対人恐怖症の私に恋は出来ますか?

波湖 真

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11、おねだり

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「お父様!」

普段滅多に部屋からも出てこない由梨が玄関ホールで待ち構えていたことにびっくりしながらも可愛い娘の出迎えに頬が緩む。
鞄を秘書に渡すと由梨の肩を抱いて居間に向かった。

「どうしたんだい?私の可愛いお姫様。君が待っていたのならもっと早く帰れば良かったよ。」

由梨を居間のソファに座らせて自らも腰を下ろすと用意されたコーヒーに手をつけた。

「で、一体どうしたんだい?由梨ちゃんが部屋から出てくるなんて何か良いことがあったのかい?」

由梨は胸の前で掌を組むと目を輝かせて父親におねだりした。

「お父様、私携帯電話が欲しいの!」

「ブッ」

コーヒーを危うく吹き出すところだった父は由梨の顔をマジマジと見つめた。
自分はほんの数日前まで由梨の事を部屋から出られず学校に通えるか心配していなかったか?
それが今は携帯が欲しいとは、、、一体全体どうしたんだ?!
父は由梨には考えておくと誤魔化して早々に不満そうな由梨を部屋に帰すと急いで海斗の部屋に向かった。

「海斗くん!!」

机で勉強していた海斗は突然ノックもなしに入って来た父親にビックリしながらも立ち上がった。

「どうしたんですか?お父さん。僕の部屋に来るなんて珍しいじゃないですか?」

「どうしたもこうしたもないよ!由梨ちゃんは一体どうしちゃったんだい?いきなり携帯だなんて!誰かに騙されてるか、脅されてるかしているのかい?あんなに可愛いんだから悪い奴に、、、、わーー!」

「ちょっと、お父さん落ち着いて下さい!姉さんがどうしたんですか?落ち着いて話して下さい。」

海斗に諭されて少し落ち着いた父親の話を聞いた海斗は由梨のご機嫌はこれだったのかと納得した。確かに今まで友人すらいなかった由梨にとって連絡先を貰ったら浮かれることも想像できる。友人としてならそれもいいだろう。直接話すよりも由梨の負担も少なそうだし、取っ掛かりとしては最高の手だった。

流石、生徒会長ってことですか、、、。

但し、健から会長の思惑を聞いてしまった今となっては友人以上を望んでる相手にあまりに由梨は無防備な気がしてならない。
でも、折角他人との関わりにやる気を出した由梨を否定してしまうことも出来ないというジレンマに陥っていた。

海斗は由梨が連絡取りたい相手は多分生徒会長の秋里だと伝えると父親はまぁそれなら安心かと胸を撫で下ろして出ていった。しかし、安心できない海斗は既に先手を取られた格好の優司にどこまで由梨を任せられるのか確かめないといけないなと考えていた。


由梨は折角貰った連絡先の紙を見つめ早く携帯が欲しいと部屋で考えていた。勿論メールならパソコンでも送れるが現時点での自分のメールは心配症の家族によって筒抜け状態となっているので送る気にならなかったのだ。

「お父様、携帯を買ってくださるかしら?」

由梨は今まで必要なものはいつでも予め用意されていたので自分から欲しいとねだったことがなかった。
自分が欲しいといった場合、父親がどういう反応を示すのか皆目見当がつかないのだ。
期待と不安を胸に取り敢えず今日は休むことにした。

その頃、由梨の父は秘書に携帯のパンフレットを持ってこさせて高校生の娘にGPS付きのkids携帯にすべきかを真剣に悩んでいたのだった。

翌朝、いつものモーニングルームで由梨を待ち構えていた父は由梨に可愛らしいチャームの付いたピンク色の携帯電話を差し出した。

「由梨ちゃんから初めて欲しいと言われたものだからね。ちゃんと用意したよ。でも、パパはとても心配だよ。今時は携帯から事件に巻き込まれる事も多いし、由梨ちゃんは可愛いから本当に気を付けるんだよ!」

「お父様!ありがとうございます。まぁとっても可愛いわ。私初めて携帯を持ったのね。嬉しいわ。」

ひとしきり喜んだ後、父を見つめて首を傾げる。

「でも、お父様は心配症ですのね。私今まで可愛いなんて言われた事も思った事もありませんわ。可笑しいわ。お父様ったら」

そう言ってふふふっと笑うと席に着いた。
それを聞いた海斗と父はスイスと日本での周りからの見られ方の違いに全く気づかない由梨に肩を落とした。
父は海斗にもブラックの携帯を手渡して一言由梨ちゃんを頼んだよと言うと席に着いて朝食を始めたのだった。

海斗は自分の手の中にある真新しい携帯を見つめながら今日にでも生徒会長と話さなければと思っていた。
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