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第百五十五話 三者三様の愛情 ――アーリアの場合――
しおりを挟むしかし、アーリアは随分と急かしてくる。
今は先頭に立って、俺の手を引きながらずんずんと自分の部屋へ誘導しているから表情見えないけど、何かあったのか?
しかも結構早歩きだしさ。
そんなに俺とイチャイチャしたいのかな?
ふふっ、俺も罪な男よのぉ!
早歩きの結果、あっという間にアーリアの部屋に着き、そして押し込まれるような形で俺は入室した。
部屋に入って扉を閉めた直後、俺は扉を背にした状態でアーリアに抱き着かれた。
「アーリア?」
「……申し訳御座いません、ハル様。わたくし、自分でも驚く位、嫉妬深かったようです」
俺の背中に回しているアーリアの手に、力が入る。
「レイさん、リリルさんはとても優しくて良い方です。後から恋慕してきたわたくしすら受け入れてくださっていますから。それでも、わたくしはハル様と二人が仲良くしていると、胸の中がざわついてしまったのです」
「……そっか。もしかして、あんなに急かしていたのは嫉妬していたせい?」
「はい……。とても嫌な女に映ったでしょう?」
「ん~、嫌な女とは思っていないけど、余韻には浸らせて欲しかったってのが本音かな」
「も、申し訳御座いません」
アーリアは自分の顔を俺の胸に埋める。
怒られたと思ってちょっと泣きそうなのかもな。
別に俺はアーリアに怒りは感じていないけど、あの二人はどうかな?
とりあえず、俺はアーリアの頭を撫でた。
「まぁせっかくの一時間だ、今くらいしか俺を独占出来ないぜ?」
「……ハル様」
アーリアが上目遣いで俺を見つめてくる。
見る角度によって色が変わる虹色の瞳から、今にも大粒の涙が溢れそうだった。
この美しい瞳に、俺の意識が吸い込まれそうな感覚に陥る。
本当に綺麗だ。そして可憐なアーリアにとてもぴったりな瞳だと素直に思う。
生きているドール人形のようで、触れたら壊れてしまうんじゃないかって不安になる程華奢だ。
アーリアの服装は、レイやリリルみたいな男の性欲を刺激してくるものじゃなく、丈の長くて二の腕が露出している白いドレスに、カーディガンを羽織るような格好だった。それがアーリアの可憐さをさらに引き立てていて、こんな素敵な子が俺の恋人の一人だというのが今でも信じられない。
「とりあえずさ、話すか?」
「はい! あの、出来れば、お隣に座りながらで、宜しいでしょうか?」
「ああ、もちろん。なら、ベッドに座る?」
「……何でしょう、少しいやらしく聞こえますね」
「……俺もそう思った」
俺とアーリアは手を繋いでベッドまで行き、そしてそのままベッドに腰掛ける。
お互いの肩が触れ合ったままで座っている。
アーリアの体温が、カーディガン越しでもわかる。
「わたくし、今でもハル様とお付き合い出来るのが夢なんじゃないかと思ってしまいますの」
「えっ、実感ない?」
「いえ、そういう訳では御座いません! 初めてハル様と会って、命を救って貰った時からわたくしは貴方に恋をしました」
そんな前からなんだ。
となると、約四年前からか。
「ハル様にはすでに恋人がいらっしゃるのは知っていました。しかし、わたくしの初恋はその程度では諦める事が出来ませんでした。ですので、わたくしはハル様に相応しい淑女になれるように、自分の魔眼の力を有効活用する事を思い付いたのです」
当時、アーリアに音楽を聴かせている時の話になるが、色々作りたいものがあるけど俺だけじゃ実現できないって愚痴った事があった。
恐らくそのタイミングで、アーリアは《虹色の魔眼》の力を使って魔道具製作で俺の役に立とうと決めてくれたようだった。
「ハル様はきっと出世するお方だと思いました。しかし身分を持つとなると、その伴侶にも同等のものが求められます。ですから、ハル様の音楽活動を全力で支援出来る形で魔道具を作る事を決意したのです」
「……そっか、でも本当にアーリアには助けられてるよ」
「わたくしは、ハル様のお役に立っていますか?」
「もうアーリアなくして、俺達のバンドは音楽活動すら出来ていなかったさ。本当に、ありがとうな」
「……好きな殿方に褒められるのがこんなに嬉しいものなんて、思ってもみませんでしたわ」
アーリアが自分の体を俺に預けてくる。
そして頭を俺の肩に乗せた。
ああ、本当に愛しいな。
レイとリリルももちろん大好きだ。その二人と同じ位にアーリアも大好きになっていた。
本当に今の俺は、贅沢な生活を送っていると思う。
逆に前世では、何故こんな素敵な恋愛を放って音楽活動に専念してしまったんだろうって、今更になって後悔し始めたわ。
「ハル様」
「ん?」
「わたくしは、ハル様のお側にいても宜しいでしょうか?」
何を馬鹿な質問をしているんだよ。
答えは決まっているさ。
「もちろん。レイとリリルと一緒で、もうアーリアもいないと俺は生きていけない」
例えアーリアが魔道具を作っていなかったとしても、俺は彼女の深い愛情にきっと惚れて今と同じような感じになるだろうな。
彼女が王女だから、素晴らしい魔眼を持っているとか、そういうのは全く関係なしで、俺はアーリアという女性を純粋に愛しているんだ。
「今のハル様の表情、あのお二人に向けられる柔らかい表情をしていらっしゃいます。……ああ、わたくしも受け入れられたのですね」
俺は今、そんな表情をしているんだろうか。
きっとしているんだろうな。
だって、本当にアーリアの事が大事なんだから。
「俺に相応しいとかそんなのは関係ねぇ。俺がアーリアにいて欲しいんだ」
「はい、はい……!」
アーリアが両手で口を抑え、大粒の涙を流し始めた。
あらら、泣かすつもりはなかったんだがなぁ。
「まぁ、さ。俺も恋愛初心者だから、皆で話し合ってこれから一緒に過ごしていこうぜ?」
「はいっ、わたくしも、貴方をしっかり支えてみせますわ!」
「俺もアーリアに愛想尽かされないように、頑張るさ」
「ふふ、わたくしはきっと、ハル様に愛想尽かす事はないと思いますわ」
「自信たっぷりだなぁ」
「それはもう! 四年も恋焦がれていましたの。それが叶った今、もうハル様を離すつもりは御座いません!」
ああ、がっつり掴まれたよ、俺。
だけどまぁ、全然嫌じゃないな。
まぁ俺もアーリアもそうだけど、レイとリリルも手放すつもりは毛頭ないけどな。
「ハル様、ひとつだけお願いしても宜しいでしょうか?」
「ん? いいけど、何を?」
「えっと、その……はしたなくて申し訳御座いませんが、添い寝を、所望致します……」
「えっ…………まぁ、添い寝だけなら、まぁ、いいけど」
「ほっ、有難う御座います」
花が咲いたような可憐な笑顔を、俺に向けてくれた。
まぁ、添い寝なら俺が欲情する事はないかな?
(って、腕枕かよ!!)
いざ添い寝をしてみたら、何と腕枕をご所望された!
そして俺達は顔が近い状態で見つめ合っている。
やばい、めっちゃくちゃドキドキするんだけど!
「ふふ、ハル様がこんなに近いなんて、本当夢みたいですわ」
アーリアが小さく微笑んでいる。
くそっ、別に露出とかそういうのはないのに、それでもアーリアを襲いたくなる。
「もっと、体を寄せても宜しいでしょうか?」
「……おう」
拒めない!
ってか、体寄せるってなると、完全密着じゃないですか!
俺の理性はかなりズタボロなのに、やばいですって!!
まぁそう思ってても、アーリアは遠慮なくくっついてきた訳ですが。
「ハル様、暖かいですわ」
そりゃね、身体が火照ってますからね!
今の俺の理性という壁は、ボロボロと崩れ落ちてますよ!
くっそぉ、まさか最後の刺客がこんなに強敵だとは思わなかった!!
だめだ、だめだ堪えろ、俺の手よ!
もしそこでアーリアに触れたら、間違いなく手を出してしまうじゃないか!
お願いしますお願いします、エッチな事はしたいけど、何とか堪えてください。
もう俺の理性じゃ抑えられない!!
「すぅ、すぅ……」
えっ?
何と、アーリアさんは寝てしまったじゃないか。
寝付き早すぎじゃね!?
ってか、まだ残り時間結構あるんだけど、寝ちゃっていいのか、アーリアさんや!?
とりあえず起こそうとしたんだけど――
「んんっ……ハル様……」
とても幸せそうな寝顔に、俺は起こすのを止めた。
むしろ、もっとアーリアの寝顔を見ていたいって思ってしまったんだ。
俺は艶がある銀髪を撫でながら、アーリアの可愛い寝顔を堪能した。
すると性欲すらぶっ飛んでいて、ムラムラは収まった。
その代わりに俺にも睡魔が襲ってきてしまい、いつの間にかアーリアと一緒に寝てしまっていた。
「「一時間経ったよ!」」
レイとリリルの、時間を告げる声がするまで、本当にぐっすりとお互い寝ていたんだ。
ちなみに、レイとリリルからもめっちゃくちゃ添い寝されたのを羨ましがられたようで、アーリアがドヤ顔を披露し、レイとリリルが俺にもせがんでくる構図が生まれた。
ああ、ハーレムもなかなか大変だなって思ったけど、それでも俺は幸せだと感じていたんだ。
うん、俺はこの三人をずっと大事にしよう。
愛してるよ、三人共。
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