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第84話 旅の同行者
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「それしか方法がないのならば仕方がない、その女魔術師に案内させるのじゃ」
国王の返答はエルメスの予想を裏切るものだった。
「国王様っ。あの女を信用してはいけません。きっと隙を見て逃げようとするはずです」
「エルメスの言うこともわかるがカプセルの出どころを掴むにはこれしかないのも事実じゃろう」
「そうですけど……」
「王子よ、女魔術師からくれぐれも目を離さぬようにな。頼んだぞ」
「はい」
返事とは裏腹に俺は面倒くさいことになったなぁと思っていた。
再び地下牢に戻ると見張りの兵士にミコトのいる牢屋を開けさせた。
「あっ手錠はそのままでいいから」
兵士がミコトの手錠を外そうとしたのをエルメスが止める。
「いいわよね?」
「ええ、かましまへんえ」
手錠で両手を拘束されているミコト。
人目を引くので手錠部分に毛布をかけてやる。
「ありがとうカズンはん、ほんまええ男やなぁ」
「ミコト、何を企んでるの?」
「企むなんて人聞きの悪い……うちは善意で協力してるだけどすえ」
「嘘ばっかり。カズン王子、もし逃げようとしたら遠慮なく攻撃していいですからね」
「わかったよ」
「お~、怖い怖い」
微笑を浮かべるミコト。
城を出た俺たちは用意されていた馬車に乗りこんだ。
「狭いわね、も~。カズン王子もっとそっちにいってくださいよ」
「無茶言うな。こっちだってギリギリだぞ」
「三人も乗ってるんやから狭くて当たり前や。真ん中のうちの身にもなってみぃな」
二人乗りの馬車に三人で乗りこんでいるのだから中はぎゅうぎゅうだ。
ちなみに馬車の手綱を引いているのはパネーナだ。
パネーナは今日からしばらく休日をもらっているらしく城の前でばったり会って数分話した後、「おれも行くぜ」と勝手に手綱を握った。
本当に馴れ馴れしい奴だ。同じクラスにいたら絶対関わりたくないな。
「それでどこに向かえばいいのよ?」
「とりあえずうちの故郷のサマルタリアに向かってくださる」
サマルタリアか。初めて訪れる地だな。
「パネーナ、サマルタリアに向かってくれ!」
「オッケー、王子。任せとけ!」
「しゅっぱーつ!」
パネーナの叫びとともに馬がいなないた。
馬車が動き出す。
「まさかあんたとこんな形で旅に出るとは思いもしなかったわ」
エルメスがミコトを見ずに言う。
「うちは小旅行みたいで楽しおす」
ミコトはエルメスと俺に笑顔を振りまく。
本当に心から楽しんでいるように見える。
馬車はサマルタリアに向けてスピードを上げた。
「大丈夫そうだな……」
さすがに馬車に何度も乗っているせいか俺は揺れにも慣れてきて酔わなくなっていた。
「カズンはん、馬車に弱いのどすか?」
「あ、ああ。でももう慣れたみたいだ」
「気分が悪うなったらすぐ言うてくださいね」
「ああ、わかった」
「カズン王子、あなたとミコトは友達じゃないんですからね。あんまり仲良くするのはどうかと思いますよ」
「エルメスはん、もしかして嫉妬どすか? 女の嫉妬は犬も嫌がりますえ」
「うるさい。私は寝るから静かにしててよねっ」
サマルタリアは小さな国だが魔術師が多いことで有名なのだそうだ。
エルメスとミコトが通っていた魔術師学校もサマルタリアにあるらしい。
「ついでやからうちらが通ってた魔術師学校も案内しましょか、カズンはん」
「いや、いいよ」
狭いから当然なのだがミコトの顔がすぐ近くにある。
俺がそのことに緊張していると知ってか知らずかミコトはその後もずっと話しかけてきた。
「カズンはん恋人はおらへんの?」
「好きなタイプはどんなんなん?」
「うち立候補してもええ?」
……などなど。
エルメスが怒鳴って注意するまでミコトの質問攻めは続いた。
国王の返答はエルメスの予想を裏切るものだった。
「国王様っ。あの女を信用してはいけません。きっと隙を見て逃げようとするはずです」
「エルメスの言うこともわかるがカプセルの出どころを掴むにはこれしかないのも事実じゃろう」
「そうですけど……」
「王子よ、女魔術師からくれぐれも目を離さぬようにな。頼んだぞ」
「はい」
返事とは裏腹に俺は面倒くさいことになったなぁと思っていた。
再び地下牢に戻ると見張りの兵士にミコトのいる牢屋を開けさせた。
「あっ手錠はそのままでいいから」
兵士がミコトの手錠を外そうとしたのをエルメスが止める。
「いいわよね?」
「ええ、かましまへんえ」
手錠で両手を拘束されているミコト。
人目を引くので手錠部分に毛布をかけてやる。
「ありがとうカズンはん、ほんまええ男やなぁ」
「ミコト、何を企んでるの?」
「企むなんて人聞きの悪い……うちは善意で協力してるだけどすえ」
「嘘ばっかり。カズン王子、もし逃げようとしたら遠慮なく攻撃していいですからね」
「わかったよ」
「お~、怖い怖い」
微笑を浮かべるミコト。
城を出た俺たちは用意されていた馬車に乗りこんだ。
「狭いわね、も~。カズン王子もっとそっちにいってくださいよ」
「無茶言うな。こっちだってギリギリだぞ」
「三人も乗ってるんやから狭くて当たり前や。真ん中のうちの身にもなってみぃな」
二人乗りの馬車に三人で乗りこんでいるのだから中はぎゅうぎゅうだ。
ちなみに馬車の手綱を引いているのはパネーナだ。
パネーナは今日からしばらく休日をもらっているらしく城の前でばったり会って数分話した後、「おれも行くぜ」と勝手に手綱を握った。
本当に馴れ馴れしい奴だ。同じクラスにいたら絶対関わりたくないな。
「それでどこに向かえばいいのよ?」
「とりあえずうちの故郷のサマルタリアに向かってくださる」
サマルタリアか。初めて訪れる地だな。
「パネーナ、サマルタリアに向かってくれ!」
「オッケー、王子。任せとけ!」
「しゅっぱーつ!」
パネーナの叫びとともに馬がいなないた。
馬車が動き出す。
「まさかあんたとこんな形で旅に出るとは思いもしなかったわ」
エルメスがミコトを見ずに言う。
「うちは小旅行みたいで楽しおす」
ミコトはエルメスと俺に笑顔を振りまく。
本当に心から楽しんでいるように見える。
馬車はサマルタリアに向けてスピードを上げた。
「大丈夫そうだな……」
さすがに馬車に何度も乗っているせいか俺は揺れにも慣れてきて酔わなくなっていた。
「カズンはん、馬車に弱いのどすか?」
「あ、ああ。でももう慣れたみたいだ」
「気分が悪うなったらすぐ言うてくださいね」
「ああ、わかった」
「カズン王子、あなたとミコトは友達じゃないんですからね。あんまり仲良くするのはどうかと思いますよ」
「エルメスはん、もしかして嫉妬どすか? 女の嫉妬は犬も嫌がりますえ」
「うるさい。私は寝るから静かにしててよねっ」
サマルタリアは小さな国だが魔術師が多いことで有名なのだそうだ。
エルメスとミコトが通っていた魔術師学校もサマルタリアにあるらしい。
「ついでやからうちらが通ってた魔術師学校も案内しましょか、カズンはん」
「いや、いいよ」
狭いから当然なのだがミコトの顔がすぐ近くにある。
俺がそのことに緊張していると知ってか知らずかミコトはその後もずっと話しかけてきた。
「カズンはん恋人はおらへんの?」
「好きなタイプはどんなんなん?」
「うち立候補してもええ?」
……などなど。
エルメスが怒鳴って注意するまでミコトの質問攻めは続いた。
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