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第165話 エリクサー
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地下十階層でベアさんに会うことが出来た俺は売りたいアイテムを床に並べていく。
「布の袋とバタフライナイフと木刀とベアホイッスルを買い取ってください」
『なんだ、ホイッスル以外はてんでしけてんなぁ』
言いながらふさふさした指を動かし買い取り額を計算していくベアさん。
『三十万と千六百円だな。それでいいか?』
「はい」
ベアさんの言う通りベアホイッスルがなかったら大した額にはなっていなかったな。
売値三十万円のベアホイッスル。使わないでおいてよかった。
『さあ、じゃあ何か買っていってくれよ』
「そうですね。できれば武器と防具が欲しいんですけど……」
俺はベアさんの足元の商品を順に見ていくが、
『武器と防具かぁ、タイミングが悪いな今はあんまりねぇよ。今あるのはほとんどが飲み物か食い物だからな』
確かにそうらしい。並べられている商品はそのほとんどが容器に入った液体や草ばかりだった。
まいったな……。
俺は心の中でもらす。
今回は深い階層まで潜るつもりだったのに装備品がいまいち頼りない。
上半身にいたっては未だに裸の状態だ。
『これなんかどうだ? プラチナマント。布地にプラチナを施してあるから意外と防御力もあるし何より目立つぜ』
「いや、俺もうヒーローマント装備してますし……」
ダンジョン内で目立ってもしょうがないだろ。
「えっと、とりあえずそこの靴ください。いつまでも素足っていうのもアレなんで」
俺は端の方に置かれていた靴を指差す。
『おお、こいつか。こいつは韋駄天シューズだ、履くと防御力だけじゃなくて素早さも上がるぜ』
「いくらですか?」
『こいつは一万円だ。買うか?』
一万円か……少々高いが三十万も手に入ったんだ、それくらいは別にいいだろう。
「じゃあそれください」
俺はベアさんに一万円を払うと防御力+2、素早さ+10の韋駄天シューズを早速ベアさんの目の前で履いた。
少しきついが我慢するか。
「マツイさんマツイさん」
ここでククリが俺の肩をぽんぽんと叩いた。
「ん、なんだククリ?」
「そこにあるの研磨剤ですよ」
ククリの視線の先には歯磨き粉のチューブのような物体が置かれていた。
「あ、本当だな」
研磨剤は錆びた剣に使用すると別の剣に生まれ変わらせることが出来るアイテムだ。
「マツイさんは今錆びた剣を持っているからちょうどいいじゃないですか。千円ですし買いましょうよ」
ククリは研磨剤をすすめてくる。
「お、研磨剤って千円なのか。だったら買うよ買う」
見た感じ武器や防具はもうなさそうだし千円程度なら払っても惜しくはない。
俺は千円をベアさんに手渡すと代わりに研磨剤を受け取った。
これで錆びた剣を磨けばもっとマシな武器が手に入るはずだ。
『ほかには何かいるか?』
ベアさんが訊いてくる。
「うーん、そうですね……」
あとは草とカラフルな液体ばかり。
俺は見たことのないものをとりあえず手に取り訊ねてみた。
「えーっとじゃあこれはなんですか?」
俺は虹色の液体の入った容器を持ち上げる。
きらきらと虹色に輝いていて神秘的だ。
『それはエリクサーだ。生命力と魔力を全回復してさらにどんな状態異常も治せる最高の薬だぜ』
「へー、エリクサーっていうんですかこれ。高そうですね」
『二十万円だ。高いか安いかは使う奴次第だな』
「二十万っ!」
値段を聞いて俺はすぐさま床に戻す。
間違って割ってしまったら大変だ。
「じゃあ、そっちのピンク色の液体はなんですか?」
『ん、これか? これは惚れ薬だぜ』
「惚れ薬っ……」
前に間違ってスラに飲ませてしまったやつだ。
こんなところで再び出会えるとは。
『モンスターに飲ませると飲ませたモンスターを仲間に出来るぜ。といっても効き目は一日だけだがな』
「一日だけ……?」
じゃあ前にスラにやった惚れ薬の効果はとっくに切れているのか。
「……惚れ薬ってその、人間にもき、効くんですか?」
俺は勇気を振り絞って訊いてみた。
もし効果があるのなら高木さんに……。
『ん? そりゃ効くことは効くけどよう、マツイお前……』
ベアさんが目を細めて怖い顔で俺を見据える。
まずい。不純な動機だとバレたか……?
『三十万円も払えないだろ』
「え……」
『さっき韋駄天シューズ買っちまったんだから三十万円も持ってないだろうが、お前』
「あ、あーそうですね。そうでしたそうでしたっ」
ふ~、よかった。変態だと思われずに済んだ。
無駄に怖い顔だからドキドキしてしまったじゃないか。
「じゃあ買い物はこれくらいで……」
『おお、そうか。じゃあまたなマツイ。ククリとスラもまたな』
「はーい。さようならベアさん」
『バイバーイ』
「布の袋とバタフライナイフと木刀とベアホイッスルを買い取ってください」
『なんだ、ホイッスル以外はてんでしけてんなぁ』
言いながらふさふさした指を動かし買い取り額を計算していくベアさん。
『三十万と千六百円だな。それでいいか?』
「はい」
ベアさんの言う通りベアホイッスルがなかったら大した額にはなっていなかったな。
売値三十万円のベアホイッスル。使わないでおいてよかった。
『さあ、じゃあ何か買っていってくれよ』
「そうですね。できれば武器と防具が欲しいんですけど……」
俺はベアさんの足元の商品を順に見ていくが、
『武器と防具かぁ、タイミングが悪いな今はあんまりねぇよ。今あるのはほとんどが飲み物か食い物だからな』
確かにそうらしい。並べられている商品はそのほとんどが容器に入った液体や草ばかりだった。
まいったな……。
俺は心の中でもらす。
今回は深い階層まで潜るつもりだったのに装備品がいまいち頼りない。
上半身にいたっては未だに裸の状態だ。
『これなんかどうだ? プラチナマント。布地にプラチナを施してあるから意外と防御力もあるし何より目立つぜ』
「いや、俺もうヒーローマント装備してますし……」
ダンジョン内で目立ってもしょうがないだろ。
「えっと、とりあえずそこの靴ください。いつまでも素足っていうのもアレなんで」
俺は端の方に置かれていた靴を指差す。
『おお、こいつか。こいつは韋駄天シューズだ、履くと防御力だけじゃなくて素早さも上がるぜ』
「いくらですか?」
『こいつは一万円だ。買うか?』
一万円か……少々高いが三十万も手に入ったんだ、それくらいは別にいいだろう。
「じゃあそれください」
俺はベアさんに一万円を払うと防御力+2、素早さ+10の韋駄天シューズを早速ベアさんの目の前で履いた。
少しきついが我慢するか。
「マツイさんマツイさん」
ここでククリが俺の肩をぽんぽんと叩いた。
「ん、なんだククリ?」
「そこにあるの研磨剤ですよ」
ククリの視線の先には歯磨き粉のチューブのような物体が置かれていた。
「あ、本当だな」
研磨剤は錆びた剣に使用すると別の剣に生まれ変わらせることが出来るアイテムだ。
「マツイさんは今錆びた剣を持っているからちょうどいいじゃないですか。千円ですし買いましょうよ」
ククリは研磨剤をすすめてくる。
「お、研磨剤って千円なのか。だったら買うよ買う」
見た感じ武器や防具はもうなさそうだし千円程度なら払っても惜しくはない。
俺は千円をベアさんに手渡すと代わりに研磨剤を受け取った。
これで錆びた剣を磨けばもっとマシな武器が手に入るはずだ。
『ほかには何かいるか?』
ベアさんが訊いてくる。
「うーん、そうですね……」
あとは草とカラフルな液体ばかり。
俺は見たことのないものをとりあえず手に取り訊ねてみた。
「えーっとじゃあこれはなんですか?」
俺は虹色の液体の入った容器を持ち上げる。
きらきらと虹色に輝いていて神秘的だ。
『それはエリクサーだ。生命力と魔力を全回復してさらにどんな状態異常も治せる最高の薬だぜ』
「へー、エリクサーっていうんですかこれ。高そうですね」
『二十万円だ。高いか安いかは使う奴次第だな』
「二十万っ!」
値段を聞いて俺はすぐさま床に戻す。
間違って割ってしまったら大変だ。
「じゃあ、そっちのピンク色の液体はなんですか?」
『ん、これか? これは惚れ薬だぜ』
「惚れ薬っ……」
前に間違ってスラに飲ませてしまったやつだ。
こんなところで再び出会えるとは。
『モンスターに飲ませると飲ませたモンスターを仲間に出来るぜ。といっても効き目は一日だけだがな』
「一日だけ……?」
じゃあ前にスラにやった惚れ薬の効果はとっくに切れているのか。
「……惚れ薬ってその、人間にもき、効くんですか?」
俺は勇気を振り絞って訊いてみた。
もし効果があるのなら高木さんに……。
『ん? そりゃ効くことは効くけどよう、マツイお前……』
ベアさんが目を細めて怖い顔で俺を見据える。
まずい。不純な動機だとバレたか……?
『三十万円も払えないだろ』
「え……」
『さっき韋駄天シューズ買っちまったんだから三十万円も持ってないだろうが、お前』
「あ、あーそうですね。そうでしたそうでしたっ」
ふ~、よかった。変態だと思われずに済んだ。
無駄に怖い顔だからドキドキしてしまったじゃないか。
「じゃあ買い物はこれくらいで……」
『おお、そうか。じゃあまたなマツイ。ククリとスラもまたな』
「はーい。さようならベアさん」
『バイバーイ』
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