音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第九話 俺氏、天狗になる

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 アンナ先生との勝負に見事勝った俺は今、アンナ先生に肩を揺さぶられている。
 あぁぁぁぁぁ、脳が、脳が揺れるぅぅ……。

「君が使ったあの魔法の属性はなんなのですか、何なのですかぁ!?」

「や、め、てぇ……。吐き、そう」

 あまりにも脳が揺さぶられて気持ち悪くなっていた俺は、辛うじて絞り出せた声で止めてもらうように訴えた。そして止めてもらえた。
 うえぇぇぇ、マジで吐きそう……。

「ご、ごめんなさい……。でも知りたいのです、君の魔法の正体を!」

 やっぱりこの人、魔法に関して相当追求している。
 納得する答えを出してもらえるまで、こういうタイプの人間は引かない。
 まぁ別に俺の魔法の属性を教えても、何の不利益がないからいっか!

「ふぅ……。俺の魔法の属性はズバリ、《音》っす」

「音?」

「そうっす。俺が知っているあらゆる音を操れますよ。例えば――」

 俺はとある指示を出して生成したサウンドボールを、自分の口に吸着させる。
 そして話してみると……

「はっはっはぁ!! これがハル様の魔法だぜぇ!!」

「えっ、私の声!?」

 目の前にいるアンナ先生の声で俺は喋っていた。
 アンナ先生は目が飛び出る位に驚き、他の生徒達も口をだらしなく開けている。
 そしてサウンドボールに別の指示を出し、音声モザイクを掛けてみた。

「声をこんな風に自在に変える事ができますぜ」

「ひっ、不気味な声!?」

 そっか。
 この世界には音声モザイクないから、不気味に聞こえるよな。
 俺は指をパチンと鳴らして、サウンドボールを消して俺の声に戻した。

「もちろん声だけじゃなくて、やろうと思えば剣を振る音だったり爆発音、小鳥の囀りだって発生させられますよ」

「……もしかして、私が声を出せなくなったのは?」

「ういっす、俺の魔法で音を遮断しました。名付けるなら、《詠唱殺し》って技ですかね?」

「昨日ハル君が言っていた、見えないシャボン玉がその音の発生源でしょうか?」

「そうっす。俺が先生と対峙した時、剣の柄を握る動作をしましたよね? その時に九十個のサウンドボールを生成しました」

「えっ、無詠唱で!?」

「ええ、無詠唱で、っすね」

 アンナ先生は驚きを通り越して呆れているような表情を見せた。
 そんなに無詠唱ってのは高等技術なんだな。
 俺、特に意識してなかったからわからなかったわ。

「でもよくハル君はユニーク魔法を使いこなせるようになりましたね。どうやったのですか?」

「どうやった? う~ん、そうっすねぇ。とりあえず一通りイメージしてみました」

「イメージ?」

 俺は自分の魔法の正体を知る為に、様々なイメージをしてみたんだ。
 炎を出すイメージ、水を出すイメージ、なんて具合にな。
 そして辿り着いたのが、偶然だけど音を発するという特性だった。
 そこから俺は色々試して、ここまで使いこなせるようになった。
 この事をアンナ先生に砕いて説明した。

「なるほど、素晴らしいです! その試みは歴史に名を残している偉大な魔術師が、常に行っていた鍛練法と一緒です。まさかそれを自力でしてしまうとは……君には驚かされます」

「はっはっは、それほどでもありますね!」

「ただし、この魔法は大きな弱点があります」

 えっ、弱点?
 何だ、弱点って……。

「恐らく、ハル君の魔法には攻撃魔法はないですね?」

「そうっすね」

「つまり、対多数戦には向かないっていう事です」

 あっ、そういう事か!
 この世界では魔術師が戦争の花形と言われている。
 その理由としては、広範囲の魔法による殲滅が可能だからだ。
 前世で言うところのミサイルや爆弾クラスの破壊力を持った魔法を、魔術師達が打ち合うのだ。
 剣士や歩兵はたまったもんじゃないな!
 この世界の剣士や兵士、歩兵はそんな魔術師を守る盾なんだよね。
 不遇だよな、剣士達……。

 そんな中、俺の魔法は対多数には向かない。
 広範囲に影響を与える方法は、俺の音魔法には確かにあるんだけど、それでは殲滅出来ない。
 結局俺の魔法は驚かせて相手の足を止めて、その隙に剣で斬り倒すしかない。
 つまり、トドメを刺せる魔法じゃないんだよね!

「なるほどね、俺の魔法は対一人がせいぜいだから、王宮魔術師とかは向かない、か」

「……本当にハル君は恐ろしい位に賢いですね」

 王宮魔術師は魔法の研究だけではなく、戦争にも駆り出される。
 ストレートに言えば、一回の魔法で大量虐殺しなくてはいけない。
 今のところ、対多数戦用のサウンドボールの使い方は思い付いていない。
 だから現状俺は王宮魔術師になるのは、現実的ではないって事だな。
 本当、色んな意味でユニークな魔法だよ、ったく!
 まぁ元々王宮に入るつもりはなかったし、別にいいけどさ。

 俺とアンナ先生が話し込んでいると、レイとリリルが駆け寄ってきた。

「すごいよ、ハル君! 先生に勝っちゃうなんて、本当すごい!!」

 おおぅ、リリルがいつになく饒舌だな!
 どうやら俺と先生の模擬戦を見て、大興奮なご様子。
 ふっふっふ、もっと褒めていいんだよ?

「リリルの言う通りだよ。アンナ先生が何も出来ないなんて……」

 そしてクールなレイも、目を大きく見開いていた。
 驚きもあるし、興奮もあるんだろうな。
 まぁ男に興奮されるのは勘弁だが、羨望の眼差しはウェルカムだぜ!

 するとどんどん他の生徒や先生が、俺を取り囲むように集まってくる集まってくる!
 「あの魔法は何なんだ?」とか、「剣の筋が素晴らしくいいな!」とか、「ハル君素敵!」とか、もうチヤホヤされまくった!
 あっはっはっは!
 やめたまえやめたまえ、そんなに褒めると俺、浮かれちゃうよ?

「いやぁ、人気者は辛いな! あっはっは!」

 俺の鼻は天狗のように伸びる伸びる!
 俺はアンナ先生との戦いで、対一人であれば勝てると確信した。

 だけど、それは愚かな考えだったんだ。
 そんなに世の中は俺達に優しくない。
 前世の記憶を持っていても、それを忘れてしまっていた。

 この後、とんでもない事態が起こってしまう。
 俺は、一生この事を後悔する事になった。
 前世でも仕事で天狗になっていたせいで、大きなミスをしてしまっていたのに、俺はまたそれを繰り返してしまう。
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