音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第百八十八話 サリヴァンのその後

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 レイと致した後、痛くて歩くのが億劫という事だったので、俺の部屋のベッドで休む事になった。
 俺、そんなに激しくしてないんだけどなぁ……。
 痛い痛くないは人それぞれなんだなって改めて思ったよ。
 服を着ようとベッドから出ようとした時、レイに腕を掴まれた。

「ごめんね、ハル。痛がっちゃって……」

「謝る必要なんてねぇよ。俺こそ無理させちゃったかな?」

「そんな事ない! ハルとその、出来て、嬉しかったから」

 ああ、やべぇ。
 美人にそんな事言われると、鼻血が出そうな位嬉しいんだけど!
 むくむくと性欲が湧いてくるけど、流石にこれ以上レイに負担は掛けられないから、必死になって抑えた。
 レイの綺麗な髪を撫でると、くすぐったそうな反応を見せた。

「ありがとうな、レイ。こんなに素敵な三人の嫁がいて、俺は本当に幸せだ」

「僕の方こそ、結婚してくれてありがとう」

 うん、やっぱベッド出るの止めた。
 もう少し、レイを全身で感じていよう。
 俺はレイを抱き締め、そのまま短い眠りに付いた。

 あっ、そういえば《武力派》の連中とサリヴァンのアホたれはどうしているんだろうか?
 まぁいっか、俺の知ったこっちゃない。

 今は彼女の柔らかい感触を楽しむとしようじゃないか。










 ――サリヴァン視点――

「何なのだ、この状況は!!」

 俺の目の前で、皇帝陛下が怒りをぶちまけるように、執務室にある物品を剣でズタズタにしていた。
 乱暴にやっているせいか、豪華な飾りが付いている剣の刃がボロボロになっている。
 あまりの乱心ぶりに、メイドや兵士達はただ見守るしかない。
 だが、俺には陛下の気持ちがわかる。
 何せ、国民の半数以上がレミアリアに移民してしまったのだから。

「何故だ、何故国民は、我が国を見捨てたぁ!!」

 兵士の報告だと、いくつもの町や村が誰もおらず、もぬけの殻となっていたらしい。
 巡回していた兵士に差し入れた食料に、強力な睡眠薬が混入していたようで、誰も移民を阻止できなかったようなのだ。
 見捨てた理由、その理由は明確にはわからない。
 だが、恐らく音楽とか絵画等の芸術がヨールデン国民の胸を打ったのだろう。
 娯楽を覚えてしまった国民は、もう元の生活には戻れない。故にレミアリアへ流れていった。
 まさか何の力を持たない芸術が、こんな結果を引き起こすなんて思ってもみなかった。

「サリヴァン!! 貴様の情報通りだったから、今回の戦は貴様に責はない。だが、もしや貴様まで我が国を見捨てたりしないよな!?」

 俺の眼前に剣の切っ先が向けられる。
 ああ、退路は絶たれたな。
 俺は正直言えば、この国を見限って内戦状態に陥っているとある国へ移動しようとしていた。俺は戦いたい、そして俺の武力を見せつけたいのだ。
 あの戦争は、もはや戦争ではない!
 音属性の魔法という、インチキ極まりないものを使われてしまったら、武力と知力による戦争なんて出来ないではないか!
 だからあれは、俺が求めていた戦争ではない!
 もっと、武力と武力がぶつかり合い、知略と知略を掛け合う、そんな戦争をしたいのだ!
 なら俺は、この国で着実に地位を高め、そして兵士を蓄えて改めて反撃に出てやる!

「サリヴァン! 貴様には名誉ある我が国の貴族としてやる! しっかりと職務に励むがよい!!」

「はっ、ありがたき幸せ」

「レミアリアめ、今に見ていろ! ふんぞり返っていられるのも今の内だ!!」

 陛下は野心に溢れている。
 これならば、この国はまた軍事国家として名を上げられるだろう。
 しかし、俺の負の連鎖は止まらない。

 皇帝陛下が本棚に向かって振り下ろした剣がピタリと止まる。
 何と、乱心を止めようとした兵士が、陛下の背後から剣で左胸を突き刺したのだった。

「へ、陛下!」

 陛下は白目を剥き、そのまま言葉を発する事なく凶刃に倒れた。
 何という事だ。陛下が、陛下が、殺害されてしまった!

「はははははははっ!! 戦に狂った文字通りの狂王を討ち取ったぞぉ!!」

 高笑いを上げる、陛下を殺した兵士。
 ああ、貴様は何という事をしてくれたのだ!
 俺は抜剣して横一閃、高笑いを上げていた兵士の首が宙に舞った。
 鮮血を撒き散らしながら床に落ちた兵士の表情は、それは不気味な程の笑顔だった。

 俺は剣を振って血を払い落とし、鞘に収めた
 そして近くにいたメイドに命令をした。

「殿下……ヴィジュユ殿下をお呼びしろ」

「か、畏まりました……!」

 杖で体を支えながらヴィジュユ殿下が到着すると、殿下は膝から崩れ落ちて父親の死に悲しみ、そして泣いた。
 だが、王族とは残酷だ。
 肉親の死に涙する時間すら与えてくれない。
 殿下は杖がないと歩けない程、身体が弱りきっていた。
 あの牢獄での地獄のせいで、殿下は死には至らないが重い病にかかってしまい、身体に不自由が出てしまったのだ。
 芸術王国とか言っておきながら、大変えげつない事をしてくれたものだ。

 陛下死後、ヴィジュユ殿下は即位をし、皇帝となった。
 彼は戴冠式での宣言の際、口にしたのはレミアリアに対する復讐ではなかった。

「我が国は、知っての通り大半の国民が移民してしまった。これが、戦争で敗者となった我が国の末路だ」

 ヴィジュユ陛下が述べた言葉は、現状のままだと国としてまともに運営できる程の収入がない事、まず国の安定化を図る事、そして各国への侵略行為を一切行わない事を述べた。
 戴冠式に訪れた数少ない兵士と数千人程度の国民は、戦争が起きない事に喜びを隠さなかった。
 さらに、陛下は言葉を述べた。

「国としての機能を維持する為に、ヨールデンは現在誰もいない領地に関してはレミアリアと《国家間領土売却》を行って、運用資金を得る事にした」

 この言葉で、俺を含めて全員が驚きを隠せなかった。
 まさか、国としての最終手段に出るのか!?
 そこまでこの国は追い詰められていたのか……。

「そこで我が国は武器製造産業を中断し、自国を豊かにする為に農業に力を入れる形に方向転換する! 皆、争いのない平和な国になる為に、力を私に貸してほしい」

 すると国民全員が頭を下げて従うという意を示した。
 そんな、そんな馬鹿な。
 俺は力こそ至高、力こそがこの世界の理だと思っている。
 その理に一番近い国がここ、ヨールデンだと思っていたのだ。
 有り得ない、あってはならぬ!!

 俺は国外逃亡を決意し、そのタイミングを図った。
 だが、恐らく誰かの入れ知恵なのだろう、常に俺の周囲には監視がいて、逃亡する事が出来なかった。
 何故だ、何故俺の思惑通りに上手くいかないんだ。
 何故常に、俺にとって最悪の結果ばかりに事が進んでしまうんだ。

「は、はははははは……」

 俺の乾いた笑いが、与えられた畑の中心で響き渡った。
 
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