60 / 82
第七章 王族の力
59、魔法の授業(シモン視点)
しおりを挟む
僕がアリアドネおば様から古代魔法を教わり始めて一週間が過ぎた。
「では、シモン王子今日は準備運動に移動魔法をやりましょう!」
この一週間でわかったことはアリアドネおば様は化け物だということだ。
いや言い方が悪い。天才だ。普通移動魔法は準備運動にするものではなく、移動魔法自体を習得するのに膨大な年月がかかるものなのだ。
まぁ、僕は習得済みだが。
「はい、わかりました。アリアドネおば様」
早速僕は移動魔法でおば様の指定した場所まで移動した。
「シモン王子! お見事ですわ!!」
そう言って手を叩くアリアドネおば様を見つめて少しだけ得意げに顎を上げた。
「では、今度は屋敷の応接間までいらしてくださいね」
ニコニコとそう言って練習していた裏庭から一瞬で消えたアリアドネおば様をポカンと見送る。
おいおい、屋外で障害物のない目に見える範囲への移動と屋内で壁やドア、家具などがある見えない範囲への移動では難易度が天と地だ。
僕も出来るかどうかわからない。もし家具の間に移動してしまったら大変なことになる。
僕はゴクリ吐息を飲む。
「やらなきゃ……ダメ……か?」
「きゃー、シモン王子申し訳ございません!!」
突然目の前に現れた美魔女に息が止まる。
「アリアドネおば様…….」
「わたくしったらシモン王子にどこにあるのか知ってる魔法がお出来になるかお聞きしておりませんでしたわ」
「どこに? ……魔法?」
聞いたことのない魔法に首を傾げる。
「まぁ、わたくしったらまた自分だけの名前を使ってしまいましわ。えっと確か今は探索魔法と呼ばれておりますわ」
探索魔法といえば暗闇や洞窟などで障害物を見つけ出す超難易度の魔法だったはずだ。
「……出来ません」
僕が悔しさを滲ませて答えるとアリアドネおば様は心底驚いたように手を口元に当てた。
「えぇ、本当ですか? どこにあるか……探索魔法ですよ? もしかしてあまりにマイナーなのでご存知ありませんでしたか?」
「……いえ、まだ習得しておりません」
アリアドネおば様は少し困ったように天を仰いだ。なんだか僕が悪いことをしているようだが、探索魔法を使えるのは騎士団の魔法士の中でもほんの一握りのはずなんだが……。
僕は不満げにアリアドネおば様を見つめた。すると気を取り直したように顔を上げるとおば様はにっこりと微笑んだ。
「わかりましたわ。シモン王子の魔法力では確かに古代魔法の影響を跳ね飛ばせるものではありませんのね。ワザとではないとわかって安心いたしました」
「はぁ」
僕は訳がわからず相槌を打つ。
「きっと今のまま古代魔法について、お話ししても理解できないかもしれませんわ。まずは基礎的な魔法からお教えしますわ。構いませんでしょうか?」
アリアドネおば様から落第点をもらったようで僕はがっくりと肩を落とした。これでも魔法については天才と言われているのだ。それなのにこの扱い……。
「おば様、探索魔法はまだ開発されてから間もなく、出来る人もあまりいないと聞いています」
僕は現状をおば様に伝えてみるがあまり気にされていないようだ。
「まぁ、そうなのね。作った時は便利だと思ったのにあまりお役に立たなかったのかしら?」
「え?」
僕は驚いて顔を上げた。
「探索魔法や移動魔法の理論はわたくしがまだ城にいた頃に作りましたのよ。ご存知ありませんてした?」
僕はアリアドネおば様の美しい顔を凝視した。そんな馬鹿な……。魔法を新たに作るのはそうそう出来るものではない。
それなのに……。作った?
「あの、おば様が開発されたと?」
「ええ、そうなのよー。当時の王室魔法士に説明したのだけど……。どこかで難しくなってしまったのかしら?」
僕は自分が魔法の天才だと思っていたことに羞恥心を抱く。無理だ。天才とはこの化け物のようなおば様のことをいうのだ。プライドも何も地に落ちた僕におば様が追い討ちをかける。
「これではこんなに長く古代魔法の影響をうけるのも仕方がないですわね。わたくしは一週間くらいで跳ね返せると思っておりましたの。これから特訓いたしましょう!」
おば様から古代魔法を跳ね飛ばさないとこれからもコーデリアに暴言を吐いてしまうらしい。それは困る。ただでさえ首の皮一枚で繋がっている婚約なのに更なる失言は避けなければならない。
そして、あののほほんとしたアリアドネおば様の脅威的な魔法の実力に驚きも隠せない。
それでも、コーデリアに自分の気持ちを直接伝えたいと思ってるのだ。
僕は改めて膝をついて頭を下げた。
「おば様、どうか僕に魔法についてお教えください」
「はい! 分かっております。コーデリアの幸せのため精一杯努めますわ!!」
アリアドネおば様の笑顔がこれからの授業のキツサを物語っていたが僕は覚悟を決めた。
僕は僕の可愛い婚約者を僕自身からも守るのだ。そのためには僕が強くならなくてはいけない。
僕は明日からの授業に想いを馳せた。
早く古代魔法を跳ね飛ばさなければならないのだ。
「では、シモン王子今日は準備運動に移動魔法をやりましょう!」
この一週間でわかったことはアリアドネおば様は化け物だということだ。
いや言い方が悪い。天才だ。普通移動魔法は準備運動にするものではなく、移動魔法自体を習得するのに膨大な年月がかかるものなのだ。
まぁ、僕は習得済みだが。
「はい、わかりました。アリアドネおば様」
早速僕は移動魔法でおば様の指定した場所まで移動した。
「シモン王子! お見事ですわ!!」
そう言って手を叩くアリアドネおば様を見つめて少しだけ得意げに顎を上げた。
「では、今度は屋敷の応接間までいらしてくださいね」
ニコニコとそう言って練習していた裏庭から一瞬で消えたアリアドネおば様をポカンと見送る。
おいおい、屋外で障害物のない目に見える範囲への移動と屋内で壁やドア、家具などがある見えない範囲への移動では難易度が天と地だ。
僕も出来るかどうかわからない。もし家具の間に移動してしまったら大変なことになる。
僕はゴクリ吐息を飲む。
「やらなきゃ……ダメ……か?」
「きゃー、シモン王子申し訳ございません!!」
突然目の前に現れた美魔女に息が止まる。
「アリアドネおば様…….」
「わたくしったらシモン王子にどこにあるのか知ってる魔法がお出来になるかお聞きしておりませんでしたわ」
「どこに? ……魔法?」
聞いたことのない魔法に首を傾げる。
「まぁ、わたくしったらまた自分だけの名前を使ってしまいましわ。えっと確か今は探索魔法と呼ばれておりますわ」
探索魔法といえば暗闇や洞窟などで障害物を見つけ出す超難易度の魔法だったはずだ。
「……出来ません」
僕が悔しさを滲ませて答えるとアリアドネおば様は心底驚いたように手を口元に当てた。
「えぇ、本当ですか? どこにあるか……探索魔法ですよ? もしかしてあまりにマイナーなのでご存知ありませんでしたか?」
「……いえ、まだ習得しておりません」
アリアドネおば様は少し困ったように天を仰いだ。なんだか僕が悪いことをしているようだが、探索魔法を使えるのは騎士団の魔法士の中でもほんの一握りのはずなんだが……。
僕は不満げにアリアドネおば様を見つめた。すると気を取り直したように顔を上げるとおば様はにっこりと微笑んだ。
「わかりましたわ。シモン王子の魔法力では確かに古代魔法の影響を跳ね飛ばせるものではありませんのね。ワザとではないとわかって安心いたしました」
「はぁ」
僕は訳がわからず相槌を打つ。
「きっと今のまま古代魔法について、お話ししても理解できないかもしれませんわ。まずは基礎的な魔法からお教えしますわ。構いませんでしょうか?」
アリアドネおば様から落第点をもらったようで僕はがっくりと肩を落とした。これでも魔法については天才と言われているのだ。それなのにこの扱い……。
「おば様、探索魔法はまだ開発されてから間もなく、出来る人もあまりいないと聞いています」
僕は現状をおば様に伝えてみるがあまり気にされていないようだ。
「まぁ、そうなのね。作った時は便利だと思ったのにあまりお役に立たなかったのかしら?」
「え?」
僕は驚いて顔を上げた。
「探索魔法や移動魔法の理論はわたくしがまだ城にいた頃に作りましたのよ。ご存知ありませんてした?」
僕はアリアドネおば様の美しい顔を凝視した。そんな馬鹿な……。魔法を新たに作るのはそうそう出来るものではない。
それなのに……。作った?
「あの、おば様が開発されたと?」
「ええ、そうなのよー。当時の王室魔法士に説明したのだけど……。どこかで難しくなってしまったのかしら?」
僕は自分が魔法の天才だと思っていたことに羞恥心を抱く。無理だ。天才とはこの化け物のようなおば様のことをいうのだ。プライドも何も地に落ちた僕におば様が追い討ちをかける。
「これではこんなに長く古代魔法の影響をうけるのも仕方がないですわね。わたくしは一週間くらいで跳ね返せると思っておりましたの。これから特訓いたしましょう!」
おば様から古代魔法を跳ね飛ばさないとこれからもコーデリアに暴言を吐いてしまうらしい。それは困る。ただでさえ首の皮一枚で繋がっている婚約なのに更なる失言は避けなければならない。
そして、あののほほんとしたアリアドネおば様の脅威的な魔法の実力に驚きも隠せない。
それでも、コーデリアに自分の気持ちを直接伝えたいと思ってるのだ。
僕は改めて膝をついて頭を下げた。
「おば様、どうか僕に魔法についてお教えください」
「はい! 分かっております。コーデリアの幸せのため精一杯努めますわ!!」
アリアドネおば様の笑顔がこれからの授業のキツサを物語っていたが僕は覚悟を決めた。
僕は僕の可愛い婚約者を僕自身からも守るのだ。そのためには僕が強くならなくてはいけない。
僕は明日からの授業に想いを馳せた。
早く古代魔法を跳ね飛ばさなければならないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる