水面の星

白詰えめ

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家族

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 今日は、翔と一緒にテスト勉強をしながら通話する日だ。翔との約束がある日は、足取りが軽くなる。家に着いたら連絡しようと約束を交わしてるから、そわそわしながらスマホを手に取る。玄関の前で、翔とのトーク画面を開いた。翔からの連絡はまだきていない。
「僕の方が先についたみたいだな」
 そう思いながら家の扉を開けると、部屋の電気がついていた。
「あれ、消し忘れてたかな?」
 下を見ると、靴が一つ多い事に気がついた。これは、母さんの靴だ。少し、気持ちを整えてから笑顔を作る。
「ただいま」
 にこやかにそう言うと、奥から「おかえりなさい!」と聞こえた。あすかは靴を脱ぐとそのまま部屋まで歩いていった。
「どうしたの?急に」
 と聞くと、それを皮切りに母さんは泣き出した。いつもの事だ。だから一人暮らしをしたのに、家を出てもこうなるのか。ため息がこぼれないよう、笑顔のままで、そう自分に言い聞かせながら母さんを宥める。
「また喧嘩したの?」
 そう優しく問いかけながら背中をさする。段々と母さんの呼吸が落ち着いてきた。
「そうなの。あすか…お父さんがね、出ていけって言うから、どうしようもなくてね」
 そう言うとまた泣き出した。こうなると、どうしようもない。夜まで話に付き合わされる。

 仕方なく翔と約束していた通話の話を断る。翔からは、「了解、また今度な」と返事が返ってきた。僕一人が寂しがっているのだろうか、とネガティブな感情が湧き上がってきた。こんな状況のせいだと心を落ち着かせる。こんな気持ち僕のせいじゃない。きっとそうだ。

 母さんから話を聞くと、いつも通りの喧嘩だった。母さんが父さんの機嫌を損ねて、喧嘩になったらしい。機嫌を損ねて、と言っても大半は父さんが悪い。それなのに、母さんは父さんと仲直りしようとする。それで迷惑をかけられるのはいつも僕だ。
「もしもし、僕だよ。あすか。うん、母さんこっちにいるから安心して。明日の朝には帰ると思うよ」
 母さんが眠った後、父さんに電話をしてから部屋に戻った。電話越しの父さんの声は、ひどく心配そうな声だった。それなら、喧嘩なんてしなければいいのに。

 そんな時、ふと翔の顔が浮かんだ。翔は、喧嘩したらどんな表情をするのだろうか。そもそも翔が怒っている姿も泣いている姿も想像できない。なんだか笑えてきて、翔にメッセージを送った。
「今日はごめんね、また明日」
 一分も経たずに返事が返ってきた。
「大丈夫だって。気にすんなよ」
 語尾にはハートの絵文字がついている。ふざけているように見えるが、翔の気遣いだと言う事をもう知っている。冷たくなっていた心が温かくなるのを感じた。
「はぁ、通話したかったな」
 ポツリと呟いて、眠りについた。明日になれば、翔に会える。そう思うとなんだか、全ての悩みがどうでもいいような気がしてきた。
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