異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

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第1話 ダンジョン出現

「追い詰めたぞ、魔王っ」
「ま、まさか、人間ごときにここまで深手を負わされるとはっ……わ、我は全世界最強の魔王なのだぞっ!」
魔王がわなわなと震えている。
自分の最期の時が近いことを悟っているかのようだった。

「これでとどめだ。くらえ、ファイナルソードっ!」
「く、くそがぁぁぁぁぁーーーーっ!!」

――――――

――――

――

「ちょっと、結城くんっ。ボーっとしてる暇あったら店先の掃除でもしといてよねっ」
「あ、はい、すみませんっ」

店長ににらまれた俺は、いそいそとコンビニの外に出ていくと掃き掃除を始める。

店の外はとても暑い。
地球が温暖化しているという話もうなずける。

その点、異世界はよかった。
四季などなく毎日が過ごしやすい気温だった。
周りの人たちもみんな親切だったし、俺をもてはやしてくれた。
モンスターを退治してあげた日には村人、町人こぞって俺に感謝の弁を述べたものだ。

「結城くん、お客様並んでるわよっ。早くヘルプ来てっ」
「はい、今行きますっ」

魔王を打ち倒してから早半年、俺は異世界から現代日本に戻ってきていた。
そして資格らしい資格も持っていなかった俺はコンビニのバイトに応募して、今に至るというわけだ。

正直言うと俺はそのまま異世界に居残るつもり満々だったのだが、俺を異世界に呼び出した召喚術師が用は済んだとばかりに俺をもとの世界に飛ばしやがったのだ。
せっかく異世界で死ぬ思いをしてまで強くなったというのに、これでは宝の持ち腐れだ。

いっそ格闘家にでも転身するか。
……いや、それはまずい。
俺は異世界でとんでもなく強くなってしまった。
下手すりゃデコピン一発でも相手の命を奪ってしまいかねない。

「あっちぃっ! おい、何してんだよっ!」
「あ、すみませんっ。今新しいものに――」
「いいよもうっ! ったく」

電子レンジでおにぎりを温めすぎてしまいお客からは責められる始末。
はぁ、情けない。
異世界では完全無欠の勇者だったのに……。

俺は心の中で深くため息をついた。
まさにその時だった。

ドゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

轟音とともに巨大な地震が突如として襲ってきた。
大きな縦揺れに店長が「きゃあぁっ!」と年甲斐もなく可愛らしい悲鳴を上げる。

三十秒ほど経っただろうか、揺れが収まると俺は街の様子をうかがうためコンビニの外に出た。

「っ!?」

するとそこで俺が目にしたものは、街中にはとても似つかわしくない大きな洞窟の入り口だった。


☆ ☆ ☆


俺はそれに見覚えがあった。
俺がいた異世界のあちらこちらにあったダンジョンの入り口にとてもよく似ていた。

「まさか……ダンジョン、なのか?」

俺は胸が高鳴るのを感じていた。
これで平凡な日常から抜け出せる。
俺の力を存分に発揮できる。

「おい、あれは一体なんだ……!」
「何が起こったの!?」
「今の地震で出てきたのかっ……!」
「とにかく警察だっ、警察を呼べっ!」

外にいた人たちが地面に手をつき、膝をつきながら口々に言う。

「な、な、なんなのよ、あれっ……!」
気付けば店長もコンビニから出てきていた。
ひしっと俺の腕にしがみつく。

「あれは……ダンジョンですよ」
「え? だんじょん……?」
「店長、今までお世話になりました」
俺は店長に向き直ると深々と頭を下げた。

「え……?」
「俺、バイト辞めますっ!」
「え、ちょ、ちょっと、結城くんどういうこと――」

困惑しっぱなしの店長を背に、俺は今しがた現れたダンジョンに潜るべく駆け出すのだった。
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