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7歳
53、お城
光の日(月曜日)、四の鐘に起こされた。
五の鐘には出るので今日は一人で、ロールパンとベーコンエッグとサラダを、お部屋に持ってきて貰って食べた。
着替えの服は一昨日と同じ淡いオレンジのドレス。
「こちらにしないんですか?」
「・・・・いい。まだとっておくの」
イレッサがもう一つのAラインのドレスを指すけれど、数時間着ただけで汚れてもいないし汗もかいてないからこっちでいい。
・・だってドライクリーニング出来ないし、洗濯機もない。手洗いされたら、形状記憶とかないからその後のお手入れが大変。
魔石で魔道具を作れる人も使える人も殆どいないから、小型魔道具はいくらかあるけど、大型魔道具は普及していない。
発電機・・・と言いたいけど、私は想像力と魔力があっても、理論と仕組み(構造)が分からないから作れない。
王都にも魔道具店は幾つかあったので、一度サリベートの大通りの魔道具店に入ったら、火や灯りや水を使う生活魔道具と、お守りや防御の魔石はあった。3ピトくらいならば、通常に作れる人はいるらしい。それで作れる範囲の魔道具しか作らない。
まあ、作れないし使えない、とも言う。
アランダールさんも「注文されるのは2ピト3ピトまでだなぁ」と言ってたし。
髪の毛はいつものポニーテールで、一昨日編み込んでた細いリボンを結んでもらってから、マフラーと手袋を着けた。
そして肩からはポーチ。
ドレスにポーチはちょっと微妙だけど荷物もたくさん入るし、今年は結構寒いみたいなので冬装備は大事だ。
「ミラ、公爵様が来たよ」
父様が心配そうな顔で部屋へ来た。
一緒に診察室と待合室を抜けて外へ出る。もう患者さんが三人待っていた。今年も風邪に気を付けなきゃね。
外へ出ると馬車の前で、厚地の黒いコートに手袋を嵌め、紳士帽を被った伯父様が待っていた。
「やあ、シングレア男爵。今日はミラドール嬢を借りていくよ」
「・・よろしくお願いします。ミラ、気をつけるんだよ?」
「はい、行ってきます」
馬車で揺られ始めると、伯父様が言った。
「ミラドール嬢、この前言っていた事で気になったんだが・・精霊に守られる、とはどういう事かな?」
私は毛糸の手袋を外して左手の小指を見せた。
「・・・これが精霊の守りです」
「・・・・・・指輪?」
「指輪じゃないです。擦っても取れません。誰かに襲われても弾かれて魔力が混じらないから、ちゃんと精霊がいる相手を選べる、って言われました」
「そんな守りがあったのか?・・これは・・見た事がないな。・・・どうやって貰うんだい?」
伯父様がビックリした顔になっている。
・・・言ってもいいのかな?
私が考え込むと、シェラがポンと現れたので横を見た。
『・・言えるなら言ってもいいわよ?。(言えなかったら言葉に出来ないだろうし)貴女に守りを掛けたら頭の中に情報が増えて私も驚いたのよ。それにね、頑張れば三人以上増やせるって、精霊が教えてると思ってたんだけど最近の子・・・ウィルやカノンは前の契約者にも言ってないって聞いて驚いたわ!まあ私は、暫くまともな契約者が居なかったから言ってないけど、普通の五属性は契約に付きやすいから、増やせるって言ってると思ってたの。そしたら、最初は頑張ってもある程度魔力が増えると、毎日頑張る子供はいなくなっちゃうんですって。だから最近の精霊は聞かれなかったら言わないらしいわ。でも大概の子供は・・・全員を揃えるのは無理よ。二千年以上昔でもそんなに見た事ないし、金の守りを持つ契約者なんて殆ど見た事なかったから、付く事が出来たのは私も初めてだもの』
[7人で守りを掛けよ。契約者も精霊も守られる]
という文章だけらしい。
凄く曖昧・・・どう守られるのか全く判らないと思う。
私に守りを付けた時、いつもと違う守りだったので、シェラとエリーゼは『(!?・・何これ?)』と、ちょっとビックリしたそうで、あとから、そういえば昔見たことはあったような・・・と思い出したらしい。
『まあ・・魔力が交じらなくても、契約者が冒険者じゃなかったら魔物も倒さないし、強くなろうとしないから私達も殆ど大精霊には成れないだろうけどね』
(つまり守りを付けないと、いつ解除になるか分からないし、大精霊になる為のスタートラインに立てないから、精霊も期待してないんだ・・・)
『だから私達にとって離れる制約が出来たのは、死ぬまで一緒、より良かったの。早めにやり直しが出来るし』
確かに。契約者が頑張ってくれないと、守りがいも教えがいもないものね。
『でも大人になってから揃えた契約者なら、昔はいたからね。反対の手を出してみて・・・・』
?・・・手袋を外して守りのない右手を出すと、シェラが小指に触れた。キラキラと明るくなったあと、反対の小指に薄い青の蔦模様の刺青がクルッと巻き付いた。すると手を眺めている私の腕にペタッと付いた途端、スウーッと2ピトくらい?魔力を取られた気がした。
『ふぅ~・・。普通はいつもこれよ。自分より上の精霊を持つ者や、魔力が多い者に無理やり襲われたら駄目だけど、弱い者なら弾くし結構守ってくれるわよ?こっちなら私も何度か付けた事があるし。でも金の守りはね・・・・
[そして、金の守りを持つ者に異を唱える者は、罰を受ける]
ってあったのよ!凄いでしょう?』
最初の守りの後に、文章が増えていたそうだ。
(やはり魔力が多い方が優位なんだ。やっぱりこれからも増えなくなる限界まで頑張ろう!でも罰って何?異を唱えるって・・・逆らっちゃ駄目って事?)
シェラが嬉しそうに話すのを聞きながら、目を丸くして手を見比べている私に、伯父様が眉を寄せて聞いた。
「その模様は何だ?・・・精霊は何と?」
「えっと・・これは大人になったら貰えないそうです。大人になってからはこっちの守りだって・・・あ!」
蔦の刺青は少し光ると数分で消えてしまい、シェラが肩を竦めた。
『私は今まだ下級だから、一人の守りじゃこんなものよ。上級精霊が掛けて、やっと半日くらいじゃないかしら?大精霊でも・・・一~二日くらいだと思う。7人で掛ければその蔦も、守りが掛かって消えないわよ』
(揃ってないと時間制限ありなのか・・そして下級はたった数分か。3ピト近く魔力を取られて数分じゃあ連続で掛けられないね。精霊だって魔力がもらえない契約者じゃ、自分の命が危ないから掛けたくはないだろう・・・)
「じゃあ・・(中級はどのくらい?)」
『そうねぇ・・・昔の記憶だと、下級は一瞬ね。中級は一鐘くらいで魔石5~6ピトくらいの魔力を貰うわね。上級は半日ぐらい保つけど魔石10ピト以上の魔力が必要よ。最上級は一~二日持つらしいけど成った事ないから分からないわ。かなり負担がかかるから、掛けた分の魔力をすぐ貰えるくらい、契約者の魔力が多くないと姿を保てないから助けたり出来ないわ。時間が伸びても負担は同じだからウィルは前の契約者には、言わなかったし掛けなかった、って言ってたわ。トロイ(新人)以外はみんな似たり寄ったりみたい。でもね・・・貴女はかなり多くて自分達もきっと幾らかは上がれるだろうから、10歳までに揃ってなかったら、二人くらいずつ順番に守りを掛けるつもりでいたらしいわよ?』
え!?そんな事考えてたの?・・・それは・・凄く嬉しいけど。
でも精霊本体の魔力(魔素)は3、6、10くらいか。・・じゃあ大精霊だと・・・15以上は取られるかも。・・・一応精霊が魔素変換出来ると言っても常にギリギリなんだ。契約者の魔力が増えないと精霊消滅案件だわ。
これは魔力が多い人が増えるまでは滅多に言えない。と言うか言わない方がいいね。
精霊達の思いにホッコリしたあと、二種類の守りを簡単に説明すると、青白い顔で眉間に皺を寄せた。
「全精霊を揃えるのか。・・君は・・・」
「・・・・全員います」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
全部いる。と聞いて絶句した。普通の者よりは多いだろうと思っていたが、まさか全部いるとは。
四歳に最初の精霊が現れてから少しずつ魔法訓練をして、五歳の洗礼の時はもう四人いて、拐われた時に悪い人に闇魔法を掛けて七人揃ったので今年の洗礼は行ってないと言う。
見たところ、小指の印は契約印だろう。もしその守りがうちの子にもあれば・・・・。
「それは、大人になるまでに精霊を揃えればいいのか?」
私が質問すると、首を傾げて左側を見た。
「・・ね、大人って15歳になっ・・え?違うの?何で?・・・じゃあ・・え?魔力が変わった時!?・・・・・混じる訳じゃなく?・・・・変わる、っていつ・・・?」
ミラドール嬢が眉を寄せて考え込んだ。
「15の成人までじゃないのか?」
「違うらしいです。10歳くらいに魔力が変化するって。んー?・・10?・・9・・10・・11って・・・(小学校高学年くらいだよね。そのくらいの歳になんかあったっけ?)」
「じ・・10歳!?それまでに揃わないと駄目なのか!?・・・・早すぎる」
「大概の子供は無理、って精霊が。二千年以上前でも殆ど見たことないって。他はさっきの蔦の守りを持ってる人は結構いたらしいです」
先程光った指をクルクルと指した。
「・・・・二千年・・」
それではうちの子はもう無理・・・しかしもう1つの方ならまだ可能性があるのか?
ミラドール嬢はまだブツブツと考え込んでいる。
「10歳前後っていうと・・・月の・・あ!体のホルモ(やばっ)え・・・・ええっ?・・そこで変わっちゃうの!?・・・・それは早いでしょう・・・(子供なのに)」
目を丸くしているが、何やら答えが判ったらしい。
「・・・10歳からって言うのは?」
私が聞くと言いにくそうに渋い顔になった。
「ん、人にもよりますけどたぶん・・・」
「えっ!?・・・」
その説明に口が塞がらなくなった。
女の子は9~12歳くらいに月のモノが始まり、男の子は10~11歳くらいから子種を作れるよう、体が大人になる準備が始まるから、その体の中の変化を魔力で判断しているのではないか?と言った。
そ、そうなのか?。・・・・なぜそんな事を知っている?父親から聞いたのか?・・・シングレア先生はこんな小さい子に何を教えているんだ!?
「・・・それは・・見た目では分からないんじゃないか?」
女の子は体つきが少しずつ変わり月の障りが来れば分かるが、男の子は声が低くなったり、顔や手や体つきが精悍になったりしていくのは分かるが、その辺りの何処で?と言われるとな・・・・・。
「・・親が毎日よくみてないと・・・ん~・・見てても分からないかも」
と言われて、言葉に詰まった。
小さい頃は泣くし、かなり煩いしで、妻のイムセラもたまにあやしていたが、疲れた顔をしている事が多かったから、ほぼメイドに任せっきりだったと思う。
だが私も幼い頃、毎日見るのは侍女の顔だけだった。一歳を越えて自分で歩く様になってから父と母を見るようになった筈だ。貴族の家はみな同じだろう。
するとミラドール嬢が、バッと横を向いて声を上げた。
「え?分かるの?・・・えっ!?そうやって増やすの?もっと早く教えてよ!・・え?私はもう必要ない?そんな!」
「精霊が何か言ったのかい?」
「・・私、魔力って親子でも絶対混じっちゃいけないと思ってたんだけど、血が繋がってるなら子供の間は魔力が少し混じっても平気だって精霊が・・・・」
「・・・本当か?」
変化が始まる時は分かりやすく、子供は2、3日だけ少し熱を出して寝込むらしい。
それより前なら、血が繋がってる者(産んだ母親が一番)なら魔力循環を教えて魔力を増やす手伝いをしても平気だと言う。子供のうちは手を繋いだり抱き上げたりと世話が必要だからそのくらいなら少し混じっても平気で、変わり目に熱が出た時、熱と一緒に他の魔力は一応排除されるが、それまでに精霊が揃ってないと染められ易くなるので本当は、魔力が似ていない他人に世話をさせたり、他人の乳を飲ませるのもあまり良くない、と精霊が言っているらしい。
「・・・なんて事だ・・」
つまり、父上も私も上級貴族でありながら、子供がいるのはかなり幸運だったようだ。
王子と揉めている令嬢達も、襲われた訳でもないのに口付けだけで精霊が消えたと判明し、やたらと他人(異性)に触れるのは危険である!と、貴族達はみな戦慄したのだ。
それは親が世話をせず、メイドや乳母等を雇って世話を任せた事も一因だったという事か!
・・私は成人してから父上に付いて政務を覚える方が重要で、夜会に出る事も少なく、あちこちで女性を口説いた事もあまりなかったのが逆に良かったとは皮肉だ。結局の所、役職が上がった時に二人目の妻を貰ってしまい、精霊は消えてしまった訳だが、魔力はあまり増やしてなかったので精霊は下級のままだったな。
実は謁見から後、最近の貴族達はやたらと異性に触れないような挨拶に変わって来ているのだ。
これは、貴族の子供の育て方も父上に相談するべきだろう。
「・・そうだったのか。君の精霊はとても長生きなんだな。ありがとう、と言ってくれ」
「ふふ・・・うん、そうだね。増えるといいね・・」
ミラドール嬢は左横を見て頷いていた。
「で、最後の洗礼は行ってないのかい?」
「はい。・・・だってあの神殿長が太る為にお金を渡すなんて、お金勿体ないですから。そんな事をしなくても来るときは来るし。・・あ!今のは内緒!。神官や孤児達が生活出来なくなったら困るから少しは必要」
「・・・・・・・・」
そういえばこの子が、奴の精霊がいるか確かめたらしい、とエクラー殿が言っていたな。
「そうだね・・・。実はあの神殿長は去年、宰相が使い込みを明らかにして、辞めさせてね、鉱山奴隷になったよ」
「そうなんですか!?」
と、嬉しそうに手を叩いた。どうやら洗礼の時にミレットを嫌らしい目で見ていたそうで、どうしてやろうかと考えていたらしい。
「そうか・・(もっと過酷な判決にして置けばよかったかな・・・)」
左右に揺れていた馬車が一瞬止まってからまた動き出した。
やっと王宮に着いたようだ。
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子供のうちは平気だったなんて、もっと早く教えて欲しかったよ。
父様と母様にも話さなくちゃ。
でも、ホルモンの変化までに揃えろって、ちょっと鬼畜仕様じゃない?。男の子は五年生くらいって本で読んだけど、女の子は結構振り幅があったはず。早いと三年生くらいで来る子もいた気がするし。
私(前世)は・・・・5・・いや6年生だった!家中みな御赤飯だったから、家の者にバレバレだった。メイドから運転手、護衛(SP)にまで、「お嬢様おめでとうございます」と言われる恥ずかしさを思い出したよ。
顔は・・・ダメだな、お世話になったのに。
馬車が止まると外から扉が開いた。
「公爵様、おはようございます」
「ん・・おはよう」
と従者が頭を下げると少し頷いて伯父様が降り、私に手を差し出したので掴まって外に出た。王宮の従者は黒のタキシードで、少し驚いた顔で私を見たので少しだけ微笑んでおく。
大きな宮殿を見上げてから、伯父様の後を付いていくと、すぐに開け放たれた正面玄関口だった。
馬車が走ってきた広い前庭の中心には池やベンチが置いてあり憩いの場になっていた。
その左右は広い馬車道で、右が進入路、左が退出路だそうで、各々の爵位毎の馬車置き場へ移動していく。前庭の両端に点々と馬車が停まっているのが見え、玄関まで馬車を回さず馬車置き場から歩いてくる人もパラパラといる。
爵位や役職によって停める場所が決まっているそうで、馬車の順番待ちが混んでいたら下級貴族は遠慮して、馬車置き場から歩くのが暗黙の決まり(常識)になっているらしい。
伯爵位以上の者や、手足が不自由な者、ドレスの女性が同伴している者は、下級でも混んでいても玄関口まで来る事が許されているという。
「まあ私は、急いでる時は途中で降りて歩くし、馬車置き場から歩く事もあるけどね」
と伯父様が教えてくれた。
ただ、舞踏会や夜会の時は例外で、大概女性同伴なので殆どが玄関口まで並ぶ。だから時を考えないと、前庭から外の方まで馬車が大混雑して大変らしい。
玄関ホールに入ると、大きいシャンデリアが下がっているが明かりはついていなくて、左右の端に均等に三つずつ、2メーターくらいの高さの魔術具のスタンドが灯っている。
綺麗に磨かれた床の正面奥には左右二つの執務机が置かれていて、背中の壁には沢山の名札が掛かっている。
執務机に二人ずつ座った、入口の人と同じタキシード姿の受付の人が全員立ち上がって頭を下げた。
さっきの入口の人の服には刺繍飾りが無かったけど、中の人は金や銀の刺繍が袖や衿元に少し入っている。
(外は平民で、ここにいる人は貴族か)
「「「「おはようございます」」」」
「おはよう」
伯父様が挨拶を返すと、左端の人が壁の上の方の札をひっくり返した。
私はその後ろから少し腰を下げて俯いた。
また、目を丸くされたが、何も言われなかった。伯父様が一緒だから顔パスでいいのだろう。それから又、歩き出した伯父様の後について、左側の二階への階段をあがった。
伯父様は三つめの扉の前で止まり、コンコン、と扉を叩いてから開けた。
「アストーマ室長、政務室の方へ来てもらえるか?」
「・・はい!」
返事が聞こえて、ガタガタと音がしたあと、少し太めでたぶん伯父様より少し年上?の男の人が急いで出てきた。
「おはようございます、サノレックス公爵。・・何かあったので・・・・」
言い掛けて、脇に立っている私を見ると目を丸くして黙ったので、私も言葉は出さずに少し頭を下げた。
「あ・・あの・・この子は・・・」
「・・政務室で説明するよ」
伯父様は笑顔でそれだけ言うと
また歩きだしたので、私も後に続く。
室長様は扉を閉め、慌てて付いてきた。
隣の扉まで来ると、また扉を叩いてから開けた。
「おはようございます、公爵」
中から声を掛けられて頷く。
「ああ、おはよう。・・さ、入って」
と言われて私が入り、後ろから室長が入ってくると、ザワザワしていた政務室が静かになった。一番奥の机まで歩くとそこに座った人が立ち上がる。年齢はこちらの室長より更に年上のようで、偉そうなお髭が生えている。他の机に座っている10人くらいの男の人達もジロジロとこちらを見ている。
「公爵?・・この少女は・・・・・」
「ああ。おはよう、クインスロン室長。・・・シングレア嬢、この方はクインスロン侯爵家のエジュラント様、王宮政務室長だ。そちらの方はアストーマ子爵家のニフラン様、王宮事務室長だよ」
伯父様が紹介してくれたのは、事務と政務を取り纏める長らしい。
(・・家の、と言われたから後継ぎではないって事かな・・・)
「・・クインスロン政務長様と、アストーマ事務長様、ですね。わたくしはシングレア男爵家三男、ガイレス・シングレアの長女、ミラドール・シングレアで御座います」
ぐるりと部屋を見渡してから、カーテシーで挨拶をした。
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
「・・・ミラ?・・・・こ、こんな少女が離宮を動かしたと言うのですか!?・・・・ありえないですぞ公爵!」
一瞬部屋が静まり返ったあと、お髭の政務長が険しい顔で捲し立てると、机に座っている政務官達も、まさか?嘘だろ?ホントか?・・とザワザワし始めた。
(ミラ・・・に反応したという事は、東門の記帳木札を見たのかな・・)
反論しようかと思ったけど、城の中に入ってから女性の職員(事務、政務、騎士)を見てない時点で男女平等では無さそうなので、ひとまず口を出すのは控えた。
「・・クインスロン殿。シングレア嬢は、既に固定魔石が作れるんだよ」
「こ・・固定、だと?それは学院の最終学年で一部の者が教わる事じゃないか・・・」
「ああ。つまり魔力が多く、精霊も認めていると言う事だ」
髭のおじさんが眉を寄せて険しい顔になった。私は肩のポーチを開けて両手を中に入れ、コッソリとスペースから10ピトの水晶を出してゴトンと机に置くと、両室長がギョッとした顔になり、部屋の中が静まり返った。
「これは昨年作ったのでまだ10ピトなのですが、よければ確認を。真ん中に光の記号があります」
「「「・・・・・・」」」
伯父様や室長、他の政務官達もガタガタと覗きに来ては、おお!本当だ!すごい!と言いながら、ため息混じりに机に戻る。お髭の侯爵は険しい顔で完全に沈黙したので、私はリュックに水晶を戻した。
そうして、上級貴族の屋敷だと思っていた事を説明した。
ぶっちゃけ、魔石が扱えるからって縛られるなんて絶対嫌だし。そんな面倒な屋敷の管理なんて出来るわけないので入りません。
という事を、丁寧に説明しておいた。
「・・・これで貴方の心配も消えたかな?クインスロン殿」
「・・・・・・・」
反論材料が無くなったようで、眉を寄せたまま沈黙する政務長。
「・・伯父様、政務官の皆様はとても真面目なんですねぇ」
深刻に捉え過ぎ(柔軟性がない)ですよね、と言うと苦笑いになった。
「最近、色々とあったからね・・」
「・・わたしのせいですか?」
お屋敷ボロボロ事件から始まった子供探しや、精霊の真実を知った為に、離縁で揉めてる問題とかかしら?。
伯父様がちょっと困った顔になってるけど、・・でもそれは私のせいじゃないよね。
「あの・・今、公爵様を伯父様・・と?・・でも彼女は、男爵と名乗りましたよね?」
アストーマ室長が首を傾げた。
「・・・従姉妹の子供だからね。伯父様で合っているよ。公ではまだ、伯父様とは呼んでもらえないが・・」
(だよねぇ。公式的に会って、他の貴族の前で、呼んでいいって許可貰ってないし・・)
「・・・わたくしの母の旧姓はミレット・エクセグランでございます」
「「「「「「 !! 」」」」」」
「おお!・・・・そう言えば・・確かにミレット様にそっくりですな」
椅子に座っていた年配のおじ様が声を上げると室内の半分、伯父様や父様と同じ世代くらいの人達は目を丸くしてどよめいた。
反対にお髭の室長様は、目は丸くなったが異物を見るように眉が険しくなった。
(これは・・・・・本人か身内が、母様に振られた系かな・・・)
「・・では、・・・捕縛が必要な事態ではないと、みな理解出来たと思う。最終的な話し合いと決定は宰相が決めるのでこの件に関しては不問だ。決定はのちに書面で通達するよ」
伯父様が扉へ歩き出したので後に続き、政務室を出た。
「アストーマ殿も仕事に戻ってくれ」
「あ・・はい!」
伯父様は、目を丸くしている室長を一瞥して更に奥へ歩き出した。
私は、慌てて返事をした室長様に少し頭を下げてから、また伯父様の後に付いていった。
一つ扉を通り越した次の扉は、他の扉と明らかに違う、美しい花の浮き彫りがされたドアだった。
「ここが宰相の執務室だよ」
伯父様がコツコツ、と扉を叩くと、少し置いてからガチッ、とノブが動いて扉が開いた。
「どうぞ、ベック様」
「おはよう、セループ。今日は君か」
伯父様の後から中に入ると目が合った。
若い執事様だな、と思ったら黒い騎士服?で腰に剣を着けていた。
執事様ではなく護衛様だったようだ。
宰相ともなると専属護衛が付くんだね。王宮にいる間の護衛らしい。
青い制服とグレーの制服は見たけど、黒はここに入ってから初めて見た。
(階段上がった所に一人いたな。外はグレー、一階には青が3~4人いた。二階からは
黒なのかな?見上げた時、四階建てくらいだったよね)
「ご苦労だったな、ベック。・・セループ!」
執務机から立ち上がると護衛様に何やら声を掛けてから、笑顔でこちらへ来た。
「やあ、初めまして。私はフェルム・サノレックス、この国の宰相だ」
「シングレア男爵家三男、ガイレス・シングレアの長女、ミラドール・シングレアです」
深く腰を下げてカーテシーをする。
護衛の騎士は部屋から退出していった。
「やっと会えたのぅ。うむ・・ミレットの小さい頃にそっくりだな。そちらの椅子に座りなさい、ミラドール嬢」
執務室の右側に応接セットがあった。公爵家にあったのと同じようなシックなソファとテーブルがある。取りあえず命令されているので座らせて頂く。
「お母様はお元気かな?かなり会ってはいないが・・」
「はい。つ・・・げ、元気でございます」
恙無く・・と言おうと思ったが七歳でその受け答えはないだろう、と気づく。
(セーフ!なるべく子供らしく!)
「宰相、先程政務室でクインスロン殿とアストーマ殿にはミラドール嬢の事情説明はしました。・・・クインスロン殿は険しい顔をしておられましたがね」
「そうか・・・」
席についてから、先程と同じ事をもう一度話していると、コツコツと扉が叩かれ護衛のお兄さんが戻って来ると、その後ろから女性が二人、・・・正確には四人来た。
「宰相様、失礼致します」
「ああ・・・どうぞこちらへ」
宰相様がソファへ促すと、上品な桃色のドレスを着た金髪美人な方と、薄い黄緑のドレスを着て焦げ茶の髪に白髪が混じった年配の方が入ってきて、後の二人は黒のお仕着せを着たメイドさんだ。
ワゴンを押してきたメイドさんがお茶の用意をし始めると、金髪の方がベック伯父様を見た。
「ミラドール嬢、お茶と果実水、どちらがいいかな?」
「・・お茶をお願いします」
メイドさんがテーブルに五つのお茶をセットすると
「後はわたくしがやりますから、下がって頂戴」
焦げ茶の髪の年配の方が言って、メイドさんは退出し、護衛のお兄さんはドアの脇に立った。
応接セットのテーブルに、私の隣に伯父様、右側に宰相様、真向かいに女性二人が席についた。
「ゴホン!・・・シングレア男爵令嬢、こちらはな、・・王妃様の侍女で、ボシュリフ侯爵夫人と・・サンナックス伯爵夫人だ」
名前を言われるとほんの少し頷いた。
金髪がボシュリふ夫人(言いにくいな)焦げ茶がサンナックス夫人ね。
・・・さすがに王妃様は、矢鱈とこんな所に来れないだろうから侍女様が話を聞きに来たんだね・・・。
「シングレア男爵家三男、ガイレス・シングレアの長女、ミラドール・シングレアでございます」
立ち上がって、腰を下げて挨拶をした。
少し目を丸くしてから、ご夫人達がにっこりと微笑んだ。挨拶は合格したらしい。
そうして説明に戻る。
「そうか。薬草が見えたのか。・・・しかし・・よく枯渇しなかったものだ」
もっともらしい説明に宰相様が眉を寄せて、大人達は頷いた。
「・・貴女はどのくらい魔力があるのかしら?」
若い・・と言っても母様よりは多分年上の夫人に聞かれるが、そもそも現在の基準が低すぎて解らないので首を傾げた。
「・・わかりません。他の方と比較出来ませんし、したこともありませんから」
「「「「・・・・・・」」」」
上手く説明出来ずに、私が首を傾げて肩を落とすと、大人達が固まった。
だって基準がわからないのだ。学院では卒業迄に3ピトを染める、と父様は言ってたけど、そんな基本はとっくに越えている。
私は先程の水晶をもう一度出してテーブルに置くと、宰相様と侍女様の目が真ん丸になった。
「なんと!?」
「なんですか?この大きさ!?」
「・・信じられませんわ!!」
「これは昨年作ったもので、死ぬ程ではなかったですがかなり疲れました。先日の柵は・・・・実は精霊が助けてくれなかったらちょっ・・と危なかったので、今のわたくしの魔力はそのくらいですね」
「見せて貰ってもいいかしら?」
「・・・どうぞ」
若い方の侍女様が手にとって年配の侍女様と見詰めている。宰相様も顔を近づけて見ていた。
「ん~・・・・・やはり読めないわ。これはどういう呪文なの?」
「(ヤバ)・・・・私だけの詠唱魔法なので秘密です」
心の中で焦りながら、微笑んで誤魔化す。
「「「・・・・・・」」」
「ああ・・君の父親、シングレア先生が言っていたね。魔法は自分で作る事も組み合わせる事も出来る筈だと」
「・・つまり、精霊が教えてくれる呪文じゃない魔法という事!?」
「そんなの・・・考えられませんわ!」
二人の侍女様の目が真ん丸になる。
魔石を返してもらってしまうと、伯父様が苦笑いで私を見た。
「それは想像力が足りないかららしいですよ?・・・ミラドール嬢、君は・・・雷が作れるそうだね?」
「・・・・はい」
宰相様と侍女様がギョッとなり、焦げ茶の髪の侍女様が声をあげた。
「まさか!・・有り得ないですわ!天災や災害はゼルス神様の神業!神からの警告ですよ。神に対抗するなど不遜ですわ!」
・・うわ、神様至上主義者がいる。
金髪の若い侍女、ボシュリフ様が困った顔になり、宰相様と伯父様は年配の侍女、サンナックス様の剣幕に、言葉を詰まらせて私を見た。
「・・・神様は否定しませんが、災害は殆どが自然に起こるものですよ?」
「ですからそれが神様からの警告ですよ!」
「・・でも雷が落ちる季節は何処かに集中しているでしょう?。全く来ない季節がありますから」
「それは・・・・・その季節に・・ゼルス様が人々の善悪を裁定して警告をされているのでしょう・・」
「・・・・その時、たった一部だけ警告する意味はないと思います。今この時だって悪い人は、何処かで悪い事をしています。それなら警告ではなく、直に罰するべきです」
「それは、ゼルス様が慈悲の心で、改心しなさいと教えて下さっているのですよ」
ちょっとカチン、と来た。
(この人、こんな歳になっても、子供に言い聞かせるような話を鵜呑みにしてんの?)
「悪い人に慈悲ですか。・・・・・子供達を拐った悪い商人は、警告も災害も起きなかったですけど?そういう悪い人は警告なんかじゃ止めないのです。「おっと、危なかった!しめしめ」と言って、またお金を数えるに決まってます。悪い事をしたのに、いい思いをしたら警告くらいでは改心しないでんすよ、人は。・・・じゃあ神様は一時だけ警告をして、他の季節は何をしてるんですか?・・・見守っている、なんて言うのは見てるだけで、仕事をしてないってことですよ?そんな神様ならいない方がいいです。・・大人なのにそんなお伽噺・・・信じてるんですか?」
サンナックス様をジトッ見上げると、反論出来ずに少し目が泳いだ。
「そんなに神様を信じているなら、何故たくさんの子供達が拐われる前に悪い人に警告や天罰を与えなかったのか、納得出来る説明を下さい」
「・・・・それは・・」
「・・悪戯したから奴隷になる天罰を貰ったのよ、って子供達に納得する説明が出来ます?子供の少しの悪戯で奴隷って酷過ぎないですか?貴女にとっては無理矢理奴隷にされる事は酷いって言わないんですか?」
「そ・・そんな事は・・・」
「・・・・悪い人は私がお屋敷を壊さなければ全く知らなかったんです。拐われた中には罰を貰ういわれのない子だっていたでしょうに。貴女の言う事が正しいなら、子供だけそんな罰を与える神様なんて、子供は二度と信じないと思いますよ?。・・・自分の周りの子供だけ被害に会わなければ関係ないから、神様の警告なんて言えるんですか?」
「・・わ・・わたくしはそんな事は・・・」
年配の侍女様は言葉に詰まって顔面蒼白になった。
「「「・・・・・・・」」」
・・・・・言っちゃったよ。
子供らしく、と思ったのに我慢出来なかったよ。
得体の知れない子供認定されたな・・。
心の中で深いため息をついた。
「貴女も拐われたの?・・・・」
若い侍女様が躊躇いつつも私とベック伯父様を交互に見ている。
私は諦め顔で伯父様を見てから宰相様を見た。
「・・王妃様へ出した報告書は・・・貴女方も読まれましたかな?」
「ええ、あれは・・・わた・・お、王妃様もわたくし達も驚きました。そうですか、・・・・貴女が、ノスラン商会の人身売買を止めてくれたのですね」
「止めたくてやった訳ではありません。・・・・まあ、心が折れて改心していればいいですけど・・」
ため息をついた。
「「・・(報告書には怯えていたとありましたわ)・・・・・」」
「「・・(あれ程素直な自白をする者は初めてだと、尋問官が戸惑っていた。と書かれていたな)・・・・」」
眉を寄せて私を見詰める大人の視線は無視した。
「ミラドール嬢。君は・・・・宮廷魔術師にはならんのか?」
宰相様に躊躇いがちに質問された。
「なりません。私は冒険者になって色々な国を見て回りたいのです」
「な・・・貴族令嬢が冒険者になるなどありえませんわ!」
また年配の侍女様が目を丸くした。
「・・・貴族でも冒険者はいると聞きました。それに・・・・王宮に居るだけの宮廷魔術師にはなりたくないですから」
「な・・・何を言うのですか!?彼らは王宮を守る、という大事な仕事をしているのですよ!」
サンナックス様が声を上げて怒った。
「王宮や貴族は守っているかも知れないけど、国を守ってないと思います」
「「「「 !! 」」」」
「こ・・ここには国の仕事をしてる人がいるのですから、王宮を守る事は国を守る事に繋がっているのですよ?解らないのですか!?」
サンナックス様が眉を寄せて反論したので、私は首を振った。
「それは、裕福な人達だけでしょう?。王宮にいるのに表向きな事しか解らないんですか?この国全部が見えてないんですか?」
サンナックス様に、同じように[解らないのか]と言い返してジロッと見ると、何なのこの子?と言うような険しい目になる。
「前に騎士団の伯父様とギルドマスターに言いましたけど、あれから貧民街を無くす政策は出来てるんですか?」
「「「 !! 」」」
「すまん・・・聞いてはいるがそれはまだじゃ。・・貴族街が揉めておるからなぁ・・」
宰相様が眉を下げた。
「・・・・そうですか。でも私は、王都や領地、全ての貧民街が無くなって平民の生活が良くなったと思えない限り、ここで仕事をしてる人達は給金(税金)泥棒だと思ってますので、王宮の仕事をする気はないです」
「「「「 !! ・・・・・」」」」
大人達が、グッと言葉に詰まって固まった。
「・・・それから・・七歳から税金は酷いと思いました」
と、私が私情を訴えると、伯父様達は目を丸くして私を見た。
「は・・・半分の税金でも酷いのかい?」
と、隣に座る伯父様が私を見て、困った顔をした。
「当たり前ですよ。産まれてから大人に成るまで親がどのくらいお金使うと思ってます?まず手伝ってくれたお産婆さんに渡すお金から始まって・・・・・」
・・お乳を上げてる間、貴族は別だけど平民の母親は殆ど仕事が出来ずお金を稼げない。手が離れてもご飯を食べさせるのにお金が掛かり体が大きく成る度に服を与えて、三歳五歳七歳には少しいい服を着せないといけない。学院に入る時には服や文具など更にお金が掛かってきますし・・・・
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
と、大人に成るまでどんだけ親が苦労してお金を掛けて育てるのか、滔々と説明すると、大人全員が恐ろしい物を見るような顔で黙り込んでいた。
(・・・あれ?チカラ入りすぎた!?)
私はクリン、と横の伯父様を見上げた。
「・・・・・ですから、子供を増やそう計画を立てているならば、税金は無しでお願いしたいですね。・・で、たくさん子供を生んで育てて貰うために、二人目から補助金制度などがあると、親は助かると思います。子供が増えて大きくなり、働き始めたら税金として返って来るんですから悪くないと思いませんか?」
あ!でも子供の為に使わず自分が使っちゃう親もいますから、ちゃんと調べて気を付けないといけないですけど。あと十三から働く子は十五まで、半分払うのはありだと思います。と説明を足してみたが・・・・・長~~~い沈黙が続き、誰も言葉を発しなくなった。
「・・・・だめでしょうか?」
私が声を落としてションボリすると
「・・いや・・よく考えているね君は・・」
と言いながら、宰相様に視線を向ける伯父様。
「・・・そうだな。・・・・考えてみるとしよう」
「・・ありがとうございます」
とりあえず施行するための会議?とかにはかけてくれるという事だろう。
「それから・・・女も宮廷魔術師になれるんですか?」
「・・どういう事じゃ?」
宰相様が首を傾げているけれど、さっき平民と貴族の差別よりも、根本的な問題が見えたから。
「えーと、魔術師に限らず、今日ここに入って歩いてくる間、仕事をしている女性が一人も居なかったのです。侍女の方がいるのですから、侍女やメイド、下働きには女の人もいるのでしょう?でも、それ以外の女性の仕事はあるんですか?事務も政務も関わらせてもらえないみたいですが?」
「そ、それは・・な・・・・」
宰相様が、とても困った顔になると、伯父様が躊躇いがちに教えてくれた。
「ん・・・でも貴族の令嬢はね、学院にいる間に大体婚約者が決まって、卒業と同時に結婚してしまう女性が多いんだ」
「・・結婚しても働けると思いますけど、結婚したら家にいるだけですか?・・・社交?以外では外に出ないんですか?」
「いや、そんな事はないぞ。・・・それに男だけ、と言う決まりは一応ないんじゃがな。それに宮廷薬師には女性もおる」
「そうなんですか。つまり・・・希望者がいないと言う事ですね?。・・・でも・・ボシュリフ様とサンナックス様は、女の癖に偉そうに・・・みたいな視線は受けていないのですか?」
侍女様をジッと見つめて問うと、金髪の侍女様は思い当たる節がない顔をしたけれど、年配の侍女様は目を丸くして驚いた顔をした。
「サンナックス様は・・言われた事があるようなお顔をしていますけど・・」
「!・・・・・」
私が聞き返してチラリと見ると反論せず目を丸くして黙り込んでしまい、それを見た伯父様と宰相様が驚いた顔をした。
「・・・伯爵夫人でさえ陰口や嫌がらせを受けているとしたら、男爵令嬢の私なんて宮廷魔術師どころか、王宮の仕事に就いても酷い嫌がらせをされそうなのでお断り致します。事務室や政務室や騎士団に、女性が増えたら考えます」
女性を下に見てる限り、絶対無理でしょうね。宰相様を見ると、諦め顔になっていた。横を見ると伯父様も私を見たまま沈黙していた。
「それから・・・・、離宮の結界石を動かしてしまったのは謝ります。なので、魔力の多い宮廷魔術師とかが増えるまで、たまにでしたら魔石の補助をしてもいいです。それと・・・」
私が説明を加えると全員、ギョッとした顔で私をみた。
「・・・外す!?出来るの?」
金髪の侍女、ボシュリフ夫人が言った。
「・・やってみなければ判らないですけど。扱える人が殆どいないんですよね?離宮で働く人にとって面倒で、無い方がいいのであれば頑張ってみますけど?。でも、もし外せたら王族の方が居ても居なくても、騎士や兵士を離宮に置かないといけなくなって人手もお金も掛かると思いますけど、それでも・・・と言うなら・・・」
「「「「・・・・・・・・」」」」
メリットとデメリットを説明すると、また沈黙が広がった。・・・何で?
私は、宰相様、伯父様、侍女様、と順に見ると、みな眉間に皺が出来ている。
「・・外すのであれば、試してみます。もし魔力が足りなかったら、魔力が増えたらまた試したいですし。王族の方達に相談してみて下さい」
「うむ。解った、ミラドール嬢。・・・・こちらのご婦人達が、王族の方に・・伝えて下さるじゃろう」
「ええ、・・受け賜りました」
「そうですね。・・お伝えして、どうされるか伺ってみましょう・・・」
二人の侍女様は顔を見合わせて頷いた。
「そのな・・・父上と母上は冒険者になるのを反対してないのか?」
と、宰相様が眉を下げて私を見た。
「・・・・登録したいと言った時、お父様は・・凄く悲しそうな顔をしてたんですけど、お母様が・・・うちは下級貴族だから好きな事をしたいなら強くなりなさい。って言ってくれました」
と、お母様推薦である事を言うと、侍女様は目を丸くして、伯父様と宰相様は、やはりか!と言う顔で眉を寄せた。
「私は、自分の精霊を大精霊にして、他の国を自分の目で見たいんです。それに鑑定の魔道具も作りたいし・・・・」
「つ・・・作れるのか!?鑑定の水晶を!?」
「ほ、本当に出来るのかい?ミラドール嬢?」
「「・・・・・」」
宰相様と伯父様が鑑定具に食いついた。侍女様は目をまん丸にしたまま固まった。
「作るだけならさっきの水晶でも出来ますけど無駄、って精霊に言われました。よく分からないんですけど、精霊がいても魔力多くてもランクが低いと駄目らしいんです・・」
「「「「・・・・・・」」」」
自分より上のランクの人は名前しか見れないだろうと言われたので、最低限Aランクにならないと作っても機能しない事、などを話すと目を丸くして黙り込んだ。
(他にも、うちの精霊に固定だけしてもらって、AかSランクの人が魔力を込めるのは駄目なのか?とか考えたんだけど、私の魔力と色?で契約してるから他の人じゃ機能しなさそうなんだよね。まず精霊が揃ってないと【鑑定】自体出来ないから無理だろうな・・・そのうちエステルと実験してみようか・・)
「すると今、フェアストン国とルボックス国に出している親書が、困難である、と返されるのは・・・・・」
「・・・Sランクでも精霊が揃っていないので作れないか、揃っている者がいてもSランクまで鑑定出来ないのかも?」
「うむ・・・他国に渡せる物は作れていないのかも知れないな」
宰相様と伯父様が予測を立ててる。が、もう一つあるよ。
「他に・・Sランクで強かったら女性にたくさん誘われるのでは?。取り合いをされて既に精霊が消えてしまったけど、隠している・・・・とかも有り得ると思いますけど」
「「「「 !! 」」」」
事実に基づいた予測をしたら全員、ドヨ~ンと暗くなってしまった。
「・・父上、昨日話した精霊の守りですが・・・」
「わかったのか?」
伯父様は唐突に、横の私をチラリと見て宰相様に告げたので、見返して肩を竦めた。
「・・襲われても勝手に魔力が混じらないようにするものだそうですよ」
「「「 !! 」」」
侍女様と宰相様がビックリした顔で固まる。
「そんなものがあったの!?」
「聞いたことも御座いませんわ!」
「精霊が揃わないと駄目らしいです」
「「そんな!・・・」」
侍女様がハモった。
「何?・・・・つまり全部・・か?」
宰相様が険しい顔をして呟いた。
私は黙って左手を出した。
さっき、揃わなくても出来る制限付きの守りも聞いたけど、魔力を増やせない人は自業自得だし精霊が可哀想だから言わない。
まずは揃えてからだからね。
馬車の中で話した事を、伯父様が大体説明すると息を飲んで、また沈黙が広がった。
「・・・・母親が・・世話をしなければいけなかったの?」
少し悲しそうな顔で、ボシュリフ夫人が呟いた。
「まさか!・・貴族婦人は、家の采配など、大変な事が多いのです!・・・子供の世話までは出来ませんわ!」
とサンナックス様は捲し立てたが、ハッと口に手を当てて言葉を飲んだ。
「母親なのに・・・。産むだけで、他人任せなんですか?」
「・・・貴女のような子供に貴族婦人の大変さなど、まだ分からないでしょう!」
伯父様達が、怒り出した年配の侍女を引き吊った顔で見た。
「子供に淋しい思いをさせる程の大変さなんて分かりたくないですね。そのせいで精霊が離れやすいと判ってもやはり、自分でお世話をしましょう、って教えたり広めたりする気はないんですね?」
「!!・・それは・・・」
サンナックス様は目を丸くして、また顔面蒼白になった。
「・・魔力を増やすのは二の次。・・・権力や爵位、礼儀作法を最優先しているせいで後継ぎがどんどん減っているのでしょう?・・・爵位や礼法に拘り過ぎたせいで貴族はいずれ消えますね?。私は精霊や神様が、魔力を増やし精霊を優先しない今の貴族は間違っていると、警告してくれているのではないかと思うんですが?」
「そんな!・・・・」
「「「・・・・・・・・・・」」」
神様の存在は信じているようなので、警告を逆手に取ってみたら、サンナックス様は血の気が引いた顔で叫んだ。
他の三人も青白い顔になっている。
「貴族が・・居なくなるなど・・・・」
「貴族が居なくなっても国は無くなりませんから大丈夫ですよ?」
とニッコリすると、私を見て沈黙した。
私にとってはその方が嬉しい。
日本のように、昔は貴族だった、という事実のみで階級廃止がいいよね。
しかし伯父様が真剣な顔で私を見たので、それは貴族をよく知っている伯父様達が考える事でしょう・・・と目を剃らした。
しかし、あまりにも沈黙が続くので、チラリと顔色を伺うと、眉間に皺を寄せて悲しそうな伯父様が沈黙(回りも沈黙)てしているのでため息をついた。
「じゃあ・・・・子供のお茶会は無しにしたらどうですか?」
と言うと、目を丸くして驚かれた。
「な・・・無くすのですか!?・・・それでは社交を学ぶ事が出来なくなってしまいますわ!」
サンナックス夫人が声を上げて青ざめた。
「魔力が変わる前の八歳くらいまでは出来ると思いますけど?。その後は・・・大人になる準備として子供だけのお茶会やパーティーは無し。主宰する方も親子一緒に招く社交パーティーを増やす様にして、お茶会やパーティーは必ず大人のテーブルと子供のテーブルを用意すれば、親の目があっても子供だけで話しは出来るのでは?。・・・どうしても大人だけの時は招待状に十五歳以下は駄目、と入れる事とか?。招待状にその文章がなければ子供も行ける様にすれば。あとは礼儀作法さえ親がしっかり教えれば、連れて行くか行かないか、恥をかくか褒められるかは、親の責任になりますね」
「・・・・・それ位ならば、まあ・・」
サンナックス夫人が眉を寄せながらも頷く。
「・・・・そうだね」
伯父様が目から鱗が落ちたように呟いた。
「後は・・学院も15になるまで男子学院と女子学院で分ける方がいいのでは?・・建物を分けるのが無理なら・・・組を分けるか・・左右で男女の席を分けて座らせるとか?・・社交やダンスの授業とかはあるんですか?」
「・・・ある」
伯父様が苦い顔で言った。
「じゃあ、結婚する事が決まった婚約者同士以外はダンスは出来ませんね。相手がいない人は社交のみかも・・・・・どうしてもダンスをしたいなら・・・あ!魔力を弾いたり、通さない手袋!みたいな魔道具があるといいんじゃないですか?・・・ありますか?・・」
「「「「・・・・・・」」」」
他に有効な対策があるかな?・・と首を捻ったら、大人達に怖い物を見るような目をされた。
「・・今考えつくのはそのくらいですね」
後の細かい決まりや、どのくらいお金が掛かるのか私は分からないのでお城の人達で相談しては?と、隣を見上げて聞くと、我に返った伯父様が頷いた。
「あ・・ああ、そうだな。これは早めに何とかしなくてはいけない。手袋は良さそうだな」
「・・そうじゃな。ぺリアスに相談してみるか。・・・考えねば次の世代の赤子が更に減る事になりかねん・・」
「「・・・・・・・・・」」
宰相様と伯父様が思案しながら頷き合ってる横で、侍女様達は沈黙したままで、さらに年配の方は先程の警告が余程ショックだったのか、しばらく固まったままだった。
離宮の魔石については、王族の意向がわかったらお手紙をくれるそうだ。
そうして、やっとお城を出ると、またベック伯父様が送ってくれたのだが・・・
少し伯父様が言い出しにくそうに、子爵夫人が若返った話を聞いた公爵夫人が、どういう魔法なのか自分にも出来るかどうか聞かれて大変だったのだよ、と凄く困った顔で言った。
「・・・もし出来るならやり方を教えてくれないだろうか?」
「え・・・・・(やはり美容の話しには食い付くんだ)・・・」
て言うか、伯父様の今日一番の悩み事はお城での説明よりも、若返りの方法を聞く方が重要だったらしい。
悲しそうな顔の伯父様を見て、心でため息をつき、一鐘ほど公爵家へ寄り道をする事になったのだけど・・・・・・
身バレするので、不純物のない精製水と普通の水の違いを上手く説明出来ず
「井戸からのお水は駄目です。魔法で、キレイなお水を出して、ヒールの魔法を掛けてから、その水を顔に浸して柔らかくします・・」
と、自分でもよく解らない説明で、公爵夫人はシミもあったので多めの細胞活性を掛けたので、顔を洗うたびにピーリング効果でシミは薄くなる筈だ。侍女数名には前と同じくヒール水を浸透させて張りを戻して見せながら、やり方だけ説明して帰ってきたのだった。
その後、教えた侍女のうち二人(光と水の精霊付き)が、何とな~く理解して張りを戻す事に成功したらしく、公爵家の女性は下女まで若々しくキレイと噂が立って奉公希望者が後を絶たなかったと言う。
―――――――――――――
まあ、半数くらいは侍女の実験台の意味合い強し。汲んだ井戸水よりはキレイかも知れないが、持続効果はミラの1/2にも満たない。
次は、やっとエステルと外へ行けるようになります。
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