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エピローグ
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「ゲームセット――」
堂上がS1を制して俺たちの勝利が決まった。その瞬間、太一や南や他の部員たちが一斉に俺の元へ集まってきたもんだから揉みくちゃにされた。
「お前らやめろって。ほら、整列行くぞ」
レギュラーメンバーはコートへ入り、サービスラインに一列に並んだ。主審が吹野崎の勝利の宣言した後、互いの健闘を称え合い対戦相手と握手を交わした。熊谷と新は笑って手を握ってくれた。
「今回は負けたよ。俺たちは個人戦、お前らは団体戦。次は全国の舞台でともにがんばろう」
「うん」
コートを出ると今度は先輩たちから「よくやった」と声をかけられたり、頭を撫でられたり叩かれたりした。他にもいろんな人から祝福の言葉をもらった。光野からも「おめでとう」と言われ、俺はVサインと一緒に「ありがとう」と返した。
少しの休憩の後、すぐに決勝戦が行われた。吹野崎は白鷹を倒した勢いそのままに勝利を収め、都大会初優勝を飾った。いくら全国行きが決まったとはいえ、ここで負けたら白鷹の顔に泥を塗ることになるからな。勝ててよかった。
表彰式のことはあまりよく覚えていない。気づいたら首にメダルがかけられていて、手には大きくて重たいトロフィーがあった。それからチームで記念写真を撮って、俺はその写真をスマホの待ち受けにした。熊谷や新とも写真を撮った。さっきまで死闘を繰り広げていた敵同士とは思えないくらいみんないい笑顔だった。
表彰式や写真撮影が諸々終わると、場所を移して応援に来てくれた人たちへ改めてあいさつをすることになった。
「キャプテンの桜庭です。今日は応援に来ていただきありがとうございました。みなさんの応援が本当に、本当に力になりました。今日勝てて心底嬉しいです。次の全国大会も応援よろしくお願いします」
俺が話し終わると盛大な拍手で応えてくれた。次に監督が一歩前へ出た。
「監督の小田原です。ご父兄の皆さま、それから友達や学校関係者の皆さま、本日は応援誠にありがとうございました。みなさんの応援が選手たちの力になり、今日の勝利を達成することができました。そして先輩諸君。今日の勝利はこれまで君たちが築いてきたものがあったからこそ成し遂げられたものだ。だから今日の勝利は君たちのものでもある。君たちと一緒に……勝ち取ったものだ……」
言葉を詰まらせる監督。見ると監督の目には涙が溢れていた。俺はその時、以前本田先生が「小田原のヤツ、まだ結果を出せていないことに焦りを感じていたようにも見えたな。自分を救ってくれた学校に恩返しがまだできていないって」と言っていたことを思い出した。監督も今日の勝利に思うことがたくさんあったんだろうな。応援に来てくれた本田先生の方を見ると、先生も目元に涙を浮かべていた。
「本当にありがとう」
監督は先輩たちに向かって深々と頭を下げた。
「よーし、お前ら! 監督を胴上げするぞ!」
そう言い出したのは長野先輩で、他の先輩たちもやる気満々というように腕まくりをしている。俺たち現役も一緒になって監督の元に集まり胴上げを始めた。空中を舞う監督は少々困惑しながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。
「ねぇ瞬」
胴上げが終わるとハルが話しかけてきた。
「なに?」
「俺、やっと見えたよ。『ダブルスのその先の景色』。すげぇいい景色だった」
「俺も見えた気がする」
「ホントか!?」
びっくりするハルに俺はつい笑ってしまった。そうしたらハルも笑った。
「全国もがんばろうな」
「うん。全国に吹野崎旋風を巻き起こしてやろう」
俺たちは全国への決意を新たに互いの手を叩いた。
全国高等学校総合体育大会 三回戦 吹野崎高校(東京) ― 福岡泰山高校(福岡)
真夏の太陽が頭上から降り注ぐ。周囲を取り巻く大歓声の中、俺たちはコートの中へと足を踏み入れる。隣を歩いているハルはすごく楽しそうな表情を浮かべている。
サーブ権を決めるため四人がコート中央に集まった。
「来たな、アキ」
「来たよ、ハル」
念願の〝約束〟が果たせて嬉しい気持ちがハルから伝わってくる。
「そうだ、紹介するよ! 俺のペアの瞬だ」
「よろしく!」
「よろしく! 俺はアキだ。こっちはペアの楓」
「よろしく!」
俺たち四人は笑顔で握手を交わした。
それからラケットを回し、サーブ権は俺たちが取った。俺はハルとタッチを交わしてからベースラインへ向かった。
「ザ・ベスト・オブ・8ゲームスマッチ。吹野崎、サービスプレイ」
いつも通り深呼吸をしてからボールを地面に三回ついて、狙うコースを確認する。それから黄色いボールが青空に吸い込まれそうになるくらい、高く、高く、トスを上げた。
完
堂上がS1を制して俺たちの勝利が決まった。その瞬間、太一や南や他の部員たちが一斉に俺の元へ集まってきたもんだから揉みくちゃにされた。
「お前らやめろって。ほら、整列行くぞ」
レギュラーメンバーはコートへ入り、サービスラインに一列に並んだ。主審が吹野崎の勝利の宣言した後、互いの健闘を称え合い対戦相手と握手を交わした。熊谷と新は笑って手を握ってくれた。
「今回は負けたよ。俺たちは個人戦、お前らは団体戦。次は全国の舞台でともにがんばろう」
「うん」
コートを出ると今度は先輩たちから「よくやった」と声をかけられたり、頭を撫でられたり叩かれたりした。他にもいろんな人から祝福の言葉をもらった。光野からも「おめでとう」と言われ、俺はVサインと一緒に「ありがとう」と返した。
少しの休憩の後、すぐに決勝戦が行われた。吹野崎は白鷹を倒した勢いそのままに勝利を収め、都大会初優勝を飾った。いくら全国行きが決まったとはいえ、ここで負けたら白鷹の顔に泥を塗ることになるからな。勝ててよかった。
表彰式のことはあまりよく覚えていない。気づいたら首にメダルがかけられていて、手には大きくて重たいトロフィーがあった。それからチームで記念写真を撮って、俺はその写真をスマホの待ち受けにした。熊谷や新とも写真を撮った。さっきまで死闘を繰り広げていた敵同士とは思えないくらいみんないい笑顔だった。
表彰式や写真撮影が諸々終わると、場所を移して応援に来てくれた人たちへ改めてあいさつをすることになった。
「キャプテンの桜庭です。今日は応援に来ていただきありがとうございました。みなさんの応援が本当に、本当に力になりました。今日勝てて心底嬉しいです。次の全国大会も応援よろしくお願いします」
俺が話し終わると盛大な拍手で応えてくれた。次に監督が一歩前へ出た。
「監督の小田原です。ご父兄の皆さま、それから友達や学校関係者の皆さま、本日は応援誠にありがとうございました。みなさんの応援が選手たちの力になり、今日の勝利を達成することができました。そして先輩諸君。今日の勝利はこれまで君たちが築いてきたものがあったからこそ成し遂げられたものだ。だから今日の勝利は君たちのものでもある。君たちと一緒に……勝ち取ったものだ……」
言葉を詰まらせる監督。見ると監督の目には涙が溢れていた。俺はその時、以前本田先生が「小田原のヤツ、まだ結果を出せていないことに焦りを感じていたようにも見えたな。自分を救ってくれた学校に恩返しがまだできていないって」と言っていたことを思い出した。監督も今日の勝利に思うことがたくさんあったんだろうな。応援に来てくれた本田先生の方を見ると、先生も目元に涙を浮かべていた。
「本当にありがとう」
監督は先輩たちに向かって深々と頭を下げた。
「よーし、お前ら! 監督を胴上げするぞ!」
そう言い出したのは長野先輩で、他の先輩たちもやる気満々というように腕まくりをしている。俺たち現役も一緒になって監督の元に集まり胴上げを始めた。空中を舞う監督は少々困惑しながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。
「ねぇ瞬」
胴上げが終わるとハルが話しかけてきた。
「なに?」
「俺、やっと見えたよ。『ダブルスのその先の景色』。すげぇいい景色だった」
「俺も見えた気がする」
「ホントか!?」
びっくりするハルに俺はつい笑ってしまった。そうしたらハルも笑った。
「全国もがんばろうな」
「うん。全国に吹野崎旋風を巻き起こしてやろう」
俺たちは全国への決意を新たに互いの手を叩いた。
全国高等学校総合体育大会 三回戦 吹野崎高校(東京) ― 福岡泰山高校(福岡)
真夏の太陽が頭上から降り注ぐ。周囲を取り巻く大歓声の中、俺たちはコートの中へと足を踏み入れる。隣を歩いているハルはすごく楽しそうな表情を浮かべている。
サーブ権を決めるため四人がコート中央に集まった。
「来たな、アキ」
「来たよ、ハル」
念願の〝約束〟が果たせて嬉しい気持ちがハルから伝わってくる。
「そうだ、紹介するよ! 俺のペアの瞬だ」
「よろしく!」
「よろしく! 俺はアキだ。こっちはペアの楓」
「よろしく!」
俺たち四人は笑顔で握手を交わした。
それからラケットを回し、サーブ権は俺たちが取った。俺はハルとタッチを交わしてからベースラインへ向かった。
「ザ・ベスト・オブ・8ゲームスマッチ。吹野崎、サービスプレイ」
いつも通り深呼吸をしてからボールを地面に三回ついて、狙うコースを確認する。それから黄色いボールが青空に吸い込まれそうになるくらい、高く、高く、トスを上げた。
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