音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第六十七話 俺、バトルジャンキーと遭遇

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 ――ハル視点――

「はぁ、はぁ、はぁ――」

 さすがに、しんどくなってきた。
 最近さらに体力がついてきたからと言っても、所詮は八歳のガキの身体。あんだけ戦ったらそりゃ疲れるわ。
 とりあえず全ての教室を回って、敵がもういない事は確認できた。
 だが、どの教室でも一人、酷い所では三人殺されていた。
 解放はされたけど、素直に喜べない生き残った生徒達。悲しみにくれる教室もあった程だ。

「ったく、ガラじゃねぇけど、流石の俺も怒髪天だぜ……」

 そりゃもうあまりの怒りで髪が逆立ち、金髪になっちまう位にな。
 そういえばさっき外をちらっと窓から覗いたら、兵士さん達が校門を封鎖しており、敵と思われる集団と戦っていたな。
 あんなにまだ敵が残っていたのかと驚愕したけど、兵士さん達の方が数は勝っていたし、まぁ問題はないだろうな。

「さてと……。アーバインの部屋がラストだな」

 アーバインの部屋の扉を開けようとした瞬間、扉の向こうから殺気を感じた!
 あからさまに扉越しに俺を殺そうとしている!!
 俺は瞬時に扉の向こうにサウンドボールを飛ばし、《ソナー》で映像確認をする。
 サウンドボールから送られてきた映像は、扉に向かって頭上から斬り下ろそうとしている男の姿だ。
 このままじゃ俺が縦に真っ二つにされる!
 俺は身体を半身にした瞬間、さっきまで俺の身体があった所に鋭い斬撃が通過した。

「ほう、あれを避けるか……。さすがだな、ロナウド・ウィードの息子よ」

 斬られた扉がゆっくりと床に崩れ落ちると、部屋の入り口に立っていたのは鋭い目付きをした金色の短髪をオールバックにしている男だった。
 年齢は父さんと同じ位だが、その目はまさに獣のようだな。
 常に獲物を探している、狩る側の獣の目。
 うっわぁ、間違いなくこいつ、バトルジャンキーだな。
 ってか、俺の事を知ってるのか?

「初めて会った人には挨拶をするって礼儀も知らねぇのか?」

「すまんな、これが俺なりの挨拶だったんだが」

「はっ、あまりにも野蛮なんだなぁ、《武力派》の挨拶ってのはさ」

「強者に対する挨拶なんだよ」

「へぇ、じゃああんたは俺を強者と認めていると? こんな八歳のガキなんかを?」

「年齢なんぞ関係ない。強いか弱いか、それだけでいいのだ」

「さいですか……」

 ガッチガチのバトルジャンキーじゃねぇか……。
 俺を見て楽しそうに笑いやがったよ。しかも眼光はさらに強くなったし。
 はぁ、こっちは結構な数と戦ってきたから正直疲れているし、さっさと帰りたいんだけど!

「さぁ、ロナウドの息子よ、剣を抜け。俺と楽しく戦おうじゃないか」

「俺は平和主義者なんだよ、全然楽しくなれねぇっての」

「平和主義者? 本当にそうだったら、何故お前は俺の部下を殺した?」

「あ? てめぇらが俺の友達の恋人殺したし、楽しい授業を妨害していやがるからに決まってるだろ!」

「ほぅ。お前なかなか激情家だな。躊躇わず部下を殺しているから、冷酷な性格かと思ったぞ」

「やかましい。そもそもてめぇらがこんなくだらねぇ事やってなきゃ、俺だってここまでブチ切れてねぇよ!」

「くだらない、か……。芸術というくだらないものに染まっているお前には、我々の事などわからないだろうな」

「ああ、わかりたかぁないな」

 芸術をくだらねぇって言っている時点で、《武力派》の事なんて理解出来る訳がねぇだろ。
 軍部の強化と第二王子を国王としたいが為に、あちこちでテロ紛いの活動をしている奴を、どうやって理解すればいいんだって話だ。
 そりゃ誰だって無意味に強さに憧れるさ。俺だって女神様の所でポイント購入している時なんて、「剣と魔法が強くなれたら、俺超カッケー!」って思ってたしな。
 でも、父さんから剣を教わってわかった事がある。
 ただ強さだけを求めた剣には、後にも先にも何も残らないって。
 
 俺が四歳の頃、父さんに質問した事があった。

「何で父さんは剣士を辞めて狩人になったんだ?」

「ん? あぁ。それはな、守りたい人が出来たからだ」

「母さんの事だよな? でも剣士でも守れるじゃん」

「確かに守れる。だけどな、剣士とは常に自分の大事なものを犠牲にした代償で強くなる人間なんだ」

「どういう事?」

「常に死と隣り合わせの極限状態で強さを求める剣士は、究極的には自分以外はどうなってもいいって思わないといけない。自分が死んだら強くなれないしな。剣士として名を売ろうとしている奴は、ほとんどが家族を見殺しにしたりしてる」

「マジか……。でもさ、結構色んな物語ではしっかり皆守れてるじゃん? やろうと思えば出来るんじゃないか?」

「そんなのは一握りの選ばれた人間、所謂英雄って呼ばれる奴等さ。俺は生憎英雄と呼ばれる領域には至っていないし、母さんやお前を見殺しにしてまで強さを追求するつもりはなかったんだ。だから剣の道を捨てて、お前達と一緒に暮らして、側で守ろうと思ったのさ。つまり、剣を極める道は極限的に孤独なだけなんだよ」

 だから、お前も大事な人を守れるだけでいいから、強くなれ。
 父さんからそう言われて、俺も父さんみたいな男になろうって決めたんだ。
 まぁ一時期この音属性の魔法を得て天狗になって、この新年が揺らいじゃったけどさ。

 ようするにだ。

「ただ純粋に強さだけを求めているてめぇには、何かわからんけど負ける気しねぇな!」

 俺は鞘から一本ずつ剣を抜いた。
 右手にはレオンから預かっている剣、左手は俺が愛用している剣を持った。
 そして、左の剣先を相手に向け、右の剣は俺の胸を相手の斬撃から守るようにして構えた。

「……二刀流、だと? 様々な剣士が戦闘の理想として挑み、誰も極められなかった」

「へぇ、そうなんだ。なら、鍛練が足りなかったんじゃね?」

「……成る程、これほどとは。はは、たぎるなぁ!」

 うっわ、にたっとした笑いが気持ち悪いんですけど!
 もう一人でたぎっててくれ。
 ってか、何なんだよこいつ、股間が盛り上がってるんですけど!!
 勃ってんの、勃ってんのこいつ!!
 余計気持ち悪いわ、近寄らないで欲しいわ!!

「さぁ、尋常に殺し合おう、ロナウドの息子ぉぉぉぉっ!!」

「きっしょい!! 来るな、おっ立てて俺に向かって来るんじゃねぇ!!」

 こうして、勃起しているバトルジャンキーとの戦いが始まった。

「ハル、無理はするなよ!!」

 あっ、アーバイン、いたんだ。
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