1,061 / 1,561
1060.【ハル視点】森の中へ
歩きやすいが罠のある街道は通らずに、俺達は急ぎ足で森の中を進んでいく。これほどの集団での移動だとは思えないほど、ここまでの移動は全てうまくいっている。
周りの様子や気配を伺いながら採取地であるルティルーの森を進んでいけば、自然とたくさんの素材が目に入ってくる。
ああ、アキトが喜びそうな素材や、キースが喜びそうな素材がたくさんあるな。ここに二人がいれば、採取していこうかと声をかけるんだが。
そんな事を考えながら前へ前へと進んでいると、前を歩いていたジルさんが不意に口を開いた。
「もしここの廃墟が当たりの場所だとしたら…この辺りにはあまり詳しくないアキトさんが一人きりで捕まったのではなく、キースくんが一緒にいるのは良い事かもしれませんね」
いつもならこういう場ではあまり喋らずに控えている事が多いジルさんが、珍しくもそう呟いた事に少しだけ驚いてしまった。
「ねージル。それって…どういう意味ー?」
不思議そうに顔を覗き込みながら尋ねたウィル兄に、ジルさんはあっさりと答えた。
「この鳥の鳴き声ですよ」
「鳥…?」
「…この甲高い声か?」
不思議そうに口にしたファーガス兄さんに、耳を澄ませていたマティさんが答えた。
「ああ、これは…ディーセルプの鳴き声だな?」
そういえば、マティさんは鳥が好きなんだったか。ジルさんはマティさんの言葉に、ええそうですとすぐに頷いた。
「ディーセルプというと…ヴァコクの木の蜜を吸う鳥だな」
そう呟けば、ああそうだなとマティさんが答えてくれた。
「もし捕らわれている場所からこの鳥の鳴き声が聞こえたとしたら、キースくんならそれだけでここが辺境領だと気づきます。最近一番お気に入りの本が、辺境の生物と植物という図鑑ですから」
誇らし気にそう言ったジルさんは、それにと言葉を続けた。
「もし自力で二人が脱出できたとしても、キースくんなら確実にこのキャルの花に気づくでしょう」
そう言ってジルさんが指差したのは、淡い緑色をした小さな花だった。
「ああ、そうか、ここにはキャルの花があったな」
「この森にしか咲かない花…か」
そしてこの森から持ち出せない花――でもあるんだよな。
これも精霊の悪戯なんだろうかと言われているんだが、この森から一歩出た瞬間、魔導収納鞄に入れていても手に握りしめていても一気に枯れるというなかなかに面倒な素材だ。
「キャルの花に気づけばここがルティルーの森だとすぐに気づいてくれるでしょう。もちろんキースくんはルティルーの森の街道の罠も知っていますから、きっとうまく回避してくれます」
ここ出身でないアキトさんがまだこの辺りに詳しくないのは、仕方がない事ですからねと、ジルさんはここにはいないアキトのフォローまでさらりとしてくれた。
別にアキトを侮っているとは思わなかったんだが、配慮までしてくれるとは。本当にジルさんは優しい人だ。
「さすが俺達の弟だな」
「うんうん、さすがだよねー」
「いや、キースももちろんすごいんだが、それを告げられても一瞬で受け入れて従ってくれるだろうアキトくんもすごいと思うんだが」
マティさんはそう言ってアキトの事まで褒めてくれた。
うん、そうだな。アキトはこどものいう事なんて信じられないとは、何があっても絶対に言わないだろう。キースくんすごいと言いながら、喜んで従ってくれると思う。
「まあこれは、あくまでも二人が同じ場所に捕まえられていたらという前提があっての話し…なんだがな」
嫌そうにそう呟いたファーガス兄さんに、ウィル兄も嫌そうに眉間にしわを寄せた。
「あーそっか、二人がバラバラに捕らえられてる可能性もあるのかー」
「…言っていて腹が立ってきたな」
「奇遇だなファーグ、私も腹が立ってきたよ」
ぼそりと呟いたファーガス兄さんに、マティさんも低い声で同意を返した。
「あーうん、俺も」
「私もですね」
ウィル兄はともかく、珍しくもジルさんまでが険しい目をしてそう呟いた。
うん、そうだな。俺ももちろん抑え込んでいた怒りが込み上げてきたよ。
「よし、この怒りは牙蛇盗賊団にぶつけるか」
ファーガス兄さんが迫力のある笑みでそう呟く。
「いいねー賛成ー」
ウィル兄は物騒に笑いながら同意を返す。
「そうだな、ぜひともそうしよう」
マティさんは腰につけた剣を撫でながら獰猛に笑った。
「ええ、思いっきりぶつけましょう」
ジルさんは目が笑っていない笑みで、さらりとそう答えた。
「そうだな、それが良い」
そうして二人を助け出すんだ。
決意を胸に怒りと殺意を滲ませながら、俺達は森の奥へ奥へと進んで行った。
周りの様子や気配を伺いながら採取地であるルティルーの森を進んでいけば、自然とたくさんの素材が目に入ってくる。
ああ、アキトが喜びそうな素材や、キースが喜びそうな素材がたくさんあるな。ここに二人がいれば、採取していこうかと声をかけるんだが。
そんな事を考えながら前へ前へと進んでいると、前を歩いていたジルさんが不意に口を開いた。
「もしここの廃墟が当たりの場所だとしたら…この辺りにはあまり詳しくないアキトさんが一人きりで捕まったのではなく、キースくんが一緒にいるのは良い事かもしれませんね」
いつもならこういう場ではあまり喋らずに控えている事が多いジルさんが、珍しくもそう呟いた事に少しだけ驚いてしまった。
「ねージル。それって…どういう意味ー?」
不思議そうに顔を覗き込みながら尋ねたウィル兄に、ジルさんはあっさりと答えた。
「この鳥の鳴き声ですよ」
「鳥…?」
「…この甲高い声か?」
不思議そうに口にしたファーガス兄さんに、耳を澄ませていたマティさんが答えた。
「ああ、これは…ディーセルプの鳴き声だな?」
そういえば、マティさんは鳥が好きなんだったか。ジルさんはマティさんの言葉に、ええそうですとすぐに頷いた。
「ディーセルプというと…ヴァコクの木の蜜を吸う鳥だな」
そう呟けば、ああそうだなとマティさんが答えてくれた。
「もし捕らわれている場所からこの鳥の鳴き声が聞こえたとしたら、キースくんならそれだけでここが辺境領だと気づきます。最近一番お気に入りの本が、辺境の生物と植物という図鑑ですから」
誇らし気にそう言ったジルさんは、それにと言葉を続けた。
「もし自力で二人が脱出できたとしても、キースくんなら確実にこのキャルの花に気づくでしょう」
そう言ってジルさんが指差したのは、淡い緑色をした小さな花だった。
「ああ、そうか、ここにはキャルの花があったな」
「この森にしか咲かない花…か」
そしてこの森から持ち出せない花――でもあるんだよな。
これも精霊の悪戯なんだろうかと言われているんだが、この森から一歩出た瞬間、魔導収納鞄に入れていても手に握りしめていても一気に枯れるというなかなかに面倒な素材だ。
「キャルの花に気づけばここがルティルーの森だとすぐに気づいてくれるでしょう。もちろんキースくんはルティルーの森の街道の罠も知っていますから、きっとうまく回避してくれます」
ここ出身でないアキトさんがまだこの辺りに詳しくないのは、仕方がない事ですからねと、ジルさんはここにはいないアキトのフォローまでさらりとしてくれた。
別にアキトを侮っているとは思わなかったんだが、配慮までしてくれるとは。本当にジルさんは優しい人だ。
「さすが俺達の弟だな」
「うんうん、さすがだよねー」
「いや、キースももちろんすごいんだが、それを告げられても一瞬で受け入れて従ってくれるだろうアキトくんもすごいと思うんだが」
マティさんはそう言ってアキトの事まで褒めてくれた。
うん、そうだな。アキトはこどものいう事なんて信じられないとは、何があっても絶対に言わないだろう。キースくんすごいと言いながら、喜んで従ってくれると思う。
「まあこれは、あくまでも二人が同じ場所に捕まえられていたらという前提があっての話し…なんだがな」
嫌そうにそう呟いたファーガス兄さんに、ウィル兄も嫌そうに眉間にしわを寄せた。
「あーそっか、二人がバラバラに捕らえられてる可能性もあるのかー」
「…言っていて腹が立ってきたな」
「奇遇だなファーグ、私も腹が立ってきたよ」
ぼそりと呟いたファーガス兄さんに、マティさんも低い声で同意を返した。
「あーうん、俺も」
「私もですね」
ウィル兄はともかく、珍しくもジルさんまでが険しい目をしてそう呟いた。
うん、そうだな。俺ももちろん抑え込んでいた怒りが込み上げてきたよ。
「よし、この怒りは牙蛇盗賊団にぶつけるか」
ファーガス兄さんが迫力のある笑みでそう呟く。
「いいねー賛成ー」
ウィル兄は物騒に笑いながら同意を返す。
「そうだな、ぜひともそうしよう」
マティさんは腰につけた剣を撫でながら獰猛に笑った。
「ええ、思いっきりぶつけましょう」
ジルさんは目が笑っていない笑みで、さらりとそう答えた。
「そうだな、それが良い」
そうして二人を助け出すんだ。
決意を胸に怒りと殺意を滲ませながら、俺達は森の奥へ奥へと進んで行った。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜
なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。
藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!?
「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」
……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。
スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。
それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。
チート×獣耳×ほの甘BL。
転生先、意外と住み心地いいかもしれない。