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3話 内定と葛藤
舌が隙間から入る。
優香は、咄嗟に手を突き出すと、引き離した。その拍子に、ポケットから携帯が落下。
男性に拾い上げられると、画面をこちらに向けられた。
「無駄な抵抗は辞めましょう。ね、就活中の優香さん?」
「っ……!」
お祈りメールの画面を開きっぱなしにしていたらしい。
名前を呼ばれた優香は、息を呑んだ。
「早期選考では無さそうですね。とすると、四年生ですか」
「内定は貰えないし、痴漢はされるし……なんでこんなことに……私は、私は……」
拭いたはずの涙が、再び湧き出てしまう。
知らない男性の、それも父親と同じような年齢の人間とキスをしてしまった。
悔しさと憎さが入り混じった感情が、溢れる雫を増幅させる。
「そんなに焦ってるの? 内定なら僕があげるよ」
「また揶揄ってるんでしょッ」
「NO clock。僕はそこの役員さ」
その証拠に、と男性は穏やかな笑みを浮かべた。
「この停止した世界。それが一番の証拠さ」
NO clock。
五年前に新設したこの新規会社は、たった三年という期間で上場を果たしている。
創設者が生み出した未知の技術。これを利用し、オンライン通販や宅配サービス業界に参入。
この会社が存在する前は、最低一日は掛かる配達速度が、もはや三時間もあれば手に届いてしまう。そのような世界に書きかわってしまった。
特に、未知の技術に関しては、創設者以外に知るものは存在しないと噂されている。一部には、政府や宇宙人が開発した技術なのでは、と陰謀論が流れるほど。
「時間停止……それが即日配達技術を可能にしたんだよ」
さて、と男性は諭すような口調になった。
「僕がNO clockの上層部であることは分かったね。就活、優香ちゃんはどうするの?」
痴漢に加えてキスをしてきた相手。普通ならば、聞く耳を持つ必要などない。
だが、時間停止の事実は疑いようもない。
男性を拒否するか受け入れるのか。困惑した頭で導き出した答え。
「内定の話……聞かせてください」
「良い子ですね。僕はCと申します」
Cと名乗った男性は、囁くように呟いた。
「人に頼む態度、就活生なら分かりますね?」
優香が頭を下げる。しかし、Cは笑顔で首を横に振った。
「まずは土下座でしょう。そのあとに、犬の真似をしてください」
優香は、咄嗟に手を突き出すと、引き離した。その拍子に、ポケットから携帯が落下。
男性に拾い上げられると、画面をこちらに向けられた。
「無駄な抵抗は辞めましょう。ね、就活中の優香さん?」
「っ……!」
お祈りメールの画面を開きっぱなしにしていたらしい。
名前を呼ばれた優香は、息を呑んだ。
「早期選考では無さそうですね。とすると、四年生ですか」
「内定は貰えないし、痴漢はされるし……なんでこんなことに……私は、私は……」
拭いたはずの涙が、再び湧き出てしまう。
知らない男性の、それも父親と同じような年齢の人間とキスをしてしまった。
悔しさと憎さが入り混じった感情が、溢れる雫を増幅させる。
「そんなに焦ってるの? 内定なら僕があげるよ」
「また揶揄ってるんでしょッ」
「NO clock。僕はそこの役員さ」
その証拠に、と男性は穏やかな笑みを浮かべた。
「この停止した世界。それが一番の証拠さ」
NO clock。
五年前に新設したこの新規会社は、たった三年という期間で上場を果たしている。
創設者が生み出した未知の技術。これを利用し、オンライン通販や宅配サービス業界に参入。
この会社が存在する前は、最低一日は掛かる配達速度が、もはや三時間もあれば手に届いてしまう。そのような世界に書きかわってしまった。
特に、未知の技術に関しては、創設者以外に知るものは存在しないと噂されている。一部には、政府や宇宙人が開発した技術なのでは、と陰謀論が流れるほど。
「時間停止……それが即日配達技術を可能にしたんだよ」
さて、と男性は諭すような口調になった。
「僕がNO clockの上層部であることは分かったね。就活、優香ちゃんはどうするの?」
痴漢に加えてキスをしてきた相手。普通ならば、聞く耳を持つ必要などない。
だが、時間停止の事実は疑いようもない。
男性を拒否するか受け入れるのか。困惑した頭で導き出した答え。
「内定の話……聞かせてください」
「良い子ですね。僕はCと申します」
Cと名乗った男性は、囁くように呟いた。
「人に頼む態度、就活生なら分かりますね?」
優香が頭を下げる。しかし、Cは笑顔で首を横に振った。
「まずは土下座でしょう。そのあとに、犬の真似をしてください」
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