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第二章 最初の事件
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「まずは子爵様の考えていることを教えてもらえますか?」
パートナーとなった私達は早速事件についての意見を交換することにした。
私が前に出て事件を解決するのならば、子爵の頭にあるものを全て話してもらわないと困る。
ホームズの考えなんていつも想像の上だったので何度も騙されて囮にされた。
そんなことがないようにしなければならない。
「話す……か。はっきり言って子供の頃から自分の考えを話すのは得意ではない」
「そうなんですか?」
「ああ、まだ幼い頃に兄上に話したら頭がおかしくなったと言われて大騒ぎだったんだ。それ以来遠慮している」
私の中にふつふつと伯爵に対する怒りが湧く。同じ兄弟というのが悪い。どうしてもマイクロフトと比べてしまう。彼はホームズが一つ言えば十までわかる男だった。その頭脳に何度嫉妬したことか。それがこの世界では兄が普通の伯爵だった為に子爵は自らの才能を自分の中に閉じ込めていたのだ。
「なにか間違っている気がします」
「は?」
「いえ、なんでもありません」
私は笑顔を作ってメモを取った。
子爵ははじめから自分がどう思ったかを語ってくれた。殆どは私も知っていることだったが、一つだけ知らなかった情報があった。それが子爵が犯人はもう屋敷にはいないと判断した根拠となるものだ。
「一つ、これは既にロバートも知っているがここ最近貴族のスキャンダルの売買が行われているらしい」
「売買ですか?」
「ああ、ある人物が貴族の使用人を通じて弱みや嗜好に関する情報を買っているらしい。そしてそれを使って売るもしくは脅迫していると僕は見ている」
「警察は捕まえないのですか?」
「貴族が自分の不利となる情報を自ら明かす訳がない。殆どの貴族が金で解決してる」
「それはひどいですね」
「ああ、それでマリアが子爵家の何かを売ろうとしたと考えている」
「え? 一体何をですか?」
「君の名前があったのだ。わかるだろう?」
子爵に見つめられてよく考え見る。私の名前が書いてある紙。子爵家の醜聞?
「今現在の弱みではない場合もある」
現在ではなく? 未来か?
「あ!!」
「わかったようだな。君がもし子爵家に養子に入り後継者となっていつか子爵となった時、君の出自は弱みとなりうるのだよ。貴族の社会では」
そうか。だから、僕の名前があったのか。では……
「いままでも? 十二人も孤児が来たんですよね?」
「ああ、そうだ。僕はいままでもあの子供達の情報を売っていたと見ている。わからないのは君の情報を売ろうとしたのにもかかわらず、直前になって拒むなりなんなりして揉めた理由だ。取引の場に紙を持っていったのに破れていたのはマリアが拒んだからだろう」
私は泣いていたマリアの顔を思い浮かべる。
「きっと、やりたくてやっていたのではなかったと思います」
「そして、その紙を書いた人物だ。何故ならマリアは読み書きが出来ない」
「そうですね」
「読み書きが出来て、君の出自について知っているものを考えるとかなり人数が絞られる」
「そうなんですか?」
「ああ、誰が君をここに連れてきたのか忘れたか?」
「伯爵様です」
「そうだ。兄上は慎重だからね。今までも子供も君も伯爵家からの養子候補となっているのだよ」
私はやっと納得した。ここに来たときから使用人達は私を『ジェイ様』と呼び、誠意をもって面倒を見てくれていたのだ。
伯爵家関係の師弟だと思われているわけか……
「だから、伯爵家の傍系師弟の君の情報は全く弱みにならない。だか、君が孤児なら話は別になるのだ。そして、その情報にアクセスできるのは」
子爵は机の上をトントンと叩いた。
「ロバートと秘書のハルトとカーリッドだ」
なんということだ。ロバートまで犯人の疑いがあるのか? それに秘書? 私は見たことがない。
「ハルトとカーリッドには君たちの手続きを任せている。伯爵家のベンたちとも連絡を取っているんだ」
子爵はあの紙切れを懐から取り出した。
「切れ端だが、僕なりに筆跡を鑑定してみた。プロではないから確実は言えないがいくつか特徴的な癖字がある」
そういって机から持ってきたのは子爵家に関する報告書だ。
子爵はパラパラとページを捲るとあるところで手を止める。
「見てみたまえ。ここの『J』とこの紙の『J』の書き方が酷似しているだろう」
「本当ですね。特にこのカーブが同じです」
「ああ、そして、この報告書を書いた人物は」
私は子爵の顔を見つめる。
「今はやめておこう」
「え?」
ガクッとした私を子爵は少し意地悪くニヤリと笑った。
「名探偵になるのだろう? これだけヒントを与えたのだ。考えたまえ。思考を止めてはいけない」
「そんなぁ!」
「それに弱みを集めている人物についてはもう少し時間が必要だ。今はこの家の情報をマリアと売っていた者を自分で突き止めてみなさい」
子爵は私が何を言おうともう何も話してはくれなかった。私は確かのマリアが目覚めるまでは刺した犯人を見つけることは難しいと判断した。だからこそ、マリアと一緒に情報を売っていた人物を突き止めることから始めることにする。
「わかりました。僕の能力をテストするってわけですね」
「そのとおりだ。いくらパートナーとはいえ僕の代わりとなるのだろう? 無能では困る」
「了解です。期限はありますか?」
「そうだな。マリアが目覚めるまで。多分あと二日くらいで目覚めるらしい」
「絶対に突き止めてみせます!!」
そうして僕は子爵の執務室を飛び出した。
パートナーとなった私達は早速事件についての意見を交換することにした。
私が前に出て事件を解決するのならば、子爵の頭にあるものを全て話してもらわないと困る。
ホームズの考えなんていつも想像の上だったので何度も騙されて囮にされた。
そんなことがないようにしなければならない。
「話す……か。はっきり言って子供の頃から自分の考えを話すのは得意ではない」
「そうなんですか?」
「ああ、まだ幼い頃に兄上に話したら頭がおかしくなったと言われて大騒ぎだったんだ。それ以来遠慮している」
私の中にふつふつと伯爵に対する怒りが湧く。同じ兄弟というのが悪い。どうしてもマイクロフトと比べてしまう。彼はホームズが一つ言えば十までわかる男だった。その頭脳に何度嫉妬したことか。それがこの世界では兄が普通の伯爵だった為に子爵は自らの才能を自分の中に閉じ込めていたのだ。
「なにか間違っている気がします」
「は?」
「いえ、なんでもありません」
私は笑顔を作ってメモを取った。
子爵ははじめから自分がどう思ったかを語ってくれた。殆どは私も知っていることだったが、一つだけ知らなかった情報があった。それが子爵が犯人はもう屋敷にはいないと判断した根拠となるものだ。
「一つ、これは既にロバートも知っているがここ最近貴族のスキャンダルの売買が行われているらしい」
「売買ですか?」
「ああ、ある人物が貴族の使用人を通じて弱みや嗜好に関する情報を買っているらしい。そしてそれを使って売るもしくは脅迫していると僕は見ている」
「警察は捕まえないのですか?」
「貴族が自分の不利となる情報を自ら明かす訳がない。殆どの貴族が金で解決してる」
「それはひどいですね」
「ああ、それでマリアが子爵家の何かを売ろうとしたと考えている」
「え? 一体何をですか?」
「君の名前があったのだ。わかるだろう?」
子爵に見つめられてよく考え見る。私の名前が書いてある紙。子爵家の醜聞?
「今現在の弱みではない場合もある」
現在ではなく? 未来か?
「あ!!」
「わかったようだな。君がもし子爵家に養子に入り後継者となっていつか子爵となった時、君の出自は弱みとなりうるのだよ。貴族の社会では」
そうか。だから、僕の名前があったのか。では……
「いままでも? 十二人も孤児が来たんですよね?」
「ああ、そうだ。僕はいままでもあの子供達の情報を売っていたと見ている。わからないのは君の情報を売ろうとしたのにもかかわらず、直前になって拒むなりなんなりして揉めた理由だ。取引の場に紙を持っていったのに破れていたのはマリアが拒んだからだろう」
私は泣いていたマリアの顔を思い浮かべる。
「きっと、やりたくてやっていたのではなかったと思います」
「そして、その紙を書いた人物だ。何故ならマリアは読み書きが出来ない」
「そうですね」
「読み書きが出来て、君の出自について知っているものを考えるとかなり人数が絞られる」
「そうなんですか?」
「ああ、誰が君をここに連れてきたのか忘れたか?」
「伯爵様です」
「そうだ。兄上は慎重だからね。今までも子供も君も伯爵家からの養子候補となっているのだよ」
私はやっと納得した。ここに来たときから使用人達は私を『ジェイ様』と呼び、誠意をもって面倒を見てくれていたのだ。
伯爵家関係の師弟だと思われているわけか……
「だから、伯爵家の傍系師弟の君の情報は全く弱みにならない。だか、君が孤児なら話は別になるのだ。そして、その情報にアクセスできるのは」
子爵は机の上をトントンと叩いた。
「ロバートと秘書のハルトとカーリッドだ」
なんということだ。ロバートまで犯人の疑いがあるのか? それに秘書? 私は見たことがない。
「ハルトとカーリッドには君たちの手続きを任せている。伯爵家のベンたちとも連絡を取っているんだ」
子爵はあの紙切れを懐から取り出した。
「切れ端だが、僕なりに筆跡を鑑定してみた。プロではないから確実は言えないがいくつか特徴的な癖字がある」
そういって机から持ってきたのは子爵家に関する報告書だ。
子爵はパラパラとページを捲るとあるところで手を止める。
「見てみたまえ。ここの『J』とこの紙の『J』の書き方が酷似しているだろう」
「本当ですね。特にこのカーブが同じです」
「ああ、そして、この報告書を書いた人物は」
私は子爵の顔を見つめる。
「今はやめておこう」
「え?」
ガクッとした私を子爵は少し意地悪くニヤリと笑った。
「名探偵になるのだろう? これだけヒントを与えたのだ。考えたまえ。思考を止めてはいけない」
「そんなぁ!」
「それに弱みを集めている人物についてはもう少し時間が必要だ。今はこの家の情報をマリアと売っていた者を自分で突き止めてみなさい」
子爵は私が何を言おうともう何も話してはくれなかった。私は確かのマリアが目覚めるまでは刺した犯人を見つけることは難しいと判断した。だからこそ、マリアと一緒に情報を売っていた人物を突き止めることから始めることにする。
「わかりました。僕の能力をテストするってわけですね」
「そのとおりだ。いくらパートナーとはいえ僕の代わりとなるのだろう? 無能では困る」
「了解です。期限はありますか?」
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「絶対に突き止めてみせます!!」
そうして僕は子爵の執務室を飛び出した。
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