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第百四十七話 芸術王国流文化侵略ノススメ ――終演――
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――女神視点――
私は死を司り、魂を次の輪廻へ案内する神格序列第二位。
個体名は特にありませんが、第三百五十二世界では私は《輪廻の女神 アブリーリア》と呼ばれています。
そんな私は今、五百年に一度のご褒美を利用して、ハル・ウィードがいる第八百一世界に人間として降り立ちました。
何故彼の元に来ているのかと言うと、個人的に私は彼をとても気に入っているからです。
私が彼を気に入り始めたのは、次の転生先を決めている時からでした。
全ての魂には等しく、輪廻転生の機会が与えられています。動物や魔物、植物等にもです。
私はその魂に前世の生き様を選定してポイントを付与し、望む来世を与える仕事をしているのです。
ほとんどは自身の死に嘆くか悲観するかのどちらかなのに、ハル・ウィードは自身の死をあっさり受け入れ、且つ普通は悩むであろう来世の事をちゃっちゃと決めてしまったのです。
こんな人間には正直巡り合った事がありませんでした。
元々彼は、とてつもない強い光を放っている魂で、言うなれば勇者や英雄と呼ばれている魂と同格でした。
地球と呼ばれる、努力だけでは報われない、様々な策謀を巡らせないと輝けない厳しい環境の中で、このような魂を持つ人間は非常に稀有なのです。
それから私は、暇を見つけては彼の次の人生を見守っていました。
ハル・ウィードの人生はとても面白かった。
自分の思うままに正直に生きていて、しかも障害を自力ではね除けるのです。
剣技や魔法の腕を磨くのも怠らず、命が軽いこの世界で生き抜くどころかさらに魂の輝きが増してきたのです。
その魂に惹かれたのか、彼の周りには彼を支えられる力を持つ人間が集まってきていました。
おかげで今このように、地球と遜色のない音楽ライブを、異世界で開催できています。
ここまで自分の意思で、周囲の意見に流される事なく、自分のやりたい事を実現できる行動力と意思の強さは類を見ないでしょう。
見ていた私もとても楽しくなって、たまに彼の頭に話し掛けてしまう程でした。
今、そのハル・ウィードが歌おうとしています。
彼は転生の際に美声をポイントで購入していました。
最後に歌を聴いたのは、この世界基準で二年前。
ハル・ウィードも成長している筈。それならば歌も進化しているでしょう。
さぁ、聴かせて頂きましょう!
彼が歌い始めた瞬間、人間の器に入っている私の肌に電撃が走った感覚に陥りました。
鳥肌が立つとは、こういう感覚なのですね。
周囲も一瞬で静まり返り、皆彼の歌に耳を傾けています。
曲名は《真新しい世界》。確か地球の英語という単語では《Brand New World》でしたか。
前聴いた時はピアノでの演奏でしたが、今回は皆で演奏しています。
先程のチャラい人がやっていた激しい演奏ではなく、歌を際立たせるような、静かに支えるように弾いています。
ハル・ウィードの澄んだ声は、マイクを通して会場全体に響き渡り、私達観客の胸に何かの感情を落とし込んでいきます。
歌詞は新しい世界で出会った人達に対する感謝の言葉を綴っています。
以前は私に対してもこの曲を贈ってくれて、私は不意に泣いてしまいました。
しかし今回は、バンドメンバーに対して、後は聴いている私達観客に対して感謝を述べているように聴こえました。
こういうのを、バラードと言うのでしょうか。
純粋な歌詞と彼の歌声に、観客達は静かに涙を流し始めました。
そして私が連れてきた、今回の戦争で命を落とした魂達も感涙に浸っています。
「あぁ、音楽ってこんなに凄かったんだな……」
「生きて聴きたかったな……」
「もう、心残りはない」
「ちくしょう、まだ生きたいって思っちまうよ」
うん、魂達も連れてきて良かった。今はそう思います。
そして静かに演奏が終わり、《Brand New World》が終演しました。
歓声は上げずに、盛大な拍手だけが会場を包み込みます。
私も手が痛くなる程手を叩いてしまいました。
本当に素晴らしい演奏でした!
さて、最後一曲ある筈ですが、何を歌うのでしょうか?
すると、何と彼は歌いませんでした。
この曲は何でしょうか?
私は念の為地球のライブラリに、権限を利用してアクセスします。
そして、一つの曲がヒットしました。
マーティ・フリードマンがロックサウンドにリメイクした、《世界に一つだけの花》でした。
元々《SMAP》という男性アイドルグループの曲らしいのですが、マーティ・フリードマンというギタリストが自身のアルバムで発表したみたいですね。
本来ボーカルの部分をギターで演奏をして、まるで歌っているかのように音を奏でるハル・ウィード。
本当に音に強弱をつけて、歌っているように演奏をしているのです。
ギターとは、こんな事が出来るのですね!
ライブラリにアクセスするまで、そして彼が奏でて初めて知りました。
人間とは、本当に素晴らしいですね!
先程のしっとりした曲から一変して、激しいロックサウンドに変わり、観客は再度盛り上がり始めます。
皆最後の力を全力で振り絞っているかのように、手を上げて曲にノッているようです。
まぁやはりロックになると冷めてしまう人もいるようですが。
ハル・ウィードが、本当に眩しい位の笑顔で演奏をしています。
見ているこちらも笑顔になって、ついつい楽しくなっちゃいますね。
そして、彼はちょくちょく観客をいじります。
「おらおら、元気足りねぇぞ! もっと声出してみろ!」
観客がその煽りに応えると、彼はさらにギターを激しく奏でます。
今までの曲よりも、より激しく、速く、音のマシンガンという表現が正しいように感じられました。
観客も本気で飛び跳ねたり腕を振りまくったり、もうすごい事になっていました。
でも観客が盛り上がると、ハル・ウィードがさらに全身を使って演奏し始めます。そのパフォーマンスに私達も含めた観客は大盛り上がり!
私も負けずに頑張って飛びました!
……私の胸にいくつか視線が集中しましたが。
って、その視線の一つは貴方ですか、ハル・ウィード!
「ナイスおっぱい!」
貴方の考えは、私に筒抜けなんですけど。
ちょっと恥ずかしくなって、飛び跳ねるのを止めました。
そんな残念な目で私を見ないでください。
しかし、ここまで第二の人生を全力で謳歌している転生者は本当に珍しいです。
大体がポイントで購入した力を使って、とにかく楽に流されて生きる人が多いのに、彼は逆にその力をフル活用して強い意思の元楽しんでいます。
他の神々からもハル・ウィードは好感を得ており、音楽の神として成り上げてもいいのでは? との声も上がっている程です。
ですがきっと、彼は神より人間として人生を謳歌する事を選ぶんじゃないかなと、私は予想していますが。
そしてそろそろ終演が近づいてきました。
彼は指を高速で動かして、どのメンバーよりも素晴らしい早弾きを披露しました。
この超絶テクニックに、観客は大盛り上がり!
「五月蝿くて好きではないが、あのリューンの演奏技術はとんでもない!!」
「指って、あんなに速く動かせるもんか!?」
「いやいやいやいや、無理っしょ、普通!?」
「あぁぁぁ、赤髪のあの人、すっごく格好良い……」
「あの笑顔が何か可愛い!」
「もう少し静かに演奏出来ないのか? 静かな曲の方が好きなんだけどな」
やはり賛否両論ですが、彼のテクニックには全員驚いている様子です。
何故かわかりませんが、私が彼をここに転生させたって理由だけで誇らしくなってしまっています。
ふふ、私も彼にゾッコンなのかもしれませんね。
最後に、彼が思いっきりジャンプをして、着地した瞬間に全員で音を揃えて演奏が終わりました。
ロックが苦手で帰ってしまった観客もいましたが、概ね受け入れられた様子ですね。
演奏していたバンドメンバーが全員笑顔で手を振っています。
観客達もそんな彼らに歓声を送り、彼らを讃えています。
「あぁ、やっべぇ。すっげぇ気持ちいい!!」
ハル・ウィードの心の声が聞こえてきました。
ふふ、彼の表情を見る限り、非常に満足したようですね。
私も何故か嬉しくなってしまいました。
本当、彼をこの世界へ転生させて、心から良かったと思っています。
私は死を司り、魂を次の輪廻へ案内する神格序列第二位。
個体名は特にありませんが、第三百五十二世界では私は《輪廻の女神 アブリーリア》と呼ばれています。
そんな私は今、五百年に一度のご褒美を利用して、ハル・ウィードがいる第八百一世界に人間として降り立ちました。
何故彼の元に来ているのかと言うと、個人的に私は彼をとても気に入っているからです。
私が彼を気に入り始めたのは、次の転生先を決めている時からでした。
全ての魂には等しく、輪廻転生の機会が与えられています。動物や魔物、植物等にもです。
私はその魂に前世の生き様を選定してポイントを付与し、望む来世を与える仕事をしているのです。
ほとんどは自身の死に嘆くか悲観するかのどちらかなのに、ハル・ウィードは自身の死をあっさり受け入れ、且つ普通は悩むであろう来世の事をちゃっちゃと決めてしまったのです。
こんな人間には正直巡り合った事がありませんでした。
元々彼は、とてつもない強い光を放っている魂で、言うなれば勇者や英雄と呼ばれている魂と同格でした。
地球と呼ばれる、努力だけでは報われない、様々な策謀を巡らせないと輝けない厳しい環境の中で、このような魂を持つ人間は非常に稀有なのです。
それから私は、暇を見つけては彼の次の人生を見守っていました。
ハル・ウィードの人生はとても面白かった。
自分の思うままに正直に生きていて、しかも障害を自力ではね除けるのです。
剣技や魔法の腕を磨くのも怠らず、命が軽いこの世界で生き抜くどころかさらに魂の輝きが増してきたのです。
その魂に惹かれたのか、彼の周りには彼を支えられる力を持つ人間が集まってきていました。
おかげで今このように、地球と遜色のない音楽ライブを、異世界で開催できています。
ここまで自分の意思で、周囲の意見に流される事なく、自分のやりたい事を実現できる行動力と意思の強さは類を見ないでしょう。
見ていた私もとても楽しくなって、たまに彼の頭に話し掛けてしまう程でした。
今、そのハル・ウィードが歌おうとしています。
彼は転生の際に美声をポイントで購入していました。
最後に歌を聴いたのは、この世界基準で二年前。
ハル・ウィードも成長している筈。それならば歌も進化しているでしょう。
さぁ、聴かせて頂きましょう!
彼が歌い始めた瞬間、人間の器に入っている私の肌に電撃が走った感覚に陥りました。
鳥肌が立つとは、こういう感覚なのですね。
周囲も一瞬で静まり返り、皆彼の歌に耳を傾けています。
曲名は《真新しい世界》。確か地球の英語という単語では《Brand New World》でしたか。
前聴いた時はピアノでの演奏でしたが、今回は皆で演奏しています。
先程のチャラい人がやっていた激しい演奏ではなく、歌を際立たせるような、静かに支えるように弾いています。
ハル・ウィードの澄んだ声は、マイクを通して会場全体に響き渡り、私達観客の胸に何かの感情を落とし込んでいきます。
歌詞は新しい世界で出会った人達に対する感謝の言葉を綴っています。
以前は私に対してもこの曲を贈ってくれて、私は不意に泣いてしまいました。
しかし今回は、バンドメンバーに対して、後は聴いている私達観客に対して感謝を述べているように聴こえました。
こういうのを、バラードと言うのでしょうか。
純粋な歌詞と彼の歌声に、観客達は静かに涙を流し始めました。
そして私が連れてきた、今回の戦争で命を落とした魂達も感涙に浸っています。
「あぁ、音楽ってこんなに凄かったんだな……」
「生きて聴きたかったな……」
「もう、心残りはない」
「ちくしょう、まだ生きたいって思っちまうよ」
うん、魂達も連れてきて良かった。今はそう思います。
そして静かに演奏が終わり、《Brand New World》が終演しました。
歓声は上げずに、盛大な拍手だけが会場を包み込みます。
私も手が痛くなる程手を叩いてしまいました。
本当に素晴らしい演奏でした!
さて、最後一曲ある筈ですが、何を歌うのでしょうか?
すると、何と彼は歌いませんでした。
この曲は何でしょうか?
私は念の為地球のライブラリに、権限を利用してアクセスします。
そして、一つの曲がヒットしました。
マーティ・フリードマンがロックサウンドにリメイクした、《世界に一つだけの花》でした。
元々《SMAP》という男性アイドルグループの曲らしいのですが、マーティ・フリードマンというギタリストが自身のアルバムで発表したみたいですね。
本来ボーカルの部分をギターで演奏をして、まるで歌っているかのように音を奏でるハル・ウィード。
本当に音に強弱をつけて、歌っているように演奏をしているのです。
ギターとは、こんな事が出来るのですね!
ライブラリにアクセスするまで、そして彼が奏でて初めて知りました。
人間とは、本当に素晴らしいですね!
先程のしっとりした曲から一変して、激しいロックサウンドに変わり、観客は再度盛り上がり始めます。
皆最後の力を全力で振り絞っているかのように、手を上げて曲にノッているようです。
まぁやはりロックになると冷めてしまう人もいるようですが。
ハル・ウィードが、本当に眩しい位の笑顔で演奏をしています。
見ているこちらも笑顔になって、ついつい楽しくなっちゃいますね。
そして、彼はちょくちょく観客をいじります。
「おらおら、元気足りねぇぞ! もっと声出してみろ!」
観客がその煽りに応えると、彼はさらにギターを激しく奏でます。
今までの曲よりも、より激しく、速く、音のマシンガンという表現が正しいように感じられました。
観客も本気で飛び跳ねたり腕を振りまくったり、もうすごい事になっていました。
でも観客が盛り上がると、ハル・ウィードがさらに全身を使って演奏し始めます。そのパフォーマンスに私達も含めた観客は大盛り上がり!
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……私の胸にいくつか視線が集中しましたが。
って、その視線の一つは貴方ですか、ハル・ウィード!
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貴方の考えは、私に筒抜けなんですけど。
ちょっと恥ずかしくなって、飛び跳ねるのを止めました。
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ですがきっと、彼は神より人間として人生を謳歌する事を選ぶんじゃないかなと、私は予想していますが。
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この超絶テクニックに、観客は大盛り上がり!
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「いやいやいやいや、無理っしょ、普通!?」
「あぁぁぁ、赤髪のあの人、すっごく格好良い……」
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やはり賛否両論ですが、彼のテクニックには全員驚いている様子です。
何故かわかりませんが、私が彼をここに転生させたって理由だけで誇らしくなってしまっています。
ふふ、私も彼にゾッコンなのかもしれませんね。
最後に、彼が思いっきりジャンプをして、着地した瞬間に全員で音を揃えて演奏が終わりました。
ロックが苦手で帰ってしまった観客もいましたが、概ね受け入れられた様子ですね。
演奏していたバンドメンバーが全員笑顔で手を振っています。
観客達もそんな彼らに歓声を送り、彼らを讃えています。
「あぁ、やっべぇ。すっげぇ気持ちいい!!」
ハル・ウィードの心の声が聞こえてきました。
ふふ、彼の表情を見る限り、非常に満足したようですね。
私も何故か嬉しくなってしまいました。
本当、彼をこの世界へ転生させて、心から良かったと思っています。
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