短編怪談

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そのウソ、ホント

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「最近、ストーカーに追い回されている気がするんです」
ジュンコは、秘かに想いを寄せている男に悩み相談を持ちかけた。

毎日、仕事帰りに後を追われる気がする。
同じ時間に無言電話がかかってくる。
家の中を覗かれている気がする。
いやらしい内容のメールを送りつけてくる。

ジュンコはストーカー被害を切々と男に話し、男はジュンコの身の上を案じて親身に相談に乗ってくれた。

だが、ストーカーに追い回されているという話は男の気を引こうとするジュンコがついたささやかな嘘。

ただ、その嘘のおかげで男と親密な関係になれ、喜びに包まれていたジュンコだったが、男と付き合うようになってから、本当にストーカーに付きまとわれるようになった。
 
それも、ジュンコが男についた嘘の内容と同じストーカー被害が出るようになり、ジュンコは恐怖を感じ、男に相談した。

相変わらず男はジュンコの相談に親身にのり、求められればジュンコの家に行き、ストーカーから守るように待ち構えていた。
しかし、男がそばにいる時に限って、ストーカー被害が発生しない。

ジュンコは本当に悩むようになった。

別の友人にストーカー被害の相談をしたところ、その友人は、男が怪しいと言ってきた。
最初、想い人の悪口を言われた気になり頭に血がのぼったジュンコだったが、よくよく考えると、ストーカー被害の発生時期やタイミングが、男とリンクすることに気づいた。

そこで、友人の協力のもと、ストーカーのあぶり出しをしたところ、やはり、ストーカーはジュンコの想い人の男だった。

何故、こんなことをするのか?
ジュンコが男に質問した。

男は『本当にストーカー被害にあえば、もっと僕に親身に相談してくれるでしょう?』と、ニコリと笑って答えた。
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