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1061.【ハル視点】アキトの魔力
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森の中をこれだけの速度を維持して進むにはかなりの技術が必要なんだが、今ここに集まっているのは森での移動を苦にしない人、いやむしろ森での移動が得意な人ばかりだ。
木の根や低木や地面の凹凸も何なく超えて、俺達はひたすら速足で森の中を進み続けている。
「例のアジトらしき廃墟までは、まだもう少しかかるか…?」
ファーガス兄さんが誰にともなく口にした疑問に、誰よりも素早く答えたのはジルさんだった。
「そうですね。距離から考えると…今の速度なら後三十分程で到着する…という所でしょうか」
「さすがジルー、今日もすっごく分かりやすい説明だね」
嬉しそうに褒めるウィル兄さんを、ジルさんは移動しながらもジロリと睨みつけた。
「ウィリアム隊長、揶揄わないでください」
「ウィルっていつも見たいに呼んでよーそれに、別に揶揄ってないよーねぇ、ファグ兄?」
「ああ、本当にジルの説明はいつも分かりやすいよ、ありがとう」
「いえ…そんな…」
あまりにも直球なお礼の言葉に照れているジルさんに、速度を落とさずにファーガス兄さんの隣を歩き続けているマティさんも口を開いた。
「ジルはもっと自分を誇って良いと、私も思うな」
マティさんにまでそう言われたジルさんは、困り顔で曖昧に頷いている。なるほど後三十分ほどで着くのかと考えながら、俺は足元を確認しながらの移動を続けていた。
その時。
「…っ!」
不意に感じたのは、気になる魔力だった。
まるで何かに覆い隠されているようで、何故かぼんやりとしか感じ取れなかったが、これは――この魔力は確実にアキトのものだ。
アキトが魔力を練り上げている?つまりそれは今まさにアキトが交戦中だという事じゃないのか?
もしこれが盗賊団のアジトの中から感じたものなら、自力で脱出しようとしているんだなと思っていたかもしれない。
だが、何故かアキトの魔力を感じた場所までの距離が、やけに近かった。
それはつまり既に脱出しているのか、今まさにどこかへ移送されようとしているという事になる。
ああ、こうしてのんびりと進んでいる場合じゃないな。少なくとも魔力を練り上げられているという事は、アキトは無事でいるという事だ。
「ファーガス兄さん…」
「ん?ハル、どうかしたか?」
アキトの魔力に気づいたのは、どうやら俺だけらしい。ファーガス兄さんだけでは無く、その場にいる全員がどうしたんだと言いたげに俺を見つめていた。
「ごめん」
「ごめん…だと?それはどういう…」
どういう意味だと尋ねようとしたのだろうファーガス兄さんの言葉が終わる前に、俺はもう全速力で駆け出していた。
「ごめん。先に行くね!」
「は?…待て待て、ハル!きちんと理由を説明してからー」
言いたい事はもちろん分かるんだが、今は理由を説明している時間さえも惜しい。
練り上げられていたアキトの魔力は、ついさっき一瞬で消え去った。
あの消え方はつまり、アキトが魔法を発動したって事なんだろう。まさに今交戦中だというなら、俺はほんのわずかでも早くアキトの場所に辿り着きたい。
「ねぇ、ファーガス兄さん、ハルはもう走っていっちゃったから…ここにはいないよー?」
そう口にしているウィル兄さんの声がうっすらと背後から聞こえたが、俺は何の反応も返さずに森の木々に隠れるようにしてぐんぐんと加速していく。
うん、本当に父さんには感謝しないといけないな。
父さんが俺をこの隊の総隊長に指名せずにいてくれたおかげで、今これほど気軽に一人で動けているんだから。さすがにこの隊の指揮を取る者に指名されていたら、いくら俺でもここで一人で突っ込むという選択は出来なかった…かもしれないからな。いや、無理やりしていたような気もするか。
ありがとう、父さん。
心の中で父さんに感謝の言葉を伝えながら駆け続けていると、不意にまたアキトの魔力の反応を感じた。
うん、こっち…だな。
だがやっぱり気配は感じないし、声も聞こえない。気配を隠蔽するような魔道具か何かを使っているのか?そんなものキースも持っていなかった筈なんだが…。
そんな事を考えつつも足だけは止めない。さっきからアキトの魔力だけはずっと練り上げられているからな。
あの魔力を目指して走り続ければ良いだけだ。俺は更に足に力を入れて速度をぐんっと上げた。
木の根や低木や地面の凹凸も何なく超えて、俺達はひたすら速足で森の中を進み続けている。
「例のアジトらしき廃墟までは、まだもう少しかかるか…?」
ファーガス兄さんが誰にともなく口にした疑問に、誰よりも素早く答えたのはジルさんだった。
「そうですね。距離から考えると…今の速度なら後三十分程で到着する…という所でしょうか」
「さすがジルー、今日もすっごく分かりやすい説明だね」
嬉しそうに褒めるウィル兄さんを、ジルさんは移動しながらもジロリと睨みつけた。
「ウィリアム隊長、揶揄わないでください」
「ウィルっていつも見たいに呼んでよーそれに、別に揶揄ってないよーねぇ、ファグ兄?」
「ああ、本当にジルの説明はいつも分かりやすいよ、ありがとう」
「いえ…そんな…」
あまりにも直球なお礼の言葉に照れているジルさんに、速度を落とさずにファーガス兄さんの隣を歩き続けているマティさんも口を開いた。
「ジルはもっと自分を誇って良いと、私も思うな」
マティさんにまでそう言われたジルさんは、困り顔で曖昧に頷いている。なるほど後三十分ほどで着くのかと考えながら、俺は足元を確認しながらの移動を続けていた。
その時。
「…っ!」
不意に感じたのは、気になる魔力だった。
まるで何かに覆い隠されているようで、何故かぼんやりとしか感じ取れなかったが、これは――この魔力は確実にアキトのものだ。
アキトが魔力を練り上げている?つまりそれは今まさにアキトが交戦中だという事じゃないのか?
もしこれが盗賊団のアジトの中から感じたものなら、自力で脱出しようとしているんだなと思っていたかもしれない。
だが、何故かアキトの魔力を感じた場所までの距離が、やけに近かった。
それはつまり既に脱出しているのか、今まさにどこかへ移送されようとしているという事になる。
ああ、こうしてのんびりと進んでいる場合じゃないな。少なくとも魔力を練り上げられているという事は、アキトは無事でいるという事だ。
「ファーガス兄さん…」
「ん?ハル、どうかしたか?」
アキトの魔力に気づいたのは、どうやら俺だけらしい。ファーガス兄さんだけでは無く、その場にいる全員がどうしたんだと言いたげに俺を見つめていた。
「ごめん」
「ごめん…だと?それはどういう…」
どういう意味だと尋ねようとしたのだろうファーガス兄さんの言葉が終わる前に、俺はもう全速力で駆け出していた。
「ごめん。先に行くね!」
「は?…待て待て、ハル!きちんと理由を説明してからー」
言いたい事はもちろん分かるんだが、今は理由を説明している時間さえも惜しい。
練り上げられていたアキトの魔力は、ついさっき一瞬で消え去った。
あの消え方はつまり、アキトが魔法を発動したって事なんだろう。まさに今交戦中だというなら、俺はほんのわずかでも早くアキトの場所に辿り着きたい。
「ねぇ、ファーガス兄さん、ハルはもう走っていっちゃったから…ここにはいないよー?」
そう口にしているウィル兄さんの声がうっすらと背後から聞こえたが、俺は何の反応も返さずに森の木々に隠れるようにしてぐんぐんと加速していく。
うん、本当に父さんには感謝しないといけないな。
父さんが俺をこの隊の総隊長に指名せずにいてくれたおかげで、今これほど気軽に一人で動けているんだから。さすがにこの隊の指揮を取る者に指名されていたら、いくら俺でもここで一人で突っ込むという選択は出来なかった…かもしれないからな。いや、無理やりしていたような気もするか。
ありがとう、父さん。
心の中で父さんに感謝の言葉を伝えながら駆け続けていると、不意にまたアキトの魔力の反応を感じた。
うん、こっち…だな。
だがやっぱり気配は感じないし、声も聞こえない。気配を隠蔽するような魔道具か何かを使っているのか?そんなものキースも持っていなかった筈なんだが…。
そんな事を考えつつも足だけは止めない。さっきからアキトの魔力だけはずっと練り上げられているからな。
あの魔力を目指して走り続ければ良いだけだ。俺は更に足に力を入れて速度をぐんっと上げた。
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