銀色の誓い ~再誕の王女と忘れられた王子~

小世 真矢

文字の大きさ
8 / 10

第八章

しおりを挟む

第八章:隠された記憶

レオンは、疲労困憊しながらも、リアを背負い、カイルと共に険しい山道を登り続けた。ハルトは、心配そうにリアの様子を見ながら、レオンの背中を励まし続けた。日を追うごとに体力が尽きていく中、レオンはその小さな体を背負うことに、身体的にも精神的にも限界を感じていた。しかし、彼の心に燻るものは、唯一、リアの無事だけだった。毎晩、彼女の意識が戻ることをただ願い、彼女の体調が少しでも回復するよう祈る日々が続いた。

数日後、三人は、ようやく、深い森の中に隠された、小さな集落に辿り着いた。そこが、カイルが言っていた、ヴェルンスト王国の隠れ里だった。集落の入り口に足を踏み入れた瞬間、レオンはその静けさに胸を打たれた。外界の喧騒から隔絶され、時間がゆっくりと流れるような、神秘的な場所だった。

集落の人々は、最初、レオンたちに対して警戒の目を向けていたが、カイルがリアの身分を明かすと、態度を改め、温かく迎え入れてくれた。住民たちは、彼らの到着を待ちわびていたかのように、心から歓迎の意を示してくれた。しかし、その眼差しには、何か重くて深いものが宿っているようにも感じられた。

隠れ里は、外界から隔絶された、静かで平和な場所だった。人々は、質素ながらも穏やかな暮らしを送っており、その表情には、どこか懐かしく、希望の光が宿っていた。長年の隠遁生活の中で、彼らは王家の血を引く者たちを守り続けることに使命を感じていたのだろう。静かな集落の中に、ただ一つの秘密が眠っていることを、レオンはまだ知る由もなかった。

リアは、集落の一軒の家に運ばれ、手厚い看護を受けた。数日後、リアは、ようやく熱が下がり、意識を取り戻した。最初、彼女の目が開いたとき、レオンはほっと息をついたが、すぐにその目に宿る不安そうな瞳に気づく。その目には、力の使い方を知らない自分に対する恐れと、無力さが混じっていた。

レオンは、集落の長老に、ヴェルンスト王国のこと、そして、リアの力について尋ねた。長老は、静かに、そして、ゆっくりと、全てを語り始めた。長老の声は、どこか昔の物語を語るように、時折遠くを見つめるようだった。

ヴェルンスト王国は、かつて、自然と調和した、豊かな国だった。王家は、代々、自然を操る力を持つ者が現れ、その力で国を守り、そして栄光を築いてきたという。しかし、その栄光も長くは続かなかった。数十年前の内乱で、王家は滅び、王国は崩壊した。乱世に飲み込まれ、王国の民も、力を持つ者たちも、皆一夜にして歴史の中に消えていった。

「そして、リアこそが、その最後の王女である。」長老は語る。その力は、王国が滅びる前から予見されていたという。だが、その力は、まだ不安定で、制御が難しく、強くなればなるほど、危険も増していくと言われていた。それでも、王家の血を引く者がその力を使いこなすことができれば、王国を再興する力となり得ると信じられていた。

そして、長老は、レオンに、驚くべき事実を告げた。「レオンよ、お前もまた、ヴェルンスト王家の血を引く者だ。」

レオンは、自分の耳を疑った。まさか、自分が、滅びた王国の血を引いているとは、夢にも思わなかった。長老によると、レオンは、内乱の混乱の中で、国外に逃された王子の生き残りである可能性が高いという。銀色の髪は、王家の血を引く証だった。レオンは、幼い頃の記憶があまりに薄く、そのせいで全てが繋がっていなかったことに驚きを隠せなかった。

「君の銀色の髪は、我々の王家の象徴だ。」長老は続けた。「そして、君の体に宿る力も、王家の血が目覚めることで、少しずつ強くなっていくだろう。」レオンは、その言葉に震えながらも、少しずつ自分の運命を受け入れようとした。彼の中で、王家の血を引く者としての責任感が、少しずつ芽生えていくのを感じた。

長老は、レオンに、王家に伝わる、力を制御する方法を教えた。それは、自然との調和を重んじ、感情をコントロールすることだった。レオンはその教えに従い、瞑想を始めた。最初は、上手くいかなかったが、徐々に、自分の内なる声に耳を傾けることができるようになった。

その頃、リアの体調は、徐々に回復していった。リアは、自分の力について、少しずつ理解し始め、時には不安を覚えながらも、力を制御する方法を学び始めた。そして、レオンが、自分と同じ、王家の血を引く者であることを知った時、二人は初めて、お互いの絆を強く感じるようになった。レオンは、リアに、自分が知っていることを教え、リアは、レオンに、心を開き始めた。

しかし、平和な日々は、長くは続かなかった。ある日、隠れ里に、再び、追っ手たちが現れたのだ。彼らは、執念深く、レオンたちの居場所を突き止めてきた。追っ手たちの目的は、リアを連れ去り、その力を利用することだった。そして、レオンの存在も、彼らにとっては、邪魔な存在だった。

集落の人々は、武器を取り、追っ手たちに応戦した。しかし、追っ手たちの装備は、村人たちよりも遥かに優れていた。集落の人々は、必死に守り抜こうとしたが、次々と倒れていく中で、レオンは戦い続けなければならなかった。彼は、長老から教わった方法で、力を制御し、追っ手たちを退けていく。リアも、自分の力を使い、レオンたちを助けた。

しかし、戦いは激しく、犠牲者も出始めた。隠れ里の人々は、レオンたちを庇い、次々と倒れていった。レオンは、怒りと悲しみに震えた。そして、自分の内に眠る、強大な力を感じた。

その時、レオンの銀色の髪が、眩い光を放ち始めた。レオンの体から、強いエネルギーが溢れ出し、周囲の自然が、再び、レオンの意思に応え始めた。彼は、その力を駆使して、追っ手たちを圧倒した。そして、ついに、追っ手のリーダーを追い詰めた。

リーダーは、レオンに、全てを語った。彼らは、ヴェルンスト王国を滅ぼした者たちの残党であり、リアの力と、王家の秘宝を使って、再び、王国を支配しようとしていたのだ。レオンは、リーダーを倒し、追っ手たちを退けた。しかし、戦いの代償は大きかった。多くの人々が、命を落とした。

レオンは、悲しみに暮れる人々を前に、決意を新たにした。自分は、ヴェルンスト王家の血を引く者として、この国を守り、人々を導いていく。彼は心の中で誓った。失われた王国を取り戻し、平和を築くために、もう一度戦うのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...