レベリング・マーダー 一週間に一回は人を殺さないと自分が死んでしまう。ならばいっそ勧善懲悪しよう。

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第46話 マーダー

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飛島亜香里のバイト先は個人経営のハンバーガーショップだった。
俺はそこにただの客として入店していた。

コーラとハンバーガーを食べながら十分ほど店内にいたところ飛島亜香里がカウンターに現れた。
それを確認して俺は小さく「チンカンニクア」と口にする。
すると寒気が襲ってきた。

やはりか。
そう思い俺は飛島亜香里に視線をやった。

「?」
ところがだ、俺の悪人感知レーダーに飛島亜香里はひっかからなかった。
俺の悪寒はカウンター脇にいたガラの悪い男二人から感じたものだったのだ。

どういうことだ?
いじめをするような奴なら俺の価値観では間違いなく悪人に該当するはずなのに反応しないなんて。

もしかして、飛島亜香里はいじめの加害者ではないのか?

すると、
「おっ、やっぱこいつだぜ。同級生いじめて自殺させたって奴」
スマホの画面と飛島亜香里の顔を見比べながら、悪人探知に反応したガラの悪い男二人がカウンターに近付いていく。

「なあ、お前飛島亜香里だろ。同級生殺してどんな気分だ? ええ?」
「よく平気でバイトなんか出来るよな、お前」
「……お客様いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」
飛島亜香里は一瞬うろたえたがすぐに笑顔を作ると男二人に微笑みかけた。

「おっ、マジかこいつっ。無視だ無視っ」
「ヤベぇ、ちょームカつくんですけど! 客を無視していいのか、おいっ!」
男たちはカウンターに肘をつき、もたれかかりながら声を大にして騒ぎ立てる。
その尋常ではない様子に周りの客たちもざわつき出した。

「……あ、あのお客様、ほかのお客様のご迷惑になりますのであまり大きな声で――」
「ああっ? 殺人犯が何言ってんだこらっ!」
「お前がいることの方がこの店にとってよっぽど迷惑だろうがっ!」
「っ……」

飛島亜香里が笑顔でいられたのもそこまでだった。
唇をかみしめ顔を伏せた飛島亜香里は次の瞬間、奥の部屋に駆けこんでいってしまった。

「なんだ、あいつ。逃げやがったぜっ」
「おいてめぇら、何見てんだこらっ!」
男のうちの一人が周りの客たちにガンを飛ばす。

と、
「おい、てめぇ。何にらんでやがる」
あろうことかその男が俺に近寄ってきた。

「え? 俺ですか?」
「てめぇに決まってんだろ、こらっ!」

俺はにらんでいたつもりなどまったくないのだが、無意識のうちに感情が顔に出ていたのかもしれない。

「いや、すみませんっ。そんなつもりないですよっ。もとからこんな顔なんですっ」
俺は手を振り顔を振り必死に訴える。

それを見て、
「なんだこいつ。ちょービビってるぜっ」
「おいマサル、こんな雑魚相手にすんなよ。もう行こうぜ」
呆れたのか俺を「邪魔だっ」と突き飛ばすと男たちは店を出ていった。

俺は突き飛ばされた拍子に持っていたハンバーガーを床に落としてしまう。

……まだ半分も残っていたのにな。


◇ ◇ ◇


「マサル、カラオケでも行かねぇ?」
「あ? 男二人でかよ。アホか、行かねぇよ」

高架下で待っていると聞き覚えのある男たちの声が響いてきた。
自分たちを中心に世界が動いているとでも思っていそうな奴ら独特の声量でもって歩いてくる。

「じゃあ女呼ぶか?」
「当たり前だろ」
男たちはへらへら笑いながら俺の横を通り過ぎていった……これから死ぬっていうのに。

「おい、お前ら」
俺は二人に声をかけると、
「ああん? なんだてぼごぇっっ!」
振り返った一人の男の顔面を思いきり殴り飛ばし、ひるんでいるもう一人の男に向かって蹴りを入れた。

「ごはぁっ……!」
吐瀉物をまき散らし、その上に顔から倒れる男。
だが二人とも気絶しているだけでまだ死んではいない。

俺は地面に倒れている男たちに近付くとしゃがみ込んで首の骨を躊躇なく順に折っていった。


声掛けから二人を殺し終えるまで約十秒。
誰にも見られていないことを確認すると俺はこの日はそのまま帰宅の途についた。
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