生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1452.ギュームさんのお願い

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「みなさまへのご挨拶も無事に済んだ事ですし、私からひとつ…よろしいでしょうか?」

 控え目にそう尋ねたギュームさんに、俺達は揃って頷いた。

「もちろんです」
「なぁに?」
「どうかした?」

 三人でそう返せば、ギュームさんは表情を引き締めてから続けた。

「…その、シュリ様にお願いがあって、誘いに来たんですが…」
「え、ぼくにおねがい?さそいにきたの?」

 なるほど。ギュームさんは、シュリくんに用があっってここに来たんだな。

「せっかくお二人がここにいらっしゃるなら、そちらを優先してもらっても大丈夫なんですが…ひとまず話だけでも聞いて頂けますか?」

 もちろん話しを聞いて頂いた上で気が乗らなければ、断ってもらって大丈夫ですからとギュームさんは真剣な表情で続けた。

「えっと…ないようにもよるけど…もちろん、はなしはきくよ?」

 シュリくんはいったい何の話しだろう?と言いたげに、ゆるりと首を傾けたまま、そう返した。

 うん。ギュームさんがわざわざ誘いに来るほどの話し、俺も気になるな。

 さっき俺とキースくんがいる事を確認した上で口にしてるんだから、ここに俺達がいて話を聞いてしまっても別に何も問題ないって事―――だよね?

 この解釈であってる?と少し不安になりながら視線を向けてみれば、キースくんも何の話しだろうと言いたげに目をキラキラさせている所だった。

 よし、大丈夫そうだな。

 俺達の反応をじっと見つめていたギュームさんは、俺とキースくんが口を挟まないと分かると意を決した様子で口を開いた。

「シュリ様、これからここの横にある放牧場まで、一緒に行っては頂けませんか?そしてもしよろしければ…そこでこの前保護した馬たちと一緒に走ったり、遊んだりしてもらいたいのですが…?」
「「「へ?」」」

 はからずも三人そろって答えが重なってしまったよね。だってここまで前振りしておいて、まさかそんな内容だとは思わないからさ。予想外すぎてびっくりしちゃったんだ。

 俺達三人の驚きの声を聞いたギュームさんは、もしかしたらあまり乗り気では無いかもしれないと誤解したらしい。

「これの目的の一つは、保護したウマたちがここに馴染みやすくするためです」

 あーうん、そうだよね。

 ギュームさんが真剣な顔でするお願いなんて、基本的に馬がらみの事しかないよね。そう考えると、ある意味納得のいく話しかもしれない。

「なじみやすく…?」
「はい。そして二つめの目的は、シュリ様含めてここに残って下さっているウマたちの健康維持のためです」

 この世界の馬の体はかなり強いって聞いてたんだけど、専門家であるギュームさんいわくあまり長い間走らずにいると体調不調になったりはするんだって。

 ギュームさんの言葉を疑ってるってわけじゃないんだろうけど、あまりに驚いたのかキースくんがそうなの?と思わずシュリくんに尋ねた。

「うん、そうだね。そういうときは、はしりたくてたまらなくなってくるんだよね」

 実施に走り回ってみて満足するまでは、ずーっとウズウズしてる感じらしい。

 キースくんはへぇぇーと元気に声をあげて驚きを表現している。もちろん隣にいた俺も、心から驚いたけどね。

「それに…今なら放牧場も、ほぼ貸切状態で楽しめるんですよ…」

 にっこりと笑って続けたギュームさんによると、普段ならそれなりの頭数で賑わっている放牧場も今はかなりガランとしているんだって。

 遠征に参加してる馬、多かったもんな。

「へーじゃあ、きょうのほうぼくじょうは、ひろびろつかえるんだ?」
「ええ、もちろんです」
「よーし。じゃあ、ぼくもいくよ!」

 楽し気に宣言したシュリくんは、俺とキースに視線を向けた。

「アキトとキースはどうする?」
「俺は走ってる所、見せて欲しいな」
「はいはい、僕も見たい!」

 二人でそう答えれば、ギュームさんは助かりますと言いながら深々と頭を下げた。



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予約更新失敗してました。申し訳ないです。
今日の分としてこの回を、明日の分として0時にもう一本公開します。
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