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第八章
しおりを挟む第八章:隠された記憶
レオンは、疲労困憊しながらも、リアを背負い、カイルと共に険しい山道を登り続けた。ハルトは、心配そうにリアの様子を見ながら、レオンの背中を励まし続けた。日を追うごとに体力が尽きていく中、レオンはその小さな体を背負うことに、身体的にも精神的にも限界を感じていた。しかし、彼の心に燻るものは、唯一、リアの無事だけだった。毎晩、彼女の意識が戻ることをただ願い、彼女の体調が少しでも回復するよう祈る日々が続いた。
数日後、三人は、ようやく、深い森の中に隠された、小さな集落に辿り着いた。そこが、カイルが言っていた、ヴェルンスト王国の隠れ里だった。集落の入り口に足を踏み入れた瞬間、レオンはその静けさに胸を打たれた。外界の喧騒から隔絶され、時間がゆっくりと流れるような、神秘的な場所だった。
集落の人々は、最初、レオンたちに対して警戒の目を向けていたが、カイルがリアの身分を明かすと、態度を改め、温かく迎え入れてくれた。住民たちは、彼らの到着を待ちわびていたかのように、心から歓迎の意を示してくれた。しかし、その眼差しには、何か重くて深いものが宿っているようにも感じられた。
隠れ里は、外界から隔絶された、静かで平和な場所だった。人々は、質素ながらも穏やかな暮らしを送っており、その表情には、どこか懐かしく、希望の光が宿っていた。長年の隠遁生活の中で、彼らは王家の血を引く者たちを守り続けることに使命を感じていたのだろう。静かな集落の中に、ただ一つの秘密が眠っていることを、レオンはまだ知る由もなかった。
リアは、集落の一軒の家に運ばれ、手厚い看護を受けた。数日後、リアは、ようやく熱が下がり、意識を取り戻した。最初、彼女の目が開いたとき、レオンはほっと息をついたが、すぐにその目に宿る不安そうな瞳に気づく。その目には、力の使い方を知らない自分に対する恐れと、無力さが混じっていた。
レオンは、集落の長老に、ヴェルンスト王国のこと、そして、リアの力について尋ねた。長老は、静かに、そして、ゆっくりと、全てを語り始めた。長老の声は、どこか昔の物語を語るように、時折遠くを見つめるようだった。
ヴェルンスト王国は、かつて、自然と調和した、豊かな国だった。王家は、代々、自然を操る力を持つ者が現れ、その力で国を守り、そして栄光を築いてきたという。しかし、その栄光も長くは続かなかった。数十年前の内乱で、王家は滅び、王国は崩壊した。乱世に飲み込まれ、王国の民も、力を持つ者たちも、皆一夜にして歴史の中に消えていった。
「そして、リアこそが、その最後の王女である。」長老は語る。その力は、王国が滅びる前から予見されていたという。だが、その力は、まだ不安定で、制御が難しく、強くなればなるほど、危険も増していくと言われていた。それでも、王家の血を引く者がその力を使いこなすことができれば、王国を再興する力となり得ると信じられていた。
そして、長老は、レオンに、驚くべき事実を告げた。「レオンよ、お前もまた、ヴェルンスト王家の血を引く者だ。」
レオンは、自分の耳を疑った。まさか、自分が、滅びた王国の血を引いているとは、夢にも思わなかった。長老によると、レオンは、内乱の混乱の中で、国外に逃された王子の生き残りである可能性が高いという。銀色の髪は、王家の血を引く証だった。レオンは、幼い頃の記憶があまりに薄く、そのせいで全てが繋がっていなかったことに驚きを隠せなかった。
「君の銀色の髪は、我々の王家の象徴だ。」長老は続けた。「そして、君の体に宿る力も、王家の血が目覚めることで、少しずつ強くなっていくだろう。」レオンは、その言葉に震えながらも、少しずつ自分の運命を受け入れようとした。彼の中で、王家の血を引く者としての責任感が、少しずつ芽生えていくのを感じた。
長老は、レオンに、王家に伝わる、力を制御する方法を教えた。それは、自然との調和を重んじ、感情をコントロールすることだった。レオンはその教えに従い、瞑想を始めた。最初は、上手くいかなかったが、徐々に、自分の内なる声に耳を傾けることができるようになった。
その頃、リアの体調は、徐々に回復していった。リアは、自分の力について、少しずつ理解し始め、時には不安を覚えながらも、力を制御する方法を学び始めた。そして、レオンが、自分と同じ、王家の血を引く者であることを知った時、二人は初めて、お互いの絆を強く感じるようになった。レオンは、リアに、自分が知っていることを教え、リアは、レオンに、心を開き始めた。
しかし、平和な日々は、長くは続かなかった。ある日、隠れ里に、再び、追っ手たちが現れたのだ。彼らは、執念深く、レオンたちの居場所を突き止めてきた。追っ手たちの目的は、リアを連れ去り、その力を利用することだった。そして、レオンの存在も、彼らにとっては、邪魔な存在だった。
集落の人々は、武器を取り、追っ手たちに応戦した。しかし、追っ手たちの装備は、村人たちよりも遥かに優れていた。集落の人々は、必死に守り抜こうとしたが、次々と倒れていく中で、レオンは戦い続けなければならなかった。彼は、長老から教わった方法で、力を制御し、追っ手たちを退けていく。リアも、自分の力を使い、レオンたちを助けた。
しかし、戦いは激しく、犠牲者も出始めた。隠れ里の人々は、レオンたちを庇い、次々と倒れていった。レオンは、怒りと悲しみに震えた。そして、自分の内に眠る、強大な力を感じた。
その時、レオンの銀色の髪が、眩い光を放ち始めた。レオンの体から、強いエネルギーが溢れ出し、周囲の自然が、再び、レオンの意思に応え始めた。彼は、その力を駆使して、追っ手たちを圧倒した。そして、ついに、追っ手のリーダーを追い詰めた。
リーダーは、レオンに、全てを語った。彼らは、ヴェルンスト王国を滅ぼした者たちの残党であり、リアの力と、王家の秘宝を使って、再び、王国を支配しようとしていたのだ。レオンは、リーダーを倒し、追っ手たちを退けた。しかし、戦いの代償は大きかった。多くの人々が、命を落とした。
レオンは、悲しみに暮れる人々を前に、決意を新たにした。自分は、ヴェルンスト王家の血を引く者として、この国を守り、人々を導いていく。彼は心の中で誓った。失われた王国を取り戻し、平和を築くために、もう一度戦うのだ。
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