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第47話 裏サイト
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翌日から飛島亜香里は四日続けて学校とバイトを休んだ。
俺はその様子を自室にいながら千里眼で確認していた。
数日監視した結果、俺にはある疑念が生じていた。
それは飛島亜香里はいじめなどしていなかったのではないかというものだった。
そこで俺は依頼主である笠倉栄一さんにコンタクトをとることにした。
◇ ◇ ◇
待ち合わせ場所は佐々木久美子さんの時にも利用した喫茶店。
俺はマスクをした状態で喫茶店へと入る。
すると一人明らかに暗い雰囲気の男性を視界にとらえた。
「笠倉栄一さんですか?」
俺はその男性のそばまで行くとそう声をかける。
「は、はい……そうです」
消え入りそうなか細い声が返ってきた。
俺は店員さんに「ホットコーヒーお願いします」と注文して対面の席に座る。
「そ、それで……どういったご用件でしょうか? ま、まさか依頼は受けられない、とか……?」
「いえ、そうではありません。それより例の物は持ってきていただけましたか?」
「は、はい……こ、これです」
笹倉さんがテーブルの上に置いてよこしたものはピンク色のスマホだった。
「これが由紀子さんの遺書が残っていたスマホですね」
「は、はい……」
俺はいじめの加害者が本当に飛島亜香里なのかどうかどうしても気になっていたので、笠倉由紀子のスマホを持ってきてもらっていたのだった。
「ちょっと失礼します」
言うと俺はそのスマホを手に取って眺める。
画面には確かに遺書のようなものが記されていた。
「すみません、ここに書かれている裏サイトというのはなんですか?」
「あ、そ、それはですね……学校裏サイトというネット上の匿名の掲示板だそうです。そ、そこに飛島亜香里から執拗に悪口を書かれて……それをほかの生徒も面白がっていたようです」
「なるほど」
ん?
「それって匿名なんですよね。なんで由紀子さんは悪口を書いていた人物が飛島亜香里だとわかったんでしょうか?」
「そ、それは……す、すみません。わかりません」
「そうですか」
「あ、あの……もしかして鬼束さんは悪口を書いていたのは……飛島亜香里ではないと思っているのですか?」
笠倉さんは頬がこけまるでミイラのような顔を俺に向けてくる。
「まあ、実を言うとそうです」
「そ、そんなはずはないっ!」
笠倉さんが突然テーブルを叩き声を張り上げた。
店員さんが何事かとこっちを見てくる。
「そっ、そんなはずは……そんなはずは……」
すると店員さんが俺の注文したホットコーヒーをお盆に乗せて持ってきた。
「お待たせいたしました。こちらホットコーヒーになります」
「あ、すみません、騒がしくしちゃって」
俺が謝罪すると、
「いえ、大丈夫ですよ。今は他にお客さんはいませんから」
にこっと返してくれた。
店員さんが去った後「す、すみませんでした……」と笹倉さんが俺にゆっくりと頭を下げる。
そして続けて、
「わ、わたしは……飛島亜香里を、ずっと恨んできました。い、今も殺したいほど憎いです……で、でもそれが人違いだなんて、どうしても信じたくなくて、つい……」
ぽつぽつと言葉を積み重ねていった。
「そうですね。いきなりそんなこと言われたら戸惑いますよね」
俺はそう前置きしてから、
「もし飛島亜香里じゃないとしたら他の人物に心当たりはありませんか?」
訊いてみる。
「……す、すみません。わたしも妻も由紀子にはあまり気を配っていなかったもので……」
そう言うと笹倉さんは黙ってしまった。
手詰まりか……。
だがそう思った次の瞬間、
「……あっ、あの子ならもしかしてっ……」
笹倉さんが思い出したように発する。
「あの子って誰ですか?」
「……えっと、犯人とかではなくてですね……小学生の頃から、由紀子ととても仲良くしてくれていた、ひ、柊麻衣という子です……中学は別々になってしまったんですけど高校でまた同じ学校に通うことになったって由紀子が嬉しそうに話していました……」
「同じ高校なんですか?」
「え、ええ……クラスは違うようでしたけど……」
うーん、手掛かりは他にないしその子に当たってみるか。
俺はそう考え、
「その子の写真ありますか?」
「は、はい……家に帰れば卒業アルバムが……」
「では後で画像をメールしてください。こっちでもう少し調べてみますから」
とだけ伝えた。
話を切り上げ俺が席を立つと、
「と、飛島亜香里……も、被害者、ということでしょうか……?」
笹倉さんがくぼんだ目で俺を見上げて言う。
「そうですね。彼女はやってもいないいじめの加害者として今周囲からひどいバッシングを浴びていますから」
「そ、そう……ですか……お、鬼束さん。ど、どうか真犯人をみつけて、そ、そいつを、そいつを、そ、そいつをっ……」
「それ以上は言わなくてもいいですよ」
俺は出来る限り優しく言うと笹倉さんを置いて一人店をあとにした。
俺はその様子を自室にいながら千里眼で確認していた。
数日監視した結果、俺にはある疑念が生じていた。
それは飛島亜香里はいじめなどしていなかったのではないかというものだった。
そこで俺は依頼主である笠倉栄一さんにコンタクトをとることにした。
◇ ◇ ◇
待ち合わせ場所は佐々木久美子さんの時にも利用した喫茶店。
俺はマスクをした状態で喫茶店へと入る。
すると一人明らかに暗い雰囲気の男性を視界にとらえた。
「笠倉栄一さんですか?」
俺はその男性のそばまで行くとそう声をかける。
「は、はい……そうです」
消え入りそうなか細い声が返ってきた。
俺は店員さんに「ホットコーヒーお願いします」と注文して対面の席に座る。
「そ、それで……どういったご用件でしょうか? ま、まさか依頼は受けられない、とか……?」
「いえ、そうではありません。それより例の物は持ってきていただけましたか?」
「は、はい……こ、これです」
笹倉さんがテーブルの上に置いてよこしたものはピンク色のスマホだった。
「これが由紀子さんの遺書が残っていたスマホですね」
「は、はい……」
俺はいじめの加害者が本当に飛島亜香里なのかどうかどうしても気になっていたので、笠倉由紀子のスマホを持ってきてもらっていたのだった。
「ちょっと失礼します」
言うと俺はそのスマホを手に取って眺める。
画面には確かに遺書のようなものが記されていた。
「すみません、ここに書かれている裏サイトというのはなんですか?」
「あ、そ、それはですね……学校裏サイトというネット上の匿名の掲示板だそうです。そ、そこに飛島亜香里から執拗に悪口を書かれて……それをほかの生徒も面白がっていたようです」
「なるほど」
ん?
「それって匿名なんですよね。なんで由紀子さんは悪口を書いていた人物が飛島亜香里だとわかったんでしょうか?」
「そ、それは……す、すみません。わかりません」
「そうですか」
「あ、あの……もしかして鬼束さんは悪口を書いていたのは……飛島亜香里ではないと思っているのですか?」
笠倉さんは頬がこけまるでミイラのような顔を俺に向けてくる。
「まあ、実を言うとそうです」
「そ、そんなはずはないっ!」
笠倉さんが突然テーブルを叩き声を張り上げた。
店員さんが何事かとこっちを見てくる。
「そっ、そんなはずは……そんなはずは……」
すると店員さんが俺の注文したホットコーヒーをお盆に乗せて持ってきた。
「お待たせいたしました。こちらホットコーヒーになります」
「あ、すみません、騒がしくしちゃって」
俺が謝罪すると、
「いえ、大丈夫ですよ。今は他にお客さんはいませんから」
にこっと返してくれた。
店員さんが去った後「す、すみませんでした……」と笹倉さんが俺にゆっくりと頭を下げる。
そして続けて、
「わ、わたしは……飛島亜香里を、ずっと恨んできました。い、今も殺したいほど憎いです……で、でもそれが人違いだなんて、どうしても信じたくなくて、つい……」
ぽつぽつと言葉を積み重ねていった。
「そうですね。いきなりそんなこと言われたら戸惑いますよね」
俺はそう前置きしてから、
「もし飛島亜香里じゃないとしたら他の人物に心当たりはありませんか?」
訊いてみる。
「……す、すみません。わたしも妻も由紀子にはあまり気を配っていなかったもので……」
そう言うと笹倉さんは黙ってしまった。
手詰まりか……。
だがそう思った次の瞬間、
「……あっ、あの子ならもしかしてっ……」
笹倉さんが思い出したように発する。
「あの子って誰ですか?」
「……えっと、犯人とかではなくてですね……小学生の頃から、由紀子ととても仲良くしてくれていた、ひ、柊麻衣という子です……中学は別々になってしまったんですけど高校でまた同じ学校に通うことになったって由紀子が嬉しそうに話していました……」
「同じ高校なんですか?」
「え、ええ……クラスは違うようでしたけど……」
うーん、手掛かりは他にないしその子に当たってみるか。
俺はそう考え、
「その子の写真ありますか?」
「は、はい……家に帰れば卒業アルバムが……」
「では後で画像をメールしてください。こっちでもう少し調べてみますから」
とだけ伝えた。
話を切り上げ俺が席を立つと、
「と、飛島亜香里……も、被害者、ということでしょうか……?」
笹倉さんがくぼんだ目で俺を見上げて言う。
「そうですね。彼女はやってもいないいじめの加害者として今周囲からひどいバッシングを浴びていますから」
「そ、そう……ですか……お、鬼束さん。ど、どうか真犯人をみつけて、そ、そいつを、そいつを、そ、そいつをっ……」
「それ以上は言わなくてもいいですよ」
俺は出来る限り優しく言うと笹倉さんを置いて一人店をあとにした。
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