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7章 リサイア大会 ペア戦予選編
後遺症
しおりを挟む学園の裏手にある林の奥に風紀委員のコウは一人でいた。彼の立つ10メートル先には均等な距離で20本の薪が立てた状態並べてある。
右手に持っていた鞭を左手に持ち直し、一息吐いた。呼吸を整えて勢いよく鞭を振るう。真っ直ぐに伸びた鞭は離れた場所にある薪を順番に倒していくが―――。
「くっ……!」
しかし、あと三本という所で限界が来た。左手を襲う激痛に、コウは額に汗を流しながら奥歯を噛み締めて耐える。
「はぁ……はぁっ……17本か……リハビリの成果は出ているな」
コウは倒した薪の本数を確認してそう呟くが、結果に満足したわけでは無かった。これくらいの事は夏休み前なら意図せずとも楽々に出来ていた事なのだから。
(―――痛みには慣れてきた。このくらいなら、我慢出来ない程の痛みじゃない。問題は筋肉そのものの低下か……)
今も尚、鈍い痛みを訴える左腕を右手で支えながら、手の動きを確かめるように手のひらの開閉を繰り返す。
そして、再び強く拳を握りしめてリハビリを続けるために薪を拾い集め始めた。
リハビリを終えて一旦寮の自室に戻りシャワーを浴びた後、コウは学校へと向かった。風紀の仕事は休んだ。表向きの理由は体調があまり優れないためと言ってある。
コウが夏休み中に怪我をした事は風紀委員は皆知っていたため、誰も深く追求してくる者は居なかった。察しの良い相棒のフェンだけはコウの嘘に気付いていた様子だったが、あえて指摘はしなかった。恐らく彼は風紀の誰よりも空気が読める男だろう。
ずる休みをしてまで向かった先は、新聞部の部室。そこでは新聞部員が忙しそうに働いていた。
「コウさんじゃないですか! お久しぶりです」
部室に顔を出したコウに、真っ先に気付いて声をかけてくれたのはフレックだった。もうすぐ部長になるフレックは後輩達に仕事の指示を出している所だった。
「悪いな。忙しい時に」
「いいえ。この時期はいつもこんな感じですから、お気になさらずに」
「それ新しい新聞か?」
コウはフレックの持っている紙を見つけて訊ねてみる。
「はい! 明日発売する予定の学園新聞ですよ! よろしかったら一部どうぞ」
「ありがと。なになに……一面はディーン先輩の記事か」
貰った記事の大見出しは『寮長ディーンについに本命か!? 気になるお相手謎のシンデレラボーイの素顔に迫る!!』と書かれている。
「この時期は、当然リサイア大会の特集を組むのが通例なんですけどね。今回ばかりは、そうも言っていられなくて……なにせディーン様は親衛隊が一番多くいらっしゃるのに、一度もこう言った噂が流れた事がないお方でしたからねぇ。学校中が今この話題で持ち切りなんですよ!!」
「確かにおれも驚いたよ。あの人、恋愛とか興味無さそうだったのに……相手は確か一年E組だったよな?」
「えぇ。どこでどう知り合ったのか……是非ともこのイオ君に取材したかったんですけどね―」
「素顔に迫る!! って書いているのに取材していないのか?」
「とにかくガードが固いんですよ。学校内じゃクラスメイトが寮だと監督生が護衛についてて、近寄る事すら出来ないですし、放課後も何処に行っているのか、さっぱり行方が掴めなくて……」
「へぇ、寮監督生を護衛に使ってくるとは、ディーン先輩も本気なんだな」
「そうみたいです。でも、周りの人間に話を聞く限りじゃ相手の子、評判は良いですよ。ちょっとドジで天然な癒し系らしいです」
「ドジで天然で癒し系の奴が、大勢の人間が集まる食堂で決闘を申し込むか?」
イオとコーエンの決闘の話も記事にはちゃんと載っている。こちらも今、学園で大きな騒ぎになっていた。
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創作活動を続けていてくださり有難うございます。
ありがとうございます!
長い長いお話になりますがお付き合いいただけるととても嬉しいです。
感想ありがとうございます。励みに更新頑張ります。
個人サイト時代から、何度も読み返している大好きな作品です。ムーンさんでも読ませてもらってます。更新、楽しみにしています!
返信大変遅くなって申し訳ございません。更新楽しみにしてくださってありがとうございます。
これからもよろしくお願い致します。