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第119話 隠し部屋
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キマイラとの戦いで確かな手ごたえを感じた俺はある程度の自信をつけフロア内を闊歩する。
スラが吐き出した金塊がいつ布の袋を破ってしまうかだけを案じつつ俺はアイテムを探して回った。
「ベアさんに会いたいなぁ。さっさとこの金塊をお金に変えたい」
俺は心の中で百万円、百万円……と繰り返しながらひとりごちた。
「その金塊やっぱり売るんですね」
とククリ。
「当たり前だろ。百万だぞ、百万。売らないわけがないだろ」
何を言ってるんだククリの奴は、まったく。
よくわからないが訳知り顔のククリは放っておいて俺はアイテム探しとベアさん探しに精を出す。
すると、
『ピキー!』
スラが通路の真ん中付近で声を上げた。
「どうしたスラ?」
『ピキー、ピキー!』
「いや、わからん。ククリ頼む」
「はーい。ふむふむ……えーっとですねスラさんが言うにはこの壁の部分だけほかより薄くなってるんだそうです」
ククリが通訳してくれる。
「ほかより薄い? それってどういうことだ?」
『ピキー』
「透視してみてって言ってますよ」
「俺がこの壁を透視すればいいのか?」
『ピキー』
スラはうんうんとうなずいた。
スラの言わんとしていることはいまいち理解できてはいないがとりあえず俺は透視能力を発動させる。
カッと目を見開き壁を凝視してみると……。
「ん? なんだこれ?」
「どうかしました?」
「いや、なんかこの壁の向こうの方に部屋があるぞ。隠し部屋かな……」
『ピキー』
「やっぱり、だそうです」
スラがにらんだ通り壁は一部分だけ薄くなっていてそこから隠し通路がのびていた。
そしてその先には隠し部屋のようなものが見えた。
「マツイさん、それはきっと宝箱のある隠し部屋ですよ。トウキョウダンジョン内にはそういう部屋があるんです」
「何、宝箱があるのか!?」
俺の透視能力では壁一枚しか透かせないから宝箱の存在までは確認できないが。
「はい、きっとありますよっ」
「そうかそうか」
わざわざ隠し部屋にあるくらいだからこれはレアアイテムをゲットできそうな予感。
表情にはあまり出ないが胸が躍る。
「それにしてもなんでわかったんだ? スラ」
『ピキー』
「なんとなくだそうですよ」
「なんとなくか。まあいいや。スラよくやったぞ~、お前がいなきゃ気付かなかったところだ」
『ピキー!』
照れているのか体をぷるぷると震わせるスラ。
うっすら顔も紅潮しているように見える。
「ところでククリ、隠し通路にはどうやって入ればいいんだ?」
「そんなの壁を壊して入ればいいじゃないですか」
あっさりと言うククリ。
「壁を壊すったって俺は今銅の剣しか持ってないんだけど……」
あと使えそうなのは地獄のかなづちくらいだがこの武器は呪われているからな。
するとククリは目をぱちくりさせ、
「何を言っているんですか? マツイさんの攻撃力は今や120ですよ。成人男性が大体10くらいなのでおよそ十二倍です。薄くなった石の壁くらい素手で簡単に壊せますよ」
そのように進言する。
「マジで?」
「マジです。今のマツイさんにとってもう石はチョコレートみたいなものです」
「ふーん、そうなんだ」
そのたとえはよくわからないけど。
「さあさあ、思いっきりこの壁を破壊しちゃってください」
「ああ、わかった」
ククリに促され俺は半信半疑のまま石壁に向かって右こぶしを振り抜いた。
ドゴォン!
パラパラと砂煙が舞い、あとに残ったのはさっきまで石の壁だった石片。
そして目の前には新たな通路と部屋。
「おおっ、結構簡単に壊せた……」
「だから言ったじゃないですか。じゃあ宝箱の中身を早速調べてみましょうよ」
そう言うとククリは石の残骸を飛び越えてすーっと隠し部屋に向かっていく。
「待てって、俺も行くってば」
『ピキー』
ククリの後を追って俺とスラも崩れた石片を跳び越えついていった。二メートルほどの短い通路を通り抜けると俺たちは小部屋に行き着いた。
「マツイさん、スラさん、これです、これっ」
ククリは宙をぱたぱたと飛びながら下にある宝箱を指差している。
「おお、本当にあったんだな宝箱」
『ピキー! ピキー、ピキー』
自分の手柄だからかスラも宝箱のもとへ跳び急ぐ。
「さあ、マツイさん開けてください」
『ピキー』
二人の視線を両側から感じつつ俺は罠ではないことを確認してから宝箱を開けた。
ギイィィ……。
――宝箱の中に入っていたのは黄色い小さなホイッスルだった。
スラが吐き出した金塊がいつ布の袋を破ってしまうかだけを案じつつ俺はアイテムを探して回った。
「ベアさんに会いたいなぁ。さっさとこの金塊をお金に変えたい」
俺は心の中で百万円、百万円……と繰り返しながらひとりごちた。
「その金塊やっぱり売るんですね」
とククリ。
「当たり前だろ。百万だぞ、百万。売らないわけがないだろ」
何を言ってるんだククリの奴は、まったく。
よくわからないが訳知り顔のククリは放っておいて俺はアイテム探しとベアさん探しに精を出す。
すると、
『ピキー!』
スラが通路の真ん中付近で声を上げた。
「どうしたスラ?」
『ピキー、ピキー!』
「いや、わからん。ククリ頼む」
「はーい。ふむふむ……えーっとですねスラさんが言うにはこの壁の部分だけほかより薄くなってるんだそうです」
ククリが通訳してくれる。
「ほかより薄い? それってどういうことだ?」
『ピキー』
「透視してみてって言ってますよ」
「俺がこの壁を透視すればいいのか?」
『ピキー』
スラはうんうんとうなずいた。
スラの言わんとしていることはいまいち理解できてはいないがとりあえず俺は透視能力を発動させる。
カッと目を見開き壁を凝視してみると……。
「ん? なんだこれ?」
「どうかしました?」
「いや、なんかこの壁の向こうの方に部屋があるぞ。隠し部屋かな……」
『ピキー』
「やっぱり、だそうです」
スラがにらんだ通り壁は一部分だけ薄くなっていてそこから隠し通路がのびていた。
そしてその先には隠し部屋のようなものが見えた。
「マツイさん、それはきっと宝箱のある隠し部屋ですよ。トウキョウダンジョン内にはそういう部屋があるんです」
「何、宝箱があるのか!?」
俺の透視能力では壁一枚しか透かせないから宝箱の存在までは確認できないが。
「はい、きっとありますよっ」
「そうかそうか」
わざわざ隠し部屋にあるくらいだからこれはレアアイテムをゲットできそうな予感。
表情にはあまり出ないが胸が躍る。
「それにしてもなんでわかったんだ? スラ」
『ピキー』
「なんとなくだそうですよ」
「なんとなくか。まあいいや。スラよくやったぞ~、お前がいなきゃ気付かなかったところだ」
『ピキー!』
照れているのか体をぷるぷると震わせるスラ。
うっすら顔も紅潮しているように見える。
「ところでククリ、隠し通路にはどうやって入ればいいんだ?」
「そんなの壁を壊して入ればいいじゃないですか」
あっさりと言うククリ。
「壁を壊すったって俺は今銅の剣しか持ってないんだけど……」
あと使えそうなのは地獄のかなづちくらいだがこの武器は呪われているからな。
するとククリは目をぱちくりさせ、
「何を言っているんですか? マツイさんの攻撃力は今や120ですよ。成人男性が大体10くらいなのでおよそ十二倍です。薄くなった石の壁くらい素手で簡単に壊せますよ」
そのように進言する。
「マジで?」
「マジです。今のマツイさんにとってもう石はチョコレートみたいなものです」
「ふーん、そうなんだ」
そのたとえはよくわからないけど。
「さあさあ、思いっきりこの壁を破壊しちゃってください」
「ああ、わかった」
ククリに促され俺は半信半疑のまま石壁に向かって右こぶしを振り抜いた。
ドゴォン!
パラパラと砂煙が舞い、あとに残ったのはさっきまで石の壁だった石片。
そして目の前には新たな通路と部屋。
「おおっ、結構簡単に壊せた……」
「だから言ったじゃないですか。じゃあ宝箱の中身を早速調べてみましょうよ」
そう言うとククリは石の残骸を飛び越えてすーっと隠し部屋に向かっていく。
「待てって、俺も行くってば」
『ピキー』
ククリの後を追って俺とスラも崩れた石片を跳び越えついていった。二メートルほどの短い通路を通り抜けると俺たちは小部屋に行き着いた。
「マツイさん、スラさん、これです、これっ」
ククリは宙をぱたぱたと飛びながら下にある宝箱を指差している。
「おお、本当にあったんだな宝箱」
『ピキー! ピキー、ピキー』
自分の手柄だからかスラも宝箱のもとへ跳び急ぐ。
「さあ、マツイさん開けてください」
『ピキー』
二人の視線を両側から感じつつ俺は罠ではないことを確認してから宝箱を開けた。
ギイィィ……。
――宝箱の中に入っていたのは黄色い小さなホイッスルだった。
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