生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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882.りんご飴

 職人気質のおじさんが丹精込めて焼いてくれた焼き鳥は、おかわりの分もやっぱり文句なしに美味しかった。二人揃って何本もの串をペロリとたいらげて、今度はりんご飴の屋台へと足を向ける。

 フライドポテト、焼き鳥ときての、〆のデザートだ。

 りんご飴の屋台は最初の二つほどは混んでいなかったから、すぐに買うことができた。

 ちなみにハルの分のりんご飴は細かくカットしてくれたやつで、俺の分は丸ごと串に刺さった大きなやつだ。

 小さいりんご飴も良いんだけど、俺はジューシーな大きめのりんご飴の方が好きなんだよね。嬉しいなとワクワクしながら、俺はハルの手を引いて歩き出した。

 ここの市場は椅子やテーブルの設置はされてないんだけど、店の前以外ならどこで何を食べても良いってスタイルなんだよね。

 だから目指すは店の無い道の端っこだ。

「あの辺りなら良いかな?」
「ああ、良いんじゃないかな」

 ちょうど人が移動したばかりの隙間に、ハルと二人で身体を滑りこませて場所を確保する。

「食べて良い?」

 ワクワクしながらそう尋ねれば、ハルはどうぞと優しい笑みを浮かべた。

「いただきまーす」

 小さな声でポツリとそう呟いてから、俺はあーんと大きく口を開けた。

 巨大な飴に挑む俺をハルは微笑ましそうに見守ってくれていたんだけど、ガリッと音を立てて齧り付いた瞬間えっと大きく目を見開いた。

「ア、アキト?すごい音がしたんだが…大丈夫なのか?」

 ハルは珍しくもかなり慌てた様子でそう言うと、歯は無事かと心配そうにのぞき込んできた。俺はハルを安心させすべく、笑顔を浮かべて答えた。

「うん、大丈夫!期待してた通りの味で美味しいよ!」
「美味しいなら良かった…ん…だが…」

 うーん、あんな音がするのに…本当に美味しいのか?って思ってる顔をしてるな。でも俺が美味しいって言ってるから、本当に?とは聞き難いんだと思う。

 そういえば前に食べたこの世界の果物飴は、カットした色々な種類の果物に薄い飴をかけたやつだったな。噛めばパリッと割れるあの薄い飴を想像してたなら、りんご飴の飴の分厚さに驚くのかもしれない。

 しかも意外とすごい音がするもんな、りんご飴って。食べたら美味しいんだけど。

「ね、硬いけどハルも齧ってみる?」

 ちょっとした悪戯心で手に持ったままのりんご飴をくるりと回して差し出して見せれば、ハルは律儀にいただきますと呟いてから大きく口を開いた。

 慎重にりんご飴に齧り付いたハルは、その硬さに驚いて大きく目を見開いた。実際に噛んでみるとびっくりする硬さだよね。

 これはもっと力を込めないと無理だと思ったのか、ハルは懸命に齧りついているけど、それでもりんご飴は割れなかった。

 りんご飴を噛むのってコツがいるんだよね。高校時代の同級生の中にも、どうしても噛み破れないからって舐めて飴を薄くしてるやつもいたぐらいだし。

「これは…なんというか…すごいな」

 甘いという事しか分からなかったと、ハルは少し寂しそうだ。

「コツがあるだけなんだけどね。今度はハルが買った方食べてみて?」

 なんだか懐かしいな。

 りんご飴のお店が近所にできたって、母に連れて行ってもらった事があるんだよね。そこのお店は色んな味が選べて、そのままかカットかで提供方法を選べたんだ。

 俺はそのままにしたけど母はカットしてもらってて、あんなにつやつやで美味しそうなのに切っちゃうんだってなんだか残念に思ったんだよ。

 でもいざおすそ分けをもらって食べてみると、食べやすいし丸ごととはまた違う美味しさがあったんだ。

 さっき普通のりんご飴の硬さを味わったばっかりだからきっと驚くだろうなーとじっと見つめていれば、ハルは恐る恐る口に運んでモグモグと口を動かすなりパァッと目を輝かせた。

 珍しくこどものような可愛らしい表情だ。

「これは美味いな!しかも切っただけなのに、こんなに食べやすくなるとは!」

 幸せそうに笑ったハルは、すぐにもう一つ口に放り込んだ。どうやらりんご飴は気に入ってもらえたみたいだ。
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