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7章 リサイア大会 ペア戦予選編
彼の本命
二人はその後も剣術やお互いの趣味の話で盛り上がり和やかに談笑を続けていた。
そして紅茶のおかわりを淹れようとシアンが腰をあげた時、食事からガーネットが帰ってきてソファに座っているアーサーを見て驚く。
「ア―……ルトリウス。もう来ていたのか」
咄嗟に名前を呼びそうになったが、シアンがいるのに気付いて慌てて誤魔化した。
「悪いな。待たせてしまって」
「いえ、おれが約束の時間より少し早くに来てしまっただけですし、待っている間もシアン先輩のおかげで有意義に過ごせましたので、気にしないでください」
「シアンと?」
「はい。とても美味しいお茶を御馳走になりました。あと、剣術の話をしてくださったのですが、とても興味深いお話ばかりで楽しかったです」
アーサーがそう答えると、シアンはにこにこしながら答える。
「私もアルトリウス君とお話出来てとても楽しかったです。こうしてゆっくりお話が出来る日が来るなんて、少し前までは思っていませんでしたから。今度また一緒にお話してくださいね」
「……はい。機会があれば是非」
ガーネットに正体がバレてしまい、彼とペアを組んだ以上、ガーネットの相棒的存在であるシアンの存在はこれ以上避けても意味がないだろう。
誘いに笑顔で答えるアーサー。それを見てガーネットは苦笑いを浮かべた。
「アルトリウス。迷惑ならはっきりと言った方が良いぞ。シアンの魔剣語りに付き合うのは疲れるだろ? 何せマニアックな話ばかりだから」
「いいえ。知らない事が多くて、とても勉強になりました。それにシアン先輩は話し上手ですから、全く飽きなかったです」
「アルトリウス君こそ、一年生なのに博学で聞き上手ですよね」
いえいえ先輩こそ、いえいえアルトリウス君こそ。そう褒め合う二人を見てガーネットが面白くなさそうに顔を顰めた。
「なんですかガーネット。その不満そうな顔は」
それを目敏く見つけたシアンがガーネットに訊ねる。
「もしかして私とアルトリウス君が談笑しているのが気に入りませんか?」
「え?」
シアンの問いにアーサーが驚いたように聞き返しながらガーネットを見つめる。ガーネットはその瞳から逃れるように顔を逸らして言い返す。
「別に気に入らないとは言っていない。ただ……少し羨ましかっただけだ。パートナーを組んだのはおれなのに、お前と話している時の方がアルトリウスが楽しそうな顔をするものだから」
「な……シアン先輩の前で何を……」
シアンの前で好意を隠そうともしないガーネットの態度にアーサーは狼狽する。シアンは興奮で鼻息を荒くしながらも表面上は冷静に見えるように努めて言葉を紡ぐ。
「成程。私が先に声をかけていたパートナーの座を、強引に奪うくらいですから予想はしていましたが……想像以上に御執心ですね」
「悪いなシアン。おれは本命には猛攻する性質なんでな」
ガーネットはアーサーの隣に立って肩を抱き寄せる。ガーネットの胸元に頭をくっつく形になったアーサーはその鼓動の早さに驚く。
(鼓動がどんどん早くなってる……もしかしておれが触れているからか?)
すぐ近くにあるガーネットの顔を見上げると、フードの隙間からほんの少しだけガーネットと目があった。その瞳がまっすぐこちらに向けられているのを感じて、アーサーは落ち着かない気持ちになった。
その二人の様子をシアンが涎を垂らしながら見ていた事には、幸いどちらも気付いていなかった。
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