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西暦二二○○年。
世界の文明は、未知のウイルス、LDウイルスによりほぼ壊滅し、野生動物はモンスターと呼ばれる怪物へ、人類は、新人類へと進化した。
高層ビルが立ち並ぶ街は、草原や森のような廃墟になり、人類が拠り所にしていた化石燃料、石油は枯渇してしまった。
人類の人口もかつては、六十億人近くいたが、今では三十億人。
多くの人が、狩猟や農業をしてほそぼそと生活していた。
ハンター。
怪物に進化した動物と戦い、その毛皮や肉、鱗などのアイテムを取り、食糧にしたり、販売したりすることだ。
そして、ハンターと怪物化した動物との戦いは、命懸けになることも多くあり―
自分にあったレベルのモンスターと戦っても、多くの敵に囲まれ、殺される。
モンスターに勝利しても、戦いの負傷で死ぬ。
などと、ハンターという職業は、命のリスクも高い。
さらに、世界の頂点にいた人類の文明は、化石燃料の枯渇と人口減少でほぼ滅んでしまった。
今まで、野生動物を滅ぼしてきた人が、逆に滅ぼされる対象になってきたのだ。
だが、LDウイルスという謎のウイルスにより、身体能力が大幅にアップしたのは動物だけではない。
ウイルスから生き残った人類もまた、腕力、脚力などが強化。新たな力を覚醒させる者も現れるようになった。
俺も、その一人だ。
俺の力は、眼。
あらゆる動作を見極めるという能力であるが、最初は使い方どころか、自分にそんな能力があることすら分からなかった。
他のハンターは、炎や水を操る者もいるのだから、それと比べるとかなり地味だといえるだろう。
自分自身も、気付いたのはハンターになり二か月過ぎたころだった。
たまたま、お腹がすいたのでその辺の小動物を狩り、食事にしようと街から近くの森に行ったときだ。
森の薄暗い小道を探索しながら、進んでいくと、ふいに重苦しい雰囲気に変わり、レベル30以上はあるだろう、黄金の魔獣に遭遇する。
当時の俺は、装備といっても金がないので、よれよれの革鎧、使い古した弓矢と中古の武器屋で購入した片手剣だけだ。もちろん、回復薬などは持っていない。
体長三メートルはあるだろうと思われる、巨大な化け物と眼が合う。
「……」
俺が叫び声を思わず上げそうになった瞬間、暗い木々の間に光が差し込む。
敵の体躯は、全身、縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれており、肌は銅褐色、分厚い胸板の上に乗っているのは、黄金色の毛のオオカミの顔だった。
眼は、赤く燃えているのかのような輝きを持ち、その視線は、明らかにこちらをひたっと捉えているのが解かる。
下半身は、金色の長い毛に覆われ、薄暗いのでよく分からないが、人間のように二本足で立っていた。
簡単に言えば、フィクションやファンタジー出てくるオオカミ男の姿そのものだ。
奴との距離は、五メートルほどはあったが、俺はすくんだように動けなかった。
今から思い返しても、オオカミ男の姿をしたモンスターも珍しい。そして『直』に対面すると体の内側から湧き上がる原始的な恐怖心を抑えることができない。
『グレートウルフ』。
間違いなくこの森、最強クラスのモンスターである。
そこまで理解したとき、突然、金色のオオカミ男が鋭い歯が並んでいる口を大きく開け、轟くような雄叫びを上げる。
周りの巨大な木が激しく揺らぎ、びりびりと振動が地面を伝わってくる。口からは、赤い炎を噴出し始め、右手に持った巨大な剣を振りかざして―と思う間も無く、こちらにまっすぐに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。
「うわああああ!」
俺はくるりと向き直ると全力でダッシュしようとする。だが……。
オオカミ男の敏捷性は、予想を超えていた。
世界の文明は、未知のウイルス、LDウイルスによりほぼ壊滅し、野生動物はモンスターと呼ばれる怪物へ、人類は、新人類へと進化した。
高層ビルが立ち並ぶ街は、草原や森のような廃墟になり、人類が拠り所にしていた化石燃料、石油は枯渇してしまった。
人類の人口もかつては、六十億人近くいたが、今では三十億人。
多くの人が、狩猟や農業をしてほそぼそと生活していた。
ハンター。
怪物に進化した動物と戦い、その毛皮や肉、鱗などのアイテムを取り、食糧にしたり、販売したりすることだ。
そして、ハンターと怪物化した動物との戦いは、命懸けになることも多くあり―
自分にあったレベルのモンスターと戦っても、多くの敵に囲まれ、殺される。
モンスターに勝利しても、戦いの負傷で死ぬ。
などと、ハンターという職業は、命のリスクも高い。
さらに、世界の頂点にいた人類の文明は、化石燃料の枯渇と人口減少でほぼ滅んでしまった。
今まで、野生動物を滅ぼしてきた人が、逆に滅ぼされる対象になってきたのだ。
だが、LDウイルスという謎のウイルスにより、身体能力が大幅にアップしたのは動物だけではない。
ウイルスから生き残った人類もまた、腕力、脚力などが強化。新たな力を覚醒させる者も現れるようになった。
俺も、その一人だ。
俺の力は、眼。
あらゆる動作を見極めるという能力であるが、最初は使い方どころか、自分にそんな能力があることすら分からなかった。
他のハンターは、炎や水を操る者もいるのだから、それと比べるとかなり地味だといえるだろう。
自分自身も、気付いたのはハンターになり二か月過ぎたころだった。
たまたま、お腹がすいたのでその辺の小動物を狩り、食事にしようと街から近くの森に行ったときだ。
森の薄暗い小道を探索しながら、進んでいくと、ふいに重苦しい雰囲気に変わり、レベル30以上はあるだろう、黄金の魔獣に遭遇する。
当時の俺は、装備といっても金がないので、よれよれの革鎧、使い古した弓矢と中古の武器屋で購入した片手剣だけだ。もちろん、回復薬などは持っていない。
体長三メートルはあるだろうと思われる、巨大な化け物と眼が合う。
「……」
俺が叫び声を思わず上げそうになった瞬間、暗い木々の間に光が差し込む。
敵の体躯は、全身、縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれており、肌は銅褐色、分厚い胸板の上に乗っているのは、黄金色の毛のオオカミの顔だった。
眼は、赤く燃えているのかのような輝きを持ち、その視線は、明らかにこちらをひたっと捉えているのが解かる。
下半身は、金色の長い毛に覆われ、薄暗いのでよく分からないが、人間のように二本足で立っていた。
簡単に言えば、フィクションやファンタジー出てくるオオカミ男の姿そのものだ。
奴との距離は、五メートルほどはあったが、俺はすくんだように動けなかった。
今から思い返しても、オオカミ男の姿をしたモンスターも珍しい。そして『直』に対面すると体の内側から湧き上がる原始的な恐怖心を抑えることができない。
『グレートウルフ』。
間違いなくこの森、最強クラスのモンスターである。
そこまで理解したとき、突然、金色のオオカミ男が鋭い歯が並んでいる口を大きく開け、轟くような雄叫びを上げる。
周りの巨大な木が激しく揺らぎ、びりびりと振動が地面を伝わってくる。口からは、赤い炎を噴出し始め、右手に持った巨大な剣を振りかざして―と思う間も無く、こちらにまっすぐに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。
「うわああああ!」
俺はくるりと向き直ると全力でダッシュしようとする。だが……。
オオカミ男の敏捷性は、予想を超えていた。
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