580 / 1,493
579.【ハル視点】特別な笑顔
しおりを挟む
伴侶候補が相手だと違うのかな?と、ブレイズとファリーマは楽しそうに揶揄ってくる。まあアキトに対しての笑顔や態度が、その他を相手にする時とは違っていて当然だ。揶揄われても特に何とも思わないな。
はいはいと返しながらふと視線を動かすと、頬を真っ赤に染めたアキトが視界に飛び込んできた。
「アキト…?」
「…あ、えっと…」
気づかれたと言いたげに真っ赤な顔のまま視線をうろうろと彷徨わせる姿も、可愛すぎるから困ってしまう。
「アキト、真っ赤だ」
「ああ、これ以上ないってぐらい真っ赤だな」
ブレイズとファリーマの一言に、アキトはああーと声を上げた。
「俺、そんなに恥ずかしい事言ったかな?」
「いや、ハルじゃなくて…」
口ごもるアキトをじっと見つめた俺は、すこし寂しそうな表情を作ってから尋ねた。
「教えてくれないの?」
卑怯な聞き方かもしれないけれど、アキトにはこういう尋ね方が一番答えてもらいやすいんだよな。それに何がそんなに恥ずかしかったのかは、今後のためにもぜひ知りたい。
「うう…ハルずるい…」
「ずるい?」
「そんな聞き方されたら、拒絶できない!」
俺がわざと寂しそうな顔を作ってるのはきちんと理解してるのに、それでもちゃんと答えてくれるんだな。やっぱりアキトは優しいな。
「ハルのあの蕩けるような笑顔は、俺だけが独り占めできるのかーってしみじみ思っちゃって…」
「え、それだけであんなに真っ赤になったの?伴侶候補なら当然じゃない?」
ブレイズの無邪気な質問に、アキトはうっと言葉に詰まった。俺とブレイズ、ファリーマ、三人のまっすぐな視線に耐えかねたのか、アキトは小さな声でぽつりと続けた。
「そんな風に考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかったんだよ…」
俺がアキトだけに向ける笑顔を独り占めできるんだと思って、そう考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかった?
どうしよう。アキトが可愛すぎてつらい。俺の伴侶候補が、こんなにも可愛いと叫びだしたくなる。実行したらアキトが怖がるかもしれないから、絶対にしないけど。脳内で大騒ぎしながら、俺は表面上はにっこりと優しい笑みを浮かべた。
「アキト、教えてくれてありがとう」
「…どういたしまして」
「これからも俺の特別な笑顔はアキトだけのものだからね」
「う…うん」
恥ずかしそうにうつむいてしまったアキトの頭を、伸ばした手でそっと撫でる。
俺達のやりとりを黙って見守っていたブレイズとファリーマは、今は俺に向かってニヤニヤと笑っている。揶揄いの言葉を口にしないのは、アキトが余計に恥ずかしがるって分かってるからだろうな。アキトへの気づかいをありがとう。
「おはよう、みんな」
背後からかけられたのは、こんな時間でも爽やかな声だった。
「おはよう、ルセフ」
挨拶を返しながら魔道具を取り出してみれば、交代の時間はもうすぐだ。
「あ、おはよ」
「おはようございます」
「おはよう、ルセフさん」
それぞれの挨拶が終わる頃、ファリーマは魔道具を見てぽつりと呟いた。
「あ、もうこんな時間か。ブレイズ、今日も頼めるか?」
ファリーマの口したお願いに、ブレイズはまかせてと答えるとウォルターのテントの中へと消えていった。先客の馬車に気を使ってかかなり小声ではあるが、ブレイズがウォルターにひっきりなしに話しかけているのがうっすらと聞こえてくる。
「ああ、そういえばウォルターは朝に弱いんだったな」
「なんでって…そっか、知ってるんだったな」
悪いと言いたげに苦笑したファリーマに、俺は気にするなと笑顔だけを返した。
「ブレイズが起こすの担当なんですか?」
「ああ。ウォルターは、本っっっ当に!起きないからな!……俺は我慢できなくてついつい手が出るし、ファリーマにいたっては水魔法をぶちかました事もあるよ」
目覚めさせるために水魔法とは、かなり過激だな。
「そこまでやっても、それでもウォルターは寝てるんだよ……」
「それなのに、魔物が来た時は飛び起きるんだよな」
「いっそ魔物を連れてくるべきなのかって考えた事があるよ」
「ああ、俺もあるな…」
遠い目で言い合う二人に、俺とアキトは顔を見合わせてから笑ってしまった。
「ブレイズがいーっぱい話しかけるのが一番早いって分かってからは、ずっとブレイズが担当してくれてるよ」
ルセフが本当に感謝してると言った瞬間、ブレイズはまだ眠そうなウォルターを引きずってテントから出てきた。
はいはいと返しながらふと視線を動かすと、頬を真っ赤に染めたアキトが視界に飛び込んできた。
「アキト…?」
「…あ、えっと…」
気づかれたと言いたげに真っ赤な顔のまま視線をうろうろと彷徨わせる姿も、可愛すぎるから困ってしまう。
「アキト、真っ赤だ」
「ああ、これ以上ないってぐらい真っ赤だな」
ブレイズとファリーマの一言に、アキトはああーと声を上げた。
「俺、そんなに恥ずかしい事言ったかな?」
「いや、ハルじゃなくて…」
口ごもるアキトをじっと見つめた俺は、すこし寂しそうな表情を作ってから尋ねた。
「教えてくれないの?」
卑怯な聞き方かもしれないけれど、アキトにはこういう尋ね方が一番答えてもらいやすいんだよな。それに何がそんなに恥ずかしかったのかは、今後のためにもぜひ知りたい。
「うう…ハルずるい…」
「ずるい?」
「そんな聞き方されたら、拒絶できない!」
俺がわざと寂しそうな顔を作ってるのはきちんと理解してるのに、それでもちゃんと答えてくれるんだな。やっぱりアキトは優しいな。
「ハルのあの蕩けるような笑顔は、俺だけが独り占めできるのかーってしみじみ思っちゃって…」
「え、それだけであんなに真っ赤になったの?伴侶候補なら当然じゃない?」
ブレイズの無邪気な質問に、アキトはうっと言葉に詰まった。俺とブレイズ、ファリーマ、三人のまっすぐな視線に耐えかねたのか、アキトは小さな声でぽつりと続けた。
「そんな風に考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかったんだよ…」
俺がアキトだけに向ける笑顔を独り占めできるんだと思って、そう考えて嬉しくなった自分が恥ずかしかった?
どうしよう。アキトが可愛すぎてつらい。俺の伴侶候補が、こんなにも可愛いと叫びだしたくなる。実行したらアキトが怖がるかもしれないから、絶対にしないけど。脳内で大騒ぎしながら、俺は表面上はにっこりと優しい笑みを浮かべた。
「アキト、教えてくれてありがとう」
「…どういたしまして」
「これからも俺の特別な笑顔はアキトだけのものだからね」
「う…うん」
恥ずかしそうにうつむいてしまったアキトの頭を、伸ばした手でそっと撫でる。
俺達のやりとりを黙って見守っていたブレイズとファリーマは、今は俺に向かってニヤニヤと笑っている。揶揄いの言葉を口にしないのは、アキトが余計に恥ずかしがるって分かってるからだろうな。アキトへの気づかいをありがとう。
「おはよう、みんな」
背後からかけられたのは、こんな時間でも爽やかな声だった。
「おはよう、ルセフ」
挨拶を返しながら魔道具を取り出してみれば、交代の時間はもうすぐだ。
「あ、おはよ」
「おはようございます」
「おはよう、ルセフさん」
それぞれの挨拶が終わる頃、ファリーマは魔道具を見てぽつりと呟いた。
「あ、もうこんな時間か。ブレイズ、今日も頼めるか?」
ファリーマの口したお願いに、ブレイズはまかせてと答えるとウォルターのテントの中へと消えていった。先客の馬車に気を使ってかかなり小声ではあるが、ブレイズがウォルターにひっきりなしに話しかけているのがうっすらと聞こえてくる。
「ああ、そういえばウォルターは朝に弱いんだったな」
「なんでって…そっか、知ってるんだったな」
悪いと言いたげに苦笑したファリーマに、俺は気にするなと笑顔だけを返した。
「ブレイズが起こすの担当なんですか?」
「ああ。ウォルターは、本っっっ当に!起きないからな!……俺は我慢できなくてついつい手が出るし、ファリーマにいたっては水魔法をぶちかました事もあるよ」
目覚めさせるために水魔法とは、かなり過激だな。
「そこまでやっても、それでもウォルターは寝てるんだよ……」
「それなのに、魔物が来た時は飛び起きるんだよな」
「いっそ魔物を連れてくるべきなのかって考えた事があるよ」
「ああ、俺もあるな…」
遠い目で言い合う二人に、俺とアキトは顔を見合わせてから笑ってしまった。
「ブレイズがいーっぱい話しかけるのが一番早いって分かってからは、ずっとブレイズが担当してくれてるよ」
ルセフが本当に感謝してると言った瞬間、ブレイズはまだ眠そうなウォルターを引きずってテントから出てきた。
255
あなたにおすすめの小説
公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します
市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。
四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。
だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。
自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。
※性描写あり。他サイトにも掲載しています。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
魔力ゼロの『外れ聖女(男)』、 追放先で知識を武器に国を改革したら、孤高の獅子王に「お前は俺の宝だ」と唯一無二の番として激しく求められる
水凪しおん
BL
図書館司書のミコトは、ある日突然、異世界に『聖女』として召喚される。しかし、聖女に必須の魔力がゼロだったため、『役立たず』の烙印を押され、人間国と同盟関係にある隣国・獣人国へ『贈り物』として厄介払いされてしまう。
武力至上主義の国で待ち受けていたのは、冷徹な若き獅子王カイゼル。「我が国に益をもたらさぬ者は不要だ」と言い放つ彼に、ミコトは生き残りをかけて唯一の武器である『知識』で国を改革することを誓う。
食文化、衛生、農業――次々と問題を解決していくミコトを、民は『賢者様』と呼び、冷たいはずの王の瞳にも次第に熱が宿り始める。
「お前は私の側にいればいい」
これは、捨てられた青年が自らの価値を証明し、孤高の獅子王の唯一無二の番となって、その激しい独占欲と溺愛に蕩かされる物語。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
異世界唯一のオメガ、恋を選ぶまでの90日
秋月真鳥
BL
――異世界に「神子」として召喚されたのは、28歳の元高校球児、瀬尾夏輝。
男性でありながらオメガである彼は、オメガの存在すら知られていない異世界において、唯一無二の「神に選ばれし存在」として迎えられる。
番(つがい)を持たず、抑制剤もないまま、夏輝は神殿で生活を共にする五人のアルファ候補たちの中から、90日以内に「番」となる相手を選ばなければならない。
だがその日々は決して穏やかではなく、隣国の陰謀や偽の神子の襲撃、そして己の体に起きる変化――“ヒート”と呼ばれる本能の波に翻弄されていく。
無口で寡黙な軍人アルファ・ファウスト。
年下でまっすぐな王太子・ジェラルド。
優しく理知的な年上宰相・オルランド。
彼らが見せる愛情と執着に、心を揺らしながら、夏輝は己の運命と向き合っていく。
――90日後、夏輝が選ぶのは、誰の「番」としての未来か。
神の奇跡と恋が交錯する異世界で、運命の愛が始まる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる