてるしな」
「翔の髪って染めてるのに綺麗だよね」
「ケアしてるからなぁ」
「さすがだね」
急に、褒められた。嬉しい。あすかが俺の事を見て笑って、その上ほめてくれている。口元がニヤけるのを隠すようにあすかを追い越し狐を見に行った。
「待ってよ!」
弾んだ声が後ろから聞こえる。本当に楽しんでくれているのがわかって、こっちまで楽しくなる。
「あすかには俺がこーんなに可愛く見えてるわけ?」
「色の話だよ」とか笑いながら返ってくると思っていたが、違った。あすかは固まって真っ赤になっている。どうして?やっぱりあすかも、俺のことが…。いや、その答えは今日わかるのだから、考えないでおこう。
「何固まってんだよ」
あすかの目の前でわざとらしく手を振る。するとあすかは、下を向いて深呼吸した。
「ごめんごめん」
笑顔がぎこちない。絶対何か隠してる。俺が何か無理させた?言っちゃいけないことを言ったのだろうか。少し無理をしているように見える。あすかの顔色が曇るだけで、こんなに心が乱される。毎日毎日、好きの気持ちが大きくなっている。
「大丈夫か?」
あすかの顔を覗き込むと、目を逸らされた。
「あすか…?」
「なんでもない…あ、ちょっとトイレに行ってくるね」
あすかはそう言って、逃げるようにしてトイレに向かった。なんだか呼び止める事も出来ず、呆然と立ち尽くした。どうしようもなくて、一人で狐を眺めた。
「ごめん、お待たせ」
そう言って戻ってきたあすかの目は少し赤くなっていた。心配だ。だけど、触れてほしくなさそうな空気がある。
「大丈夫だぞ」
自分を落ち着けるように、あすかの背中をぽんぽん叩いた。なるべくいつも通りを心がけた。心臓は、近づくたびに聞こえているんじゃないかと思うほどバクバクと音を立てている。好きの気持ちと心配が頭の中でぐるぐる渦巻いている。
「もうすぐ餌やり体験の時間だね!」
あすかは、もう気持ちを切り替えたようだ。先ほどの不安げな様子はなく、楽しそうに笑っている。つられて笑いたかったのに、出来なかった。
「そうだな、早く行こうぜ」
精一杯の明るい顔をして答えた。いい思い出を作りにきたんだ。俺がこんなじゃいけない。
「うん!」
あすかは楽しそうにしてくれている。それだけで幸せじゃないか。
「翔!みてみて!」
あすかはそう言って前方にある狐のコーナーを指差した。
「どうした?」
「色が翔みたいでかわいいなーって」
俺は、あすかからどう見えてるんだ?と少し笑いそうになった。
「まあ染めてるしな」
「翔の髪って染めてるのに綺麗だよね」
「ケアしてるからなぁ」
「さすがだね」
急に、褒められた。嬉しい。あすかが俺の事を見て笑って、その上ほめてくれている。口元がニヤけるのを隠すようにあすかを追い越し狐を見に行った。
「待ってよ!」
弾んだ声が後ろから聞こえる。本当に楽しんでくれているのがわかって、こっちまで楽しくなる。
「あすかには俺がこーんなに可愛く見えてるわけ?」
「色の話だよ」とか笑いながら返ってくると思っていたが、違った。あすかは固まって真っ赤になっている。どうして?やっぱりあすかも、俺のことが…。いや、その答えは今日わかるのだから、考えないでおこう。
「何固まってんだよ」
あすかの目の前でわざとらしく手を振る。するとあすかは、下を向いて深呼吸した。
「ごめんごめん」
笑顔がぎこちない。絶対何か隠してる。俺が何か無理させた?言っちゃいけないことを言ったのだろうか。少し無理をしているように見える。あすかの顔色が曇るだけで、こんなに心が乱される。毎日毎日、好きの気持ちが大きくなっている。
「大丈夫か?」
あすかの顔を覗き込むと、目を逸らされた。
「あすか…?」
「なんでもない…あ、ちょっとトイレに行ってくるね」
あすかはそう言って、逃げるようにしてトイレに向かった。なんだか呼び止める事も出来ず、呆然と立ち尽くした。どうしようもなくて、一人で狐を眺めた。
「ごめん、お待たせ」
そう言って戻ってきたあすかの目は少し赤くなっていた。心配だ。だけど、触れてほしくなさそうな空気がある。
「大丈夫だぞ」
自分を落ち着けるように、あすかの背中をぽんぽん叩いた。なるべくいつも通りを心がけた。心臓は、近づくたびに聞こえているんじゃないかと思うほどバクバクと音を立てている。好きの気持ちと心配が頭の中でぐるぐる渦巻いている。
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あすかは楽しそうにしてくれている。それだけで幸せじゃないか。
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