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1281.【ハル視点】目覚め
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ふと目を覚ました俺は、まだ眠気でぼんやりとしたまま、目の前の景色を眺めていた。
景色と言ってもベッドに寝転がったままの俺からは、それほど多くのものは見えない。
いまの俺の視界に見えているのは、まるで俺に寄り添うようにして眠っているアキトの姿ぐらいだ。スヤスヤと眠っている幸せそうなアキトを起こしてしまわないように気を付けながら、視線だけをそっと窓の方へと向ける。
幾重にも重ねられている布の向こうからは、うっすらと朝の光が入ってきている。この感じだと、まだ早朝だろうか。
魔導収納の腕輪は眠る時でも付けたままなんだが、そこから時間の分かる魔道具を取り出すのはかなり難しい。いや、取り出すだけなら簡単だが、アキトの体のむこう側に手があるからな。
アキトを起こさずに取り出すのは、至難の業だ。
幸いにも、今日の予定は昼からの報告会だけだ。この明るさなら既に昼を過ぎているという可能性は無い。
ホッとした俺は、腕の中で眠るアキトへと視線を戻した。
飽きもせずに寝顔を眺めていると、不意にうっすらとアキトの目が開いた。おはようと声をかけようかとも思ったが、これはまだ寝ぼけていそうな気がするな。
寝起きの悪くないアキトなら、声をかければハッとしてすぐに起きるだろう。でもまだ少し早い時間帯だ。せっかくならアキトが気づくまでは、身動きもせずに黙っていよう。
そう決めた俺が何も言わずにそっと見守っていると、アキトはぎゅっと目をつむったまま、ただすりすりと俺の体へとすり寄ってきた。
寝ぼけながらもどんどん近づいてくるアキトにたまらない気持ちになりながら、それでもじっと我慢していると、アキトはそのまま俺の胸元にそっと頭を寄せてきた。
あまりの可愛さに、自分で決めた身動きもせずに黙っているという決意なんてどこかへ飛んでいってしまった。
怖がらせないようにそっと手を伸ばし、アキトの体を柔らかく抱き寄せる。
明らかにまだ眠たそうだが、それでもアキトはうっすらと目を開いた。そうしてぱちりと目が合った瞬間、アキトはふわりと笑った。
「…はよ、ハル」
まだアキト本人に言った事は無いが、実は俺はこの掠れた声での朝の挨拶が好きだ。一緒に眠る相手以外には、見せない姿にすこしの特別感を覚えるんだよな。
そんな気持ちを綺麗に隠して、俺はにっこりと笑って口を開いた。
「アキト、おはよう」
「も、おきてた?」
「ああ、少し前からね。アキトはまだ寝てても良かったのに」
ぽんぽんと優しく背中を叩いてみれば、アキトはふにゃりと笑って目をつむった。このまま二度寝するかなと思ったが、アキトはふるふると頭を振ってから尋ねた。
「ハル、いまって何時頃?」
さっきまでとは違う、少し目が覚めてきた声だ。アキトの質問を受けて、俺はすぐに魔導収納の腕輪から時間の分かる魔道具を取り出した。
「まだ8時過ぎだよ」
「8時か…」
そう呟いたアキトは、んーと呟くと、不思議そうに首を傾げた。
「ねぇ、ハル。昨日って…ご飯食べた後、どうしたっけ?」
「メイドたちに片付けを頼んでから、二人で部屋に戻ってきたよ」
「えー…そうだっけ…?」
そう言いながらも、すりすりとさらにすり寄ってくるアキトの姿に、まるで猫のようだなと思ってしまった。自然と笑みがこぼれてしまう。
「メイドたちに片付けを頼む時は起きてたけど、部屋に戻ったらごめんねむいって呟いてたよ?」
「あー…なんかそれは…ぼんやり覚えてるかも」
「慌てて支えた時には眠すぎたのかもう目は閉じかけてたけど…それでも浄化魔法はきっちりアキトがかけてくれたんだよ…?」
「え、そうなの?それは全く覚えてない!」
完全なる無意識での行動だと、アキトは困り顔でそう呟いた。そうかあれは無意識だったのか。
「それであんなに精密な浄化魔法がかけられるんだから、すごいよ」
魔法のおかげで全身が綺麗になったから、服だけ着替えさせて一緒にベッドに潜り込んだんだと俺は続けた。
まあその後で俺は一度クレットとウィル兄に呼び出されたわけだけど、これはわざわざ言わなくても良いだろう。
「うわー、ハルに俺の着替えまでさせちゃったんだ…ごめんね」
「いや、アキトの世話を焼けるのは、俺にとっては嬉しいから全く気にしなくて良いよ」
むしろ気を許してくれてるなって実感できて嬉しいぐらいだからと、さらりと本音を織り交ぜて答える。
景色と言ってもベッドに寝転がったままの俺からは、それほど多くのものは見えない。
いまの俺の視界に見えているのは、まるで俺に寄り添うようにして眠っているアキトの姿ぐらいだ。スヤスヤと眠っている幸せそうなアキトを起こしてしまわないように気を付けながら、視線だけをそっと窓の方へと向ける。
幾重にも重ねられている布の向こうからは、うっすらと朝の光が入ってきている。この感じだと、まだ早朝だろうか。
魔導収納の腕輪は眠る時でも付けたままなんだが、そこから時間の分かる魔道具を取り出すのはかなり難しい。いや、取り出すだけなら簡単だが、アキトの体のむこう側に手があるからな。
アキトを起こさずに取り出すのは、至難の業だ。
幸いにも、今日の予定は昼からの報告会だけだ。この明るさなら既に昼を過ぎているという可能性は無い。
ホッとした俺は、腕の中で眠るアキトへと視線を戻した。
飽きもせずに寝顔を眺めていると、不意にうっすらとアキトの目が開いた。おはようと声をかけようかとも思ったが、これはまだ寝ぼけていそうな気がするな。
寝起きの悪くないアキトなら、声をかければハッとしてすぐに起きるだろう。でもまだ少し早い時間帯だ。せっかくならアキトが気づくまでは、身動きもせずに黙っていよう。
そう決めた俺が何も言わずにそっと見守っていると、アキトはぎゅっと目をつむったまま、ただすりすりと俺の体へとすり寄ってきた。
寝ぼけながらもどんどん近づいてくるアキトにたまらない気持ちになりながら、それでもじっと我慢していると、アキトはそのまま俺の胸元にそっと頭を寄せてきた。
あまりの可愛さに、自分で決めた身動きもせずに黙っているという決意なんてどこかへ飛んでいってしまった。
怖がらせないようにそっと手を伸ばし、アキトの体を柔らかく抱き寄せる。
明らかにまだ眠たそうだが、それでもアキトはうっすらと目を開いた。そうしてぱちりと目が合った瞬間、アキトはふわりと笑った。
「…はよ、ハル」
まだアキト本人に言った事は無いが、実は俺はこの掠れた声での朝の挨拶が好きだ。一緒に眠る相手以外には、見せない姿にすこしの特別感を覚えるんだよな。
そんな気持ちを綺麗に隠して、俺はにっこりと笑って口を開いた。
「アキト、おはよう」
「も、おきてた?」
「ああ、少し前からね。アキトはまだ寝てても良かったのに」
ぽんぽんと優しく背中を叩いてみれば、アキトはふにゃりと笑って目をつむった。このまま二度寝するかなと思ったが、アキトはふるふると頭を振ってから尋ねた。
「ハル、いまって何時頃?」
さっきまでとは違う、少し目が覚めてきた声だ。アキトの質問を受けて、俺はすぐに魔導収納の腕輪から時間の分かる魔道具を取り出した。
「まだ8時過ぎだよ」
「8時か…」
そう呟いたアキトは、んーと呟くと、不思議そうに首を傾げた。
「ねぇ、ハル。昨日って…ご飯食べた後、どうしたっけ?」
「メイドたちに片付けを頼んでから、二人で部屋に戻ってきたよ」
「えー…そうだっけ…?」
そう言いながらも、すりすりとさらにすり寄ってくるアキトの姿に、まるで猫のようだなと思ってしまった。自然と笑みがこぼれてしまう。
「メイドたちに片付けを頼む時は起きてたけど、部屋に戻ったらごめんねむいって呟いてたよ?」
「あー…なんかそれは…ぼんやり覚えてるかも」
「慌てて支えた時には眠すぎたのかもう目は閉じかけてたけど…それでも浄化魔法はきっちりアキトがかけてくれたんだよ…?」
「え、そうなの?それは全く覚えてない!」
完全なる無意識での行動だと、アキトは困り顔でそう呟いた。そうかあれは無意識だったのか。
「それであんなに精密な浄化魔法がかけられるんだから、すごいよ」
魔法のおかげで全身が綺麗になったから、服だけ着替えさせて一緒にベッドに潜り込んだんだと俺は続けた。
まあその後で俺は一度クレットとウィル兄に呼び出されたわけだけど、これはわざわざ言わなくても良いだろう。
「うわー、ハルに俺の着替えまでさせちゃったんだ…ごめんね」
「いや、アキトの世話を焼けるのは、俺にとっては嬉しいから全く気にしなくて良いよ」
むしろ気を許してくれてるなって実感できて嬉しいぐらいだからと、さらりと本音を織り交ぜて答える。
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