生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1247.手料理は

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 テーブルの上に並んだ料理を、ハルはまじまじと観察している。あまりに真剣な表情に、俺も思わず一緒になって見つめてしまった。

 色とりどりの野菜をたっぷり使ったスープは、絶妙な深さのある美しいお皿に入れられている。ちょうど具材が見える深さみたいで、パッと見ただけで食欲をそそる見た目だ。

 その横に並んでいるウカを使ったローストビーフのような肉料理は、赤身の部分が見えるようにとすこしずつずらして並べられている。

 お肉の横には一緒に食べると美味しい、肉と相性の良い野菜が添えられていて華やかだ。味付けを変えるための果汁やソースなどの調味料も、小さな器に入れられいて細やかな気づかいを感じる。

 中でも俺が一番驚いたのは、固めに焼いた二種類のクラッカーだ。クラッカーは四角く切り分けただけだから、どうしても見ためが地味なんだよね。冒険者が採取地で片手で食べていそうなと言えば、ある程度は想像できるかな。

 そんな無骨なクラッカーは、美しく飾り切りされた果物や切り分けたチーズ、ジャムなどと一緒に盛り付けられていた。

 うん、すごい。これだけでおつまみとしてお店で出せそうな見た目をしてる。しかもかなり高級なおつまみだと思う。

「美味しそうだね」

 嬉しそうに笑いながらそう言ったハルに、俺は思わずそうだねと答えてしまった。

 だってさ、これ本当に俺が作ったやつ?って聞きたくなるぐらい美しく盛り付けられてるからね。

 あ、でもよくよく見ると、肉料理の肉の幅が均一じゃない場所があるな。運、間違いなく俺が作った料理みたいだ。

 こんな所で実感したくなかったな。

「まずは座ろうか?」
「そうだね」

 向かい合わせで腰を下ろして、俺達は自然と笑みを浮かべた。手に飲み物を持って、どちらからともなく杯を掲げる。

「ハル、改めておかえり。約束通り、無事に帰ってきてくれて良かった」
「改めてただいま、アキト。まさか手料理なんて嬉しい驚きが待ってくれているとは、想像もしてなかったよ」

 ふふと笑ったハルに、俺も喜んでくれて良かったと笑い返す。

「「いただきます」」

 ぴったりと声を重ねた俺達は、そっと飲み物に口をつけた。

 あ、これ…果実水にちょっとだけお酒が混ぜられてる?初めて飲んだけど美味しい。

「これ、美味しい!」
「すこしだけ酒が入ってそうだね」
「うん、酔わない程度だけどね」
「ああ、でもこれは良いな」

 すっきりしていて飲みやすいと嬉しそうに笑ったハルは、さてと笑顔で料理に視線を向けた。

「アキトが作ってくれた料理は、どれかな?折角だし今夜はまずはそれから食べたいんだけど…」

 そう言いながらハルはまじまじと料理を見つめている。俺が作ったやつがどれかを当てようとしてるような動きだ。

 ああ、そっか。手料理としか言ってないから、ここに並んでいるうちのどれかひとつが俺の作ったやつだと思ってるのか。

「このテーブルの上に並んでるのは、全部俺が作ったやつだよ」

 なるほど。こうやって説明ができるように、きっとラスさんは俺の料理だけを並べてくれたんだろうな。

 そしてラスさんにとっては、あんなに見事な飾り切りの野菜や果物、チーズなどは切るだけだから料理じゃない認定だったんだと思う。

「え…この具だくさんで美味しそうなスープも?」
「うん」
「この歯ごたえがあって美味しそうなクラッカーも?」
「うん」
「この最高に美味しそうな肉料理も?」

 美味しそう、美味しそうときて、最高に美味しそうと来るとは思っていなかった俺は、思わず笑ってしまった。

「うん。ちなみにそこの肉料理用のソースも俺が作ったよ」

 悪戯心で笑いながらもそう声をかければ、ハルはぽかんと口を開いたままじっとこちらを見てくる。あ、珍しい反応だ。滅多に見れない表情をしている。

 それしても、口を開いたまま呆然としてても、こんなに格好良いってどういう事?俺だったら、絶対ちょっと間抜けな感じになると思うんだけど。

「…まさかこれが全部手料理だとは、思っていなかったよ。すごいな。頑張ってくれてありがとう」

 しみじみと呟いたハルの言葉に、俺は照れ笑いを浮かべつつ、どういたしましてと何とかそう答えた。
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