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6章 リサイア大会 パートナー決め編
服従の鎖
しおりを挟む「ところでイオ。パートナー決まった?」
その話題を友人から振られたのは、運ばれてきた夕食を殆ど食べ終えた後だった。
「あー……それがまだ」
「そういえば今日新聞部に行って来たんだっけ?」
「行ったんだけど、あまりの列の長さに吃驚しちゃって」
「え? じゃあまだ顧客リストに登録していないの?」
イオが頷くと、友人達は心配そうにイオを見た。
「そうだ! おれ、部活の先輩に誰か良い人がいないか、聞いてみるよ!」
「でも、悪いし……」
「良いって良いって! あ、噂をすれば――――すいませーん!」
そう言って彼はたった今食堂に入ってきた数人のグループに話しかけに行った。
そのグループの一人に、灰色の髪の男が居た。彼のことが気になった理由は、傍らにフェアリーを見つけたからだ。その生徒の肩の辺りを飛んでいる事から、恐らく彼が契約している精霊なのだろう。
しかし、何か様子が変だった。その妖精の顔が曇っていたのと、彼女の白い首には何故か黒い鎖がつけられていたためだ。そのグループが、イオの友人の案内でこちらに向かってくる。
その時だった。男は首から長く伸びる鎖を力強く引っ張り、まるで彼女を引きずるように歩きだしたのだ。
「っ!?」
「イオ……?」
隣に座っていた友人が驚いたのは、突然イオが立ち上がったからか、イオが見た事が無い怖い顔をしていたからか―――いずれにせよ、この時のイオには周りの様子が見えていなかった。
「っと、先輩。こいつがおれの友人で――――イオ? どうしたんだ?」
イオは友人の言葉も、彼が連れて来た先輩も無視して、グループの後ろに立っていた一人の男の前に立ち塞がった。
突然イオに睨まれた男が、顔を顰めながら訊ねる。
「なんだよお前?」
「どうして、鎖をつけているの?」
「あ?」
「答えて! どうして自分の精霊にこんな酷い事をするの!? 彼女、苦しがってる!」
『イオ様……っ』
彼女の主人である男を睨みつけて問いただすと、その妖精はイオの正体に気づいて名前を呟く。しかし、男はその事に気づかない。何故なら彼は精霊の言葉を理解していないからだ。
精霊の言葉を理解する人間は殆どいない―――しかし、契約した精霊は主人である人間と信頼関係を築く事によって、意思の疎通が可能になる。
つまり、この男とこの精霊の間には、そこまでの信頼関係が築けていないということだ。当たり前だと思った。こんな重い鎖で縛られて信頼が産まれるはずがない。
「いきなりなんなんだよお前。こいつはおれが契約した精霊だ。おれがどう扱おうと、関係ないだろ」
『きゃっ!?』
男が鎖を勢いよく引っ張ったため、首を絞められた精霊は悲鳴をあげて苦しそうな顔をした。
「やめて! 精霊はあなたのものじゃない! 共に生きるパートナーだ!!」
「パートナーねぇ……そいつは違うなぁ。こいつはおれの奴隷だ」
「奴隷?」
男は軽薄な笑みを唇に浮かべて答えた。
「こいつの首につけてあるのは『服従の鎖』って言ってな。これがある限り、こいつはおれの命令には逆らえない。命令を逆らおうとすれば、鎖が自動的にしまって首を絞めつめる仕組みになっている。ちなみにそれを外せるのもおれだけだ」
「っ……そんな、そんな酷い事を……!」
「誤解すんなよ。このアイテムはな、鎖をつけられる方が自ら首に巻かなければ術が発動しないようになっているんだ。だからこいつは進んで、おれの奴隷になったのさ」
「本当なの……?」
男の話を確認するように、イオは妖精に向き直る。彼女は瞳に涙をためて訴えた。
『この首輪をつければ……ごしゅじんさまと、もっとなかよくなれるって言われて……どんなものか知らなかったんです……っ』
「ッ!……騙したんだね。何も知らなかった彼女を」
「人聞きが悪い。そんなわけないだろ。ちゃんと理解した上で、彼女はおれの奴隷になることを決めたんだよ」
イオが精霊の言葉を理解出来るなんて思っていない男は鼻で笑って言う。
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