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第一章 悪役令嬢の母
4、悪役?それとも……なの?
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わたくしは腕の中で笑っているコーデリアを見て、愛しさが込み上げてまいりました。
今レオポルト様に言われた事が事実ならば、コーデリアは王子の婚約者となるのです。
そして、後一月以内にミアが生まれてしまったら……。
コーデリアはあの世界の通りの悪役令嬢となってしまうのです。
悪役令嬢……この天使が?
わたくしはコーデリアが不憫で、抱きしめました。
「おかあさま? どうしたのです?」
隣に座るアルバートが不思議そうに尋ねてきました。
「アルバート……貴方は最後までコーデリアの味方になってあげてね?」
「??? はい?」
不思議そうに返事を返したアルバートにはコーデリアが王子の婚約者になる事を小さな子にもわかるように説明します。
「アルバート、コーデリアが王子の婚約者になると周りの者が貴方よりもコーデリアを大切に扱うかもしれません。でも、それは決して貴方を蔑ろにしている訳ではないのですよ。コーデリアが王子妃なるためにはそれはそれは沢山の勉強をしなければならないのです。だから、少しだけ皆が優しくしてあげているだけなのよ?」
わたくしがまず考えたのはアルバートとコーデリアの関係です。
あの世界の二人の仲は決してよくありませんでした。
最後までアルバートはコーデリアに注意していましたが、それは優しさからというよりも、この公爵家の為だったように感じました。
それは避けたいのです。
二人には仲良くなってほしいと心から願いました。
「はい! お母様。僕はコーデリアの良い兄上になります!」
アルバートがよくわからないながらも返事をしてくれた事にわたくしはその小さな体をギュッと抱きしめました。
「ありがとう。アルバート」
わたくしはその日から今後の事に頭を働かせました。
「わたくしはどうすべきなのでしょう?」
わたくしはノートに取り敢えずわたくしが覚えている物語の内容を書き出してからため息をつきました。
「この世界が物語の中だとすると、この通りに行動しなければならないのかしら?」
わたくしは頭の中で物語通りのコーデリアを思い浮かべる。
物語のコーデリアは我が儘で、負けず嫌いで、プライドが高く、人は自分に跪くものと信じて疑わない、ある意味貴族らしい貴族の令嬢だったのです。
更に婚約者の王子よりも確かな血筋だと考えて、王子でさえも見下していました。
だからこそ、その王子の裏切りに我を忘れてミアへの執拗ないじめや嫌がらせを行なったのです。
あれは飼い犬に腕を噛まれた飼い主のような態度でしたわ。
多分コーデリアは王子の事も好きでもなかったのだと思いますの。
わたくしはもう一度はぁとため息をつきました。
「わたくしは悪役令嬢の母としてコーデリアを物語通りに育てなければならないのかしら?」
それは愛しい娘を不幸の電車に乗せるようなものなのです。
この世界には電車はありませんが……。
でも、今ならコーデリアを優しい娘として育てる事も出来るのです。
だってまだ赤ちゃんなのですもの。
人に優しく、愛情豊かで、明るく、天使の様な娘に育てる事も可能な気がするのです。
「でも、婚約者の王子がどうなるか?ですわね」
わたくしは物語を書き留めたノートの上で指をトントンと叩いて、王子の名前に手を止めた。
「シモン・ド・サンダルディーア」
この度生まれた王子はわたくしが知っている王子と同じ名を授かりました。
この王子がしっかりしないのが全ての原因ではないのでしょうか?
コーデリアという婚約者がありながらミアに惹かれてフラフラとする。
それがコーデリアのプライドや負けず嫌いを刺激したのは間違い無いのです。
わたくしは王子が裏切らなければと考えました。
「もし、王子がコーデリアを裏切らなければ……あの物語は起こらない?」
ブツブツと呟いていると、背後からレオポルト様に話しかけられました。
「アドリアナ? どうかしたのかい?」
わたくしはノートをドレスの隠しポケットに忍ばせるとにっこり笑って振り返りました。
「貴方! もうお戻りですの?」
今日はコーデリアの婚約の事で王との話し合いに行っていたのです。
「ああ、全て滞りなく決定したよ」
そういって座っているわたくしの手を取って優しく立ち上がらせるとゆったりと抱きしめてキスを落としました。
「まぁ、どうなさったの?」
「それは、私の愛しい妻と離れていたんだ。キスくらいしてもいいだろう?」
「ふふふ、そうですわね」
「アドリアナ、私の女神、愛しているよ」
そういってレオポルト様はもう一度ギュッとわたくしを抱きしめると手を引いてソファに、腰をおろしました。
「実はアドリアナに少し話をしたい事があるんだ」
「まあ、どうしたのですか?」
「今日、婚約についての約定を作ったのだがどうにも腑に落ちない事があるんたよ」
「腑に落ちない事ですの?」
「ああ、王がな。何というか王子には恋愛の自由を認めているのだよ」
「え?」
「王子が望むのなら婚約はいつでも破棄できるという一文があってね。私は納得いかないのだよ」
「婚約破棄ですか?」
「ああ、勿論コーデリアにもその権利はあるが女性から婚約を破棄する事はないだろう? それなのに婚約を破棄された方が悪いくらいに書かれているのだよ。婚約者を魅了出来なかったのだから仕方がないだったかな?」
「まあ、それは酷いですわ! 婚約を破棄された女性はもう修道院に行くしかありませんのよ?」
「ああ、そうなのだ」
わたくしはその時あの物語でどうして悪役令嬢コーデリアが最後に修道院に送られたのかを理解しました。
あの世界では当たり前ではないが、この世界では婚約を破棄されるという事は欠陥品の烙印を押されるも同意なのです。
特に女性は!!
わたくし自身が恋愛結婚で、レオポルト様の心変わりなど考えられないので失念していましたが、婚約破棄とはそれくらいの重みがあることなのです。
だからこそ、コーデリアは必至だったのですわ。
わたくしの中で物語の全てがストンと腑に落ちました。
「そうですわ。王子がコーデリアを深く愛してくれていればいいのですわ!」
わたくしの中でコーデリアの子育て方針が固まったのです。
「愛されるコーデリアを目指します!!」
ブツブツ呟くわたくしを不思議そうに見つめるレオポルト様に笑顔を向けると、わたくしはレオポルト様に宣言致しました。
「レオポルト様、わたくしはコーデリアをシモン王子がコーデリアを好きで好きでたまらなくなる様な素敵な令嬢に育てますわ! そうすればコーデリアが婚約を破棄されることはありませんもの!」
「ああ、そうだね。確かにそれは大切だね」
わたくしの言葉にレオポルト様もうんうんと頷いていましたわ。
今レオポルト様に言われた事が事実ならば、コーデリアは王子の婚約者となるのです。
そして、後一月以内にミアが生まれてしまったら……。
コーデリアはあの世界の通りの悪役令嬢となってしまうのです。
悪役令嬢……この天使が?
わたくしはコーデリアが不憫で、抱きしめました。
「おかあさま? どうしたのです?」
隣に座るアルバートが不思議そうに尋ねてきました。
「アルバート……貴方は最後までコーデリアの味方になってあげてね?」
「??? はい?」
不思議そうに返事を返したアルバートにはコーデリアが王子の婚約者になる事を小さな子にもわかるように説明します。
「アルバート、コーデリアが王子の婚約者になると周りの者が貴方よりもコーデリアを大切に扱うかもしれません。でも、それは決して貴方を蔑ろにしている訳ではないのですよ。コーデリアが王子妃なるためにはそれはそれは沢山の勉強をしなければならないのです。だから、少しだけ皆が優しくしてあげているだけなのよ?」
わたくしがまず考えたのはアルバートとコーデリアの関係です。
あの世界の二人の仲は決してよくありませんでした。
最後までアルバートはコーデリアに注意していましたが、それは優しさからというよりも、この公爵家の為だったように感じました。
それは避けたいのです。
二人には仲良くなってほしいと心から願いました。
「はい! お母様。僕はコーデリアの良い兄上になります!」
アルバートがよくわからないながらも返事をしてくれた事にわたくしはその小さな体をギュッと抱きしめました。
「ありがとう。アルバート」
わたくしはその日から今後の事に頭を働かせました。
「わたくしはどうすべきなのでしょう?」
わたくしはノートに取り敢えずわたくしが覚えている物語の内容を書き出してからため息をつきました。
「この世界が物語の中だとすると、この通りに行動しなければならないのかしら?」
わたくしは頭の中で物語通りのコーデリアを思い浮かべる。
物語のコーデリアは我が儘で、負けず嫌いで、プライドが高く、人は自分に跪くものと信じて疑わない、ある意味貴族らしい貴族の令嬢だったのです。
更に婚約者の王子よりも確かな血筋だと考えて、王子でさえも見下していました。
だからこそ、その王子の裏切りに我を忘れてミアへの執拗ないじめや嫌がらせを行なったのです。
あれは飼い犬に腕を噛まれた飼い主のような態度でしたわ。
多分コーデリアは王子の事も好きでもなかったのだと思いますの。
わたくしはもう一度はぁとため息をつきました。
「わたくしは悪役令嬢の母としてコーデリアを物語通りに育てなければならないのかしら?」
それは愛しい娘を不幸の電車に乗せるようなものなのです。
この世界には電車はありませんが……。
でも、今ならコーデリアを優しい娘として育てる事も出来るのです。
だってまだ赤ちゃんなのですもの。
人に優しく、愛情豊かで、明るく、天使の様な娘に育てる事も可能な気がするのです。
「でも、婚約者の王子がどうなるか?ですわね」
わたくしは物語を書き留めたノートの上で指をトントンと叩いて、王子の名前に手を止めた。
「シモン・ド・サンダルディーア」
この度生まれた王子はわたくしが知っている王子と同じ名を授かりました。
この王子がしっかりしないのが全ての原因ではないのでしょうか?
コーデリアという婚約者がありながらミアに惹かれてフラフラとする。
それがコーデリアのプライドや負けず嫌いを刺激したのは間違い無いのです。
わたくしは王子が裏切らなければと考えました。
「もし、王子がコーデリアを裏切らなければ……あの物語は起こらない?」
ブツブツと呟いていると、背後からレオポルト様に話しかけられました。
「アドリアナ? どうかしたのかい?」
わたくしはノートをドレスの隠しポケットに忍ばせるとにっこり笑って振り返りました。
「貴方! もうお戻りですの?」
今日はコーデリアの婚約の事で王との話し合いに行っていたのです。
「ああ、全て滞りなく決定したよ」
そういって座っているわたくしの手を取って優しく立ち上がらせるとゆったりと抱きしめてキスを落としました。
「まぁ、どうなさったの?」
「それは、私の愛しい妻と離れていたんだ。キスくらいしてもいいだろう?」
「ふふふ、そうですわね」
「アドリアナ、私の女神、愛しているよ」
そういってレオポルト様はもう一度ギュッとわたくしを抱きしめると手を引いてソファに、腰をおろしました。
「実はアドリアナに少し話をしたい事があるんだ」
「まあ、どうしたのですか?」
「今日、婚約についての約定を作ったのだがどうにも腑に落ちない事があるんたよ」
「腑に落ちない事ですの?」
「ああ、王がな。何というか王子には恋愛の自由を認めているのだよ」
「え?」
「王子が望むのなら婚約はいつでも破棄できるという一文があってね。私は納得いかないのだよ」
「婚約破棄ですか?」
「ああ、勿論コーデリアにもその権利はあるが女性から婚約を破棄する事はないだろう? それなのに婚約を破棄された方が悪いくらいに書かれているのだよ。婚約者を魅了出来なかったのだから仕方がないだったかな?」
「まあ、それは酷いですわ! 婚約を破棄された女性はもう修道院に行くしかありませんのよ?」
「ああ、そうなのだ」
わたくしはその時あの物語でどうして悪役令嬢コーデリアが最後に修道院に送られたのかを理解しました。
あの世界では当たり前ではないが、この世界では婚約を破棄されるという事は欠陥品の烙印を押されるも同意なのです。
特に女性は!!
わたくし自身が恋愛結婚で、レオポルト様の心変わりなど考えられないので失念していましたが、婚約破棄とはそれくらいの重みがあることなのです。
だからこそ、コーデリアは必至だったのですわ。
わたくしの中で物語の全てがストンと腑に落ちました。
「そうですわ。王子がコーデリアを深く愛してくれていればいいのですわ!」
わたくしの中でコーデリアの子育て方針が固まったのです。
「愛されるコーデリアを目指します!!」
ブツブツ呟くわたくしを不思議そうに見つめるレオポルト様に笑顔を向けると、わたくしはレオポルト様に宣言致しました。
「レオポルト様、わたくしはコーデリアをシモン王子がコーデリアを好きで好きでたまらなくなる様な素敵な令嬢に育てますわ! そうすればコーデリアが婚約を破棄されることはありませんもの!」
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