音の魔術師 ――唯一無二のユニーク魔術で、異世界成り上がり無双――

ふぁいぶ

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第百一話 予定の詰まった一日 ――訓練場編2――

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 今隊長さんが放った攻撃は、混戦でもタイマンでも使える実戦的なものだった。
 突きを回避されてもタックルでダメージではなく転倒を狙い、転倒すれば主導権は完全に握れるからな。
 戦いにおいて、転倒は死に等しい。
 マウントポジションを取られて滅多刺しだったり、相手に心理的優位を与えて戦況が不利になってしまう。
 それ程転倒というのは、致命的なものなんだ。
 タックルとは、ダメージ狙いじゃなくて本来転倒を狙うもの。
 苦し紛れでも何でもない。

「初めてだな、必死に回避してくれたのは」

「そりゃな! それだけ隊長さんの気迫がすごかったって事さ」

「それは嬉しいね! 君という存在が現れなければ、きっと俺は腑抜けた隊長のままだったさ!!」

「ああ、それは言えるかもな」

「俺も全力で行くから、魔法も使っていいから全力で来てくれ!」

「おう、それじゃ遠慮なく!」

 俺は訓練場全体にサウンドボールを百個程展開した。
 サウンドボールの配置位、一秒もかからずに出来るようになったんだ。
 これも女神様のところでポイント購入した才能のおかげかな?

「雰囲気が変わった気がする……。まさか、もう音属性の魔法を展開し終えたのか?」

「当たり!」

 今度は俺が突進する番だ。
 鎧などの防具は一切装備しないのが俺の戦闘スタイルだから、身軽で素早い動きが出来る。
 俺の速さは、隊長さんの突進の比じゃないぜ?

「――――詠唱完了。発動! 《サンドウォール》」

 隊長さんは土属性の魔法を使える。魔力量はランクBと平均より高めだ。
 得意魔法は今放った《サンドウォール》というもので、地中の砂を壁状に固めて地上にて生成する魔法だ。
 かなり圧縮して壁を生成しているから、当たったら当然のように痛い。
 戦争ではかなり役立つ魔法だな。
 まぁ所詮は砂で固めた壁だ、俺の《ソニックブーム》は止められない!

「行け、《ソニックブーム》!」

 一つのサウンドボールが爆音を撒き散らしながら、音速で前方に飛んでいく。
 そして副産物として強烈な衝撃波が発生、砂の壁は粉々に砕け散った。

「ちっ! 連続発動! 《サンドウォール×4》」

「詠唱ってのは本当に面倒だな! そら!!」

 詠唱によって隊長さんが何をしてくるかがわかっちまうから、無詠唱で全ての魔法を発動できる俺は、《ソニックブーム》を連発して砂の壁を破壊していった。
 前までは反動で一日三回位撃つと手が痺れて使い物にならなくなっていたが、今は身体が成長したからか無制限で撃てるようになった。
 さらには今まで掌から出ないと発射出来なかったが、握った剣先からでも放てるようになったのは大きい。
 わざわざ剣を鞘に仕舞ったりする必要はなくなった訳だ。

「な、何なんだ! 隊長の《サンドウォール》が壊されていくぞ!」

「それより、この煩い音が、壁を壊しているのか? これが音属性……」

「確か《双刃の業火》という二つ名の他に、《音の魔術師》という二つ名もあるらしいぞ」

「それは陛下が下さった二つ名か?」

「いや、音楽学校占拠事件の首謀者、ヨハン元騎士団長がそう言ったらしい」

「……なるほど、確かに《音の魔術師》だな」

「隊長とあれほどやりあえるのか、あの子供は!」

「剣も一流で魔法は見えないか。厄介過ぎるだろ!」

 周囲で観戦している新米兵士さん達が、俺の事を色々言っているのを、サウンドボールが拾って俺に伝えてきてくれた。
 へぇ、《音の魔術師》っていう異名も少しずつ伝わっているようだな。
 俺としてはそっちの方が俺っぽくて好きなんだ。もっと広めてくれ!

 さてさて、壁を破壊しまくりながら突進を続け、やっとこさ隊長さんとの距離は俺の剣の間合いに入った。
 槍は近づかれると非常に弱い。
 槍というのはその長さを活かし、円運動の力を利用して相手を薙ぎ倒すのが本来の使い方だ。当然槍の先が一番運動の影響を受けるから、威力も一番高い。
 しかし近づかれると円運動の影響が薄くなってダメージが通りにくくなる。
 つまり、懐に入ってしまえば、剣の一方的な殺戮を開始出来る!
 だが、そう簡単にはやらせてくれないらしい。

「まだだ!!」

 隊長さんは槍の中央を握り、そしてコンパクトに振り下ろしてきた。
 まさか、これって――

「棍術かよっ!!」

「ご名答!!」

 棍棒を使った戦闘術、棍術。
 槍とはまた違った戦闘術となっている。
 棍術は武器を握る部分によって、戦い方が大きく変わってくる。
 端の部分を握れば槍のように薙いだり突いたり出来、中央部分を握ればリーチは短くなるが、剣と同じ間合いでしかもコンパクトに武器を振る事が可能になる。さらにコンパクトになった分、剣より攻撃速度が速くなるっていう副産物も付いてくる。
 まさにリーチを自在に操れる、なかなか厄介な戦闘術だったりする。
 隊長さんは槍を棍棒のように使い、槍の弱点である至近距離をなくしたんだ。
 やってくれるぜ、隊長さんよ。

 だがな、そっちがそう来るなら、俺にも考えがある!
 俺は《ミュージックプレイヤー》を発動させる。
 棍術は前世の中国拳法の武器っていうイメージが強い。
 だから俺はこの曲だけを延々とループしてやる。
 
 俺の耳に、中国の独特な音楽が流れてくる。
 これは中国のカンフー映画である《ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ》シリーズの《天地争覇》のオープニング曲だ。
 タイトル名はわからないけど、俺の大好きなアクション俳優である《ジェット・リー(当時は《リー・リンチェイ》名義)》が出演していて、たまたまこの曲が好きになったんだ。
 この曲を聞いた瞬間、俺はまるで《ジェット・リー》になったかのような錯覚を覚える。
 あの美しく流れるような戦いは、男の子は絶対に釘付けになるだろう。
 俺は彼のあの動きを思い出し、左手の木刀で隊長さんの攻撃を受けた瞬間、右手の木刀で斬りかかった。

「うおっ!?」

 隊長さんは驚きながらバックステップをするが、俺も追いかけてさらに畳み掛ける。
 中国のカンフー映画は、絶え間ない高速バトルが売りだ。
 俺もまさにカンフー映画さながらに、可能な限り再現をする。
 四方八方からまるで踊っているかのように繰り出される俺の剣撃に、戸惑いつつも棍術で捌いていく隊長さん。
 木の武器と木の武器がぶつかり合い、乾いたカンッという音が絶え間なく鳴り響く。
 隊長さんは防戦一方で、捌くのがやっとのようだ。
 対して俺はかなり余裕がある。
 攻める側ってのは、心理的にかなり有利だからな。
 そして俺は、集中力が切れた瞬間を見逃さなかった!

「そこだっ! はいぃぃぃぃっ!!」

「しまった!!」

 ガンッ!

 何かが金属に当たった音が鳴った。
 胴体を狙った俺の木刀が、鎧に阻まれたのだ。
 そうだよな、隊長さんフル装備だったわ。

「ふっふっふ、木刀では鎧を切り裂く事は出来ないな? よって、その一撃は無効だ!!」

「何それ、ずりぃんだけど!!」

「ははははっ、戦いは戦う前から始まっているのさ!!」

「この野郎! だったら観客席に置いてある《レヴィーア》と《リフィーア》持ってくるぞ!?」

「あっ、それは止めて」

 まぁでもこんな風に戦うのも、なかなか楽しいな。
 なら試しに、何回致命傷を与えたかをカウントしてやろうじゃねぇか!
 ほれほれ、俺の攻撃を堪え忍んでみろよ!!
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