悪役令嬢のお母様……でしたの

波湖 真

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第四章 学校生活

28、学校に入学……なの?

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誘拐事件が起こってから一年が過ぎました。
あの日以来シモン王子は我がバルターク公爵家を訪れる事はありませんでした。
どんな言い訳をしても、当家からの帰り道に起こった事件なので、バルターク公爵家はその事に何も言いませんでした。
しかし、残念ながら誘拐犯の情報は何も分からず、犯人逮捕にも至らず、逆に言うと前王派なのか唯の営利目的なのかも分からず仕舞いとなりました。
公爵家としては、酷く曖昧な結果ですか、犯人一味とは疑われる事はありませんでした。
そんな中で行われたコーデリアとシモン王子の婚約発表は、大々的なものではなく、警備を考慮して極々内輪のものに変更されました。
もちろん、後日婚約したという事は正式発表されましたが、城の広間に立つシモン王子とコーデリアがよそよそしく周りからは心配の声が上がるくらいでした。
それでも、まだ、現王家には前王の血筋は必要という事での婚約となったのです。
コーデリアとシモン王子は、その婚約発表以後は会う事もなくなりました。
そうした中で迎えたのが、学校への入学でした。
二人の関係を心配した者から進言で、コーデリアも学校に通う事が正式に決まり、いよいよ明日が学校の入学式なのです。
「コーデリア? 準備は出来て?」
わたくしは部屋で明日の準備を進めているコーデリアを訪ねました。
コーデリアはこの世の終わりのような顔をしております。
「ねぇ、お母様。私は学校でどうすればいいのかしら? 流石にシモン王子には嫌われている事はこの一年でわかったわ。それに、きっとミアも学校に入学してくるわよね? 婚約破棄路線は変えられそうもないわ」
ガックリと肩を落とすとコーデリアら下を向いてしまいました。
確かに今の状況は前世の物語り通りなのです。
「コーデリア……。それでも、少しでも婚約破棄にならないように頑張りましょう! このままでは全てが物語通りですもの……。最悪コーデリアが最後に逃げ出す事さえ出来ないかもしれないわ」
「そうよね……。私も流石にそう思ってきたわ。物語を変えることなんてできないのよ……」
「諦めては駄目よ!」
「私は婚約破棄されて修道院に送られて‥‥自殺するんだわ」
「やめて! やめて頂戴!! そんな事はわたくしは絶対に認めないわ!! コーデリア! 貴女は幸せになるのよ! 絶対に諦めないと約束して頂戴!! 良いわね?」
「でも、どうしたらいいの? 今更シモン王子と仲良くなんかなれないわよ……」
「そ、それは……」
コーデリアの暗い顔を何とかしたくてわたくしは頭をフル回転させました。
「イ、イベントを邪魔してみたらどうかしら? ううん、イベントを乗っ取ってみたら? あのイベント数々を経てシモン王子はミアに恋に落ちるのよ !! そうよ! コーデリアがイベントを乗っ取って主人公に成り代わればいいのよ!」
わたくしの言葉におずおずと顔を上げてコーデリアが確認するように見つめてきました。
「イベントを乗っとるの?」
「ええ!! わたくし達はいつどこでどんなイベントがあるのかを全て知っているわ! これからはコーデリア、貴女がミアとなってイベントをこなすのよ!」
「出来るかしら?」
「やるのよ! それしかもう手は無いと思うの」
わたくしが訴えるとコーデリアの瞳にやる気が灯るのを確認できました。
「そ、そうよね。シモン王子とのイベントを私がこなせば、物語さえも乗っ取れるかもしれないわね」
「そうよ!」
「そうすれば、シモン王子は私に恋をして婚約破棄にはならず、家も無事よね?」
「ええ!」
「内乱とかクーデターも起きないわよね?」
「そう思うわ!」
コーデリアは両手を握りしめて立ち上がりました。
「わかったわ! 私もう少し頑張ってみる!!」
「そうよ! お母様も遠くから応援しているわ!」
「遠く?から?」
「それはそうよ。流石にお母様が学校に付き添ったら駄目でしょう?」
「それは、そうだけど……」
「寮生活では無いのだから、毎日帰ってきたらお話は聞きますからね? 頑張って頂戴ね? コーデリア」
わたくしはそういうとコーデリアを抱きしめました。
不安だらけなのはよくわかりますが、だからと言って親であるわたくしはこれ以上の手伝いは出来ないのです。
わたくしが出来るのはわたくしが知っている事を伝える事と、毎日話を聞くことだけなのです。
あと、神に祈るのみ。
そうしてわたくしは全てをコーデリアに託したのでした。
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