異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第2話 ダンジョンの中

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ダンジョンの中は薄暗く、やや湿気を帯びていた。
通路の高さは五メートル、横幅は七メートルくらいか、異世界にあったダンジョンと比べるとやや小ぶりな気もする。

ここにも強力なモンスターがいたり、有用なアイテムが落ちていたりするのだろうか。
俺は期待に胸を膨らませつつ奥へと進んでいった。

しばらく歩いていると正面に青く小さな物体が見えた。
俺はそれに近付いていって確信する。

スライムだっ。

俺がいた異世界では最弱クラスのモンスターだったスライム。
懐かしさに思わず笑みがこぼれる。

すると俺の姿に気付いたスライムがぴょんぴょんと飛び跳ねながらこっちに向かってきた。
スライムもまさか目の前にいる人間が魔王を倒した元勇者だとは夢にも思っていないのだろう、にやりと笑うと次の瞬間、
『ピキーッ』
俺めがけて体当たりを仕掛けてくる。

俺はあえて何もせず攻撃を受けてみた。
だがやはり相手はスライム、痛くもかゆくもない。
それどころか俺にぶつかって跳ね返り、地面にぺたんとうなだれてしまうスライム。

「弱い。弱すぎる……」

わかりきっていたことだが、今の俺にはスライムなどそこら辺を飛んでいる蚊程度の存在でしかない。
俺はぺたんとひしゃげているスライムが哀れに思えて、
「見逃してやるからどっかに行けよ」
と声を降らせた。

『ピキー……』

俺の言葉が通じたのか、それとも敵わない相手だと理解したのか、スライムはそそくさと逃げていく。
その際にスライムが体から青く光る石を落としていった。
俺はそれを拾い上げる。

「なんだこれ?」

異世界に召喚されて間もない頃はスライムと嫌というほど戦った俺だが、そんな俺でも青く光る石というのは見たことがない。

「うーん……」

こぶし大ほどの石を手にしていろいろな角度から見てみるもやはりそれが何かは見当がつかない。

「ま、とりあえずもらっとくか」

俺はズボンのポケットにそれを押し込むとさらに奥深くへと歩を進めた。


☆ ☆ ☆


結論から言うと俺が入ったダンジョンは地下三階までしかなかった。
さらに出てきたモンスターはスライムだけ。
みつけたアイテムも薬草ただ一つ。

俺は完全に肩透かしを食らっていた。
てっきり異世界にあった高難易度ダンジョンのようなものが現代日本にも現れたかと期待したのに、拍子抜けだ。
スライムと薬草なんてレベル1の時の俺ならともかく、レベル999の今の俺には眼中にない。

「ステータスオープン」

俺は半年ぶりにその言葉を口にした。
すると俺の目の前にステータスボードが浮かび上がってくる。

*************************************

NAME:ユウキ・ミサオ

Lv:999   AGE:23

ATK:5120   DEF:4652

AGI:3398   LUK:21

Skill:ヒール、リフレッシュ、ゲート、デスフレイム、ファイナルソード

*************************************

スライムのステータスがたしかすべて一桁だったはずだから、俺の敵ではないことはこの数値を見れば明らかだ。

うーむ……それにしても相変わらずLUKが極端に低いな。

今にして思えば俺は昔からついていなかった気がする。
小学生の時家が火事になるわ、中学生の時大人に誘拐されそうになるわ、高校生の時には父さんの会社が倒産するわ、そしてそれでもやっと大学に入れたと思った矢先異世界に召喚されて払った授業料が無駄になるわ。

そんな俺でも異世界での生活は充実していた。
俺を慕ってついてきてくれた気のいい仲間たちとの冒険の日々は忘れられない。

またあの充実した毎日を取り戻すんだ。
そう思ってこのダンジョンに駆け込んだというのに、蓋を開けてみれば超低難易度ダンジョンだったとはな。

「はぁ~、やっぱ俺ってついてないのかな……」

肩を落とし、とぼとぼともと来た道を戻る俺。
正面には外の光が見えている。

――だがしかし、ダンジョンを抜け出て地上に戻った俺を待っていたのは嬉しい知らせだった。
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