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第五章 悪霊退散
38 悪霊退散
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シスターが五人を案内したのは教会の最も奥にある祈りの部屋と呼ばれる場所で司教のハンス以外は入室する事は出来ない場所だった。
シスターはどうぞと言って扉をトントンとノックするとサッと開けた。
「\$#5○$8\=#$☆○$\=×5〒♪°>9♪○$\€€...悪霊退散!!!」
ハンスの声と共に部屋の空気が一気に変わりグンっとマリアの体が引っ張られた。
ルーカスとサイモンは咄嗟にマリアの腕を掴みその場で足を踏ん張ったがジリジリと引っ張られるほどの力がかかっていた。
「ぐぅおおおおおおおお!!!!」
不気味な音ともに何かがマリアから抜け出しハンスの持っている手の平に乗るくらいの真っ赤な宝石のような石に吸い込まれていった。
その途端、ガクンとマリアの体が崩れ落ちその反動でルーカスとサイモンも膝をついた。
「お、、、終わったのか?」
ほんの数分の出来事にハロルドが呟くとハンスが満足そうに頷いた。
「はい、ハロルド殿下。無事マリアどのに取り憑いていた悪霊はこの石の中に封印されました。」
そう言って差し出された石は不気味な赤黒い色に変わっており先程の綺麗な宝石のような赤とは全く違うものになっていた。
「よかったですわ。」
クリスティーナは倒れているマリアを長椅子に運ばせると真っ青な顔で荒い息をする、それでも穏やかな顔のマリアの額を撫でた。
サイモンも今自分が見た事が信じられずマリアの脇にペタリと座っていたが既に平時と変わらないハロルドとルーカスを、見て慌てて立ち上がりなんとか平静を保っていた。
「終わってみるとあっけないものだな。これから先はどうするのだ?」
ハロルドがハンスに聞くとハンスが神妙に答える。
「これからも今までと変わらずこちらの賢者の石に祈りと浄化を施して行きたいと思います。」
「そうすると、先程のような澄んだ色になっていくのでしょうか?」
「そう出来るよう祈りを捧げます。」
「わたくしも王都からそして機会があればこちらでお祈りしたく思います。」
クリスティーナはそう言ってハンスの前に跪き早速祈りを捧げた。
その様子を見ていたアカネとセイジはもう既に封印されてしまった爆弾幽霊にそういえば何も言えなかったなぁと残念そうに笑った。
「まぁ恨みつらみは有り余るほどあるが、もうどうしようもないさ。」
「そうだね。こうして幽霊だけどセイジに、会えたんだもん。これからも一緒にいようね。」
アカネが答えた時ハロルドがクリスティーナの肩に手をかけて立ち上がらせた。
「クリスティーナ。今はそれくらいにしておこう。」
その時、アカネにはクリスティーナに向かってすごい速さで飛んでくる光の玉がみえた。
「クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!!!!!」
その玉はクリスティーナの名前を連呼しながらもまるで鉄砲の弾のようにクリスティーナに向かって飛んでいた。
「クリスティーナ!会いたかった!クリスティーナ!」
アカネは思わずクリスティーナの前に飛び出して両手を広げた。
「駄目ーー!!この子はあなたのクリスティーナじゃないの!!!」
「アカネ?」
「アカネーーーー!!!」
クリスティーナの声とセイジの声が重なる。
「セイジ!!」
ハロルドは見た。その時セイジの体がチェストから離れてクリスティーナの前にいるアカネに抱きつく様に庇う姿を。
「アカネ!!」
「セイジ!!貴方!!」
「クリスティーナ!!!」
「「「うわあああああああああ!」」」
突然強い光に部屋が包まれた。見える者も見えない者も一瞬あまりの眩しさに目を閉じて光が収まるのを待った。
しばらくすると光の収束し皆が頭を振りながら目を開けた。
そして、そこには生きている人間以外誰もいなかったのだ。
「ア、アカネ?アカネ?どこにいるの?アカネ?返事をして頂戴!アカネ!」
クリスティーナが泣きながら今目の前にいたはずのアカネを探して周りを見渡すがそこには何もいない空間が広がっていた。
ハロルドもセイジを探して見渡すがいつもいたチェストの周りにも最後に見たクリスティーナの周りにもセイジの姿を見ることは出来なかった。
「セイジ、、、、ハンス司教、今のは?一体何が起こったんだ!?」
「殿下、、、クリスティーナ様、、、どうかお許しくだされ。」
ハンスは二人の前に膝をつき、更には額もつけて許しを請うた。
「ハンス司教、、今は謝罪はいい。私達に何が起こったのか説明してくれ。」
ハンスは顔を上げ、封印された賢者の石を祭壇に戻すと一旦先程の応接室に戻りましょうと言って皆を促した。
応接室に戻り泣き濡れるクリスティーナと青ざめたハロルド、そして何が起こったのか全くわからないルーカスとサイモンが集まった。未だ気を失っているマリアは護衛をつけて客室のベッドに寝かせた。
「ハンス司教、私とクリスティーナは見える事がお互い限られている。司教が見た真実を説明してもらえるか?」
「はい、、、わかりました。」
ハンス司教も青ざめているがしっかりとした口調で語り始めた。
ハンスが言うにはマリアに憑いていた悪霊の封印は確実に上手くいったという。
ただ、その悪霊があまりに大き過ぎたため百年前の悪霊が弾き出されたのだ。この百年の祈りで大したこともできない小さな光の玉になっておりハンスも始めは気がつかなかった。
その後話している最中に光の玉には気が付いたが特に害もなくしばらくすると消えて無くなるくらいの力しかない者なので特に気にしていなかった。しかし、ハロルドがクリスティーナの名前を呼んだ途端ものすごい勢いでクリスティーナめがけて飛んでいったということだった。
ハンスにはクリスティーナの名前を呼ぶその光とクリスティーナを守るために飛び出したアカネ、そしてそのアカネを庇うように抱きしめたセイジの姿を見たと語った。
「多分あの光は百年前の悪霊でクリスティーナ様のお名前にあの王妃様と勘違いされたんだと思います。光には悪意は感じられませんでしたがあの勢いでぶつかられたらクリスティーナはショックでお倒れになられたと思います。アカネどのはそれに気付いて庇われたと思います。」
「で、そのアカネをセイジが庇ったのか、、、。」
「はい。」
「だか、セイジの行動範囲では届かない筈ではないのか?」
「はい、ですのであの時セイジどのはご自分の呪縛を解かれました。」
「ハンス司教、何故セイジは動けなかったんだ?」
「それは、アカネどのが原因です。」
「それは?」
「あのチェストに使われている木材はアカネどのが生まれたものなのです。」
「「え?」」
「アカネどのはお話になられませんでしたか?アカネどのは幽霊ではなく精霊でございます。あの木に宿り生まれたが何かの拍子に離れてしまったのでしょう。セイジどのはそのアカネどのの気配を感じとりあのチェストから離れたくなかったのではないかと思います。」
「目の前にアカネがいるのにアカネが生まれた木から離れたくなかったということか?どれだけアカネが好きだったんだ?セイジは、、、。」
そういうとハロルドは涙を拭う。
「アカネどのに話せばアカネどの自身がこの木は自分ではないと言われればセイジどのも離れられると思ったのですが、、、まさかアカネどのが覚えてらっしゃらないとは、、、。」
「アカネらしいわ。」
「それでアカネとセイジ、そして百年前の悪霊は、どうなったんだ?」
「それはなんとも、、。悪霊は衝突の衝撃で消滅したと思われますが、アカネどのとセイジどのは微妙ですな。衝撃で消滅したかもしれませんが、、一旦分解され何年後か何十年後か、何百年後かにまた再生されるかもしれません。」
「そ、、、そんな、、では、もう会えないんですの?わたくし何も言えませんでしたのよ。お礼を言うことがたくさんございますの!」
ワッと泣き出したクリスティーナをしっかりと抱きしめてハロルドも声を詰まらせた。
「私もセイジにまだまだ教わりたいことがあったのだ、、。」
二人は抱きしめ合ったまま突然の別れに涙に暮れた。
ルーカスとサイモンは自分達の見えないところでそんなことがと驚きを隠せずお互いの顔を見合わせたのだった。
シスターはどうぞと言って扉をトントンとノックするとサッと開けた。
「\$#5○$8\=#$☆○$\=×5〒♪°>9♪○$\€€...悪霊退散!!!」
ハンスの声と共に部屋の空気が一気に変わりグンっとマリアの体が引っ張られた。
ルーカスとサイモンは咄嗟にマリアの腕を掴みその場で足を踏ん張ったがジリジリと引っ張られるほどの力がかかっていた。
「ぐぅおおおおおおおお!!!!」
不気味な音ともに何かがマリアから抜け出しハンスの持っている手の平に乗るくらいの真っ赤な宝石のような石に吸い込まれていった。
その途端、ガクンとマリアの体が崩れ落ちその反動でルーカスとサイモンも膝をついた。
「お、、、終わったのか?」
ほんの数分の出来事にハロルドが呟くとハンスが満足そうに頷いた。
「はい、ハロルド殿下。無事マリアどのに取り憑いていた悪霊はこの石の中に封印されました。」
そう言って差し出された石は不気味な赤黒い色に変わっており先程の綺麗な宝石のような赤とは全く違うものになっていた。
「よかったですわ。」
クリスティーナは倒れているマリアを長椅子に運ばせると真っ青な顔で荒い息をする、それでも穏やかな顔のマリアの額を撫でた。
サイモンも今自分が見た事が信じられずマリアの脇にペタリと座っていたが既に平時と変わらないハロルドとルーカスを、見て慌てて立ち上がりなんとか平静を保っていた。
「終わってみるとあっけないものだな。これから先はどうするのだ?」
ハロルドがハンスに聞くとハンスが神妙に答える。
「これからも今までと変わらずこちらの賢者の石に祈りと浄化を施して行きたいと思います。」
「そうすると、先程のような澄んだ色になっていくのでしょうか?」
「そう出来るよう祈りを捧げます。」
「わたくしも王都からそして機会があればこちらでお祈りしたく思います。」
クリスティーナはそう言ってハンスの前に跪き早速祈りを捧げた。
その様子を見ていたアカネとセイジはもう既に封印されてしまった爆弾幽霊にそういえば何も言えなかったなぁと残念そうに笑った。
「まぁ恨みつらみは有り余るほどあるが、もうどうしようもないさ。」
「そうだね。こうして幽霊だけどセイジに、会えたんだもん。これからも一緒にいようね。」
アカネが答えた時ハロルドがクリスティーナの肩に手をかけて立ち上がらせた。
「クリスティーナ。今はそれくらいにしておこう。」
その時、アカネにはクリスティーナに向かってすごい速さで飛んでくる光の玉がみえた。
「クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!クリスティーナ!!!!!」
その玉はクリスティーナの名前を連呼しながらもまるで鉄砲の弾のようにクリスティーナに向かって飛んでいた。
「クリスティーナ!会いたかった!クリスティーナ!」
アカネは思わずクリスティーナの前に飛び出して両手を広げた。
「駄目ーー!!この子はあなたのクリスティーナじゃないの!!!」
「アカネ?」
「アカネーーーー!!!」
クリスティーナの声とセイジの声が重なる。
「セイジ!!」
ハロルドは見た。その時セイジの体がチェストから離れてクリスティーナの前にいるアカネに抱きつく様に庇う姿を。
「アカネ!!」
「セイジ!!貴方!!」
「クリスティーナ!!!」
「「「うわあああああああああ!」」」
突然強い光に部屋が包まれた。見える者も見えない者も一瞬あまりの眩しさに目を閉じて光が収まるのを待った。
しばらくすると光の収束し皆が頭を振りながら目を開けた。
そして、そこには生きている人間以外誰もいなかったのだ。
「ア、アカネ?アカネ?どこにいるの?アカネ?返事をして頂戴!アカネ!」
クリスティーナが泣きながら今目の前にいたはずのアカネを探して周りを見渡すがそこには何もいない空間が広がっていた。
ハロルドもセイジを探して見渡すがいつもいたチェストの周りにも最後に見たクリスティーナの周りにもセイジの姿を見ることは出来なかった。
「セイジ、、、、ハンス司教、今のは?一体何が起こったんだ!?」
「殿下、、、クリスティーナ様、、、どうかお許しくだされ。」
ハンスは二人の前に膝をつき、更には額もつけて許しを請うた。
「ハンス司教、、今は謝罪はいい。私達に何が起こったのか説明してくれ。」
ハンスは顔を上げ、封印された賢者の石を祭壇に戻すと一旦先程の応接室に戻りましょうと言って皆を促した。
応接室に戻り泣き濡れるクリスティーナと青ざめたハロルド、そして何が起こったのか全くわからないルーカスとサイモンが集まった。未だ気を失っているマリアは護衛をつけて客室のベッドに寝かせた。
「ハンス司教、私とクリスティーナは見える事がお互い限られている。司教が見た真実を説明してもらえるか?」
「はい、、、わかりました。」
ハンス司教も青ざめているがしっかりとした口調で語り始めた。
ハンスが言うにはマリアに憑いていた悪霊の封印は確実に上手くいったという。
ただ、その悪霊があまりに大き過ぎたため百年前の悪霊が弾き出されたのだ。この百年の祈りで大したこともできない小さな光の玉になっておりハンスも始めは気がつかなかった。
その後話している最中に光の玉には気が付いたが特に害もなくしばらくすると消えて無くなるくらいの力しかない者なので特に気にしていなかった。しかし、ハロルドがクリスティーナの名前を呼んだ途端ものすごい勢いでクリスティーナめがけて飛んでいったということだった。
ハンスにはクリスティーナの名前を呼ぶその光とクリスティーナを守るために飛び出したアカネ、そしてそのアカネを庇うように抱きしめたセイジの姿を見たと語った。
「多分あの光は百年前の悪霊でクリスティーナ様のお名前にあの王妃様と勘違いされたんだと思います。光には悪意は感じられませんでしたがあの勢いでぶつかられたらクリスティーナはショックでお倒れになられたと思います。アカネどのはそれに気付いて庇われたと思います。」
「で、そのアカネをセイジが庇ったのか、、、。」
「はい。」
「だか、セイジの行動範囲では届かない筈ではないのか?」
「はい、ですのであの時セイジどのはご自分の呪縛を解かれました。」
「ハンス司教、何故セイジは動けなかったんだ?」
「それは、アカネどのが原因です。」
「それは?」
「あのチェストに使われている木材はアカネどのが生まれたものなのです。」
「「え?」」
「アカネどのはお話になられませんでしたか?アカネどのは幽霊ではなく精霊でございます。あの木に宿り生まれたが何かの拍子に離れてしまったのでしょう。セイジどのはそのアカネどのの気配を感じとりあのチェストから離れたくなかったのではないかと思います。」
「目の前にアカネがいるのにアカネが生まれた木から離れたくなかったということか?どれだけアカネが好きだったんだ?セイジは、、、。」
そういうとハロルドは涙を拭う。
「アカネどのに話せばアカネどの自身がこの木は自分ではないと言われればセイジどのも離れられると思ったのですが、、、まさかアカネどのが覚えてらっしゃらないとは、、、。」
「アカネらしいわ。」
「それでアカネとセイジ、そして百年前の悪霊は、どうなったんだ?」
「それはなんとも、、。悪霊は衝突の衝撃で消滅したと思われますが、アカネどのとセイジどのは微妙ですな。衝撃で消滅したかもしれませんが、、一旦分解され何年後か何十年後か、何百年後かにまた再生されるかもしれません。」
「そ、、、そんな、、では、もう会えないんですの?わたくし何も言えませんでしたのよ。お礼を言うことがたくさんございますの!」
ワッと泣き出したクリスティーナをしっかりと抱きしめてハロルドも声を詰まらせた。
「私もセイジにまだまだ教わりたいことがあったのだ、、。」
二人は抱きしめ合ったまま突然の別れに涙に暮れた。
ルーカスとサイモンは自分達の見えないところでそんなことがと驚きを隠せずお互いの顔を見合わせたのだった。
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